馴染むのが早かった二人 狐さんの罠の嵌る二人
いくら特盛いくら丼食べ放題―痛風待ったなし―
ミントテロ発生から1ヶ月、農場はまだ機能を取り戻していなかった。
狐さんが屋敷に迫るミントを消滅させたのはいいのだが…
ミントの生えてたところがほぼ砂地になり、雑草すら生えない状態になっていた。
養分が全て吸い取られほぼ死んでいる状態になった農場、でもミントは生えてきた、どんな生命力だよ…
今も堆肥や腐葉土や魚粉やら、さらに森から持ってきた土も混ぜを繰り返している。
1週間かけ農場の全体の土だった物に混ぜ終えたら暫く置く。
暫し休ませた後、さらに深く掘り混ぜ返す、これをひたすら繰り返す。
「テラ、ノクス、今日は此処までです、続きはまた明日」
「はい、ケレス様」
「わかりました、ケレス様」
ケレスが二人に農場の今日の仕事は終了と伝える。
今はまだ毎日混ぜ返して均一にして行ってる状態なのでさほど時間はかからない。
「お風呂で汚れを落としたら次の所に行くように」
「はい、それでは失礼させていただきます」
「失礼させていただきます」
二人は農場から離れ屋敷へ戻っていった。
ケレスとクロノア達も今の農場ではできることが無いので引き上げる。
とりあえず汚れを落とすため皆について行きお風呂に入る事にする。
テラとノクスは以前は一緒に入ると顔を真っ赤にしていたが、今ではもうすっかり慣れている。
それ所か髪を洗わせようとくっ付いておねだりしてくる。
二人の髪かなり長いもんね…立ってる状態で膝裏まで届きそうなくらい長いし…
狐さんの仕掛けた罠に引っかかるまでは眷属にした侍女に洗わせていたそうだが、ここでは洗ってくれる人がいるわけでもなし。
かといって一人で洗うには長すぎる、でも髪を切りたくない、ならどうにかして洗ってもらおう。
と言う流れでおねだりされて洗うことになった。
来た頃はお風呂に入る時は肌を少しでも隠そうとしていたが、今では洗うまでくっついて離れない。
羞恥心より髪を取りおねだりを始めた結果すぐに慣れて羞恥がなくなってしまったらしい。
来た頃よりも綺麗になった髪を丁寧に洗っていく、頭皮を洗った後に髪の毛一本一本が絡まり引っかからない様丁寧に丁寧に、櫛も入れ梳くように髪の先まで洗う。
その後泡を流したらトリートメントやら色々…これをテラとノクスの二人分。
二人の髪を洗い終わる頃には手早くやっても1時間以上かかる、二人の髪を一緒に洗い、洗い終わったら髪を乾かし、服を着させる、髪を服から引っ張り出し、髪を整える。
髪型は農場にいる間はアップスタイル、農場から戻った後は気分次第で弄らせてもらえるからそこは楽しい。
あまり弄りすぎて髪を傷めては元も子もないので狐さんの整髪剤等で髪質を保護。
後はその日の気分で髪型を決める、美女と言える見た目のテラはツインテールにして長めのリボンで結び可愛い方向へ。
幼さの残るノクスはハーフアップに。
うん、これでいいだろう。
テラのブリュネットもノクスのプラチナブロンドも輝いていて今日も綺麗。
二人の髪で遊んだ後は温泉街に行き野菜を仕入れる。
代金は魚介類の下処理を終えたもので支払う。
以前から降ろしてほしいと言っていたのでちょうどいい機会だろう。
農場が元に戻ったら仕入れる必要はなくなるけど…
今はもう領主だけど女将さんと少し話をした後、饅頭や温泉卵なども買い、屋敷に帰る。
野菜や温泉卵を調理場の冷蔵ボックスに入れた後、お茶の時間まで屋敷内をぶらつく。
整えられた髪を指先で弄りながら二人で話してるテラとノクスに遭遇。
「あらご主人様お帰りでしたか」
「お帰りご主人様」
二人の顔が少し赤いがなんだろうか…
「ご主人様」
「なんでしょう?」
「私達が此処に来てからはや一ヶ月…そろそろあれが欲しいのですが…」
「私もあれが欲しい…」
あれとはなんだろうか、あれではわからん…
「あれ?」
「はい、あれを頂きたいです」
「一ヶ月ずーっとあれを我慢してる」
「あれではわからないんだが…」
「きつ…メイド長の創った海で捕れる魚などです」
「ここに来てからまだ一度も食べてない」
魚は捕ってるけど全部野菜と交換してたからなぁ…
「あー…じゃあ今から捕ってくるか」
