本格的ごっこ遊び 空に浮かぶ五つの石
砂糖少々塩少々醤油小さじ一杯水少量、ニンニクしょうがはお好みで、適度な大きさにした鶏肉を漬ける、小麦1片栗1の割合で漬けダレにぶち込んで混ぜて油で揚げればジューシーなから揚げの出来上がりじゃーい! そんな真夏の昼時―熱中症には気を付けて?―
眠りからは覚めるが、まだ完全に覚醒しきらなずぼーっとした状態で隣で寝ているメイドを起こさないように避けベッドから這い出る。
いつもの様に箪笥を開き用意されていた服を着用し、扉の鍵が開くのを椅子に座って鉄格子のはまった窓から外を眺める。
まだ寝ぼけていた目もだんだん覚めてくる、覚めてはきてるが目の前にある事実を許容したくないので、何も考えずぼーっとする。
ベッドで寝ていたメイドが起きてくる頃には扉の鍵が開かれ、狐さんが部屋に入ってきた。
「ご主人様、本日の業務内容は敷地内に突如現れた迷宮を攻略し、最奥にある物を持ち帰る、以上です」
今日は迷宮を攻略しなければならないらしい、そもそもなぜ敷地内に迷宮が?
「まずは酒場に行き攻略メンバーを選出してください」
狐さんに言われたとおりにまず酒場に行くことにする。
どこが酒場かわからないので狐さんに案内してもらい酒場の中へ入る。
「いらっしゃい、何にする?」
料理長がバーテンダーを、料理番が給仕をしていた。
が、そんな細かいことは気にせずメンバーリストを見せて貰う事にした。
「えっと、迷宮を攻略するメンバーを集めたいのでリストを」
「はいよ、今いるメンバーはこんな感じだね」
料理長は何故か胸元からリストを取り出してきた、閉まっておく所他にもあるよね?後胸元にいれていたせいかリストがグシャグシャなんだけど…
顔を赤くして渡してくるくらいなら引き出しに入れて保管するなりしてほしい…
取りあえずしわを伸ばせるだけ伸ばしてリストを確認することにする。
「今いるメンバーはー…」
001:魔・善・戦・練度8
002:天・悪・魔・練度9
003:狼・中・闘・練度6
004:狼・中・闘・練度6
005:狼・中・闘・練度6
006:猫・善・錬・練度7
007:猫・善・司・練度5
008:龍・善・侍・練度7
009:翼・悪・盗・練度867
010:犬・悪・僧・練度816
011:魚・中・使・練度951
012:鱗・悪・戦・練度947
013:森・善・弓・練度798
014:闇・悪・忍・練度811
015:精・善・召・練度892
016:虎・善・君・練度988
017:獅・善・君・練度988
018:半・中・盗・練度887
・
・
・
EX8:神・中・愛・練度---8--7-19
EX9:狐・中・愛・練度-7-5--1-8-
・・・まずメンバーが多すぎる、善中悪って何?魔とか天とかは種族の事だろうけど、 戦とか練度は職とその熟練度的なもの…でいいのかな?
「まず左から、種族・性格・職業・練度。
魔は魔族、天は天人族、翼は有翼人族となります。
善・中・悪は中は中立で善と悪どちらとも組めますが、善と悪を一緒に組むことはできません。
練度はそのままですね、どれだけ熟練しているかです」
思考を読んでの回答ありがとう。
それにしても…Exの項目で練度がちゃんと数値化されていないのは何故?
「最後のExナンバーは数値を正しく測れる物が用意できなかったため数値化できなかったようです、後お助け用メンバーですので条件を満たさない限り加えることはできません」
「あっはい」
それにしても他と比べると最初の8人の練度がやけに低いような、と言うかそれ以外がやたらと高いような…
「以前から屋敷に居るメイド達と比べるとやはり実力はだいぶ劣りますね、これからに期待しましょう」
上から新しく雇った順で行くと…有翼人族はフレールで有ってるのかな?
「新しく雇った中でも有翼人族の練度が突出しているのは言い伝え通りに鍛錬を怠らず有事に備えるためですね」
へー、そんな言い伝えがあるのかー。
「まあ、その言い伝えは私と同じく古くから仕えているメイドが悪ふざけで神託として残したものですけど」
遊びで神託を出す狐さん達を誰か止めたりはしないのだろうか…無理だろうなぁ…
「まあその話は置いておこう、お勧めの編成は?」
「編成できる人数は六人まで、前衛三人後衛二人、後罠解除に盗賊一人の編成が鉄板ですね、御主人様がどこの位置を務めるかでまた変わってきますが」
「ちなみに私の戦力評価は…?」
「こんな感じですね」
XXX:多分人?・狐らぶ・ご主人様・練度210
何もかもが間違っている気がする、いや一部は合ってるか?
