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根に持つタイプ 復活の宝石店…宝石?きっと宝石

素麺で作る冷やし中華も美味いもんやでぇ…

「来るたびどんどん豪華になってない?」

「そうですか?」

 宝石店の面影はもうほぼ無くなり、今となっては片隅にちょこんと申し訳程度に残るくらいになってしまっている。

 訪れる人の約9割が参拝客でお布施によりかなりの稼ぎを出している、噂を聞きつけ大陸中から信徒が押し寄せそうになり、各国に伝令を飛ばし、一度に訪れる人の制限をかけるくらいには盛況である。

 彫像を設置した初日はちょっとした仕切りと台座程度、灯りも台座に仕込んであった無色の光源、後天井に備え付けてあるシンプルな蛍光灯位だったはずが…

 今では仕切りが無くなり大部屋化、その部屋を囲う様に彫像が設置し直され、中央にはシャンデリア、彫像の周りも金や銀で細工をされた物で飾られている。

 ニールとティアの像はそんな部屋の入り口に、タニアとアナトの像は等身大ではなく小さいので宝石店のケース内で非売品としておかれることに。

 そんな片隅にある元宝石店、もうお土産屋みたいに入口に売店感覚で置く方がいいのでは…

「後服装変わってない?明らかに接客する服じゃないよねそれ?」

「いえ、合っていると思いますが…?」

 店長代理は雇った時に支給したビジネススーツではなく、今は修道服とエンパイアドレスを足して割ったような金色の衣装に身を包んでいる。

 さらに宝石が所狭しとふんだんに使われたベール付きのティアラも頭に着けている。

 店員ABも薄い緑と薄い青のドレスのような修道服に身を包んでいる、こちらは色を合わせたベールのみだが…どっちもどっちだな…宝石を売るような服ではない…

 言いたいことは沢山ある、だが忙しそうに動き回っていて言えない、なんか祝詞みたいなの唱えてるし。

 宝石店には一応店員らしき人は居る、隣の旅館の仲居さんだけど…

 モヤモヤしつつ仲居さんと店番をしていた。


「今日も宝石の売り上げは0だったわけだけども…」

 何一つ売れていないケースの中身、売れなければ次の物を作れないので在庫が捌けない。

「お布施は白金貨が1枚、金貨が194枚、銀貨571枚、銅貨1378枚ですね」

 本業の稼ぎが無くとも副業の稼ぎだけでどんどん豪華になっていく建物、一応元皇帝とその臣下だけあって貨幣は流通させて何ぼ、という事も有りお布施は食費や維持費などを残しすべてばら撒いている。

