しょんぼりじじいちゃんねる 婆ちゃんに怒られた
「どんなもんじゃー!」
「くぅ…孫娘に負けるとは不覚っ!」
時間ギリギリまで粘った末に、何とか2本で合計200キロ達成で余裕の勝利、引きの強い中々良いマグロであった…
「だがまだだじゃ!まだ終わってはおらぬぞ!次は個人の釣った重さで勝負じゃ!」
「あっ!後だしきったねぇ!そうまでした勝ちたいんですかこの爺は!?」
「ジョンは何キロのマグロを釣ったの?」
「えーと…67キロだね、私が57キロ、ジョンは後だして勝とうとしてるけど無理じゃないかなー?」
「行くぞ!発表するぞ!?わしは67キロじゃ!」
「…ハッ!大したことねぇですね!こっちは74キロじゃい!」
「ぐおぅ…な…ならば釣り上げた時間で勝負だ!」
「だからなんで負けたのが分かってから後出ししてくるんですか!?」
「だって…婆ちゃん達に美味しいマグロ持って帰るって約束したんだもん!」
「もんじゃなくて、普通に持って帰ればいいでしょうに…総取りしたら300キロですよ?食べきれるわけないでしょうが」
「じゃあ一番小さいの上げるから一番大きいのくれ、婆さんにこれ釣ったって自慢するから」
「こ…この爺は…」
まあ、量的には一番小さいのと交換しても3日はマグロが続きそうだけど、結構大きいから積み込めないんじゃないかな…?
「で、そっちの大きいの本当に130キロ超えてるの?」
「目測で、おおよそだね、これより大きくて70以下って事は無いでしょ、あ、計りが来た、それじゃ吊るすよー?」
「はいはい、しっかり縛ったから大丈夫だよー」
マグロを縛って計測準備は完了、マグロをゆっくり持ち上げて…
「143…これ1本で余裕で勝ってるね、2本揃えるまでも無かったですね!」
「くそー…糸が切れなければこっちだって100キロ超えてたんじゃい!」
「逃した獲物は本当に大きかったですが?出直して来な爺!」
「覚えてろよー!帰ったらわしのちゃんねるで秘密を暴露してやるからなー!?」
「っちょ!約束が違う!」
「んー、楽しそうで何より、取りあえずさっさとマグロの血とか内臓を全部抜いちゃおう」
「あっちの市場に場所を用意して貰ってますのでついでに運搬して貰いましょう」
恵里香さんと自称ジョンが追いかけっこをしているので自称ボブと一緒にマグロの処理へ、せっかく釣ったのに放置してダメにするわけにはいかないしね、戯れている様子はケビンとマイクが撮影しているので、マグロの処理をしている様子はルシフとダイヤによる撮影、どう決着がついたかは…また今度見ればいいか。
マグロの処理が終わった後、一番大きいのを1本渡す代わりにそれ以下はこっちで引き取る事に決まったようで、ジョンはとても嬉しそうにいつの間にか用意していた冷蔵車にマグロを積み込んでいた。
「一番大きいのを上げるんですから、約束を破ったらおばあちゃん達に色々喋りますからね?」
「はんっ!どうせ婆ちゃんもわしのちゃんねるを見てるからばらされた所で痛くないわい!」
「ボブが初めてこの国に訪れた時の理由は…」
「ストップ!ストーップ!こっちに飛び火してる!」
「当然ケビンとマイクの恥ずかしい秘密も握ってますよー?」
「…ジョン、私達の負けだ、ちゃんと約束は守ろう」
「そうだぞジョン、約束を守らないのは人としてどうかと思う」
「あっ!お前ら裏切ったな!帰ったらこっそり秘密の暴露大会やるって言ってたじゃないか!」
「何の話だい?そんな話を聞いてたかいボブ?」
「さぁ?僕は知らないね、ケビンはどうだい?」
「ジョンの早とちりじゃないかな?」
「「「…ハハハハハ!」」」
「皆さん仲が宜しい事で…で、おじいちゃんの負けは決まったわけですが、まだ抵抗しますか?」
「…アイルビーバーック!」
ジョンはそう言い残すと冷蔵車に乗って何処かへ走り去って行った…
「いやぁ、いい絵が取れた、それじゃ私達もジョンの向かう場所へ行かないといけないのでこれで失礼するよ」
「今日は温泉旅館でマグロ尽くしだ!他に止まっている人に振舞ってもまだお釣りがくるぞー」
「あれだけ大きければ解体ショーも出来るな、船盛用の船とかは旅館で借りれば大丈夫か?」
ボブ、ケビン、マイクも配送車のペイントがされた車に乗り込み、冷蔵車の後を追い去って行った、中々に強烈な人たちだったな…
「あー…どっと疲れた…さっさとマグロを持って帰ってばらしてしまいましょう…食べきれない分は冷凍して置けば暫くは変色せずに済みます…」
「ファイブAの実家にでも送りつければいいんじゃないの?」
「…それもそうですね、惜しい気はしますが変色させたりして食べ時を見失うよりはマシでしょう…」
