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たまには嫉妬だってする 何…この差は…

「それで、小アジ以外は鳴かず飛ばず、アジ以外は2匹しか釣れなかったと。

運が悪かったなぁねえちゃん」

「だねぇ…あ、そこにあるサバ、それとあそこの小エビを2つ入れといてー」

「はいよ、まあまた今度市場で他にも何所か良い穴場が無いか聴いといてやるよ」

「あ、それは助かる」

「おう、楽しみにしとけー」

 お買い物ついでに釣果報告、小アジ以外はマダイとなぜか釣れたクロマグロくらいだもんなぁ…一緒になった女の子達が釣った物を貰えたから最終的に種類は豊富になったけども…ちょっと情けない結果だなー、とは思えなくはない。

 根魚にイカにヒラメにカレイ、それと女の子達から貰ったスズキやらタコやら…他にも魚種は豊富にいるはず、だったらしいんだけどねぇ…こればかりはもう運か、何時魚が何を食べるかなんてその魚の気分次第、それこそ狙った魚が確実に、投げれ入れたらどんなに遠くにいてもすぐ寄って来て食いつく、なんて餌なりルアーなり、そんな物ができない限りは穴場で釣れると言われる所に行っても釣れないときは釣れない、餌なり仕掛けなりを変えることでそれに近づける事は出来るが…

 針まで食い込んでくれないと釣れないから…まあ時の運か…

 値札を出して貰いレジに持って行き支払いを済ませ、クーラーボックスを回収して帰宅、今日は味噌煮かそれとも砂糖醤油酒味醂生姜の煮つけの基本か…小エビはから揚げかガーリックオイル焼きか…鯖に合わせるならから揚げか…お野菜はいったん屋敷に戻って収穫してくるとして…

 うんうん考えながら帰宅し、鯖は煮付け、エビはから揚げ3種と決めた所で一旦屋敷に戻り、大根にレタスに生姜、唐揚げ用のにんにくにゴマ…お味噌汁に入れるネギに人参、しめじといろんな野菜を収穫。

 野菜たっぷりのお味噌汁に煮付けにエビのから揚げ3種、うむ、昨日がマグロ尽くしで贅沢だったからこんな物でいいだろう。

 収穫した野菜を持ち帰り、大根の一部を御味噌汁に流用、大根、人参、白菜、ネギ、しめじをかつお出汁で煮込み、お味噌は夕食に出す直前に入れる。

 鯖は骨を綺麗に取り除き、砂糖、醤油、味醂、酒、生姜を入れて少し煮る、砂糖が溶け、灰汁が出てきたら灰汁を取り除き、火を止めて仕上げは夕食前に。

 エビはまだ生きているので水に漬けて綺麗にして置き、夕食前に酒で絞め、にんにく入り、炒りごま入り、どちらも無しのから揚げ粉の3種で揚げるだけ。

 昨日が昨日だったし、これでも十分なんだけど…お酒位は少し良いやつを出そうかな…


 夕食の仕込みを軽く済ませ、ちょっと良いお酒を取りに海までお出かけ、船に乗ってお酒を隠している沈めている所までは来た物の…10年分と50年分…どっちがいいか…それ以前に少し前に出したのは何年分だったっけ…

 少しずつ思い出しながらどれを引き上げようかを考え、怪しい記憶を辿ると以前に出したのは多分20年分と答えが出たので、少々奮発して50年分を5本引き上げ、海の家で瓶の洗浄と中身の確認、酢になっていることも無く香りも上々、瓶もひび割れ等は無しで詰め替えの必要も無し、冷やして飲むほうが美味しいので、氷水を入れたクーラーボックスに入れて夕食時まで置いておく。

 んー…質素な夕食がお酒を追加しただけでかなりの贅沢な物に早変わり…釣り合いをとるなら1年物でよかったかもしれない…引き上げて夕食に出す準備をしてしまった物は仕方ないし、もうこのまま行こう。

 クーラーボックスを葵さんの家の調理場に運び込み、出来るだけ目立たない片隅の方に、見つかった所で今すぐ飲む、なんて事にはならないだろうけど、1本減っているという事が無くもない、念の為に持ち出したら夕食とお酒抜きと張り紙を付けて置く、多分これで大丈夫…なんじゃないかなぁ…


 色々と準備が終わったので庭で釣り道具や昨日使ったキャンプ用品のお手入れ、割りばしは燃えるゴミに、魚の骨は肥料に、汚れたボウルや飯盒は水場で洗い、七輪の網も洗って日当たりの良い所で干しておく。