「練度は以外度低くはないんだな…」
「それはただの語呂合わせの遊びですので実際には0です」
期待した私が馬鹿だった!そうだよねリストにある練度一桁のメンバー相手に秒で砂にされるくらいだしね!
「まあご主人様はどのポジションについても大丈夫です、どこにいても最優先で狙ってきますので前衛後衛何所にいても危険度は変わりません」
果たしてそれは大丈夫と言うのであろうか、まあ気にしないでおこう。
「危険度が変わらないのであればもう最初から前に居るとして、練度の数値が高いのを選ぶ方がいいか」
とくに深く考えずメンバーを指定していく。
「まず087と095を前衛に、071と085を後衛に、盗は093を採用で」
とにかく練度の数値が高いものをパパッと選ぶと―
以上のメンバーでよろしいですか?
→はい
いいえ
―何か目の前にメッセージが浮かび上がり選択肢が出てきた。
はいを選ぶと指定した番号の者達が立ち上がり嬉しそうに近寄ってくる。
選ばれなかった人は何か悔しそうではあるが我先に我先にと酒場から出ていった。
「これで編成は完了です、次に向かいましょう」
狐さんの先導で次の場所へと向かう。
少し大きな、石で円形に覆われた建物の前にたどり着く。
「次はこちらで迷宮内部で探索する時の予行演習です」
狐さんに案内されて講師?らしき人の前まで行く。
「迷宮内部は狭い所も有り、まず自由に動くことはできない。
だからまずは此処で必要なことを実践形式で学び覚えていけ!」
松明や食料や水、寝袋等を纏めたバックパックを渡される。
「重っ!」
重すぎて持てなかった、なので量を減らして選出したメンバーに多めに持ってもらう事にした。
「探索の基本、迷宮内に灯りは無く潜んでいる者達は暗視能力・音響識別・熱源感知を持つものが多い!
暗視能力や音響識別を持つ者に対してこちらは非情に見つかりやすい、だが逆に強い光や大きな音に対し耐性を持たない物が多い!発見された場合速やかに強い光や大きな音を出して怯ませるんだ!
上手くいけば反撃されることも無く倒せるし、相手の視界や聴覚はほぼ使い物にならなくなっているから有利に事を運ぶことができるぞ!」
ふむふむ、なるほど。
「そして熱源感知を持つ者に対しだが、こいつらは魔道具、もしくは魔法でで体表を周囲と同じ温度にする事で感知されることは無くなる。
まずは以上の事を踏まえて探索の基本の練習だ!」
探索の基本の説明が終わった所でまた選択肢が現れる。
チュートリアルを開始しますか?
→いいえ
いいえ
…?はいが選べない、そもそも「はい」が存在していない。
狐さんの方を見る、クスクス笑いながらこちらを見ている。
チュートリアルをスキップしますか?
→はい
はい
メッセージが変わり選択肢に「はい」が出てくるが開始ではなくスキップになっている、チュートリアルをやらせる気はないようだ。
諦めて「はい」を選択しチュートリアルを終える。
「これで迷宮探索の基礎はお前たちに全て叩き込んだ!
決してまだ行ける、大丈夫だなんて考えるな!まだ行ける、行けそうだと思い始めた時は全滅する前の合図だと認識しろ!
