キングなやつ 責任を持って食べよう
「あっ!」
「うぇっ!?わ、私何か間違えてました?」
「あ、いや、ちょっと忘れてたことを今思い出しただけ、もう過ぎたことだから仕方がないけど」
いかんいかん、今になって思い出すとは…せっかく作ったのに他の楽しみ方で味わうを忘れてしまうとは…しかしもう食べきって残っていないのでどうしようもない、また今度作った時にやればいいか。
ただそのままのチャーシューと、炙りと、燻製にしたので3種のチャーシューを楽しめるようにするのを忘れてたくらいだし、また今度似た様な物を作った時にやればいいか。
「そうですか…あぁ、びっくりした…」
「まあ些細なことだし、気にするような事でもないんだけどね、ふと急に思い出したってだけで」
「有りますよね、やろうかなーって考えていたことが、ふとした拍子に飛んでいってしまう事って、それで思い出そうにも何を考えていたかも忘れて、そもそも何のためだったかすらも忘れてしまう、それで必死に頭を捻って思い出したらなんて事のない場合がほとんどだったりと。
大抵の場合はもうそのまま忘れたままの物の方が多いと思いますけど」
「そうそう、そんな感じ、今回のはそれを急に思い出したやつだね、特に重要ではないけど、忘れてなかったらもうちょっと楽しめたかなーって」
ラーメンにせよそばやうどんにせよ、トッピングの種類が一つ二つ増えるだけでかなり変わるんだよねぇ…麺とスープだけしかない状態と、刻みネギを散らしている物では全然違う。
刻みネギ、メンマ、チャーシューと乗せて、そこにさらに煮卵が乗ったり、海苔が1枚乗ってくるだけでも変わってくる、同じトッピングの具材でも炭火で炙ったり燻製にすれば…組み合わせが増えるのは悪い事ではない、悩み抜いた末に選べなくなることも有るが、ここはお店ではないし、食べたい物を食べたい様に食べればいい、もちろん食べきれる範囲と言う極々普通の事は守って貰わないといけないが、食べ残したとしても作った私が責任を持って食べるので問題なし、遠慮なくいろんな組み合わせで味わってほしい。
まあ、限界を超えて食べた結果、屋敷と似た様な光景が庭に出来上がっているが…いくら癖になる味だからって、毎日毎日鶏皮を食べたらそりゃねぇ…脂の抜けきったカスとは言え、抜けきって軽くなっているが故に太りやすい、ただの焼き鳥としての鶏皮であればあれほどは食べないだろう、ただサクサクのスナック感覚て食べれる状態になっているアレは…
癖になる味の誘惑に勝てなかった4人は、少しずつ少しずつ…目に見えない範囲から悪魔に取り憑かれ…まだ大丈夫、まだ大丈夫だと自分に言い聞かせ、さらなる悪魔の誘惑に耐えれず、来る日も来る日も鶏皮をサクサクサクサクと…そして来る審判の日…体重計に乗った彼女達は…悪魔は今も彼女達の上で微笑んでいる、無駄についたお肉が落ちるその時まで…
「まあ、物には限度と言う物が有りますよね」
「アヤカは特に変わってないよね」
「確かに美味しいですけど、頼めば何時でも出てくるからって毎日食べる様な物ではないかと、それもおやつ代わりにと。
逆に言えば頼めば出てくるのですから、我慢できずにどうしても欲しくなった時に頼めばいいのです」
「まあ、そうだよね、で、今日は何を御所望で?」
「砂糖ほぼ無しのイチゴ大福、イチゴ大き目で」
「材料買ってこないとねぇ」
「後1セットやったら休憩ー!」
「脂肪を燃やせぇぇぇぇ!」
「ふっ…ふっ…ふっ…!」
「はひぃ…はひっ…ひいぃ…こんなの…初めて…」
家の中に運動をするような場所は無いのでお庭の一画で運動に勤しむアイナ、アスカ、アリス、アキラの4人。
アイナとアスカはまだまだ余裕あり、アリスは黙々と、アキラは…明日は筋肉痛で1日中ベッドでお休みコースかなこれは…
「あ、お出かけですか!行ってらっしゃいませ!あと5回!ペースは上げず落とさず!1!2!3!4!5!…ゆっくり深呼吸して休憩!」
「だはぁぁぁ!疲れたぁ…」
「はぁ…はぁ…すうぅ…ふうぅ…」
「ひゅー…ひゅっ、ひゅー…ひゅー…」
「はいはい、アキラ、ゆっくり深呼吸して、ゆっくりと呼吸を整える、アリスを見習いなさいな、乱れた呼吸がもう落ち着いてますよ」
「い…いわれ…ても…きゅ…きゅには…そ…それにしても…なんで、アイナは…息切れ1つ…してないの…」
「慣れです、今回は不覚を取っただけで普段から適度に運動してスタイルを保ってますから」
「そ…そですか…」
別に運動が苦手なわけではなさそうだったのだが、ただこういう運動になれていないだけか?