「お願いします!」
「早くお魚!」
急かされるのでルシフを呼んで海へ行き何種類か捌いて調理場に運んでおいた。
「あの二人はどうですか?」
「テラとノクスなら馴染んでは来てるかな。
皆と仲良くお風呂に入ったりもしてるし、ちゃんとケレスのいう事も聞いてるよ」
「それならこちらからいう事はありませんね。
あまり馴染めていない様でしたら少し荒っぽい事をすることになりましたし」
うーん、荒っぽい事の内容を聞くのが怖い…聴かなかった事にしよう。
「思っているようなものではありませんよ、馴染むまでメイド達と一緒に寝てもらうだけです」
ああ、まあそれなら…
「まあ、ご主人様の寝室で、ですけど」
ただのショック療法みたいなものだった。
テラとノクスのリクエストにより夕食は一ヶ月ぶりの魚介。
烏賊と蛸の乾物はあるんだけどね…
温泉街には卸してたけどお刺身とか焼いたのも食べたいのでいろいろ作る。
まずは柵をどんどん切り身にし、種類ごとに分け器に盛る、イクラの醤油漬けも大きめのボウルに入れ各テーブルにご自由にお取りくださいと言わんばかりに置いていく。
寿司飯も大量に作り、海鮮丼だろうがイクラ丼だろうがもう好きなだけお食べ下さいと言う手抜き状態。
漬け丼が欲しいメイドの為に各種漬けも作ってある、汁物に普通のホタテくらいの大きさのアサリの味噌汁、焼き物は無し、ただ七輪は置いておく。
夕食の時間までひたすらご飯を炊き寿司飯にしながら柵を切り続けた。
「これがあの海で捕れた魚…美味しすぎます…」
「手が止まらない…お酒も止まらない…」
ようやく念願かなったテラとノクスは泣きながらアルコールを片手に刺身とイクラを摘まんでいた。
他のメイド達も一カ月ぶりの魚だけあって各種組み合わせた海鮮丼や単品の丼、イクラを山盛りにしたイクラ丼、七輪で炙って炙り丼、皆思い思いの丼を作り食べていく。
何が一番人気という事も無く、全部綺麗になくなった。
「もう無くなってしまいました…」
「まだ少し足りない…」
刺身と漬けとイクラのみを食していたから食べ足りないらしい、調理場に残っているのは私の分なので出せない、のだが…泣きそうになっているのでこれが最後の分と言って渡す。
テラとノクスはぱあっと明るい表情になり一枚一枚味わって食べていた。
そして、魚の消えた海鮮丼はただの酢飯でしかなく、そのまま食べるのは寂しいので大葉や野菜を刻んで少し味付けをし、混ぜてちらし寿司にして食べた。
夕食後皆が食休みをしている間にテーブルも拭き、食器を回収していく。
テーブルを拭き終え、食器を洗っているとテラとノクスが調理場に入ってきた。
「ご主人様…その…ありがとう」
「ご主人様の分まで貰ってごめんね…?」
二人の為だからと返すと感極まったのか飛びついてきた。
手に持っていた食器を落としそうになった、危ない…
洗い物中だから離れるように言い聞かせるが離れる気はないようだ。
左右から抱きつかれたまま何とか洗い物は終わったが、抱きしめる力がだんだん強くなってきている。
顔を押しつけ匂いも嗅いでるようで、心なしか息も荒くなってきている。
身の危険を感じるが抵抗できる力があるわけもなく、お風呂場に連行されていった。
お風呂場に連行された後は午前中と同じく二人の髪を手入れ、後は軽くボードゲームで遊んだり読書をしたり談笑した後に寝るだけなので、髪はリボンで軽く束ねるだけにしておく。
お風呂から上がった後二人は狐さんの所に向かって行った。
その後戻ってくることは無く、寝るまでボードゲームを遊んでいたメイド達に混ざり一緒に遊んだ。
メイド達が解散し始めた頃、寝室に戻る。
明日も農場を弄って二人の髪を整えて野菜を仕入れに…そう考えながら寝室に向かうと…
「お待ちしてましたご主人様」
「ご主人様、中へどうぞ」
テラとノクスは寝室の前で待っていた、二人に誘導され中に入ると。
「ご主人様、今日は皆一緒」
「久々に楽しませていただきますわ」
「ははは、お邪魔してるよ」
「農場も後は時間がたてば元通りですので」
「暫くは私達が行かなくても大丈夫」
ミネルヴァにディアナにルシフにケレスにクロノアに…喋ってないけど顔真っ赤にしたヴェスティアやウルカン、ユノーもいるなぁ…