 その結果が華美に装飾されたシャンデリアや金銀、宝石を使った細工らしいが…

 限度額限界の物を発注、対価を払い受け取る、豪華になる、発注先も大抵の場合信徒なので支払った対価がお布施になって一部戻ってくる、また発注する。

 この繰り返しらしい、これなんて言うんだっけ…マッチポンプ…?違うか。

 お布施も評判の悪い所を除き万遍なく撒いているので周辺諸国の経済は非常に良いらしい、なので結局何も言えない。

「ご主人様、御迎えに上がりました」

 狐さんが迎えに来る時間になったようだ。

「店長代理殿はここ最近随分羽振りがよろしいようで、ご主人様にはかないませんけど」

 圧力をかけながら言うので代理が小動物の様に縮こまり震える、雇ってから少し立った後から、狐さんはほぼ毎回こんな感じで代理を虐めるのである。

 私の今日の収入は0だ!少し悲しくなってきた…不定期だけど収入はあるから…うん…

「それでは引き上げますよご主人様」

「はい」

 引きずられながら屋敷に帰った。


「狐さん店長代理に厳しいよね、私のいない所で何か有ったの?」

「有ったというか無かったというか…昔の事を思い出したというか…ご主人様もその場にいたというか…」

 どうにも要領を得ない。

「まあちょっとした嫉妬などです、お気になさらないように」

「そう」

 狐さんを抱えて甘やかすと少し悪くなっていた機嫌が良くなり、何か勝ち誇ったような顔をしていた。


「皇帝、もう店長とその妻は居なくなりましたよ」

「いつまで震えて居るんですか、着替えて夕食を食べに行きますよ」

「う…うむ…立ち上がるから少し手を貸してくれ…」

「しかし皇帝、何やったら毎回毎回あそこまで圧力をかけられるんですか?」

「身に覚えがないんだよね…以前の既成事実を迫った事とは違うような気がする…」

「難儀だねぇ、原因がわからないんじゃ助けようもない、でもこっちに被害が来ないならいいや」

「ですね」

「酷いな!それでも私の親友か!?」

「もちろん」

「今でも親友のつもりですよ?」

「ぐぎぎぎ…まあいい、いつかきっとお前たちもこういう目に合うはずさっ!」

「その根拠は何所から…」

「女の勘!」

「はいはい、もうこの話は此処までにして着替えて夕食を食べに行きましょうね。

今日は魚尽くしだそうですよ、領主殿が今日は魚介を卸して貰えたと言ってました」

「まじで!?あのお魚美味しんだよねー、海鮮丼とイクラ丼どっちも捨てがたい…」

「私は海鮮丼と貝の味噌汁ですね」

「私は刺身定食にお吸い物、後は貝柱の醤油バター焼き」

「ぬぬぬ…悩む…」

「では皇帝はこちらでずっと悩んでいてください、私達は無くなる前に注文に行きますので」

「お先に失礼します」

「ああー!まってー!」


 今日の夕食は魚をメインにムニエルやらフライやら唐揚げやら、刺身に漬けにたたきに、貝も現地で焼いた物を持ち込んである、身は非常に大きいので焼いた後一度取出し砕いて団子にして貝のスープに浮かべてある。

 後はいつも通りに全て山盛りで食べ放題、たまに翌日悲鳴が聞こえてきてメイド達に拉致されるがちゃんと運動には付き合ってるので我慢してほしい。

 八つ当たりの場合は狐さんからの説教が待っているけど。

 それでも八つ当たりをしてしまうのが乙女心と言う物である、食べ過ぎた自分が原因と分かっていてもつい…ね…?

 主食副菜汁物とバランスよく食べる者、丼にして主食をひたすらかき込み汁物で流し込む者、アルコールを片手に酒食を一切食べない者と大まかに分かれる。

 大体悲鳴を上げるのが主食をかき込んでいるメイド達…美味しいからって丼を5杯も食べちゃあそりゃ悲鳴も上がるよ…

 フライ丼に始まり海鮮丼いくら丼漬け丼、禁じ手の刺身漬けいくら全部乗せマヨ醤油丼、どう見ても食べ過ぎである。


 翌日悲鳴が上がりダイエットに付き合わされた、八つ当たりをしてきたメイド達は狐さんに連行されていった。

 ダイエット中のメイドは狐さん直々に食事制限が言い渡されるので夕食時はおとなしくバランス良く食事を取る、一部毎日食い倒れ状態になっても何も変わらない三姉妹やニールやティア達を少し恨みがましく見つめながら。


