道具に頼ろう ダメにしたクッション
「新しい道具ちょーだい?」
「えぇ、新しいのですか?今ある道具は壊れないようにできているはずですけど…?」
「釣り道具の一つではあるんだけど、竿とかリールじゃなくて、持ち運びできるファイティングチェアが欲しいなーって、うちのメイド達なら不要だけど、アリス達だと間違い無くすっとんでいくから」
「あー、それなら、どういう形にしようかな?」
「まず基本的には木製で、座る部分は長時間座っても痛くならないように、皆体の大きさとかが違うからフットステップは簡単に調整できるように」
「えーと、基本的に木材でいいとして、使用する木材はケレスとクロノアに用意させれば強度は大丈夫、ハーネスは…」
「この革でいいんじゃない?ウサギの毛皮だけど、加工すれば丈夫になるでしょ」
「椅子の部分とフットステップは木製にして、ハーネスとかは加工した毛皮を使って、ソケットとフットステップの長さとかを調整する所、それと椅子を固定するための足は金属製だね。
持ち運びで何所でも使用可能にするとして、足をどうしようね、地面に打ち込んで固定するか、その場に固定する物を使うか」
「その場に固定でいいんじゃない?固定解除すると椅子が地面に落下するけど、固定中に高さとか位置を調整するボタン、もしくはレバーを椅子の側面に着けて…
これなら椅子の底に仕込むだけで良いし、普段はただの4本足の背もたれフットステップ付きの椅子、ボタン一つでその場に固定、その後高さが微調整可能に」
「引っ張られたときに椅子が回転しないと駄目だから…中心に椅子が回転するための機構と、その下に着ければ多分大丈夫、うん、いけそうだね、それじゃあご主人様は木材の発注お願いね、とにかく軽くて丈夫なやつで」
「はいはい、必要な金属とかはおいていくからそっちも加工お願いね」
よし、持ち運びが簡単なファイティングチェアの作成をウルカンにお願いしたし、ケレスとかに木材を頼まないとなぁ、出来るだけ軽くて丈夫で…どこまで軽く出来るかが問題かな…
用意して貰った木材の水分を抜いて、板材にしたらウルカンに渡して…毛皮を加工してまたウルカンに渡して…お尻が痛くならない様にお裁縫で座布団を作って、すわり心地が悪くならない様にこっちは…
「キャイーン!」「ピギイイィィィ!」「クルッ…ポゥ…」
許せ、駄犬にひよこちゃんにぽっぽちゃん…君達の毛皮や羽毛がクッションなどにも使えるのが悪いのだよ…皮脂などが全く染み込まず常にふわふわで汚れにも強い、水洗いだけで新品同様にとお手入れも簡単、そんなの誰だって使う…
まあ明日には戻ってるから気にしてはいけない、さて、羽毛と毛も沢山取れたし、裁縫室でお裁縫をしよっと、まずは刈り取った毛を加工しないとね。
刈り取った毛を丁寧に処理して1本の糸に変える、絹より細く頑丈な糸ができたら織り、生地にする、生地を筒状にしたら綿の代わりに羽毛を程々に詰め、軽く口を縛って感触を確かめる。
程よくなった所でひよこちゃんとぽっぽちゃんの羽軸を輪切りにしてビーズ状に、これもまた程よい弾力があってクッションにいいんだよね…
量を調整しつつ詰めていき、最後に口を縫い止めればクッションの出来上がり、生地きめ細かく滑らかで肌触り良し、強く引っ張れば伸びるが破れたりほつれたりする気配も無し、身を任せればズブズブと体が埋まっていくが程よい弾力で押し返され、程よく温かくて体温が上がってくると程よく冷ましてくれる…何時作っても素晴らしいクッションだ…部屋の床をこれで埋め尽くしたいくらいには良い…
ふむ…また後で部屋の広さを測っておこう、それで後何回駄犬とかひよこちゃん達が犠牲になるかが変わる…取りあえず余った分も全部クッションに変えておこうっと。
それから暫く毎日屋敷には駄犬とひよこちゃん達の悲鳴が響き渡る事になったが、少し良いお肉と取れたての豆、穂が固まる前の稲を上げると直ぐに機嫌を直すので気にしてはいけない、部屋の床を埋め尽くすまで後…3日位かな?
