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代替品ではない 珍味であって美味ではない

 ある程度細く切ったイカに解した数の子と調味液を合わせて黄金イカ、塩漬けにしておいた胆と合わせて塩辛、余ったイカも適当に黄金イカと塩辛の方に振り分けて、いくらを作るついでに紅葉漬けも作って、後は1日ほど漬けておけば出来上がり。

 次は買ってきた小あじを洗って片栗粉をしっかりまぶしてしっかり揚げる、小さいのはしっかり揚げれば丸ごと食べれるので内臓やゼイゴを取る必要は無し、大きいのはゼイゴなどを取って三枚に下してから、揚げている間に玉ねぎをスライス、漬ける酢を作り、上がったアジを酢に着けて鷹の爪を少々、スライスした玉ねぎも一緒に漬けてこれまた1日ほど置いておけば食べ頃に、明日には中までしっかり味が入り、玉ねぎも甘酸っぱくシャキシャキとした食感がたまらない物に…

 いやぁ、楽しみだねぇ…なんでこの手の物は完成を待ち遠しく感じるのだろうか…時間が少し経つ度に味見味見と摘まめば味の変化も楽しめる、味見をし過ぎると目に見えて量が減ってしまうのが難点だが…抗えない何かが有るんだよね…

 黄金イカや塩辛、紅葉漬け等は屋敷の方に、小アジは家の方の冷蔵庫に、今日の夕食に出しても問題はないと言えば無いけど、美味しくなるのは明日以降なのでちゃんと明日用とメモ書き、書いておかないと酒の肴として全部食べられちゃうこともあるしね…


 イカなどを漬けた翌日は乾物が減ってきているので、今干してあるのとは別に追加でイカを干したり、スパイスを効かせた牛肉をジャーキーにしたり、一度追加すれば暫くは持つので量は程々に。

 干す物を干したら塩漬けにした鮭や干物をお持ち帰り、お昼は何にしようかな、干物とお味噌汁か、それとも焼き鮭といくらを合わせたパスタか…夕食が昨日漬けた南蛮漬けだから…鮭といくらのクリームパスタにするか、塩鮭を焼いて少し混ぜて塩味を少し効かせて…仕上げにスモークといくらを乗せて…うん、これでいこう。

 スモークサーモンも追加で持ち帰り昼食の準備、南蛮漬けが少し減っている気がするが…まだ大丈夫か…これ位ならまだ夕食に出すには十分、摘まんでいったのは誰だろうか…ファイブAの誰かか、それとも恵里香さんか…減っている量的に両方と言う事も有るので何とも言えないな…

 まあ少なくなったらなったで1人辺りの量が減るだけで、他に一品追加すればいいんだけどね。


「ちょっと足りない物ができたから買物に行ってくるねー」

「はい、お気をつけて」

 南蛮漬けは味がどんどん染みて美味しくなっていくのは分かってるんだけど、ちょっと摘み食いしすぎじゃないかなぁ…

 午前中の作業の続きで屋敷に戻っている間に半分以下まで減ってるんだもんなぁ…昨日漬けたイカを出してもいいけど、あれは小鉢に少量入れる程度だな、それは後で屋敷の方に取りに行くとして、この時間帯にまともな魚が残ってるかなぁ…無かったら無かったで摘み食いの犯人から南蛮漬けを没収すればいいか、スライス玉ねぎだけが乗ったお皿が出てくるが、3匹程度ならまだしも、半分以下になるまで摘まむのが悪い、そう言う事にしていこう。

 小アジがまだ残っていればばっちり、無くても使い勝っての良い小エビがれば良し、どちらも無ければ…酢漬けのスライス玉ねぎに千切りの人参でも付け足しておくか。


 残り物には福があると言うことわざがうんたらかんたらと聞いたことは有るが、その残り物すら存在しない場合福は何所へ行くんだろうね?小アジも小エビも無し、ちょっとした一品を作るのにちょうどいい物は無し…良し、摘み食いの犯人はスライス玉ねぎの南蛮漬けだけに決定。

 まあ、アジの干物が有るからおかずが無くなるわけではないが…買う物がない以上長居をしても仕方がないし、屋敷に戻って人参を収穫してきましょ、軽く湯通しして今から漬けておけば大丈夫だろう。

 さて、ちょいと屋敷に戻ろうかね、人参を収穫して、黄金イカや塩辛をタッパー一つ分ずつ、ついでにいくらと紅葉漬けもお持ち帰り、これもまた酒の肴だ何だと摘ままれたりするが、肴みたいなものなのでこっちは問題なし、摘まみすぎるとお楽しみが減るだけ。

 よし、タッパーに詰め終わったし、戻ったら冷蔵庫に入れて、人参を千切りにして南蛮漬けに漬けておくか、白ご飯にお味噌汁にアジの干物に南蛮漬け、白菜の浅漬けにタッパーに詰めてきた物、何だかんだで豪華な夕食にはなりそうね、一部の人は南蛮漬けにアジが入ってないけどね。


