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激突!勇者対魔王! しかし魔王からは逃げられなかった

クーラーを入れたほうがいいような入れなくていいようなそんな気温2辛

 お仕事のない昼下がりの午後、休養日だったメイド達に捕まり只管お菓子を作らされていた。

「ご主人様、次は稲荷寿司をお願いします」

 などと時折お菓子ではないものを注文してくる狐さんを「はいはい後でね」と軽くいなしつつ無心でケーキやらプリン、ついでにクッキーを作る。

 出来上がったケーキのは生クリームをこれでもかと使いデコレート。

 ついでに作ったクッキーは3枚づつ袋に入れてラッピング、これは後で休憩時間に来るメイド達に渡す用。

 問題は出来上がったケーキとプリン、どちらもとにかく大きい…

 ケーキは30号、もう切りよく直径1メートルにしてやろうかとも思ったが指定が30号なので我慢、多少の誤差は見逃されるが指定サイズ通りかどうかを巻尺使ってまで調べるのってどうなのよ。

 見逃せない位の差だった場合?考えるのも恐ろしい…

 プリンは気を楽にして作れるんだけどねぇ、調理場にある一番大きいボウルいっぱいに作るだけなので量や大きさを考える必要はない。

 でもね、屋敷にいる人数に合わせて調理器具とかも大きいものに変わっていくわけで…ね?今じゃボウルも立派になって直径1メートルの立派なものに…

 当然ながらこんな大きくて重いプリンを器にいれたら自重で崩れてしまうのでボウルに入れたまま皆でつつく。

 ケーキにせよプリンにせよ尋常ではない大きさのものが美味しく頂かれて消え去っていくのは見ていて楽しいが、どこに消えていってるんだろうね?でも体型が変わらない不思議。

「ご主人様、早く稲荷寿司をお願いします」

 そろそろ狐さんの我慢も限界らしいので、休養日のメイド達に断りを入れラッピングして置いたクッキーを渡し、いつも通りに狐さんの部屋に行き餌付けをするのであった。


 狐さんが満足するまで餌付けをした後再び調理場へ戻る。

 満足しきった顔で突っ伏しているメイド達、そして綺麗になくなっている巨大だったケーキやプリン。

 そろそろ夕食の仕込みの為に料理番が集まる時間帯なので邪魔にならないよう片づけを始める。

 まずは突っ伏したメイド達を空いている部屋に連れて行き寝かせる、その後使った調理器具や食器を洗い清掃して完了。

 これで今日はもう夜まではのんびり出来るなーと考えつつ突っ伏していたメイド達の様子を見るためメイド達を寝かせた部屋に入る。

 皆満足そうな顔をして寝ていらっしゃる…無茶な注文をしてくるのはアレだけど皆かわいいから断り切れないんだよなー、と言いながら寝ているメイド達の頬をつんつんつつく不審者一人。

 

 大 満 足 !

 つつくとうにゃうにゃ言うのがかわいかったから勢いで尻尾をサラッサラのフワッフワになるまで手入れしてしまった。

 途中何人か起きていたような気がするがきっと気のせいだろう、尻尾を巻きつけてきて逃げれないようにしようとしたのもキットキノセイ。


 部屋から出てニヤニヤしながら歩いているとかすかな振動と共に遠くから地響きが聞こえてきた。

 収まったかと思えば花火のような炸裂音や木々が折れる音を立てながらだんだんと近づいてくる。

 なんだなんだ?と窓から外を見ていると何やら森の木がどんどん倒れていくのが見える、たまに火花も見える。

「・・・!・・!!」

「!?---!----!!」

 ついでに何か怒鳴り合うような声も近づいてくる、まあよく…いやたまにある事だなーとスルー…しようとしたら狐さんに捕まった。

「ご主人様、休暇はただいまをもって終了です、あの二人の仲裁をお願いします」

「断ることは?」

「断ったら空き部屋に連れ込んだメイド達をニヤニヤしながらつつき尻尾を撫でまわしていた映像の観賞会を行います」

 なんという脅しをかけてくるんだこの狐さんは…そんな物なんてあの部屋にはなかったような気がするが…

「どこにそんなものを仕込んでるんだ?」

「それは秘密です、ただ屋敷にいるメイド達は皆身に付けていますのでご主人様の行動は常に筒抜けですね?」

 なんという事をしてくれたのでしょう、どこで何をしていたかとかこの狐さんには全て筒抜けらしい、プライバシーなんてものは何時の間にか消え去っていた。

「ご主人様、話している間もあの二人は止まらず屋敷に近づいて来ていますのでお早めにお願いしますね」

 今からあの暴威に対して立ち向かい仲裁しなければならなくなった。


 近づいていくと何を言い争っているのかはっきりと聞こえてきた。

「だからなぜ!あの時は一人で先走ろうとしたんだ!」

「それはあなたが!一分一秒を争うときに「少し待ってくれ、確かめる」なんて呑気な事を言ってたからです!」

 なんだろう、今日の依頼はそんなに危ないものだったのかな?