「試作品できたよー…ってうわ…部屋がクッションで埋まってる…毎日聞こえてた悲鳴はこれが原因か…」
「あー、できたのー?それじゃちょっと試験運用して来ようかね…あー…でもここから動きたくない…このまま掛布団をかけて眠りたい…」
「ほら、試験運用するんでしょ、早く起きた起きた」
「ふぇぇーい…んんっ!…あぁー…よし、行くかぁ」
クッションの上で寝転がるのは試験運用を済ませてからでいいか、さて、上流の方まで行って来ようかね。
「ただ座るだけの時は何もせずこのままでも良いし、固定するときはここのスイッチで固定と解除、隣にあるレバーで前後左右に動いて調整、上下で高さの調整、位置調整は固定してから出ないと使えない様になってる」
「これで固定して、固定した後にこれで微調整と…急に動いたりする感覚も無く滑らかに動くね、高さは…当然ながら地面より下には行けない、上も何かに当たりそうになると止まる、でも基本的に制限は無しと」
「フットステップの調整はここのレバーで、引くと自由になって引っ込みますので、レバーを引きながら足で押して調整して、レバーを放すと固定されて動かなくなります。
地面から少し浮かせた状態でないと椅子は回転しませんので、固定した後は少し地面から浮かせてください」
「固定状態だと地面に足が付いていると…回らないね、坂になっている所だと…固定した時に自動で水平になると、この状態で前に行って固定を解除すると…ゆっくり地面に下りると」
「崖になっているようなところだと解除しても反応しない様になっていますね、普通に落ちていってしまいますので。
ゆるやかな坂はそのままゆっくり降りるようになっていて、急勾配などで解除する場合は一番下まで下げて、地面に設置させてからですね、滑り落ちる様な所だと解除は出来ないように、レバーなどで安全に下りれる所に寄せてから出ないと解除は出来ない様にしています」
「飛び降りてしまった場合は?宙に椅子が固定されたままだけど」
「ハーネスが有りますので、椅子を移動させる場合はハーネスを着用しないと本来は動かない様にしてあります、また外せない様にもしていますので、安全に乗り降りができるようになってますね。
今回はその制限を外していますので、遠隔操作用のこれ、ゲームのコントローラーを改造してこれで操作できるようにしてみました。
無線式なので、水上に移動して椅子の上から落とした場合悲惨な事になりかねませんので、これ一つしか作ってませんけど、そもそもハーネス着用の必要有、降りる時も安全な所でないとハーネスが外せないので」
「まあ今回のは試験運用で特別仕様ってことだね、ソケットは…大分持って行かれるけどドラグをほぼフリーにして嵌めれば大丈夫かその後でドラグを締めれば大丈夫」
「ソケットも嵌めやすいように大口にして有るけど、嵌めたら勝手にちょうどいい大きさまで縮むから、多少手元が震えても大丈夫だね、特に専用の竿でなくても、ベイトでもスピニングでもどっちでも行ける様にしてあるよ」
「かかったと仮定してソケットに嵌めると、ソケットが竿に適した形に変わって固定、椅子も泳いだ方向に向いて…うん、これなら全員使えるからずっと楽になるね」
「これが最終決定でいい?」
「そうだね、椅子の側面のレバーとボタンだけじゃなくて、ポケットと展開可能な小物入れとかを着けて、そこにちょっとした物を閉まったり、有線式のコントローラーを着けた方が良いかな?どっちの方が操作しやすいかは人に依るし」
「今着けてるレバーは少し小型化して、コントローラーでも操作が可能にして、コントローラーを仕舞うためのポケット、それと小物を入れるための箱と座ったままでも不自由なく使える台を着けて…台を兼ねた小物入れの方が良いね…足の周りに着けるとゴテゴテして邪魔になるから内側に収納するようにして、ボタン一つで引き出し、手元に来たら後は手動で開閉…そんな感じ?」
「そうだね、そこまで物は入れないだろうし、1段を2か4つ…出来れば4つかな?取り付ける箱は取り外し自由で、出ないと小物の整理が大変だし」
「小物入れの箱も軽量で頑丈な方が良いから…椅子は全部でいくつ?」
「えーと、アリスが確定、アヤカも多分買う、他はまだわからないから取りあえず2脚かな?」
「じゃあ木材が後4セット分と、金属類も機能を足すから多めに、値段はルシフと相談して」
「はいはい、最後に実践運用して確認は終わりだね」
適当に投げて、何かが掛かったらソケットに竿を刺し、フットステップを使い全身でポンピング、引っかかるような感触も無く、左に走れば椅子も左に向き、右に走れば右に向く、全体的に滑らか、後はここからどう向上させるか、だね。