まあいいか、帰ってくる頃には復活しているだろうし、今日の夜、就寝時間前までは普段より少し元気な位にはなっているだろう、明日が駄目なだけで…
さ、買い物買い物、もち米と小豆…それと大きめのイチゴ、それと夕食に使うお魚と…掘り出し物とお勧めの物次第だなうん。
「あー、タイミングが悪かったなぁ、今日の良さそうな物は全部捌けちまったよ」
「あらま」
魚はまだちらほらと残っていれど、数が足りないか小ぶりな物ばかり、これは参ったね…
「今日はちょっと朝から色々と飛び込みでこれを刺身にこれを刺身にって、片っ端から持って行かれてなぁ、何処かで宴会か何かやるらしくて追加であれもこれもと」
「まぁ、無いものは仕方ないね、じゃあまた今度」
「はいよ、また来ておくれ」
ふぅむ、さて困ったぞと、お菓子の材料は確保できたが、夕食のメインとなるお魚が欠けてしまった、屋敷に戻って取ってきてもいいけど、海だとちょっと多すぎるし、屋敷と分けたとしたら少ないし…うーん…川魚でも良いかなぁ…?
レジでお会計を済ませ、珍しくクーラーボックスは空のまま帰宅、なんにせよまずはお菓子からだね。
もち米を蒸しましてー、その間に小豆も炊きましてー、イチゴはヘタを取って冷蔵庫ー、よし、後はもち米が蒸し揚がるのを待つだけか。
小豆を漬けておく蜜も甘みが感じられるかどうか程度、甘味が足りない人用に羊羹も作っておくか、とはいえこっちも程々で、お茶も渋めにしておけばあまり砂糖はいらないだろう、特に外で運動している4人には…疲れた時に甘い物は悪くないんだけど、甘すぎるのもちょっとねぇ…
もち米が蒸し揚がったのでもち米を臼に移し、杵軽く押し潰しで結着させ、結着したら水をはたきつつ只管つく、つく、つく、つく、水をはたく…
「何をやってるんですか…?」
「うん?お餅ついてるの、おやつはイチゴ大福が良いって言ってたから」
片手で扱えるように作った杵を片手に餅をつき、空いた片手で水を叩きつける、1人だと座りながらできるのが良い所よねこれ。
ぺったんぺったんとお餅をつく手は止めずに運動を再開している4人の方を眺めつつ質問に答える、もっときめ細かくなるまでつかないとなぁ、荒くついたのもあれはあれで美味しいが、おはぎっぽくなっちゃうしなぁ、ダイフクはやっぱきめ細かくなってないとね。
「いえ、そうではなく、お餅をつくための機械を使えばいいのでは…?機械任せでおいておけばその間に他の事ができますし、置いていないのでしたら取り寄せましょうか?売り物にもならない型落ちが幾らか有りますし」
「あー…あれねぇ…滅多に使わないのと、もし時間が足りないってなったら人数を増やせばいいのと、家庭用のアレだと一度につける量がそんなにだし、結局これに落ち着いたんだよね、少量から大量までこれ一つで対応できるし」
何より餅つき機を使うより早く終わる、そして必要な時はとにかく大量に必要なので餅つき機だと家庭用ではなく業務用を用意しなければいけない、そして業務用も業務用で時間がかかるので…
「まあ一通り試した結果これに落ち着いたと思ってくれれば…よし、お餅もつき終わったし戻るか」
「え、もう?まだ3分も経ってなくないですか?」
「こんなもんだよ、急いでる時はもっと早いし人数も増やすし、まあダイエット頑張ってね」
つき立ての御餅取り出し、片栗粉を入れてあるタライに移し、使った杵と臼を洗って干しておく、片づけに関しては…機械も臼と杵もどっちもどっちか…
つき立ての御餅は一旦置いておいて、蜜に漬けて置いた小豆の半分をこしあんに、もう半分ほどは小豆の粒をある程度残しつつ羊羹用に。
羊羹用は一度に固めると底に小豆が固まるので少しずつ何回かに分けて、固まるのを待っている間にこしあんでイチゴを包み、その上からさらにお餅で包めばイチゴ大福の出来上がり、お餅がまだ余っているので、そろそろ食べないとなぁ…程度に黒くなり始めたバナナを適度な大きさに切り分け、餡子はもう無いのでお餅で包んだ後ホイップクリームを注入、うむ、イチゴ大福とバナナ大福が10個ずつ、お一人様一個ずつで羊羹も10等分で丁度いい位だな。
…あれ、足りなくない?今日はロザリアが戻ってきているから…葵さんのロザリアの恵里香さんの…新人さんの…材料は…もう残っていない、ホイップクリームが少々残っているだけ、イチゴはヘタしかなければバナナは皮しかない…参ったね…
「それ…美味しいんですか?」
「まあ、それなりに?」
それなりにと言えばそれなりに、だねぇ、余り物だし。