「なぜ三姉妹やニール様ティア様は私達以上に食べて太らないのか…」

「三姉妹は毎日の運動量が私達ではついて行けないレベルだからでは…?」

「ニール様とティア様も三姉妹と負けず劣らずの運動量…」

「くっ…どうにか太らない方法は無い物か…」

「ルシフ様やテレサも三姉妹と遊んでいるだけに見えるのに同じ量食べて太らない…」

「あの二人はちょっと不公平、いくら食べても全く体系が変わらないタイプ…」

 ダイエットに追い込まれたメイドは大抵こんな会話を毎回している。

 いくら食べても太る気配がない三姉妹やニール達が羨ましいようだ、でも太らない理由も分かっているので自分が悪いともわかっている。

 ルシフやテレサの場合はただ三姉妹に付き合って遊んでいるので三姉妹同様運動量が凄いのである。

 そして遊んでいるだけに見えて自分たちではついて行けないことも理解している、しかしむなしさをぶつける相手が欲しい。

 その矛先は最終的に…

「毎日毎日いくら食べても飽きないしいくらでも食べれる物を用意するご主人様が悪い!」

「そうだそうだ!」

 このように私に向いて飛んでくる…

 そしてダイエットに付き合うことになる。

 なお一日のダイエットで元に戻る以上このメイド達の運動量も大概である。

 そんなメイド達につき合わされ一日中走ることになった。


「今日は久しぶりに宝石店!」

 本来であれば大体月に1回か2回ほどなので言うほど久しぶりでもないが、メイド達の食い倒れからによるダイエットのコンボを連続で受けたので3ヵ月ぶりの来訪になった。

 狐さんを伴い宝石店に入ると…

「目が痛い…」

「なんともまあ…少し悪趣味な…」

 壁や天井は金や銀で埋め尽くされ床は磨き上げられた大理石、床に傷がついてはいけないと土足禁止の立札。

 シャンデリアも以前より豪華にガラスでできた物からダイヤで出来た物に変わっていた。

「あ、店長、今回は遅かったですね?」

 服装は以前と変わらないが使われている素材が段違いである。

「うん、まあ…一旦置いておこう…宝石店の方に行こうか…」

「宝石店は移転しましたので案内いたしますね」

 少し来ないうちに移転したらしい、私の店だったんだけど…

 元宝石店の敷地を抜け少し歩く、お土産屋さんの隣にちょこんと宝石店があった、店員はまだ仲居さんがやってた。

「うん、言いたいことが一杯あるから一つづつ解決して行こう」

「?」

 店長代理は何も気づいていない。

「まず最初に、旅館の隣にある土地は私の所有してる土地、宝石店も私の店。

なんでそれがこんな所に?」

「信徒たちが訪れるようになって以降宝石店の利用者は0、あるだけ場所を埋めるので邪魔という判断により新しく土地を買い移転しました」

 あっはい。

「次に、あの悪趣味になった内部は一体?目が痛かったんだけど」

「お布施を使いきるために方々に依頼、発注した所ああいった形になりました。

信徒たちにはより神々しくなったと評判でお布施も以前より増えています。

宝石店にあった宝石も流用してあります」

 あっはい。

「服の素材も以前より豪華な物になってるね、それと渡したビジネススーツは?」

「今着ているドレスの素材は一反白金貨1枚の物ですね、これ一着で街一つ余裕で買えるかと。

ビジネススーツはそちらの仲居さんに貸与してあります」

 あっはい。

「最後に、本業の宝石店は?」

「さぁ…移転する以前から見ていませんので売り上げが0のままという報告しか」

 そりゃね、移転するだけ移転して商品が無いんだもん、ケースの中には非売品のアナトとタニアの彫像しかない。

「とりあえずこれだけはいわせてね。

飾りに商品を全部流用して商品の無くなった店なんて売上が0のままなのは当然でしょ…」

「あぁ!道理で!土地代と維持費だけで赤字続きだったからそろそろ潰そうと思ってたんですよ」

 おお…もう…この怒りをどこにぶつけたらいいのか…

「はぁ…仕方ない…宝石店はもう潰そうか…狐さん手続きお願い」

「わかりました、10分くらい後には撤去されると思いますので、店に残っている物の回収をお願いします」

 狐さんが女将さんの所へ手続きに行ったので宝石店の撤収作業を始めた。

 代理は店員ABに呼ばれ元宝石店だった場所に戻っていった。


「手続きが終わりました、立ち退き命令も出すことができますが如何致しましょう?」

「次回来る時までは放置で、変わらない様だったら立ち退き命令からの教育で…」

「ではそのように、先方には使いを出しておきますね」

 仲居さんからビジネススーツを回収し店番のお礼を渡して屋敷に引き上げた。


「今日も平和だなぁ」

 宝石店を潰し宝石を捌けなくなったので次はどうやって処分していくかを考えつつ平和を享受。

 まあまた出店するけど…地味に値結婚とか婚約とかの記念で注文があったので受けていた分は全てこなした、注文した人の名前と住んでいる場所、希望するデザインまで全て控えていた仲居さん有能。