試験運用が終わったので材料の追加発注、金属類も多めに用意してルシフと相談して価格調整、んー、良い値段になるのは仕方ないね、前借とかはできないだろうから頑張って稼いでもらおう、一応利子無しでいくらでも貸してくれるルシフもいるから大丈夫、分割払いも受け付けてるし、多分買えるさ…
「アリスー、アヤカー、ファイティングチェアが完成したけどどうするー?」
「何でまたファイティングチェア…カジキやマグロでも釣るんですか?」
「カジキやマグロにも使おうと思えば使えるけど、これは何所でも使えるように作ったやつだね、クッションもセットでどうぞ、実際に座ってみてもいいよ、ついてる機能も説明しながらになるから」
アリスとアヤカが座った所で説明開始、椅子をその場に固定する方法から椅子の位置を調整する方法、追加した小物入れなどの取り外し方、引き出し方など、実際に竿をソケットに差し込み、糸を引っ張り、全身を使ったポンピングをさせて具合を確かめさせる。
一通り説明、体感させた後ハーネスを外して椅子から下し、お値段の発表、さて…どうなるかねぇ…
「このファイティングチェア、1脚で1000万ぽっきりになります、分割払いも可」
「たっかっ!ちょっとぼったくりじゃない?」
「あ、恵里香さんも買うの?」
「無理無理、船を買う様な物じゃん…それにあれは釣りと言うより1人でやるクジラ漁とかそんなのじゃん…」
「クジラよりタフだし力も強いよ、10メーターサイズになるともっと大変だね」
「少し前に一番強度の高い竿を全部破壊されて、リールも壊れましたが…クジラより大変だと…?」
「そうだねぇ、あっちにいるメイドさん達は平然と釣ってるけど、まず重さが100キロ200キロとかじゃないんだよ、トンなんよ…
アレに挑むなら悪い事は言わないから道具は全部一番良いやつを揃えてからにしときな、そうすれば持って行かれる前に針を変形させて口から外す事ができるから」
「クジラ以上ですか…それなら折れたり壊れたり、手伝って貰って10分も持たなかったのも納得です…」
「まあそれでも挑むなら椅子は有った方が良いけど、それよりはまず戦うための道具が必要だね、大きいのを釣りたいのは分かるけど順を追って、竿、リール、糸、それから小物類、最後は今日追加された椅子だね」
「なら椅子は今は必要ないですねぇ…竿とリールが一番良いので幾らくらいでしたっけ…」
「えーと、今の道具だと一式で…白金貨20枚?」
「こちらに換算するといくら位で?」
「以前大雑把に決めたのだと2000万位?糸とか小道具も含んでるから、若干お得になってる感じ」
「やっぱり高いですねぇ…以前折った竿が1本6万、壊れたリールが9万ほどですから…それと比べても約100倍…」
「メダカからクジラ以上の物まで全部これ一本でカバーできるよ」
「それを考えると安いんですよねぇ…大体は何所かで妥協して使い回しをしますし、それを妥協せず全てに対応できるとなると…妥協せずに揃えた方が遥かに高いですし…」
「一括現金払いでも分割払いでも、支払先はルシフにどうぞ」
「給料は多いので順調に貯まってますが…一括払いにはまだまだ遠いですねぇ…」
「分割でも良いと思うけどねぇ、分割にしても高くつく事は無いし」
「んーむむむ…でもやっぱり一括で…上流に挑まなければこっちの道具でもなんとかなりますので、椅子も今は見送りですね」
「そう、まあ欲しくなったらいつでも言ってね」
椅子を回収してクッションも回収、屋敷に置いて有るクッションを運び込まないとなぁ…
「そう言えばそのクッションは…いくらほどで?」
「クッションはおまけだね、特に値段は決めてないや」
「ください、触り心地やすわり心地が良すぎてもうそれなしでは…」
「別にいいんだけど、後でね?屋敷に置いて来てるのを部屋運び込まないと駄目だし」
「絶対!絶対ですよ!約束しましたからね!?」
「そんなにすわり心地よかったんだ…私は座ってないからどんな物か知らないけど…アヤカ的にはどうなん?」
「あれはそうですね、駄目にするタイプのクッションです、それをさらに酷くした感じ」
「あー…身を任せて沈めたくなる奴ね…」
すわり心地だけじゃなくて寝心地も凄いからね、間違えてもマットレス代わりに使ってはいけない、形は好きに変えれるので皆には無難にサイコロ型のクッションを一つずつプレゼントしておこう、ただしどうなっても責任は取りません。
ファイティングチェア
200キロオーバーのマグロや400キロのカジキを釣り上げるのに必要な物
空間に固定するタイプなので持ち運び可能、長時間座っても疲れないしお尻や腰も痛くならない
色々と多機能にしたら値段が跳ね上がった、当然身内価格、横流し厳禁
駄目にしたクッション
駄犬とひよこちゃんとぽっぽちゃんの素材を余すところなく使ったクッション
暴れる狼三姉妹をこのクッションに放り込めばイチコロ、1分も経たずに眠り始める
駄目にしすぎるのでマットレス代わりに使うと酷い事になる