ヘタを取ったときに少しついているイチゴの果肉を取り、少量の水分で煮て僅かな香りを抽出、これでイチゴの香りのわらび餅が少々、濃い目の緑茶で作っただけのわらび餅が少々、最後に砂糖が少しだけ入った普通のわらび餅で3種のわらび餅のホイップクリーム和えの出来上がり、わらび餅自体も打ち粉に使った片栗の残りなのでほぼ無駄なし、問題はクリームを使い切っちゃえと和えてしまったのでほぼ白一色と言う事か、わらび餅だけでも別にしてクリームをつけて食べるようにすればよかった…器もホイップクリームを作ったボウルをそのまま使ってるしね。
「豪快なんだか繊細なんだか…よく分かりません…」
「人に出す物じゃないしね、余り物を使い切る、食べきるってなったらまあ大体こうなる、洗い物も減らせるしね」
「なるほど、そうやって節約を?」
「いや別に、手を抜ける所は抜いているだけ、人に出すのなら見た目とか器とかを気にするけど、自分で余り物を食べるだけなら気にしてもねぇ…?」
「そういう物ですかねぇ?」
「クッキーだ何だと焼いている時、焼き立てをお皿なんかに入れずにそのままとって食べたりするでしょ?そういう物だと思えば」
「あー、そうですねぇ、焼き立て、出来立てなんかは特にそうですね、いちいちお皿に乗せて食べたりしませんし」
ん、これはイチゴの香りのわらび餅、やっぱり香りだけだと今一だなぁ、この中で一番美味しいのはしぶめの緑茶わらび餅か、イチゴの香りは残念ながら…果汁をわらび餅にしたら違ったんだろうけどねぇ、でもそれなら水饅頭で包めばよくない?って、何ならそのままでよくない?って言う…
不味くもなく、美味しくも無く、やや微妙の今一つ、評価が難しいな、ホイップクリームだからまだいいんだろうけど、黄粉だとイチゴの香りは不味い寄りになるだろう、黄粉の香りとイチゴの仄かな香りが喧嘩してそれはもう…イチゴその物ならそうでも無いんだろうけど、これはわらび餅だしね…
「1個貰っていいですか?」
「ましなのは緑茶、普通の奴はまあそれなり、イチゴの香りは今一つ」
「どれがどれだかわかりません…」
「クリームの中に埋まってるからね、適当に刺してくっ付いてきたのをどうぞ」
何が付いているか分からないドキドキ感も楽しめるが、あまり期待しすぎると肩透かしを受けるので程々にね。
さて、おやつが終わったら夕食の材料を釣りに行く準備をしないとね、マスでもいいけど…ヤマメなんかが釣れるといいな、たまには黄金いくらも食べたいし、釣ったばかりの物を直火で塩焼…虫の心配なんかも無いからお刺身でも行けるし…昆布締めも良いな、黄金いくらとヤマメの昆布締めをご飯の上に乗せて…よし、ヤマメが釣れたらこれで行こう、マスでも同じ物は作れるし、マスならマスでマス寿司、なんて洒落込むことができるね、まだ何が釣れるかはわからないけど、楽しみだなぁ…
「ちょっと夕食の材料釣ってくるね」
「はいはい、行ってらっしゃい、何か用意しておくものあるー?」
「特に何も?何か食べたい物が有れば材料を揃えて伝えてくれれば」
「そうだねぇ、まあ簡単なサラダ位だよね、枝豆とか」
「それはサラダと言って良いのかどうか…」
「要は野菜に塩やドレッシングをかけたり和えたり、そう言った物を一般的にサラダと言いますし、そこにハムが入ればハムサラダ、卵が入れば卵サラダと…
つまり茹でた枝豆に塩を振るだけでも立派にサラダ!」
「あ、はい」
「収穫して茹でるだけにしておくからよろしくー」
まあ、枝豆ならいいか、彩にも使えるし、小鉢に入れて出しても良いし、葵さんに張り倒されることもないだろう、ビールは野菜、つまりは飲むサラダ!と言ってサラダがビールに、更には芋焼酎を芋もお野菜、そして芋は主食になりえる、ホットポテトです、飲む主食ですと言って芋焼酎の熱燗を主食に…
いやー、大元を辿れば野菜なんだろうけど、加工済みで液体になっている物をサラダとか主食と解釈するのはどうなんだろうねぇ…野菜ジュースならまだしも…発酵してお酒になってるし…結局張り倒されて普通の夕食になっていたが…
「あんな馬鹿は年に一度くらいしかしませんって、ちょっとしたお茶目じゃないですか」
「何でもかんでも極大解釈をすればいいってものじゃないと思うの…」
「あれは食事中に飲むのと食後にちびちびやるのを冗談でサラダや主食と言って出しただけです、野菜を食べたくない子供みたいにパンやピザが野菜、みたいなことは言いませんって」
「冗談も程々にね…?」
餌となる塩蔵のいくらを冷蔵庫から取り出し、釣りの準備はほぼ完了、ただ…いくら少し減ってない?