「だからあの時は確かかどうかを確認して万全で挑むために!」

「その間に奪われたらどうするんですか!結局はあなたが確認のために止めたせいで失敗したでしょうが!」

「う…だがそれでも一対一ではどうにもならず二人で挑む必要があった!」

「これだから頭のお堅い天人族様は!」

「この欲望に忠実な魔族め!」

 あーあー…ずいぶんと茹で上がっていらっしゃる、これ仲裁するの?

「やるのか?シュリエル」

「ええもちろん、頭のお堅いベ リ ス さ ま」

 笑顔のままで言うとはシュリエルも中々に煽りよる、ベリスも青筋を立てて頬がひくひくしていらっしゃる。

「魔界に帰っておとなしく余生を過ごせ!この若作り魔族が!」

「あなたこそ天界に帰って部下にこき使われて枯れていくのがお似合いよ!?」

 やだなー、この間に入りたくない、後ろを振り返ってみると狐さんがニコニコとしながらこちらを見ている。

 覚悟を決めるしかないらしい。

「はい、ストップ!二人ともそこまで!」

「あっ、えっ?ご主人様!?」

「ちょっ!まっ!今来たら危ない!?」

 二人がぶつかり合う寸前に割り込んだため一瞬で砂にされた、狐さんは笑顔だった、解せぬ。


「で、喧嘩の原因は結局なんだったの?」

 屋敷に戻り狐さんの尻尾をもふりながら二人から話を聞く、尻尾をパタパタ揺らしもっとしろと催促してくる。

「あれはシュリエルが!」

「いいえベリスが!」

「はいストップ、ここで争うと…ね?」

 もふられている狐さんから少し圧がかかりビクっとする二人。

「一つづつ解決して行こうね、まずベリスの言い分から」

 狐さんに脅されおとなしくなったのでベリスから事情を聴き始める。

「あれは今日の午後の事でした…いつもの様にシュリエルと淡々と依頼をこなしもう少ししたら休憩かなー、なんて考えていたのですが」

「ふんふん」

「時計の時間がずれていたのです…でも私は毎日時計の時間がずれていないか確認していますので、そんな事はない今確かめるから待っていろと、そうシュリエルに言ったのです」

「それで大事な物を奪われ持ち去られたと?国からの依頼の失敗って賠償金幾ら位なんだろうか、足りなさそうなら狐さんに相談する?」

「いえ、賠償金は無いので問題はないのです、ただ…」

「ただ?」

「この失敗によりシュリエルの機嫌がすこぶる悪く…彼女の時計は秒のずれはある物の概ね正しい時間を指示していましたので…」

「それでお互いの時計の時間が違うからあーだ、こーだ言ってるうちに時間が過ぎてしまったと」

「はい…概ねそんな感じです…」

「最初からその場所で待つ、という事は駄目だったの?」

「それについては私から」

 シュリエルが話し始める

「各国から依頼を受けて各地を転々としており、以来の内容が…その…分刻みの時もありまして…」

 え、分刻み?何それ怖い、外の国ってそんなに忙しいの?

「こちらが今日のスケジュール表です」

 二人のスケジュールのメモを取り出す狐さん、なぜあなたが持っていて知っているのか…

 ざっとスケジュールを確認してみる、びっしりと書き込まれ真っ黒だったのでパタンと閉じて返した、絶対国からの依頼なんて受けないぞ!

「それで、今日の依頼は午後の時間にダブルブッキングしているところがありまして…」

 真っ黒になるくらいの以来受けたら多少はミスも出てくるよねぇ…

「断ることも出来ませんので仕方なくその依頼をこなしていた時にタイムリミットが近づいてきまして…その時に」

「時間のずれていた時計を見た私がシュリエルの時計がずれているのではないかと思い、お互いの時計を確認し」

「ベリスは毎日確認しているから自分の時計が正しいと、私は私の時計が正しいと言い一人ででも行こうとしたところ」

「一人で行こうとするシュリエルを抑え少し確認するから待っていろ、と確認したところ私の時計の方がずれていて…」

 そして大事なものは奪われ今に至ると…分刻みで動いて時計ずれてたら失敗もするよね、ましてや期限付き。

「賠償金は無いみたいだけど依頼をしてきた国にお詫びは必要かなぁ…」

 何かお詫びになるような品はないかなと考えていると

「依頼は失敗しておりませんのでお詫びは必要ないですよ?失敗したとしてもコレに逆らえる国なんてありませんので」

 シュリエルがベリスを指さしてそう言ってきた、人に向けて指をさすんじゃありません、行儀の悪い。

「ベリスってそんなに偉いの?」

「一応天界のトップで有り魔王でも有り、機嫌を損ねたら気分次第で存在が消されます、というか過去に何度か消してます、一族郎党消したこともありましたっけ」

 えぇ…機嫌損ねたら気分次第で存在消されるの?何それ怖い。

「一族郎党消すことなんて滅多にありません、関わっていた人が皆何かしら後ろ暗いことをやっていた時くらいです」

 気分で存在消したところは否定しないの?私存在消される?

