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崩れる屋敷、荒れる花壇 次の日には直ってる

緑茶を濃く抽出、渋くして砂糖入れて牛乳を入れると美味しいよ

 早朝ベッドを抜け出し、目覚ましに濃い目のお茶をグイッと飲む。

 ふぅ…渋い…濃すぎた…

 何はともあれ目が覚めたので着替えて濃すぎたお茶を収納する。

 あまりにも渋すぎたのでしかめっ面から戻らない…

 扉を開けて貰い調理場で口直しをすることにする。

 部屋から出た時にしかめっ面を見たメイドが何事かと驚いていたが、口の中が大変なことになってるので調理場へ急ぐ。

 メイドが何やら走っていったがそれ所ではない。


 調理場で濃すぎたお茶を取出し温める、ついでに牛乳も温め砂糖を取り出す。

 温めている間に少しでも口の中を如何にかすべく、買い溜めして置いた饅頭を摘まむ。

 しかし味が分からない…温まるまでの一分一秒がすごく長く感じる。

 まだかまだか止まっていると調理場にメイド達が飛び込んでくる。

「ご主人様!何かありましたか!?」

 しかめっ面のままメイドを見たので見られたメイドは少しうろたえる。

「…っ…!」

 口の中が渋くて渋くてうまく喋れない…仕方ないので砂糖を溶かし込むため温めているお茶を指さす。

 するとニールやティア達が…

「このお茶に何か毒物でも…?」

「毒であれば判別が出来ます、少し舐めて確かめてみましょう」

 毒物ではないことを伝えるために首を振るが理解してもらえない、メイド達が判別するためにと温めているお茶に銀のスプーンを入れ、色の変化を確かめるが変化はしない。

 毒物なんて入って無いから当然だが…その後ニールとティアがスプーンを口に含み…

「…っ!……ぁっ!」

「!?…ぅぁっ…!」

 二人の様子が変わりびくっとする周りのメイド達、やはり何か強力な毒物か何かが?と騒ぎ始めると…

 閃光と共に調理場が吹き飛び、その後轟音とともに屋敷が崩れ始めた。


 ぁぁ…調理場が…温めていたお茶と牛乳が…砂糖が…

「ご主人様!お逃げください!」

「こちらへ!早く!」

 メイド達に抱えられ屋敷外へ脱出する、突然の轟音により目覚めたメイド達も手早く窓を割り屋敷の外へ飛び出す。

 脱出に成功した後遠くから崩れる屋敷を眺めていた。

 まだ口の中が渋いし、胃の中までも渋さで支配されている…

「ご主人様、これは一体?」

「っ…!ぁ…!」

 狐さん達も集まり何事かと話し始めるが、まだうまく喋れない。

「これは…」

 狐さんの耳がピクピクっと動き鼻もスンスンと何かを嗅いでいる。

「なるほど、まずは目の前の事から片付けましょうか」

 屋敷があった場所では現在黄金色の龍と黒紫色の龍がのた打ち回り暴れていた。


「ニール様もティア様も完全に正気を失っていますね」

「あの状態では説得はまず無理ですね」

 説得を試みようと出来るだけ近づき様子を見ていたが、完全に正気を失っているようだ。

 見ている間に被害はどんどん広がっていく、農場の方はケレスとクロノアが本気で守ってるな、ようやく機能を取り戻したところだもんね…

「ミネルヴァ達は此処でご主人様を守る様に。

私とルシフはご主人様を元に戻しますので、ニールとティアの鎮圧は各メイド達にお任せします。」

 任されたメイド達の表情が固まった。

 正気を失い、暴れ回り、何かを吐き出すかのように所構わずブレスを出し続けている。

 そんな二人を止めて来いと言われて、では今すぐにと言っていくメイドは居ないだろう。

「一番のりー!」「ぶっ飛ばせー!」「あはははははは!」

 居た、三姉妹が真っ先に突っ込んでいった。

 正気を失ってる二人を攻撃するたびに金属音のような音が響く。

 流石にニールとティアは硬いなぁ…三姉妹の全力で鱗一つ傷がついてないや。

 他のメイド達も三姉妹に続けとニールとティアに向かって行った。


「流石にあの形態のニールとティアは硬いですね」