「ちょっと前にファイブAの子達が持って行ってたよ、ちょっと奥行けば山から直接川が流れてるしね、何も釣れなかったみたいだけど」
「まあ、いいんだけどね、無くなったらまた作ればいいだけだし、キーナイ仕掛けって手もあるしなぁ」
「またマニアックな呼び方を…何だったらファイブAを連れて行ってあげたらどうです?普通の川と思っていたら痛い目を見ますし、耐えれる道具を持っているか分かりませんけど」
「来るかどうかは5人次第じゃないかなぁ?そのうち4人はまだ庭で運動してるし、一応声をかけるだけはかけてみるか」
「行ってらっしゃーい、程々に小さなものを期待していますよ」
「程々に小さいのを期待されるのも何だかなぁ…」
「今から夕食を釣りに行くけど、アヤカはどうする?ついてくる?」
「え、今からですか?」
やる事が無くなったのか部屋でぼーっとテレビを眺めていたアヤカから誘ってみる事に、この様子だと…多分くるだろう。
「今から、場所は川ねー、行くなら適当に道具を持って廊下で待っててね、残りの4人にも声をかけてくるから」
「え、あ、はい、行きます」
これで1人目、さてさて、外で運動をしている4人の反応はどうかなー…
「残念ですが私は遠慮させて頂きます、アスカのお腹の周りについた脂肪を落とさないといけませんので」
「アイナだってお腹の周りに脂肪が…ついてなかったね、そう言えば、寧ろ引き締まってたくらいだね…」
「当然、しっかり運動、余分な脂肪を落とし常に引き締まった体形を維持しています、駄肉のついたアスカも触り心地は良いですけど…あまりぷよぷよしたままなのはちょっと…
と言うわけで監督していないといけないので、今回は見送らせて頂きます」
「はいはい、アリスとアキラは?」
「私は行く、それほど増えていないし、これ以上やっても多分あまり効果が無い」
「ひゅー…ひゅー…」
「じゃあ行こうか、行き先は川だから…アキラは欠席だね、行ったら流されていきそうだ」
おやつを食べる前と同じように瀕死の状態になっていらっしゃる…これは冗談抜きで明日はベッドで過ごすことになるだろうなぁ…酷ければさらにその翌日も…
「それじゃあアリスを貰って行くねー、夕食までには帰ってくるから」
「はい、行ってらっしゃいませ」
「行く前に先に軽くシャワーを…」
「多分濡れると思うから蒸しタオルで拭くくらいでいいと思う」
廊下で待っていたアヤカを広い、アリスの部屋の前で準備が終わるのを待ち、出てきた所でいざゆかん、夕食が潜む川へ…
「あら、ここは立ち入り禁止のあなたの部屋では…?」
「立ち入り禁止になってたの?」
「はい、何かいろいろと不味い物があるとか、見てしまった場合は自己責任と」
「別に何もないけどなぁ…まあ、入って入って」
「では失礼します」
「お邪魔します」
一体誰が立ち入り禁止令を出したのか…葵さんかロザリアのどっちかかなぁ…
「別に変わった物は有りませんね?」
「変わった物は無い、ただあそこに何故か扉が有る、隣の部屋には扉は付いてなかったはず…」
「あれは自宅と繋げてる出入口だから、あれが無いと帰るのにちょっと時間が掛かっちゃう…」
「どこでもなアレですか?」
「何所でもはいけないね、決めた所にしか行けないし、決められた所にしか戻れない、まあ一旦置いておいて。
まず今回使う餌がこちら、塩蔵いくら、狙うのはマス、もしくはヤマメ、とりあえず用意した竿とかを見せてー」
「川と聞いたのでこれです」
「私も、川と聞いたので、小型から中型用のライトルアーロッドを」
「アヤカは残念ながら…アリスが正解に近いかな、一発で折れるけど」
「川ですよね?それで狙うのがマスやヤマメならこれで十分なのでは?」
5メートルの渓流用継竿、こちらの川で使うなら申し分ないだろう、大きくてもなかなか尺いかないし、そこそこ大きいマスでも対応できる。
「じゃあこれは?良くしなる分切れにくい、限度は有るけど70センチあたりまでなら折れない」
「残念ながら…まあまだ時間は有るし、ここまで来てなんだけど一旦部屋に戻って道具を選び直そうか」
元気に大きく育ったマスやヤマメを相手にするにはちょっとつらい物がある、良くて糸が切れるだだけ、でも大抵の場合は竿が…折れても直せばいいけど、直した所でまた折れるしなぁ…
まずは一番近いアリスの部屋にお邪魔、道具をすべて見せて貰い、そこから耐えれそうな物を選ぶ。
「竿がこれのー、リールがこれのー、糸がこれ」
「マスとかヤマメを釣る道具ってこんなのでしたっけ…?」
「GTを釣りに行った時しか使わなかった道具…まさか再び使う事になるなんて、しかもマスやヤマメ釣りで…」
「まあ最低でもこれ位必要だね、今日は夕食用だからこれ位でいいけど、もっと大きいのを狙うってなると…特注でこれより軽くて頑丈で、糸も切れない針も折れないのを作って貰わないと駄目だね」
「え、これでも駄目なのがいるの?」
「釣ってみたい気もする…あの時釣ったGTだとちょっと物足りなかったし…」
「まあ、追々ね、道具が耐えても引きずり込まれたら意味がないし、身体を鍛えてからだね」
「じゃあ私も取ってきますね、私も同じような物を持ってますので、ちょっと引っ張り出すのに時間がかかりますけど…」
「はいはい、まあ部屋に戻って待ってるからごゆっくり、じゃあ先に部屋で仕掛けを作ってようか、そんなに難しい仕掛けじゃないからいくらをつける仕掛けが簡単にいくらでも作れるはず、いくらだけに」