「違うんです、これは何かの間違いなんです」

「うん、取りあえず口の中にあるのと手に持ってるのは食べきってからにしようか」

「んっ…んぐ…ふぅ…これはちょっと小腹がすいたのと、夕食に仕込んだ物がどんな味かを確かめたかっただけで」

「アジだけに?」

「そう…でもないですけど、ボウル一杯に作ってあるのと、皆が摘まんでいるのを見ているとつい」

 ボウルの中は…残り3分の1、随分と減ったなぁ…屋敷の方で収穫したり細かい事を済ませている間、葵さん以外にも食べていったのが居るな…ここまで減ると夕食には出せないな…

「残っている量的にもう夕食に出すのは無理だから好きに食べちゃって」

 んーむ、何か一品足さないと駄目になったが何を足した物か…人参はしりしりにでもして、持って帰ってきた塩辛を使って何か、冷蔵庫にあるのはしいたけにエリンギ、ヒラタケ、長ネギにじゃが芋、ふむ、長ネギは味噌汁に使うので除外して、エリンギとヒラタケをアヒージョに…でも干物がメインだしなぁ…シンプルに焼くだけにして、酢橘と醤油にするか、塩辛は予定通りに小鉢でいいや。

「それにしても減ったなぁ、これ皆隙を見ては摘まんでたんじゃない?」

「疲れた所に甘酸っぱいお酢は結構効きますからねぇ、それで皆摘まんでたんじゃないですか?」

「どうだろうねぇ、ただおやつ代わりに食べまくっただけかもしれないよ?」

「そうかも知れないですね、まず疲れるほどの仕事はやらせませんし、ただの摘み食いによる食べすぎでしょうね…」

 まあ、量の違いはあれど葵さんも摘み食いの犯人だけどね、今度から南蛮漬けを多めに作る時は屋敷の方で漬けておこう…

 夕食のおかずは一品減ったが、魚と魚が被っていたので結果的には良かったのだろうかね?夕食後は残っていた南蛮漬けを全て放出、タッパーに入れてあるイカやいくらも一応は食べ放題、流石に食べ過ぎる人は居ないだろうけど、程々にと釘を刺しを置くのを忘れずに、食べ過ぎた結果どうなるかは自己責任で。


「これはアレですね、タッパー一杯のいくらにスプーンを突っ込んで、もう片手にはウォッカを入れたグラスを持っていると言う痛風待ったなしの再現が出来ますね」

「スプーンを突っ込んでもいいけど、直接口に運ばずに小皿か小鉢に取り分けてね?それに今日のお酒はワインだし、クラッカーとチーズも置いておくから、いくらばかり食べない様にね?」

「わかってまーす、よっしゃー!今日も飲むぞー!」

「ここに来てからほぼ毎日のようにお酒を飲んだりしてますけど、お酒だけで月にどれだけ掛かってるんでしょうね?」

「普段飲んでるのは下が3千、上が2万するかしないかだから大丈夫大丈夫、高いのは当たりの可能性が高いけど、高いから美味しいってわけでもないのだよ」

「それでも結構出費がかさみそうですね、1日に4本は空いてますし」

「今飲んでいるのもそうだけど、これ全部お裾分けみたいなものでただ同然よー、だからいくら掛かるとか気にしなくていいのさー。

そう言えばキャビアないのー?いくらも悪くはないけどたまにはキャビアも食べたーい」

「キャビアかぁ…育ててないんだよねぇ…買ってくる事は出来るけど、舌に合うかどうかは分からないよ?」

「大丈夫、食べてから舌に合うかどうかを考えるから」

「考える考えない以前に舌に合わなければ吐き出すだけかと…まあ今度買って来ておくよ、それほど高い物でもないし」

「おねがいねー、それまではいくらで我慢してるから」

「いくらって我慢する代わりに食べる様な物だったっけ…?」


 翌日北の大陸へちょっとお出かけ、養殖用に何匹かもらえればそれが一番良いのだが、養殖するための環境がなぁ…屋敷の方にある川は海とは繋がっていないし、海は川は有れど湖が無し…まあ湖を作ればいいだけか、取りあえず恵里香さんが要望しているキャビアを買って行こう、お試しで小瓶1つでいいか、チョウザメは誰に言えば融通してくれるか…取りあえずフィリスに聞けばいいか。


「チョウザメ?チョウザメの養殖は妹が国策で始めた物だから養殖している物の融通はちょっと無理かなぁ?