「だねー、三姉妹の全力で鱗一つ壊せないとか、以前より遥かに硬くなってるねー」

「ご主人様の手入れの賜物でしょう、それより」

 収納している物を漁りどうにかしようとしていると狐さんがこちらを見てくる。

「ご主人様、あの二人に一体何を飲ませました?」

「…―っ―!」

 しかしいまだにしかめっ面のまま喋れない、こんな時に飲み物のストックがないなんて…

「まだ喋れませんか…」

「―――!!!」

 身振り手振りでどうにかしようとするがどうにも伝わらない…まさにお手上げ。

「んー?ご主人様があの二人に何か盛ったん?」

 盛ってません、あの二人が勘違いしてスプーン一杯口に含んだだけです。

 一刻も早く口の中と意を如何にかしたいので収納を漁り続ける。

 香辛料はいくらでもあるんだけどなぁ…


「あー、花壇に突っ込んだ…追い打ちでブレスも入って…花壇の植物はもう全滅かな…」

「正気は失っていても襲い掛かってくるメイド達には的確に反撃をしていますね、怯んだところに追い打ちも忘れない」

「崩れた屋敷からも所々火の手が上がってますね、蔵書なども全滅でしょうか?」

「ニールとティアも益々ヒートアップしていってるねぇ、農場は大丈夫だろうけど、周辺が焼け野原になるのも時間の問題だねー」

「この調子ではまだまだかかりそうですね、野営の準備でもしましょうか」

 観戦しつつ野営の準備を始める狐さん、時折メイド達が弾き飛ばされて来るが手を貸す気はないようだ。

 収納を漁り続けているとニールとティアが暴れる原因になった物が出てきた。

 狐さん達を手招きして出してみる。

「ニールとティアが飲んだのはこれですか、匂いは…悪くないですね、色も薄く緑色に透き通っている緑茶にしか見えませんが…」

「んー?これ飲んでいいの?」

「いい匂いのお茶ですね」

 ルシフ達が飲もうとしたので止めようとしたが、遅かった。

「…―!!!?!」

 ルシフが倒れた、飲もうとしていたユノーの手が止まる。

「…!!…?!…!!!!」

 狐さんは一口含んだだけで止まったが直ぐに吐きだし、尻尾の毛がブワっと逆立っていた。

「これは…中々凄いですね…」

 眠気覚ましの軽い気付け用に抽出し、香りはいい香りも保ち色も透き通る綺麗な薄緑色を維持した自信作です。

「あの二人はこれを飲んだと…」

 二人は確かめるために口に含んだ上に確かめようとしたので被害が広がった感じである。

「相当強いショックを与えるか、もしくはこのお茶をあの二人に無理やり飲ませて気絶させるかしないと駄目ですね」

 ルシフですら一口で気絶するお茶を湯呑み一杯飲ませれば確実に鎮圧できるだろう。

「エリス、居ますか?」

「こちらに」

 狐さんに呼ばれたエリスが出てくる、鎮圧には参加してないのだろうか?

「ニールとティアは鎮圧できそうですか?」

「今すぐには無理かと、早くても1ヵ月は掛かると思われます」

 狐さんが冷静を装って鎮圧できそうかどうかを聞いているが尻尾の毛は逆立ったままである。

 ルシフはピクリとも動かない、ユノーは逆に興味がわいたのか舐めようとしているので羽交い絞めにしておいた、力では勝てないけど止まってくれた。


 まだ暫く様子を見ることにしたらしいのでお茶は収納した。

 ニールとティアはさらに凶暴さを増し、襲い掛かってくるメイド達だけを振り払っていたのが今は自分から襲いに行っている。

 無差別に襲いかかっているのでたまにニールとティア同士で争っているが…

 争っている間に体勢を立て直そうとしたら今度は二人して襲い掛かってくる、退却しようとすればブレスが飛んでくるのでどうにもならない様子。

 ブレスでどうにかなるようなメイド達は居ないが…直撃するとメイド服が駄目になるからなぁ…

 ニールのブレスが当たった所は鉱石に、ティアのブレスは宝石に、何になるかは当たるまでは分からないが、既に地面は金や銀、ヒヒイロカネやミスリルと言った希少なものまで、木々も七色に輝くダイヤから属性を持った各種宝石など…