「何か言いました?良く聞こえなかったので大きな声でいくらでも好きなだけ言って見てください」
「いえ、べつに…」
「まあ結構単純なんだよね、まず少し大きめの針、これと、蜜柑なんかを包んでるネット、それといくらの色に合わせたしもり浮き、それとイクラをかけるためのもう1本の針、重りは中通しでも噛みつぶしでもどっちでも、今回は中通しにしようか。
流れは急な所と緩やかな所があるけど、今回は比較的緩やかな所だから軽めで」
「道具持ってきました、今やっているのは…仕掛けづくりですか」
「そそ、必要な物は机の上に置いてるから真似してみてね、独自に弄ってもいいけど。
中通しの重りを通してサルカンを結ぶ、もう片方に糸を結んで大体60センチくらい、長くても1メートルくらいで切って、ネット、針、しもり浮き、針の順で。
で、完成した物がこちら、いくらをネットで包みまして、いくらに似せたしもり浮きでふよふよと浮きまして、ネットに隠してあるいくらの匂いに寄せられてきたやつがしもり浮きの部分、もしくはネットをぱくっと、めんどかったらしもり浮きと針だけで、針の部分にいくらを掛ければいいね、これなら針が一本で済む」
「私の知っているヤマメやマスを釣る仕掛けではありませんね…」
「これあれだ、キングなやつを釣る奴、それなら40lbを使うのも納得」
「問題は、2本針にして有ると2本同時に掛かる事も有るから、今回は1本にしておこうか、ネットが面倒ならこういうのもあるよ、中通しタイプの小さい籠、ここを開いていくらを5.6粒位、反応が良ければ2粒位かな?」
「じゃあそれで…糸を結んで籠を通して、しもり浮きと針、仕掛け自体は単純ですね」
「私はこっちでやってみる、籠じゃなくて本場の仕掛け、ちょっと楽しみ」
アヤカは籠、アリスは針を減らしたけどネットで仕掛けを作り準備完了、それじゃあ行こうかね。
「うわぁ…」「わぁ…」
「さ、頑張って夕食を釣ろうね」
「川は川でもこれは…」
「川幅広い…水深もそこそこ深い…でも底の方まで完全に透き通ってる」
「おーい、早く釣らないと今日の夕食は白ご飯と漬物だけになっちゃうよー」
何か感動しているのはいいけど、釣らないと本当にご飯と漬物だけになっちゃうよ?お味噌汁位は付くけど…
「あ、ああ、そうでしたね、釣らないと夕食が…」
「頑張る、頑張って大きいの釣る」
「大きさは程々にね…出来るだけ小さめの方が良いから…」
3人並んで、ではなく程々に距離を空けつつ、それぞれ自分の作った仕掛けを投入、アリスは大物を釣ると意気込んでいるが…まあ大きいのが掛かったらその時はその時か、多分竿が折れるか糸が切れるだけだ…引きずり込まれる事は無いだろう…
アヤカは待っている間に水を採取しているが、はて、何に使うのやら?
「反応が有りませんねぇ」
「反応が悪い時はいくらをちょっと増やせばいいんだっけ?」
「そうそう、2粒で駄目なら5粒、5粒で駄目なら最大10粒まで、あまり増やしすぎても意味はないけどね」
2粒で駄目なので4粒位に増やして再度投入、5粒はあくまでも目安、遠くにいるのを寄せてくるのが目的なので多すぎてもあまり意味はない。
場所を変えつつ、粒を変えつつ、色々試していた所でようやく何かが掛かったらしい、お目当てのヤマメか、それとも次点のマスか…どっちだろうなぁ…
「お、お、おおおー?結構しなってますね、糸もどんどん持って行かれてますし」
「かなり走ってるから一旦巻き上げて待機しておこう」
「あ、そうだね、走る時はとことん走るから絡んじゃうかも」
川の流れもなんのその、流れに逆らってとんでもない速度で遡る時も有れば、流れに乗ってさらなる速度で走る事も有る、大人しい時は大人しいのだが…
「こっちは回収しました、何か手伝うことあります?」
「あれ?根掛かりかな、何か引っかかってる?」
「あぁ、咥えこんでその場で止まっていたのね、一気に走り出すから踏ん張った方が良いよ」
「え?うわぁっ!」
「アリス!危ない!」
「うわあぁぁ!あっ…ありがと…」
「ベルト着けます?」
「欲しいかも…お腹抉れちゃう…後下が砂地で踏ん張っても引きずられるから離されたらすっ飛んでいくかも…」
「抱えたままベルトを取ってきて着けるとか無理なんですけど…」
「んー、こっちもちょっと時間かかりそうだし、アヤカ、パス」
「え?え?」
「アリスはこっちでどうにかするからちょっと竿お願い」
「あ、はい、ってうわぁ!そんな片手で軽く渡してこないで!これ絶対アリスの竿に掛かってるのより大きい!っちょ!持って行かれる持って行かれる!」
「ドラグを緩めでほぼ糸を出し切っても大丈夫よー、アリスは踏ん張る所とベルトが有れば行けそう?」
「な、なんとか…」
アリスを片腕で抱え、足場となる砂場に杭を打ち込み、腰にベルトを装着、後は足をかけて貰い具合の確認。
「こ、これなら…何とか…後はアヤカにサポートに回って貰えば行けそうだね」
「あ…ありがとう…ございます…重い…」
「はい、アヤカバトンタッチ、竿ありがとね」
「い、いえ…軽く数百メートルは持っていかれたような気がしますが…一体何メートル巻きですかこのリール…」
「元気なやつだねぇ、こっちには来なかったから上流の方かな?」
アヤカから竿を受け取り、ドラグを締めて再開、んー…糸の向く先は上流…これは滝を上って行ったな?