 決まらない場合こういうのはどうでしょうとデザインを開示していたらしい、仲居さんのセンスが結構高いな…

 作った物は全て発送を終え全て届いたようだ、なので後は先方に出した使いの返答を待つのみ。


「先日出しておいた使いが返事を持って帰りました、やるなら協力をすると、恥をかかせてくれた分念入りにやるそうです」

「じゃあ迎えに行こうか、その後現地に直接行こう」

「ルシフも連れて行きますか?」

「そだね、そうしようか」

 ルシフを叩き起こし、使いを出した先方を迎えに行き、元宝石店へと向かった。


「うーん、これは確かに趣味が悪いな…」

「ははは、目が痛い…消していい?」

「駄目です、こんなになっていてもご主人様の所有物です」

 建物に入り会話していると店長代理が寄ってくる。

「店長、何か忘れ物でも?それとこちらの御二方は?」

「ははは、私はこいつとちょっと縁があるだけだよ、狐の方が因縁あるんじゃない?

それと私はご主人様の護衛」

「私はちょっと本業を忘れて副業に勤しんで本業を潰した身内がいると聞いてね、盛大に恥をかかせてくれたからそのお礼の説教に」

「信徒達の中にお店を潰してしまった人が居るのですか?

金色の狼人族の信徒は見受けなかったと思いますが…」

「いやいや、目の前にいるじゃない、同じ金色の人が」

「ははは、まあここまで薄まってるとどうしてもね」

「一体何のお話で?」

「絵画とかはもう残ってないんだっけ?」

「残っていないようですね、あったとしていてももう国も有りませんので消失しているかと」

「えぇ…国まで潰したの?」

「国は私が潰したのではありません、豚が国宝欲しさに野盗まがいの傭兵や他国の兵を率いてきたので国民すべてを大陸外に逃がした結果消えただけです」

「まあそれなら国の事はいいか、しかしあの贋作がまだ国宝として扱われてたの?」

「あれは贋作ではなく本物のはずでは?それに国宝は一般には公開してないはずですが…?」

「ははは、本物はこいつが持ち逃げしてるから、今も部屋に飾ってるんじゃない?」

「うっさい、いいじゃん、せっかくご主人様が私にって作ってくれた物なんだから」

「?」

 店長代理は放しについて行けずに少し混乱しているようだった。

「あとあれ、あの贋物ちゃんと鑑定したら偽物だってわかったはずだよ、年代だけは本物だけど、年代だけで本物って判断した?」

「調査報告では何度鑑定しても年代は一致しており本物の宝石であると…」

「あちゃー…あれの本物ってね、宝石ではないんだよ、この部屋にある彫像と同じかな?見た目は宝石にしか見えないけどまったく別の何か。

作った本人ですら該当するものがないから宝石とか石としか言わないけど。

普通に鑑定して一文でも読み取れたら優秀な位の物質だよ」

「それって以前店で売っていた豆粒位の球体と同じですか?」

「あれよりもっとすごいやつ、ここにいる人たちだとご主人様と狐とルシフしか読み解けないんじゃない?