そうすれば棺桶に入って戻ってくる人数も少なくて済むからな!」
いつの間にか周りに出現している訓練生?が真面目な顔をして聴いている、何を学んできたのだろうか…
「以上だ、卒業おめでとう!」
ワーワー!と卒業?したらしい訓練生らしき人達が歓声を上げながら訓練場を去っていった。
何も学べてないけど…どうすればいいんでしょうかね、これ…
「ではチュートリアルを終えましたので次は迷宮の探索に向かいましょう」
狐さんが笑いながら迷宮まで案内してくれる。
何も学べていないので不安は残るが、選出したメンバーは皆練度は高い、基本おまかせにすれば行けるはずだ!と考えながらついていった。
「こちらが迷宮の入り口になります」
入り口についたようだ、これから冒険が始まるのか、少しわくわくするな。
「迷宮に入る前にご主人様はこれを、ご主人様に選ばれた方達はこちらを装備してください」
狐さんから腕輪を渡されるので早速装備する。
* おおっと! 狐の腕輪は呪われている *
* ご主人様は呪われた *
外そうとする。
* 狐の腕輪は呪われていて外せない *
…どうしてくれようか…どうにもできないけど。
狐さんがけらけら笑いながらこちらを見ていた。
「んんっ…!では気を取り直して、ご主人様に渡したのは現在値を把握するための物、落とされると大変なことになるので外せなくしておきました」
一応迷子対策らしい、迷いに迷って出られなくなった時に救出部隊を送り込むのに必要だそうだ、だったら最初からそんなところに行かせないでよ…
「ご主人様以外の五人に渡した腕輪はパーティーを組んでいることを示すもの、外したり無くしたりお願いしますね、意図的に外したりした場合は無効となりますので」
何が無効なのだろうか、五人は真面目な顔をしていたから何かあるんだろうなー。
「それでは、迷宮の最奥を目指していってらっしゃいませ、ご主人様」
狐さんに見送られながら迷宮に入っていった。
迷宮に入ったはいいが先は真っ暗で何も見えないのでバックパックから松明を取出し火をつける。
通路はまだ広く何かが潜んでる様子もないのでどんどん奥へ進んでいく。
選んだ五人は私を守るように陣形を組んでいる、酒場でもなぜか優先的に狙われるとか言ってたからなぁ…
「ご主人様ストップ、ニールとティアは前に、タニアとアナトは何時でも魔法を使えるように」
そう言われ足を止める。
「もう来たのか…てっきり消耗を抑えて中層くらいで来ると思っていたが」
「どこか先走った所でもあるんでしょうかねー」
ニールとティアが武器を構え前へ進み出る。
「まあ…今回は事が事ですからねぇ…どこか一組くらい先走っても仕方は無いのかもしれません」
「でもだからって入ってすぐの所に来るとか後のこと考えると無理じゃない?」
タニアとアナトが杖を構え何時でも魔法を使えるように準備をする。
「ご主人様はこちらへ、ここなら動かなければ気づかれないはずです」
エリスに物陰に連れて行かれ動かないように指示をされる。
「タニア、指示を出したらライトを使用し視界を確保してください。
そろそろ来ますよ、今です!」
エリスが指示を出すと同時に通路が明るく照らされ襲撃者の姿が丸見えになる。
「やっぱりバレてんじゃん!エリス様がいるから奇襲は無理だって言ったよねぇ!?」
「だが奇襲以外ではニール様とティア様を無力化する手段はないと言ったのはお前ではないか!どうにかしてニール様とティア様を突破する方法を考えろ!」
「とりあえず仕切り直しとして逃げるという方向は…」
「無理、すでに捕捉されている上に丸見え、背中を見せた瞬間やられる」
「でーすーよーねー!もうこうなったらやけくそです!全員突撃です!」
戦いが始まったがものの数分で鎮圧された、やはり付き合いが長いだけあって実力は折り紙付きの五人である。
蹴散らされた襲撃者五人は「私たちがやられてもいずれ第二第三の私たちが!」と言いながら消えていった。
「ご主人様もう大丈夫です、先へ進みましょう」
エリスが笑みを浮かべながら手を取り立たせてくれる。
やだっ、エリス様素敵っ!
その後も襲撃は続いたが最深部までもう少しと言うところまできた。
狐さんと同時期に付き合い始めたメイド達の次に長い付き合いのメイド達の事だけはあって気配りや頼もしさが半端ない。
それにしてもほぼ勝ち目はないとわかっていて襲ってきていたのは何だったのだろうか?途中道から逸れても的確に位置を把握し襲撃してきていたが…相手は常にこちらの位置を把握していたような…たまたまだよね?
後道中設置されていた宝箱全て悪意しか感じなかった、罠は掛かっているし中身は…私には不要なものだったので五人で山分けしてもらった、皆嬉しそうにどれにする?こっちの方がいい、じゃあ私はこれと仲良く分け合っていた。
そうこう考えている内に最深部の扉までたどり着いた。
「後は此処にある物を持ち帰れば終りか」
「はい、中にある物を回収し脱出しましょう」
「久しぶりに楽しめましたね」
「さっさと帰って宴会だー!」
ニール、ティア、タニア、アナトはこの後のことを考えてウキウキしている。
「はいはい、皆さん落ち着いて、油断していると足元をすくわれますよ」
エリスも油断してはいけないと言っているがニコニコと笑っている当たり少し浮かれているようだった。
扉を開けるとそこには…
「良くぞ此処までたどり着いた、冒険者達よ」
ニール達の笑顔が一瞬にして凍りつく。
「この先にある物が欲するのであれば我らを倒してから行くがいい!」
何やらノリノリな狐さんと気だるげにこちらを見ているルシフ。
ニール達はカタカタと震え始めどうするか相談を始めていた。
「あれは反則だろう…どうする?」
「一刻も早くここから立ち去りたいですね…」
「でも逃げられる?あの二人から」
「無理だな…この相談タイムも温情みたいなものだろう…」
「ここで選択肢を間違えると全て水泡に帰す様な予感がします、お宝もすべて回収されるかもしれません」
狐さんはニコニコとこちらを見つめ、気だるげだったルシフは私を視認すると何やらやる気を出していた。
「とりあえず目的の物はあの二人のすぐ後ろ、一当てして奪取、即座に帰還魔法でいいのでは?」
「そうですね、いくらあの二人とはいえ一人に対し二人で当たれば少しは時間が稼げるはずです」
「魔法による補助や牽制も入れれば行けるかも?」
「あの二人を倒さずとも持ち帰りさえできればいいわけですからね」
「奪取する役目と帰還魔法の使用は必然的に残る私が請け負いましょう」
うーん、何か見落としてているような気がするが…
「そろそろ相談は終わったか?冒険者達よ」
「えぇ、覚悟は決まりました」
「その選択肢、間違ってなければよいな?」
「今ここであなたたちの時代を終わらせます!」
「いいだろう、掛かってくるがいい!」
狐さんとルシフのコンビ対エリスパーティーの戦闘が―
「はい、お終いです」
終わった。
「訓練場での講師の最後の話をもう忘れたのですか?行ける、行けるかもしれないという考えは全滅する前の合図だと言っていたはずですよ」
あぁ!何か忘れていると思ったらそれか!