天然物も今は捕るのが禁止されてるね、ちょっと数が減ってきてるから暫くは禁止、養殖して増やした物も個体数を戻すために一部は放流されてるし、一応話は通してみるけど多分無理だと思うよ?」

「こっちもまだ養殖する環境は整えてないから急ぎではないかな?まだ食べたいって言ってた人の好みに合うかはわからないし、駄目だったら似た様な物を用意するから大丈夫」

「そお?まあ、一応雄と卵を抱えてる雌を何匹か融通できないかは聞いておくよ、卵を取るために捌くとか、卵だけ捕って戻すとかじゃなければ大丈夫だとは思う、ちゃんと増やす予定でしょ?」

「増えるかどうかは養殖する場所次第かなぁ…?ここのチョウザメは海と川を行き来する奴だっけ?」

「汽水域に住んでるやつだね、流れもそんなになくて水も綺麗な所、産卵場所も海よりの岩が沈んでる所。

海と川両方から産卵した卵を食べに魚が寄って行くから中々ね、今は順調に増えてるけど、増やすなら汽水域と同じ環境、岩場が無いと卵を抱える事もないから、出来るだけ環境を再現してあげる事かな?」

「汽水域は有るから…放しておけば多分大丈夫かな?餌として卵を食い荒らすのも居ないし」

「あ、水温もちゃんと合ってないと駄目だからね?大体活発に動くのが10度から15度位、20度くらいまで行くと弱るから最高でも18度くらいまでしか水温が上がらない所が良いかな?下は5度まで、それ以下は休眠状態に入っちゃう。

養殖する場合はその温度に合わせてねー、産卵するのは少し動きが鈍くなる9度辺りから、卵を抱えるのは13度くらい、卵を取り出して戻すだけなら常に13度で大丈夫かな?取り出した固体は隔離して多めに餌を上げる事、餌はトラウトが良いかな?できれば骨を粉末にして身と混ぜて団子にした物」

「餌は多分どうとでもなると思う、増えるかどうかも環境次第…かなぁ?」

「まあまだ許可が出るかどうかは分からないけど、もし許可が下りたら連絡するから、今すぐ環境を作らなくても大丈夫だからね」

「環境を一部だけ弄らないと駄目だからそう直にできる物でもないけどね、それじゃそろそろ帰るねー」

「はいはい、まあ結果が出たらすぐに連絡するねー」


「はい、養殖物だけどご所望のキャビア、お試しで一応小瓶1つね」

「天然物は?できれば天然物が良かったんですけど」

「天然物は現在捕るのが禁止、養殖環境は天然とほぼ変わらない状態だから物は変わらないはず、だって」

「なるほど、まあそれはそれとして味見ですね、カナッペとブルスケッタを作りましょう、お昼前ですし丁度いいです」

「その前に2粒3粒位は何も無しで食べて味を確かめてからね?駄目そうだったらこっちで全部食べておくから」

「それもそうですね、では早速…んー…これって味付けはどうしてます?塩だけにしては甘みが強い様な…?」

「塩だけのはずよ、腹を裂かずに取り出した卵を洗浄、その後昆布が多く育っている海域から汲み出して作った塩ってだけのはず」

「んー、チョウザメの種類の違いによるものですかねぇ?色も黒や灰色が混じっているのではなく、黒に近い抹茶色で揃っていますし、ねっとりした感じも少し強いですね、それだけ元の味が濃いと言う事なんでしょうが」

「それで、これからもまだ食べたいと思うのか、これで終わりなのかどっちになりそう?」

「何でしょうねぇ…好みがかなり別れるというか…私は好きですよ?小さい粒なのに中にぎっしり詰まっているのか、口の中に入れたらずしっと来て下にねっとりとした感じが広がり、味も濃くて甘みも強いですし、生臭さもないので食べやすいとは思うのですが…」

「カナッペとかブスケッタとか、組み合わせてみないと分からないって事ね…」

「少なくとも単品で食べるには濃すぎますね…」

 恵里香さん的には濃すぎる、と言う事でカナッペに乗せるのは4粒ほどに抑え、チーズが気持ち多め、サーモンはスモークではなく生で少し厚めで調整、ブルスケッタもバゲット薄めトマト気持ち多めで3粒程度、残ったキャビアは器に入れて個人で調整して貰う様にしたがさて…評判はどうかなぁ…


 キャビアの評判は半々、不味いという意見は無かったが、美味しいという意見も4人ほど、食べた皆の答えはやっぱり味が食べたことのある物より濃くて重い、と言う物だった。

 まあ…味が濃いから美味しいかどうかと言えば…美味と珍味は違う、そうとしか言えない…でも何か癖になるので小瓶を2つ3つ位は常備しておきたいとかなんとか、珍味って癖になる物が多いしね、分からないでもない、養殖の方は…どうなったかの連絡が来てから考えるか…小瓶3つ程度ならたまに買いに行く程度でも良い気はするけどね…

 また今度こっちのキャビアと食べ比べをしてみるか、国内産の物もあるみたいだし、地かに買いに行ってみるのも良いかな?

南蛮漬け

豆アジと言われるような小アジの場合ゼイゴも内臓も処理せずそのまま片栗粉を漬けてじっくり長時間揚げる、大きいアジの場合は内臓をゼイゴを処理してから

摘まみ始めるとついつい手が止まらなくなっちゃう


残り物には福が…

残って無きゃ福も何もないんだよ…

夕方前に行ったので箱売りの物は売切れ、もしくはバックヤード送りになって無くなっていた


チョウザメ

キャビアで有名なあれ、当然のごとく生態は違う

粒はいくらより小さいがいくらより詰まっていて重い、光に透かすと鮮やかな緑色になる

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