「ああ、ご主人様は存在を消せませんのでご安心を、試みる前にメイド長や屋敷にいるメイド達に制圧されて終わりですので、そうでなくとも屋敷に仕えているものは全員無理ですね」

 なら安心だー、安心できないわ、うちのメイド達一体何者?

「脱線してるから話を戻すとして、結局喧嘩の原因は何だったの?」

「そ…れは…」

「その…」

 なぜか顔を赤くして言いよどむ二人。

「…キー…です」

 小さくてよく聞こえないので再び聞く。

「ですからクッキーです!お昼の休憩時間に出される!あの!ご主人様の手作りクッキー!です」

 ……………はっ!?余りにも下らない喧嘩の内容に驚いてもふる手が止まってしまった、狐さんが少しにらんでくる。

「つまりなんだ…クッキーが配布される時間に間に合うようにスケジュール調整したはずが、時計がずれててもらい損ねたと、つまりそういう事だね?」

「はい…その通りです」

「一人でも先にいかせて二人分確保すればよかったのでは?」

「いえいえいえいえ、私達では一人で一人分を確保する実力もございませんので…」

「いつも二人で挑んで何とか一袋確保している状態です」」

 あの行儀よく並んでクッキーを持って行っているように見える裏側では何が起こっているのだろうか?

「クッキー争奪戦は弱肉強食、早い者勝ち、最低限のルールはありますが、そういう事ですご主人様」

 狐さんがマーキングするように甘噛みしたり体を擦り付けてきたりしながら何か言っていた。

 クッキー作る量増やさないと駄目かなぁ…

「数を増やしても強いものがより多く奪い去るのみなのでその案はお勧めできませんね」

 考えを読むんじゃないこの狐さんめ、少し強めに尻尾を握ってやるとビクンビクン痙攣していた。

「あー、まあ分かった、どうする事も出来ない以上頑張れとしか言えないが、喧嘩もほどほどにね?」

「「…はい」」

 うむ、一件落着!

「ベリス、シュリエル」

「「はい、なんでしょうか!メイド長!」」

「森の折れた木々と抉れた地面、元通りにしておいて下さいね、それが終わるまでこれはお預けです」

 ポケットからクッキーの入ってる袋を取り出してちらつかせる狐さん、メイド達がクッキーを取りに来る時間はずっと一緒に部屋に居たはずだよな…いつの間に確保したんだ?

「「今すぐ直してきます!」」

 ベリスとシュリエルは勢いよく部屋から出ていった、クッキー一袋であの二人をこき使う狐さんが怖い。

「ずっと一緒にいたはずなのにいつ一袋確保したんだ?」

「それはとても簡単な事、ご主人様がニヤニヤしながらメイド達をつついてる映像と交換しただけで御座います」

 なんという事をしてくれたのでしょう、脅しに使われていたはずの映像がクッキー一袋に変わっているではありませんか、クッキーは得られなかった者の為に、映像はご主人様が幸せそうにつついてる様をずっと眺めていたい者の為に、至福の時は共有すべきだというメイド長の技が光ります。


 ……はっ!?何か変な映像が流れ込んできた!?

 落ち着けー、落ち着けー、まだ大丈夫、きっとまだ大丈夫だ、ここにあるクッキーは一袋、つまり映像は一人の手にしか渡っていない!

「映像は既に皆の手に渡っています、あの二人にもクッキーと共に後で渡すつもりです」

 ヤッパリダメダッタヨ。

「と・こ・ろ・で…先程から尻尾を弄り回されて続けてそろそろ我慢の限界が近いのですが…」

 狐さんを引きはがし膝から降ろし即座に逃げ―

「だーめ」

 ―そもそも引きはがせる力なんてなかった。

「逃がすわけないでしょう?ご・主・人・様」

 どこからともなく取り出した首輪で繋がれ狐さんの部屋に連れて行かれる、すれ違うメイドがキャーキャー言っていたが首輪で繋がれているのがツボに嵌ったらしい。

 今度は首輪に繋がれている映像が流出かぁ、もしくは首輪で繋いだ状態でするのが流行るのかなぁと考え事をしていた。


 後日犬人族と狼人族のメイド達の間で首輪をつけるのが流行った、首輪つけて連れまわしてほしい側だったらしい。

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