マグロを軽トラックに積み込み、家まで帰って本日の撮影は終わり…あ、竿とリールのレポートが要るんだっけ…?まあ、マグロをばらしてからでいいや、動画に関してはルシフに丸投げしましょ。
LE225XXHとLE235XXHの5ピースはマグロ100キロクラスを相手にしても全く問題なし、ほぼ一体化しているので竿も綺麗にしなる、継ぎ目から折れるという心配も無い、摩擦による熱もほぼ無いので熱で糸が痛んだり切れる事も無し、LS500を扱うには一番短い160でも竿が長すぎ、リールは小さくて扱い辛い、感度は良いので辺りを取りやすい、140辺りのSULと組み合わせれば汽水域などでクロダイを釣ったりするにはいい、上流域でイワナやヤマメを狙うのにも丁度いい、トラウトを狙うのにはちょっとつらい、今のままだと扱い辛い高いだけの小物専用リール。
これで良しと、ワールドの方も同じレポートで、ブルーオーシャンはナブラ発生時に集魚剤有で投げると入れ食い、無しでも程々、重りを入れてボトムを狙うとヒラメやコチなどが食いついてくる、が、集魚剤だけでも釣れる、リアルにしている意味がなくなる程度…こんな物か、ジグの方は使ってないから恵里香さんに丸投げー。
竿はレポートと一緒に箱に入れて送り返し、リアルシリーズと集魚剤はメールで返信、専用の小物はアシストフックを使えば上下に針をつけれるので特に文句は無しと、他には…何もないな、動画編集の方もルシフにお任せしてるし、マグロをどう料理するかも恵里香さんにお任せしてるし、何をしようかな?
翌日にはマグロ釣り勝負の動画が上がっていたが、何かリンク先が張られているな…あ、おじいちゃんねる視点か、最初はほぼモザイクだらけで何もわからないけど、何やら道を封鎖したり、配送業者を止めて荷物を受け取り、用意してある偽の配送車に積み込み、家まで移動している様子までばっちり映されている、そして門を通過して家の前に車を停めて…
「普通に犯罪だ何だーって言うコメントも有りますけど、身内が代理で受け取っただけですからねぇ…道の封鎖もそもそも私有地なので別に問題はないですし、言ってしまえばおじいちゃんが遊びに来たってだけですからねこれ、やってる事は滅茶苦茶ですけど」
「まあ、騒がしい人達だったねぇ…楽しそうではあったけど」
「あれでも結構すごい人達なんですけどねぇ…国外の車に家電、酒蔵の元締めともいえる人達ですし…」
「なるほど、まあ愉快な人達って事だね?」
「そうですね、出会いからして愉快だったそうですしね、自称ボブはお見合いが嫌で陸路で逃げ回り、最終的に海路でこの国にやってきて、逃げ回ってた時に堤防で釣りをしていたおじいちゃんと出会って、身なりが良すぎてすぐ見つかりそうだって事で身ぐるみを引っぺがして、腹巻に手拭いを身に着け、上等なスーツ上下を地面に擦り付けて即席のダメージ加工で浮浪者風に仕立てて難を逃れたたり、その後意気投合して釣りと刺身に嵌ったり、自称マイクはボブの誘いで国外まで視察に行ってた時にパンイチにサングラスとマントでスケボーに乗って警察から逃げていた所で出会って面白そうだからってそのまま3人でパンイチのまま市街をチェイスしたり、自称ケビンはこんなまずい酒が飲めるかーってバーで暴れてて、そこに居合わせた3人で飲んでケビンの言う様に不味かったから一緒になって暴れてと…やってる事が割と滅茶苦茶なんですよね…不思議な事に逮捕歴とかは一切ありませんけど」
「ちなみに自称ボブがお見合いから逃げた理由は相手が10歳近く年下だったから、ボブは当時16でしたかねぇ…?そんな年齢で7歳の子とお見合いなんて…ねぇ?まあその後ふっきれて9年間付き合って結婚したようですが、お見合いしてからずーっとひとつ屋根の下で暮らしていたそうですよ?」
「ルシフさんは何でも知ってますねー…」
「そりゃあもちろん、世界中に根を張ってますから」
「マイクの行動に関しては兎に角目立って家電を売るという戦略でしたっけね?勝手に報道局が逃げているパンイチ集団を追いかけて一部始終を放送していたので、宣伝費用は掛かってないんですよねー、パンイチ集団が逃げ込んだ先は小さな家電量販店、追いかけて突入すると身なりのいい男が3人、証拠も綺麗さっぱり消し去っていたので特定も逮捕も出来ず、その後店の前に居た報道局を相手に新製品の説明と営業を始めるって言う、生中継だったので少なからず人の目について…」