「アリスの方はもうアヤカだけで大丈夫?」
「あ、はい、踏ん張れる足場も有りますし、ベルトも有るので問題なさそうです」
「じゃあちょっと上流の方行ってくるね、どうにも滝を上って行ったみたい」
このまま無理やり方向を変えて引っ張ってもいいけど、滝から落ちたり跳び出して打ち身をされても困る…
「アヤカァ…手…手が…ちょっと握力が無くなってきたからちょっと変わって…ちょっと休憩させて…」
「ああああ!はいはい、今行きます!だからもうちょっと踏ん張って!」
何とかなりそうだね、さて、ちょっと上流の方まで走りますか。
「いやー、奥の奥まで突っ走って山の上の湖の方まで行っちゃってたよ、元々向こうにいたのが餌を求めてこっちの方に来てたみたい」
釣り上げた獲物を掲げてアヤカとアリスが見えるようにしながら砂浜を歩く、アリス達も掛かっていた魚を釣り上げて休憩しているようだ。
「お、おかえりなさい…大きいですね…」
「おおぉぉー…大きすぎません?」
「まあ本来こっちに下りてくるような大きさの奴じゃないしね、多分食い意地が張ってたんじゃないかなぁ?お腹もタプタプ、卵も結構抱えてるねこいつは」
大きさは目測で3メーター半、触った感じ卵も大量に抱えているし、これは夕食が豪華になるね、狙ったとおりのヤマメだったし。
「取りあえず釣った魚を持って屋敷の方まで戻ろうか、そっちは2人で運べそう?」
「今はちょっと…私もアリスも握力が完全になくなりかけてます…途中足を滑らせて引きずり込まれそうになったりもしましたし…パンツまでびしょびしょです…」
「帰ったらまず夕食の前にお風呂と着替え…このままだと風邪ひいちゃう…でも動けない…」
岸辺には2人が釣り上げたらしきまずが横たわっている、まだ生きてるけど。
「しかしこのサクラマス…海も無いのに何所で育ってきたんでしょうね…」
「そもそも…見た目はそれっぽいけど…こ…この大きさで…サクラマスや…ヤマメと同じであると…同定していいものか…」
「アリスは消耗が激しいねぇ、ちょっと屋敷で休憩してから戻ろうか、お風呂と着替えも用意しないとだし」
2人は完全にへばっていて立ち上がるのも辛そうなので、何人かメイドを呼び出し、道具や打ち込んだ杭を回収、ついでに2人をお風呂に入れて貰うように頼んでおく。
こっちはこっちで2人がお風呂に入って癒されている間に釣った魚を三枚に下し、塩焼き用、お刺身用、昆布締め用と分け、マスの方も薄切りにしてマス寿司用と少し厚めのお刺身用と用意、薄切りは多めに作って置いてスモークも作ろうかな?
「はぁぁー…極楽でした…」
「失っていた握力もこの通り、ばっちり」
「それは良かった、もう捌いたりして夕食の準備は出来たから持って帰ろうか?
道具ももう先に向こうに持って行ってもらっておいたから」
「何か至れり尽くせりですねぇ…」
「今はお客様として来てるしね、そんな物だよ」
「つまりお客として居座る限りはずっとこの扱い…?」
「まあ、そうだね、滞在できる期間に限度は有るけど、1週間くらいなら滞在しても大丈夫だね、その次は何ヶ月か明けないと駄目だけど」
「はぁー…次の御休みはここで過ごしましょうかね…?」
「いいよー、釣りが好きなメイドも居るし、誰か誘って釣りに行っても良いし、既に釣りをしている所に混じっても良いし、本も沢山あればあっちに向こうから持ってきたゲームなんかも全部置いて有るし、2泊3日程度なら半月に1回程度はいけるね、あまり長期間滞在すると毒になるってだけで、許容量を超えて毒になった分が抜けるのに時間がかかるくらいかな」
「毒って…何か病気になったりとか?」
「いや、病気にはならないけど、少しずつ慣らしていかないと急な体質の変化に耐えれなくて高熱が出て意識を失って倒れます、意識を取り戻した後はもうなんて事は無いけど、まあ追々ね、葵さんなり恵里香さんなり、ルシフに聞いても良いし、何も知らないまま過ごしたとしての何の問題もないし、その辺はお任せだねぇ」
「何かあったら相談してみる事にします」
「私は…今すぐ聞いてみようかな、ルシフさんなら教えてくれそう」
「じゃあ私とアヤカは先に戻ってるから、帰りはルシフにでも送って貰ってね、じゃ後はよろしくー」
「はいはい、任された、じゃあアリスちゃん、ちょっとそこの部屋でお話ししようね、お茶も用意するから」
「はい、お願いします」
さて、夕食を作らないとなぁ…ヤマメの刺身に昆布締め、黄金いくらを使った丼に親子丼に…アリス達がマスも釣ってくれたのでマス寿司も出来るし、結構豪華な夕食になりそうだ。
「綺麗な金色ですねぇ…こちらも濁りの無いルビーレッド…いえ、色はそれより濃いのに透き通っていて…これは何所のいくらですか?」
「金色のがヤマメから取った黄金いくら、そっちのはマスから取ったマス子、ほぼいくらと変わらないけど。
食べ方はご自由に、いくらだけで味わっても良いし、お刺身と一緒に食べても良いし、親子丼にしても良いし。
さっとお湯に通してしゃぶしゃぶ風でも七輪で炙っても」
「ここは天国か何かですか?」
「お酒もちゃんと用意してあるので明日に引きずらない程度にどうぞ」