私でも半分も読めない、普通の人なら宝石で出来た彫像としか認識できなくされている。

もし不幸にも一文でも読み取れてしまったら脳が焼き切れるんじゃないかな?」

 そんな危険な物を作った覚えはありません!現に店員Aたちは無事だった。

「それで、そんな事を知っているあなたは何所の誰なのですか?」

「んー、まだわかんないか、では自己紹介を。

初代皇帝のアリシアです、以後お見知りおきを」

「は?初代皇帝は数千年前に没したはずでは…?」

「誰も死んだとは言って無いでしょ、夜逃げしたから城からいなくはなったけど。

ちょーっとやらかしちゃって外にいられなくなったんだよね、あははー」

「え?え?」

「こいつご主人様が好きすぎて料理してるところに飛びついてさー、ご主人様が指切っちゃったんだよね。

それでその時慌ててご主人様の指を加えて血を飲んだわけ」

「あの時の事は何一つ後悔していません、頻繁には会う事は出来ませんが、以前と何も変わり合いなく付き合いがありますし、まあそれは置いておいて。

今代のアリシア、我がご主人様の御店を潰して恥をかかせてくれた責任はどう取るお積りで?」

「は…?え…?」

 店長代理は混乱している、まあ初代がまだ生きてて目の前にいるもんなぁ…後でアリシアの尻尾を久し振りに手入れしよっと、ちょっとパサついててせっかくの綺麗な尻尾がもったいないことに。

「宝石店で雇っていたのはアリシア直系の子孫という事でお情けで雇っていたのですが、善意から始まった事とは言えご主人様の御店を閉店にまで持ち込んでしまったので…

これはもうお説教をするしかないですねと、そう思いアリシアを連れてまいりました」

「え?私の親族に狼人族がいたという記録も初代が狼人族だったという記録も無いのですが…?」

「ああ、見た目狼人族じゃないのは狐に私の血肉を使ってもらって娘を普通の人という体で複製させたから、後はその娘に初代は人だったという記録を残させておしまい。

この見た目って結構争いの元になるんよ、銀狼と同じで金狼って見た目が良いから自分の物にするために争いが絶えなかった時代もあったし」

「でも私は普通の人族ですよ?髪の色が同じなだけで人違いでは?」

「と言うわけではい、これ飲んで、害は一切ないし、飲めば肉体があるべき姿に戻るだけだから」

「そんな怪しい物を何故私が…」

 飲みそうになかったのでルシフが羽交い絞めにしてアリシアが代理の口を無理有りあげて薬を突っ込んでいた。

 信徒たちがなんだなんだとみてくるがお構いなしである、店員ABは他人の振りをしていた、君達も後で説教がマッテルヨ?ウン、ゴセンゾサマモイッショダヨ?


「がふっ!はっはっ…!うぁっ!」

 薬を飲んだ店長代理が倒れ込み咳込み息を荒げ悶える。

「が…害はない…はずでは…?…っ!」

 うん、単に体が急激に変化しているだけであって元に戻ってしまえば肉体は元に戻る。

 流石に店員ABが駆け寄り心配するがABにも容赦なく薬を投与、信徒達ドン引きである。

「んー、薄まってるとは言え皆直系だから、これで濃くなるし大丈夫だとは思うんだけど、狐分量合ってる?」

「それほど薄まっていたという事ではないですか?」

 三人の身体から血が噴き出し、着ていた高価なドレスが血に染まる、信徒が悲鳴を上げ逃げだすか神に祈りを捧げはじめる。

 そんな様子を見つつ合流してきた2人を混ぜ談義。

「それで、元に戻るのにはあとどれくらい?」

「後2分くらいではないでしょうか?」

「そうか、ではお茶でも飲みながら待つとしよう」

「終わった後は各自分かっていますね?」

「わかってるよ、ご主人様の店を潰したことの反省とお説教だな」

「はい」

 お茶とお茶菓子を摘まみつつ経過を待つ、女将には話を通してあるので衛兵も来ない。

 お茶を飲んでいる内に周りに飛び散っていた血が霧散し、血に染まっていたドレスも元通りになる。

 ただ代理達の姿は違っていた。

「うんうん、流石は私の血だ、余分な物を追い出してしまえばよく似ているじゃないか」

 何を言っているんだと言った顔で見てくる代理に鏡を渡すとビックリしていた。

 うん、中々に綺麗な金色の耳と尻尾の狼人族である、初代共々後で手入れしよう。

「こっちも仕上がったね」

「こちらも終わった」

 店員ABは犬耳と尻尾が生えていた、代理と同じく手入れも何もされてないのでぼさぼさ、もう皆纏めてだなこれは…


「それで…この姿は一体どういう事で?」

「んー?それが君たちの本来の姿かな?