「今ではその国のトップを走る家電メーカーですね、ケビンも元は小さな酒蔵の出で、どうにか美味しいお酒を作れないかなーって、取りあえずバーでいろんなお酒を飲んでみる事にして、その当時の大手メーカーが作った物が相当不味かったらしくてですね、こんな物客に出してんじゃねぇと大暴れ、飲んだ時の感想は牛の尿に炭酸ガスを入れてビールと偽って売るほうがまだまし、でしたっけ?」
「それはまた…凄い感想だね…」
「実際クッソ不味かったですよ、直ぐに資金の供給は止めましたが、試乗に回った物を全て回収するのは難しいですからね、不味くても大手メーカーが出してるからこれが美味しいと勘違いして飲む人も多かったですからね」
「それでまあ自称ケビンは3人が飲んだことのある一番美味しいと思ったお酒の味を元に、自分の蔵独自のビールを作って、地道な販売活動の末に成長、今はワインやブランデー、ウィスキーなんかも作ってますね、出来が悪い時は色んなお酒と混ぜて一番美味しい組み合わせと割合を確かめてから、店頭に美味しい飲み方を貼り出してから売るそうです、後、今は今一でも樽で寝かせると香りが移ってよくなる場合は樽で香りを移してから売ったりですね、高い物は1本で数十から数百万まで行きますが、安いのは1本数百円程度、味が悪いだけで出来は悪くないので、カクテルなんかにすると普通に美味しいですし悪い酔いはしませんよ。
問題はそんな大手メーカーの爺共が企業をほっぽり出して暴れ回ってるという事ですねぇ…」
「まあ下が優秀だと上は責任だけとればいいから、それに何かあったらすっとんで帰るでしょ」
「それもそうですね…しかし刺身を食べそうにないボブにマイクにケビンがマグロを解体したり船盛を作ったりしてるのはすげぇ違和感ですね…皆割烹着を着てるってのも早々見れる物じゃないですし、ボブに至ってはそこいらの職人寄り寿司を握ったりするのが上手ですよ…」
「そうなの?」
「昔食べたことが有りますが、高級だなんだと言われる所よりは遥かに、というか爺共、マグロだけじゃなくタイとかブリとかスズキとかヒラメにアジの刺身や握り、丼なんかにしてますね…帰ってくるのがギリギリだったのはマグロ以外も釣っていたという事ですねこれは…マグロだけじゃなくて種類勝負だと負けてましたねぇ…」
「こっちはアジとマグロだけだもんね、青物は全部リリースしてたから」
「マグロ勝負じゃなかったらぶっ飛ばしてましたけどね、後出しで変更しまくるんじゃねーって、まあ、おばあちゃん達に新鮮な魚を持って行く、と言うのが本来の目的だったようですし、勝負自体はどうでもよかったんじゃないでしょうかね?」
「ふむぅ」
旅館の宴会場に急遽つくられたと思わしきカウンター席に座るご婦人が4人、それと船盛を持って行く人達、恵里香さんの言う様に元々旅館にいる人達を楽しませるのが目的だったようだし、最初から勝ち負け自体はどうでもよかったんだろうねぇ…
「2通目の果たし状じゃ!受けとれぃ!」
「今度は何なんですか…」
「婆ちゃんに、孫娘達から一番大きなマグロを譲って貰ったのに、自分で釣った事にしようとするとか…恥ずかしくないの?って言われたから…仕切り直し…みたいな?」
「ハッハッハッ、譲って貰った物を自分が釣った!なんて言っちゃいけないぜジョン?」
「と言うわけで再戦じゃ!今度はケビンとマイクも参加するから4対4!さぁメンバーを選出してくるが良い!
…それと以前の女子も強制参加ね?一番大きなのを釣られて悔しいから再戦で…」
「はいはい、わかりましたよ、と言うわけで後2人連れてきて貰っていいですか?」
「誰にする?ファイブAは今日皆休みだけど?」
「ファイブAはファイブAで参加させればいいんじゃないですか?じじいちゃんねる対選抜おねえちゃんねる対おねえちゃんねるA1からA5の三つ巴で、1人くらいはハンデです、その代りアウラさんとサイファイアさんを連れていきましょう、もう手加減なしで格の違いと言う奴を見せ付けましょう…」
「それじゃ今回も私達でカメラとマイクやるねー」
「ふぁいと」
んーむ…どうなる事やら…取りあえずアウラとサファイアを呼んで来ようかね、それと移動中に食べれる朝ご飯と昼食も用意しなきゃ…せめて前日に来てくれると準備が楽なのにねぇ…
ジョン・ボブ・マイク・ケビン
国内外各企業の元締め、皆偽名なので度々名前が変わる
若い頃は色々とやりたい放題だった、今はもっとやりたい放題
旅館に大量の魚を持ち込んで止まっていた客を全員宴会場に呼び出して宴会を始めた、酒類は全てケビンが持参した物、全部無料で振る舞われたけど多分宿泊料の20倍以上はする
レポート
試作品を使った後に提出する物、問題点があればはっきり書こう
最後に一文書き忘れると竹の如く増殖して帰ってくる、つまり…