んー…黄金いくら単体でも贅沢だと言うのに、半々くらいで混ぜたマス子の赤も中々…勿体無いと思う人は…まあここには居ないね…黄金いくらだけでキロ単位、マス子もキロ単位、切り身に至っては10キロ単位…頑張って食べようね…残ったら残ったで日持ちするように加工するけど。
「ただいま戻りました」
「あー、おかえりー、特に大した話でも無かったでしょ?」
「そうですね、ここが夢の世界で庭を飛んでいる蝶が本当の私と言われる位には大したことある話でした」
「アリス、アリス、胡蝶の夢と何か別の物が混じってない?」
「まあそれくらいにはびっくりした、と言う事です」
「最初は皆そうだよねー、特に気にしてなかった葵ちゃんとかロザリアちゃんもいれば、この先ずっと遊んでも大丈夫!?って言った恵里香ちゃんもいるし」
「ルシフこっちで食べるの?」
「うん、何か限界に挑戦、これがピザの中のピザだってピザ塗れになってたから逃げてきた。
ピザの中のピザって、大きなピザの中に普通サイズのピザをいくつも入れてるんだよ?何かいろいろ間違ってるでしょ、字面的には有ってるんだけどさ、いうなればピザで作ったマトリョーシカだね」
「美味しそうなんだかそうじゃないんだか…」
「味は良かったよ、野菜たっぷりの外側を食べると中からエビや牡蠣のピザが、それを持ち上げてみるとその下のには定番のサラミとか…
でもマトリョーシカよろしく段々小っちゃくなっていくんだよね…」
「まあ…うん…ゆっくり食べて…それはそうと、アリスー」
「はい、なんです?」
「マスはまだ皆手を付けてないから好きなのから食べてね、釣った人の特権」
「あ、はい、じゃあお刺身から…」
釣った人より先に食べるってのもあれだしね、疲れて倒れ込むまで頑張ったみたいだし、そんなアリスより先に食べるというのは流石にちょっとねー。
アリスがお箸をつけたことでマスにも一斉にお箸が伸びてくる、マスの方も気になっていたらしい、身は綺麗な桜色、身は甘く口の中でとろけ、旨味がした全体に広がり…
「はぁ…苦労しただけあって美味しい…」
「まだまだ沢山あるから好きなだけ食べてね、余ったら余ったで保存の利くマス寿司にしたり、スモークにしたりするから」
「はい、有難うございます」
んんー…たまには川魚も良い物だね、海の魚とは違った美味しさがあるし、水も綺麗だから泥臭さも無い、釣りに行ってよかった、うん。
夕食後は余ったマスを使い、笹の葉で包んだマス寿司を作り、マス子も少々添えて置く、所謂お土産用、日持ちはするので今度5人が帰省するときにでも渡せばいいだろう、スモークサーモンも真空パックにして置いてと…同じようにヤマメの昆布締めも真空パックにして…黄金いくらも一瓶つけて…こんな物かな。
さて…まだ手を付ける事無く残っているマスとヤマメのお頭、半分以上残る切り身、お土産にしてもまだまだ余っているいくら…は置いておけば皆食べるから冷蔵庫。
マスは塩漬けにして朝食に使えるので塩漬けに、ヤマメ…ヤマメー…ヤマメはー…頑張って食べようか、釣って持ち帰って捌いた以上は責任を持って食べる、取りあえず飽きない様に種類を増やさないとね…まずは天ぷらからだな…
「そう言えば持ち帰ろうとした水がなくなっていたんですけど、何所に行ったか知りません?」
「あー、あれね、アヤカちゃんの部屋の冷蔵庫に入れてあるから、後はご自由にどうぞ」
「あ、それは助かります、有難うございます」
「美容に使うなら洗面器一杯の水に行ってき垂らしてタオルに染み込ませて肌をふけばすべすべもちもちに、肺が悪いのなら沸かしてちょっと立ち上ってきた蒸気を軽く吸い込めば綺麗な肺に、胃や腸、その他内臓が悪いならコップ一杯飲めば健康体に、というかコップ一杯飲むなり全身に浴びるなりすれば全部マルッと解決だけど」
「何ですかそのどこかのこれを飲めば必ず治ると言われている怪しい水のような効果は…」
「今こっちで出回っているのはもう効果があるかないか分からない位まで薄められた物だね、お酒にしても水で嵩増しして誤魔化して売るって言うのが昔あったじゃない?あれと同じ。
最初に持ちこまれたのはアヤカちゃんが試験管に入れたより少ない量だった、なのに今はそこら辺中で出回っている、まあそう言う事だね、そんな状態だから効果が出たとしても風邪が予定より1日早く治ったとかそんな程度、体外に汗として排出される前に10トン位飲めば食中毒位は治るんじゃないかな?ハハハ」
「と言う事はあの試験官に入っている奴は…?」
「いうなれば原液?ただ検査しても何も出てこないけど、分類上はただの水だね、もし持ち出す場合は注意してね、あっちでもこれに近い温泉を詰めた瓶を流通させてるけど、あちらはちょっとした美容とか若返りだけ、それでも輸送している馬車を襲う人も居るからねぇ、そういう人には全く一切効果は無いけど。
アヤカちゃんの部屋にあるのは若返りだけじゃなく、それこそ病気や四肢の欠損まで治るから」
「嘘ですよね…?」
「うん、嘘」
「あぁ…びっくりした…そんなトンでもない物を持ち帰ったのかと思ってしまいました…」
「そもそもアヤカちゃんもアリスちゃんも半身浴状態になってたじゃない、そんな効果があるなら疲れだって飛んでるよー」