人の国を治めるにあたって狼人族や犬人族が上に立つってのはあまり宜しくなかったのさ。

加えて私は金狼族でね、ご主人様達に拾われるまでは人族に追われていたんだよ。

そんなのが上に立てば欲を出した人族が取る行動は一つ、奪い取るために戦争やら何やらだね。

それでも国を管理しないわけにはいかないから狐にお願いして耳と尻尾のない複製体を妹として作って貰った。

その後攻めてきていた人族を一人残さず根絶やしにして金狼族がいたという記録も抹消し、妹に王位を渡し夜逃げ、後ご主人様に貰った物を残していくのもあれだから持って行った。

それが私達だね、君たちはその複製体の子孫、流れてる値は私達の物だから血筋的には先祖になるのかな?」

 皆でテーブルを囲みお茶を飲みつつ会話中、信徒は遠巻きに祈りながら見ている。

「この姿に戻した意味は?反省してもらうためと、国がもう無いなら戻して大丈夫だし、狙われるにしてもご主人様の所に放り込んじゃえば大丈夫と」

「ご主人様の屋敷は駆け込み寺か何かですか?」

「えー、似たようなものじゃない?少し前に保護したテレサちゃんとかフローレンスちゃんも屋敷に招いてなかったら危なかったでしょ?」

「いえ、あの二人は別に?あの二人なら一人で一国を敵に回しても一日で国を消滅させれますよ?」

「えぇ…銀狼族ってそんなんだっけ…?」

 フローレンスは言わずもがな、屋敷に来たばかりの測定で破壊力は満点、テレサも成績は悪くない。

 他の測定もフローレンスはほぼ満点、テレサは平均以上、聖女って肉体派なのかね?