 釣り竿やリールはそのまま水洗い、ルアーや仕掛けも手入れの必要が一切なく、汚れた時に水洗いするだけでいいのは楽で宜しい。

 一通り細かい物を洗い、干した所で次は少々大きなもの、テントを取り出し、張ってある布を剥がして砂を落とし、塩を洗い流す…つもりだったのだが…

「…もしもし?」

『あー、やっと繋がったー』

「えーと、どちらさまで?」

『あー、えーっと、その携帯の持ち主…と言っても分かりませんよね。

昨日一緒に釣りをしていた…で合っていますよね?少し声が高いような気がしますが』

「5人組の女の事一緒の所にいた、と言えばそうだね」

『そうそう、その一人です。

で、携帯を取りに行きたいので今からお伺いしてもよろしいでしょうか?』

「あー、ちょっと待ってね、家主に聞いてみるから」

『あ、はい』

 電話をかけてきた相手に少し待ってもらい、家の中に戻り葵さんに聞いてみる事に。


「葵さーんいるー?」

「どうかしましたか?」

 葵さんなんか反応速度上がったなぁ…ノックする直前、あおの時点でもう扉が開いてたし…

「いや、なんかね、この携帯の持ち主が携帯を取りにここに来たいって言うから、家に上げてもいいのかなーって?」

「それは女性ですか?男性ですか?」

「女性だね、話しが本当なら昨日一緒になった子達の1人」

「なるほど、で、何故そのこの携帯があなたの所に?」

「さぁ…?テントを手入れしようと取りだしたら携帯が鳴っていたから出てみただけだし」

「まあ、詳しい事は相手から聞けばいいでしょう、一応許可は出しますが、住所とかは伝えてます?」

「いや、それはまだ」

「それまだ繋がっていますか?」

「相手が切っていなければ?」

「ではそれをこちらに、私から伝えておきますので、手入れの続きに戻っていいですよ」

「はいはい、じゃあ後お願いねー」

 携帯を葵さんに渡し、出しっぱなしだったテントの所へ戻りお手入れ再開、そんなに長い時間では無かったが、砂に付着していた塩が少なからず染みちゃってるねぇ…

 テントの中も少し魚の臭いがしているし、洗って乾かした後にでもちょっと香水を撒いておかないと駄目だねこれは…


 テントを洗い終わり、干していた所で葵さんが窓越しに呼んでいたので近づいてみる。

「携帯の持ち主ですが、住所をお伝えしたら今日中は無理、明日の昼頃にお伺いする、だそうです」

「ほむ」

「こちらからそちらに携帯を送ろうかと聞けば頑なにお伺いするの一点張りでしたが…一体何をしたんです?」

「んー…?特に何も?」

「何もしていない初対面の見ず知らずの人に対して、住所を聞いたうえで直接携帯を取りに来る、なんて何かをしたので無ければそうそう有りませんよ?

普通であれば交番の落し物経由で本人に届けるか、持ち主に郵送して終わりです」

「ふーん」

「声からすると随分若い女性のようでしたが、本当に何もしていませんね?」

「してないねぇ…強いて言えば小アジのから揚げを取られたり、料理器具やお米や火を熾す物を忘れてきた女の子達にお昼ご飯を作ったくらい…?」

「ではなぜあなたのテントの中に携帯が?」

「お昼の後何人かがテントの中でお昼寝したから多分その時…?

トコブシの炊き込みご飯にスズキの刺身に青竹焼き、ムニエル、青竹焼きで出たエキスを使ってのスズキのしゃぶしゃぶに私の食べかけだったタイの刺身に、小アジのから揚げに…イカ刺しやらイカリングやら結構食べてたし」

「なるほど…」

「流石に食べ過ぎたらしくてあまり動けそうになかったからテントに寝かせたくらいだね、暫くしたら復活して磯の方に来たから一緒に釣りはしてたけど」

「分かりました、シロと言う事ですね」

「一体何を疑ってるのさ…」

「あなたの事ですから、出先でふらっと女性をひっかけてきても不思議ではないなと、そう思っただけです」

「酷いなぁ…ひっかけてきた事なんて今まで一度も…」

 一度も…無い…はず…だよねぇ…?

 仲が良くなった事はあれど、自分からどうこうした事は無いし…自分から誘って連れ帰ったのって狐さんとかルシフとか、ディアナにミネルヴァにと初期メンバー…あ、リッカもそうか、誘っては無いけどエキナエアもそうだし、そう考えるとひっかけたことは結構…ある…?

「悩むのは結構ですが、一応明日のお昼頃、多分昼食前ですね、その辺りに来ると思いますので、昼食を交えて色々お話したいと思いますので、お昼は少し豪華な物にしてください」

「あ、はい、ご要望は?」

「肉ですね、肉の一番良いやつをお願いします」

「はい…」

 なんだろう…葵さんの機嫌が少々悪いような、何か気が立っているような…原因がよく分からん…


 夕食にお酒を出したら葵さんの機嫌は元通りになっていたし、本当に何なんだろうね…ロザリアに当たっている様子はないからいいんだけど、謎だねぇ…

 明日のお昼は葵さんの希望でお肉の一番いい物を使って豪華な物…うぅむ…見た目も大事となるとローストビーフは外せない、見た目も鮮やかな赤色を付けるとすれば生で美味しく食べれる部位も必要で…