 修理代には困らないね。

 そして、そんな元屋敷を見つつも狐さんは野営の準備を終え、逆立った尻尾を直すために手入れを要求してくるので尻尾を手入れする。

 手入れが終わった後は夕食の準備、戦っているメイド達を背景に農場から野菜、加工場から肉を拝借しただ焼いて食べるだけのシンプルな物。

 香辛料だけは沢山あるので調理場がなくなっても味付けは問題なかった、ただ飲み物がないので果物で水分補給。

 その後何とか喋れるようになり渋さも消え始めた頃、狐さんを抱えて就寝。

 ニールとティアに向かって行ったメイド達は戻るに戻れないので一晩中戦い続けてた。

 ルシフは未だに気絶から復活していなかった。


 翌朝狐さんが腕の中ですぅすぅと寝息を立てていたが、このままでは起き上がれないので起こす。

 寝ぼけて首筋に甘噛みをしてくるので頭を撫でつつ目覚めを待つ。

 少ししたつと狐さんが起きたので朝食を用意、ルシフはまだ気絶して突っ伏したままだった。


 朝食を取りつつ屋敷の方を見てみる。

「ニールもティアもまだ傷一つついてないなぁ…」

「この様子ですと今日もまた野営ですね」

 まだ正気に戻らず暴れ続けるニールにティア、何とかしようとするメイド達。

 寝ている間にもブレスを乱射したのか、地面や木々が属性が混ざりあったり濃縮されたり酷いことになっている…

 これ絶対流通させちゃいけないやつ、宝石化した木々を売って修理代にしようとしたがこれもう無理だね…

「流石に一晩も放置しますと面白い物がたくさんできますね」

「メイド長、後であの宝石とか幾つか貰っていい?」

「構いませんよ、ただし絶対に外に持ち出さない事」

 うん、欠片一つでも持ち出したら駄目な奴、扱い間違えると欠片一つでも街一つくらい簡単に消滅するぞ…

「エリス、居ますか?」

「こちらに」

「これをティアとニールの口の中に入れてきてください、それとメイド達にその場を離脱するように通達を」

「わかりました」

 狐さんがエリスに何かボールのようなものを渡し、エリスはその場から消えた。


 エリスがその場から消え一分もたたない内にニールとティアが更に暴れはじめたと思ったらその場に倒れ込んだ。

「狐さん、何を渡したの?」

「お茶を投げやすい様に凍らせて球体にした物です」

 ぁぁ…じわじわ溶けて口の中に渋さが広がり苦しんで、最終的に許容量超えて気絶したか…

「ニールとティアもおとなしくなりましたし、今のうちに回収するものを回収してしまいましょうか」

 鉱石や宝石化した物を全て種類別に分け収納していく、中心に近づくほど危険な物に、離れるほど安全な物になっていた。

 一番離れている所の物は売りに出しても良さそうだな。

 そんな事を考えながら全て収納していった。

 中心地ではニールとティアも人型に戻り真っ裸でだらしなく口を開けて気絶していた。

 ルシフもまだ気絶から覚めていなかった、そんなに辛い?


「それで、このまま気絶から覚めますとまた暴れはじめますが何か治す方法はありますか?」

「砂糖と牛乳があればなんとか…」

「ではケレスに用意させましょう」

 用意してもらった牛乳と砂糖、それと件のお茶を温める。

 お茶1に対し牛乳9、砂糖はお好みの量で混ぜ合わせ完成、気絶しているルシフの口にスプーンでねじ込む。

「はっ!?…何か劇物の様なものを口にしたような気がするんだけど、気のせいだった?