「あなたが貧弱なのでは?何時も何時もご主人様にベッタリで鍛えることもせず、一時も離れる事が有りませんでしたし」

「あー、それを言うなら狐だってそうじゃん、人が良い雰囲気になると毎回横から飛び込んできてさぁ」

 二人で話し始めたので置いてけぼりになる店長代理とAB、他はまた始まったかという感じでお茶を飲んでいた。


「この話は切りが無いのでここでやめておきましょう、それに賭けに勝ったのは私で負けたのはあなたです、これは揺るぎのない事実です」

「くっ、あの勝負狐は絶対に私が負けるの知ってて持ちかけた癖に…」

「なんとでも言いなさい、気が付かなかったあなたが悪いのです」

「まあいい、この恨みは子孫への説教で晴らすとしよう、今代のアリシア、マリン、ロッテ、今から説教するから覚悟するように」

 三人がビクッっとして顔を青くしていた。

 その後三人は何処かへ連れ去られしばらく帰ってこなかった。

 後名前が同じで紛らわしいからと強制的に改名されていた。


「ではこちらも作業を開始しましょうか」

「だねー、いい加減目が痛いよこれ」

 どこもかしこも光を反射し輝きすぎて目が痛い、なので信徒を追い出し作業を開始する。

「まずは彫像の回収からお願いします、壁や天井、シャンデリアなどはその後お願いします」

 支持された順に収納していく、壁も天井も元の材質の物が出てきて目に優しくなる。

「ルシフ、木材の準備は?」

「できてるよー、後立札も作りなおしておいた」

「よろしい、では床のタイルを剥がしで板張りにするように」

 どんどん内部を改装していく、狐さんが指示を飛ばし私が収納、ルシフが内装を変える。

 内装工事が終われば次は机と椅子を設置、光源は明る過ぎず暗すぎずの物を。

 最後に立札という名のメニューボードを設置、後おまけで自動で快適にしてくれる家具も。

 説教が終わる頃には改装終了、立派な食事処が出来ていた。


「あれ…信徒達は…?女神様達の彫像は…?」

「今日から此処は食事処です、以前から女将に打診していた旅館にいる料理人の料理を提供する場ですね。

貴方達には給仕をして頂きます、なお今後一切給料はありません、無償奉仕です。

後逃げようとしても無駄ですからね?どこへ逃げようとすぐに発見し連れ戻すことができますし、逃げるたびにきついお説教が待っていると思ってください。

衣食住だけは保証しますので頑張るように」

 三人はこの世の終わりみたいな顔をしていた。

「今の状況を如何にかする方法はありますか…?」

「有るには有ります、ですがきついですよ?」

「お願いします!きつくても頑張りますから!」

「では道を二つ、今後ご主人様の意向に反しない様絶対の忠誠を誓う。

もう一つはアリシア達の元で下働きですね、こちらはアリシア達次第ですが200年もすれば許してもらえるでしょう」

「まあ給料は出すけどその間休みは一切ないな、遊びに行く暇なんて与えんぞ」

「ご主人様に忠誠を誓います、ですのでなにとぞ御給金0とお休みなしは勘弁してください」

 綺麗な土下座を三人が決めた。

「わかりました、ではこちらにサインを」

 お説教で精神が参って考えることを止めているのか、書いてある分をよく読まずにサインしていく。

 あーあー…アリシア達は嬉しそうだからいいけどさぁ…代理達大丈夫か?

「サイン終わりました」

「では今後私の事はメイド長と呼ぶように、まずはこの書類にあるように屋敷で深夜労働ですね、

アリシア達もいますのでまあ大丈夫でしょう」

「はい、頑張らせていただきます!」

 食事処の店員は女将との打ち合わせ通りに仲居さん達が給仕を、料理は魚をもっと食べて貰いたいと腕を磨いていた料理人が作る事になった。

 信徒たちは道を見失ったような感じになったので少しだけ道を指示しておいた、お布施の額の多さが信仰の高さじゃないんやで…


「まずこちらが最初のお仕事ですね、きついですが頑張って下さい」

 狐さんの号令と共に新しく来た三人と付いてきた三人の仕事が始まり、1時間経過した頃。

「ほら、アリサも気合入れて行けよ」

「マリもすぐにへばらない様に」

「ロッティは鍛えていただけあってまだ大丈夫そうだな」

「いや…もう…無理です…!」

「肉体…が…!今までと違う…せいか…感覚が…っ!」

「私の胸は…本来こん…な…大きさだったのか…っ揺れて少し痛い…!」

 仕事という名の激しい運動が行われていた、初代アリシア組はまだまだ余裕があるが、今代は余裕が無く今にも気絶しそうである。

「んー、やっぱりまだまだひよっこだねぇ、これは当分こっちに居座って鍛えないと駄目か?」

「いやぁ…もう無理ですぅ…お願いですから…少し…休ませ…て…ください…アリ…シア様…」

 アリシアはアリサを攻める手を止めず、ロッテやマリン達も手を止めず、早朝まで続いた。


「いやー、いい汗かいた、やっぱご主人様の所は良いなぁ…こっちに引っ越してきたい…」

「同感、あそこも悪くはないんだけどねぇ…」

「適当に後任立ててこっちに越してくる?」

「それは構いませんが問題は起こさないようにしてくださいね?」

「お、いいの?今まで許可しなかったくせに」

「ええ、貴方達の子孫と言う美味しい素材を頂きましたのでこれ位は」

「狐の考えることはよくわかんないや、でもいいってのなら明日にでも家財道具全部持ってくるよ」

「部屋はお好きなところをお使いください」

「あー、これであの退屈な場所から解放かぁ…約8000年…長かったなぁ…それにその間よく血筋が絶えなかったもんだ」

「そこはちゃんとたまに宝石を売りに行って確認はしていましたので、最近乗っ取られていたのはビックリしましたけど」

「あれねぇ…結局乗っ取ったやつは雇った傭兵や周辺諸国への報酬が払えず逃げたんだっけ?」

「白金貨10万枚で売ろうとして失敗したとかなんとか、それでも贋作だけは持ち逃げしたようです」

「ただの色つきガラスを国宝と間違える奴等に乗っ取られるとか…もう少し激しくしておくべきだったか…」

「まあそんな間抜けな話を聞いたら恨みなんてどうでもよくなりましたので、国を潰された上に潰した人がとんでもない節穴の持ち主だったとか、今後しばらくは話のタネに困りませんね」