「ご主人様を連れ最奥に有る物を持ち帰ったごパーティーは一か月ご主人様と過ごす権利が与えられる、と言う報酬にに目が眩みましたね?」
え?そんなものを報酬にしてたの?
「残念ですがパーティーは此処で全滅、お宝も没収です、惜しかったですねぇ。」
狐さんとルシフは五人からお宝を剥ぎ取っていく。
「ちなみにだが、このお宝を全部繋ぎ合わせるとだな」
ルシフが説明をしつつ繋ぎ合わせていくと…
【ご主人様を一年間自由にできる権利書】
「こうなるわけだ、欲を出して引き返さず全滅して権利書を失った気分はどうだ小娘共?」
ニール達は茫然としながら開いた口がふさがらなくなっていた。
「そんなのヒントも何もなしに分かるわけないじゃないですか!」
ぁ、いつも冷静で余裕を装っているエリスの地が少し出た。
「迷宮から脱出した時点で自動的に権利書に変化するように作ってある、適当でもいいからつなぎ合わせれば変化するようにも作ってあったがな」
エリスが頭を抱えて塞ぎ込んでしまった…長いお耳もしゅんとしている
「あなた達は最深部にたどり着きましたが、結果的には蹴散らしてきた娘達と同様に敗者です。
ですので敗者にはこれを進呈しましょう」
狐さんが凄くいい笑顔で「私達は欲を出しメイド長と副長に挑んだ愚か者です」と書かれたプラカードを首に掛けていった。
「後は仕上げですね」
五人の姿が光って消えたかと思うとRIPと書かれた巨大な石が空に五つ並んでいた。
それで、残された私はどうなるのかな?
「では賭けはルシフの勝利なので権利書を」
「悪いな、ご主人様を少しばかり借りていくぞ」
「はい、煮るなり焼くなりお好きにどうぞ、お腹を大きくしてから帰ってきてもかまいませんよ?」
「趣味が悪いぞ狐、できないの分かってるくせに」
「長い付き合いですし賭に負けた意趣返し位いいではないですか」
「まあ一カ月くらいはぶっ続けでやるかもしれないがな、ははは!」
「お盛んですわねぇ」
「お前が言うな」
ははは、ほほほと笑いながら軽口をたたき合っている。
そっかぁ…これから一年ルシフの実家で過ごすのかぁ…
「それじゃあ行ってくるよ」
逃げようとしたが拘束され担がれる私…私の意志なんて何所にもないらしい。
「行ってらっしゃいませ、ご主人様がいない間の屋敷の事はお気になさらず」
そしてルシフの実家で一年ほど過ごす事になるのであった。
なおエリス達五人は一年間プラカードを付けっ放しだったらしい、狐さんの呪いで外せなかったとかなんとか、ついでにRIPと書かれた巨大石もずーっと浮かんでいたらしい。
エリス達に蹴散らされたメイド達は毎日迷宮に潜らされエリス達との戦力差を少しでも埋めるための訓練が施されたらしい。
私?一年間至れり尽くせりで快適でしたとも、宣言通り一か月ぶっ続けでやられたりもしましたけど私は元気です。
でも一か月やって一か月休んでの繰り返しってどうなのよ、狐さんも大概だけど、ルシフもルシフで…ねぇ…?
それだけ愛されているという事だろうと納得することにした。
でも外せなかった腕輪でルシフとの情事を全て記録をしていた狐さんは酷いと思いました、そして顔を赤くしながら狐さんに詰め寄っていたルシフが非常にかわいかったです。