何か口の中が幸せになってるし」

 ルシフが一発で目を覚ます、渋さも残っていないようだ。

「これを二人に飲ませれば気絶から覚めるはず、渋さも残らない」

「わかりました、エリス、お願いします」

 再びエリスを呼びニールとティアの口に突っ込んでいった。


「あれ…私達は何を…それと此処は?」

「んぅ…調理場に入ったところまでは覚えているのですが…何故裸に…」

 気絶から覚め状況把握を始める二人、屋敷は無くなり穴だらけになった周辺を見る。

「襲撃でもありましたか?」

「それよりご主人様は?」

 暴れていた時の記憶は一切ないご様子。

「ニール、ティア、起きましたか」

「メイド長、これは一体?」

「ご主人様は無事ですか!?」

「ご主人様は無事です、それとこれをやったのはあなた達ですよ、こちらに見覚えは?」

 お茶を取り出す狐さん。

「いえ?有りませんが」

「覚えはないのですが…なぜか震えが…」

「わかりました、この件は不問としておきましょう。

それとこちらに服を用意しておきましたので着るように」

 二人に服を渡し、切るのを待った後野営地まで移動。

「ではご主人様、少し質の高い鉱石、または宝石を一つこちらに」

「んー、これかな」

 全属性内包、青白く光りつつも無色透明、羽のように軽くそれでいて硬い。

 加工さえ出来れば価値はとてつもない物になるだろう、が、加工できるのは此処にいるメイド達位なので実際価値は付かないだろう、物としての質は高い。

「それはそれを頂きますね」

 狐さんが渡した宝石を握り込み力を込める、宝石が粉々に砕け、ふっと息を吹きかけると風に乗り飛んでいく。

 それから暫くすると穴だらけだった地面は元に戻り、木々も生えてくる。

「後は屋敷や花壇ですが、少し時間が掛かりそうですね、質も価値も使用した物の方が高いので問題は無いでしょうが。

今日も野営ですね」

 今日も野営することになった。


 二人が正気に戻った翌日、屋敷もすっかり元通り。

 使用した物が物だっただけに以前より少し豪華になっているが、屋敷はたまに壊れるし消し飛んだりするしで安定はしない。

 まあ、消し飛んだもの自体はちゃんと元に戻るので紛失したりすることはないが。

 大雑把に種類分けした物を少し細かく整理する、今にも崩壊を起こしそうな物、安定している物はもちろん、売りに出しても大丈夫なものと分けていく。

 崩壊しそうなものはその場で狐さんとルシフに渡し処分、収納して置けば問題はないがひょっとお外で落としちゃうと大きな湖が出来ちゃう…

 危険物の処理を終えた後は売りに出す物を残し収納の奥で永久保存、安定してるものの一部はユノーが欲しがっていたので一つ渡しておく。

 後は面白そうなのを個人的に使用。

 量が量だけに結構な日数がかかった。


「あー、ご主人様の手入れ気持ちがいい…」

「土埃塗れになっていた角や羽などもすっかりピカピカに…」

 危険物等の処理を優先したため土埃塗れになっていた二人は暫く手入れが出来なかった。

 なので終わった後はピカピカになるまで磨き上げてやった、今ではすっかり元通りの輝きを取り戻している。

 なお二人はこの後狐さんから少しお仕置きが待っている、不問とはしたが他のメイド達が納得しないという理由で…

 まあ鱗2.3枚剥がれるくらいで済むだろうけど、手入れしたばかりのを剥がれるのもなー、元々はお茶を飲むのを止めれなかった私が悪いしなぁと。

 そう考えつつ狐さんのプレゼントに確保して置いたもので狐さんを懐柔することにした。


「と言うわけで狐さんにプレゼント」

 中心地となっていた花壇で確保して置いた宝石化したキツネノボタンを差し出す。

 花がゴールデンオーラ、葉はペリドット、茎はブルートパーズ、中心地にあっただけあって内包する物は危険の一言だが、しっかし安定しているので狐さんやルシフじゃないと崩壊させることは出来ないだろう。

 それを透明度が非常に高い、かつ安定しているクリスタルで覆いキツネノボタンが生えるように加工、かなりの自信作である。

 根の部分が鉱石に食われてなかったら鉢植えにできたんだけどなぁ…

「これを私に?」

 出された物を見た狐さんが尻尾を忙しなく振りはじめる。

「うん、受け取ってほしい」

「こんな素敵なものを…ありがとう御座いますご主人様」

 尻尾を振る勢いが増し、感極まった狐さんが飛びついてくるので抱き留める、落としても問題はないが何とか落とさず狐さんも受け止めた。

 狐さんが落ち着いた後キツネノボタンを部屋に飾り、狐さんの尻尾などの手入れをして過ごした。


 しかしニールとティアの軽いお仕置きは実行された、無力だった私を許してほしい…

 剥がされた次の日には元に戻ってるけど。

 なお剥がされた鱗は粉末にされ狐さんの花壇の肥料になった。

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