「ですよね…釣り上げた後力が入らなくなって疲れで倒れてましたし…じゃあ出回っている云々と言うのも?」
「普通に嘘だね、よくある詐欺の手段の一つだね。
あ、でも温泉のアレは本当、水自体が善か悪か判断して効果の良し悪しを変えるから、水が清くていい人と判断すればすごく若返る、こいつは悪いやつ生きているだけで不幸をばら撒くと判断すれば急激に老いていくね、だから馬車を襲う人ももう居ないよー」
「人の善悪で量っていないのであれば私はーって試す人が多そうですね…美容と若返りは何時の時代も追い求める人でいっぱいですし」
「まぁね、なんにせよ汲んだ水はちょっと身体にいいだけの美味しい水、夏場なんかにかき氷にして食べると最高に美味しいよ、それこそシロップなんていらない位」
「それは…ぜひ試してみたいですね、夏と言えばかき氷、これを無くして始まりませんよね」
「んだんだ、何ならお風呂上がりにちょっと早めのカキ氷と洒落込むかい?ちょっと水を汲んでこないといけないけど」
「いいですねぇ…お供します」
「それで水を汲んで凍らせに来たと、かき氷もいいけどこっちも手伝ってくれない?」
目の前にはヤマメの天ぷら、刺身、洗い、昆布締め、黄金いくらと刺身を一緒に漬けた物、炙り、しゃぶしゃぶ、漬け、塩焼…果てにはタイそうめんならぬヤマメそうめんまで、思いつく限りのヤマメ料理尽くし、まだ終わりが見えない…
「あー、何か少ないなーと思ったら出してなかっただけかー」
「うちのメイド達じゃあるまいし、全部は無理でしょ、と言うわけでルシフ手伝って?」
「今口の中はかき氷気分なんだよね、お風呂上がりに削りたてをシャクシャクっと、だから今日は付き合えないや」
「あ、そう…」
断られてしまった以上は仕方がない、1人で食べるかぁ…
「目測でも3.5メートル、その半身ともなればあれだけで済むはず有りませんものね…」
「マスは全部加工したんだけどね、あっちに帰省するときのお土産用で包んであるから、家族の皆さんとどうぞ」
「あ、有難うございます」
「じゃあ私は頑張って食べ続けるから…」
「はいはい、じゃあ私もこれで、それじゃアヤカちゃん、一緒にお風呂入ろうか」
「え、あ、はい、お世話になります?」
ルシフはアヤカを連れてお風呂に行ってしまった…うどんのように流し込むような物でも無し、食べきるのにどれくらいかかるかねぇ…
「そう言えばあの方…あれ全部食べきれるのですか?」
「まあ余裕だね、全部食べきっても体重も増えなければ体形も変わらないね」
「何というか…女の敵みたいな方ですね」
「ハハハ、耳が痛いや…」
3種のチャーシュー
手を加えていない物、炭火で炙った物、燻製にした物
チャーシュー麺メインなのにこの大事な物を忘れていた
悪魔の誘惑
魅惑のサクサクパリパリ、いくらでも食べれる鶏の皮、時には塩味、時にはにんにくの香り
おやつ感覚で食べるとしても限度と言う物がある
飲む野菜
野菜ジュースではない、極大解釈して元が植物ならそれで出来た物は野菜やサラダだと言い張る事
大事なのはそれが植物から云々ではなく、ちゃんと食物繊維やバランスが取れているかどうかである…
ダイエット
コデック式ブートキャンプ、毎日続ければ少しくらいなら食べすぎてもスタイルが維持できる、体重はほんの少し増えるけど筋肉なので問題なし
特に楽しくはないけど特別な器具は一切いらない、必要なのは水の入ったペットボトル2本だけ、物は使いよう、ダンベルが有るならダンベルで
キングなやつを釣る奴
アラスカ仕掛けともキーナイ仕掛けとも、間違っても普通のヤマメやマスを釣るための仕掛けじゃない
なお小さくてもキングなやつより大きい
ヤマメ
体長1メーターから5メーターまで育つ、大きいのは大抵滝の上にある湖やその下に流れる川に生息、たまに滝を下って餌を求める
餌を求めると考えられているが、実際のところ何を食べているかは不明、胃を切り開いても見つかるのは餌に使った物のみ、結構不思議な生態
サクラマス
海も無いのにサクラマスになっちゃったヤマメ、川を下った先は山頂に通じており、ずーっと循環しているので海に出る事も無い
ヤマメはヤマメのままなのにどうしてサクラマスになったのか、多分あいつと私は違う、別の生き物だと思い込んでいたのかもしれない
アリスとアヤカが協力しつつ交代しつつ釣り上げたのは1.8メーター位、アリスより遥かに大きく当然アヤカよりも大きい
パンツがビショビショ
引きずり込まれたりした時に下半身までで済んだのは幸いか、引きずり込まれて流されたとしてもすぐに救助が入るので死にはしない、竿も回収してくれる
間違っても家に帰った時に激しすぎてパンツがビショビショに濡れた、などと言ってはいけない、事実ではあるか多分に勘違いを発生させるため
ピザの中のピザ
大きなピザの中に少し小さくなったピザ、その少し小さくなったピザの中にさらに小さくなったピザ
字面で言えば確かにピザの中のピザである、形的にはシカゴピザ、内部構造はほぼマトリョーシカ
女の敵
どれだけ食べても太らない、体重も増えない、体形も変わらない、全世界の女性の敵
ルシフや狐さん、ディアナからユノーに至る初期メンバーも全員体重も体形も変わらない