「賭けにせよ恨みにせよ趣味の悪い狐め…、結局恨みが何だったかは未だにわからんけど」

「料理中のご主人様に飛びついて指を怪我させたでしょう?ご主人様のお気に入りでなければその場で消滅させてましたよ。

8000年程度で済んだことを幸運に思ってください」

「うへぇ…確かにあの時怪我させたけどそれだけで遠くに追いやったのかよ…」

「私だからよかったですけど、ルシフだったら間違いなく消していましたよ」

「それは確かに幸運だったかな…」

「ええ、幸運です、まあご主人様のお気に入りでしたし、当然の結果かもしれませんね」

「ただご主人様との子供は欲しかったなぁ…」

「そこは諦めてください、この屋敷に居る物は全て受け入れています」

「知ってて賭けの内容にしたのは今でもちょっと許せないけどねー」

「それはお互い様です、あの時は別れの前の日に一日中愛して頂いたのでしょう?」

「それはもう、2.3日立ち上がれない位には」

「ならいいではありませんか、それにこれからは毎日ご主人様と会えるのですから」


 アリシア達が引っ越しして来た当日、耳と尻尾が少し荒れていたので皆纏めて手入れ。

 アリシア達は手入れされるのはなれた物、滅多に手入れにしに行く事は出来なかったけどその分時間かけてやってたからなぁ…

 問題はアリサ達…

「ご主人様くすぐったいです」

「そこに櫛入れられると駄目…っ!」

「腰がむずむずする…」

 今までは普通の人として暮らしてきたから立派な耳も尻尾も無かった、それにより初めての感覚に襲われ櫛を入れるたび腰が跳ね上がり、尻尾がぶんぶん振り回される。

 つかんで押さえつけると嬌声を上げる、これもだんだん慣らしていかないと駄目だね…

 せっかく綺麗な金狼が二人仲良く親子のように並んでいるのだから念入りに磨き上げないとね。

「ほらアリサ、力を抜いて、暴れると毛並みが乱れて手入れが終わりませんよ」

 アリシアは我が子の様にアリサの頭を撫でてあやしていた。

 ロッテとマリンも同じように二人を撫でていた。


 ついにこの時が来た!

「と言うわけで今日から君が店長代理だ!」

「精一杯務めさせていただきます」

 以前注文を受けていたデザインのセンスが良かった仲居さんを女将さんと交渉し雇い入れた。

 初日はサンプルと商品を少々並べる、後は全て予約制で仲居さんのデザインした物を次回来た時に作り渡していく。

 取り分も以前と同じ、こっちは在庫の処分が目的なので別に金貨とかはいらない、仲居さんはお小遣いが稼げて万歳。

 土地も今度は旅館の左隣で住んでいる所からも近い、職場まで徒歩1分という最高の立地条件。

 まさに理想の職場、理想の関係!

 暫くすると宝石を取り扱う物の中では知らない者がいない位有名になっていた。

 独立して出ていくなんて言わないよね…?

 ここで働き続けてくれるとの事だった、良かった…

 でも宝石細工以外もデザインしているのは何故なのかな?宝石を糸状にして作れますかだって?作れます、はい作ります。

 君、結構無茶振りする人だったんだね…

 その後製法が謎の宝石なのに柔軟性を兼ね備えたシルクの様な肌触りの謎のドレスが市場に1着流れた、白金貨1000枚で売れた。

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