「先月の褒美をまだ与えていませんでしたので、農場が落ち着いた今がちょうどよいかと思いまして」
狐さんがスッと出てきた、心臓に悪いからやめてほしい。
「温泉街での仕入れもエリス達に任せてあるので問題はありません。
明日からの予定は私も含めこの場にいる者は全て空けてありますので、身体を気遣う必要もありません」
そういうと狐さんが小瓶を出してくる、備え付けられている机の上にはすでに空になった小瓶が並んでいる。
「ご主人様もたまには本気を出してくださいね?」
狐さんがクスクスと笑い軽く挑発してくるので小瓶の中の液体を飲み干す。
テラとノクスも含め11人、終わりの見えそうにない戦いが始まった…
ゆっくり楽しむのではなく本気を出したので半月ほどで決着。
久々に狐さんの事をコノハと呼んでやる気を出させて気絶するまでやってやった。
テラとノクスも頑張るには頑張ったが、まだまだこのメンバーについてくるのは無理そうだった。
皆が気絶状態から復帰するのを待ってお風呂で汗と汚れを流し、エリスから報告を聞く。
農場は機能が元に戻ったので今からでも野菜や果物の種を植えて明日には収穫可能。
これにより明日より温泉街との野菜の取引は終了、しかし魚の卸しは続けるとの事。
大体の事を聞いた後はケレスが各種種を創りエリスに渡し後の事を任せた。
この後二日は皆の髪や尻尾や羽を手入れしつつゆったりと過ごすつもりなので、報告を聞きに来ていた狐さんとケレスを連れ皆の待つ寝室に戻った。
「テラとノクスの御付だった侍女を呼び戻す話でしたが、テラとノクスのお願いにより無しとなりました」
「なぜに」
「侍女が髪を手入れしていた時より髪が綺麗になっているからだそうです、もうご主人様以外に手入れを任せたくないそうです」
うーん、テラとノクスがそういうのなら仕方がないか…
「それともう一つ、毎日ご主人様がテラとノクスの髪を手入れしているので、一部のメイドから私達も毎日して欲しいと苦情が来ています」
「テラとノクスの二人だけでも1時間近くかかるんだけど…」
「それは理解しております、ですので、解決するまではご主人様はお風呂が仕事場ですね。
侍女の件は無しとはなりましたが、髪の手入れだけで一日を過ごされますと今度はまた別のメイド達から苦情が来ますので、髪の手入れを教えるために呼んであります。
明日より手入れを教えてあげてください、普段は侍女に任せ、たまにご主人様が手入れをするのであれば今までと変わらなくなりますので」
「呼んだ侍女は?」
「まずはその身で体験してもらうのがよろしいかと思い、既にお風呂場で待機させております」
「んー、わかった、それじゃあお風呂場に行こうか」
お風呂場に行き収納していた道具を取出し、呼び出された元御付の侍女の髪を手入れしていくのであった。
「あなた達そんなに綺麗だったの…?」
「これは凄い…」
「ご主人様凄いですよね」
「髪の手入れなどには気を使っていたのですが…」
「以前は輝いていたように見えたのも今思えば少しくすんでいたように思うわ…」
「手を通しでも何所も引っかかることなく、櫛もスッと通りますし、文字通り次元が違いました」
「ご主人様にその手入れの方法を教わり、道具も一式頂きましたので、ご主人様の命によりまた明日より手入れをさせていただきますね、テラ様、ノクス様」
「ご主人様の命なら仕方ないね、また明日よりお願いするよ」
「はい、お任せ下さい」
手入れを教え道具も一式プレゼントした侍女二人はその後問題も無くテラとノクスの髪の手入れをしている。
私がしたのと変わらないように見えるので使っている物が悪かったのかな…?
それでもたまに手入れをして欲しそうにしてくるので、その時は侍女の髪も一緒に手入れをしている。
侍女二人の髪も羽も今では綺麗な濡烏を誇らしげにしていた。
なお侍女二人もやはり狐さんの手により呼び出された初日に寝室に投げ込まれた。
手を出した以上は責任を持って二人の面倒も見る。
ルシアとルシエは双子で見た目から身長から何まで全て同じだった。
来た頃の三姉妹と同じく見分けが付かないので暫くは名札かなぁ…
もしくは今の三姉妹みたいに髪型を変えて見分けをつける方法にしようかな…