 あまり考えても駄目だな…まずは一つ一つ片付けよう、ローストビーフに使うお肉をワインに漬けこみ丸1日…だと間に合わないのでちょっと時間を飛ばして時短して…途中で玉ねぎもスライスして一緒に付けて、豚の背脂を差し込んでいくのもいいけど牛自体の脂で十分なので無し、これを明日まで置いておき、お昼前にじっくり2時間焼けば大丈夫。

 そもそも豪華とは何を指して豪華にすればいいのだろうか…見た目か、お値段か、両方か…多分両方なんだろうけど…

 見た目の豪華さ…豪華…派手…贅沢…ふむ…

 ローストビーフの仕込みをしつつ考え抜いた結果、目の前で調理したばかりの物を出すのも一つの贅沢、また自分で好きな物を好きなだけ食べるのも贅沢であると答えを出し、明日のお昼はお庭でバーベキューと言う着地地点に到達、そうと決まれば一番いいお肉を各部位毎に10キロづつ、タレも少し拘り、味噌、醤油、ゴマ、下しの4種のタレ、生のお刺身でも食べれるので醤油にわさび、ネギにポン酢、粗塩なんかも用意。 

 お酒も今日は熟成50年分を出したが、明日はメイド達ですら滅多に口にできない物…純米大吟醸の500年物を出してみよう、甘口で飲みやすく、それこそジュースのように幾らでも飲める、少し前に仕込んだビールなんかも出来が良く、メイド達が水のように飲むのでこちらも採用、こちらも甘みが強く、苦味なんかはほとんどない、度数もかなり低いのでほぼジュースと変わらず…うん、これで行こう。

 ローストビーフの仕込みを終わらせた後、真夜中の海に繰り出し、ワインとは別の所に沈めてある大吟醸を引き上げ、容器を割れにくい瓶に変え、収納の中で徹底的に管理した状態で熟成を500年分進める…沈めてた期間を合わせると550年分くらいになりそうだが…誤差だな、誤差。

 続いて深夜の農場で大豆を大量に収穫、誰もいない加工場をフル稼働状態にしてどんどんお肉を作っていく、収穫した大豆約1トンに対して出来上がったお肉は全ての部位を合わせて40キロ程度…

 んー…やっぱり変換レートを無視して一番いいのを選ぶとそれほどできないなぁ…まあいいや、出来上がったお肉は熟成させて…熟成が終わったら余分な所は落として収納して時間を止めてー…

 最後にお掃除をして明日の準備は完了と…

 もう結構な時間だし…かといって明日やってたら間に合わなかっただろうし…早くお風呂に入って寝よう…あー、テントも干しっぱなしだった気もするなぁ…まあいいか…それより眠い…


「かなり眠くてちょっとつらいんだけど…」

「駄目です、少し位相手をしてください」

 お風呂に入るなり葵さんが飛びついてきたので受け止め、葵さんの言う通りに相手をする。

「この顔と、このすらっとした体つきと、この甘い声と、頼られると直ぐに答えてしまう甘い性格で、いたいけな何も知らない女の子達を籠絡したんですか?」

「いや、別に…」

「嘘吐き…」

 嘘じゃないんだけどなぁ…特に籠絡と言う部分、ただ食事を作ってあげただけだし…それにこちらには調理器具やら炊き立てのご飯やらが有ったし、お腹を空かせた子が困っているのなら…ねぇ?

 葵さんが胸にのの字を書きながら愚痴をこぼすので受け止め、機嫌が直るまで頭を撫で、マーキングされるように首筋に後を付けられたり、甘噛みされたりしながらも眠気に耐え、何とかお風呂から上がりお布団の中に潜り込むまでは意識を保つ事ができた。

 が…お布団に入るなり意識が飛んだのでその後の事はあまり覚えておらず、翌朝目が覚めると、隣で葵さんがあられもない姿で息も絶え絶えになっていた…突くたびにビクビク反応して面白くは有るのだが…涎やらいろいろ垂れているが…満足そうだし、何よりお昼からお客さんが来るのにこのままじゃ駄目なのでどうにか正気に戻し、お風呂に放り込んでこちらは昨夜仕込んだ料理の仕上げ。

 お布団などの選択は…恵里香さんに丸投げしよう、朝からお盛んですねーって顔で見てくるけど、恵里香さん達もこういうときあるからね?


 昨夜仕込んだローストビーフ用の肉をワインから引き上げ、塩を軽く振り、オーブンでじっくり焼くこと2時間、中は桜色のローストビーフの出来上がり。

 漬けて置いたワインや玉ねぎも煮詰めて味を調え、薄く切って盛り付けたローストビーフに少量だけ垂らし、盛り付けてある器の周りにソースで模様を描けば完成、食べる時に追加でソースを付けた時にも要は崩れるが、そういう物なので最初の印象付けのために有る様な物…だね、うん。

 ローストビーフが完成し、庭に運び出した所で時刻は12時前、そろそろ来客があっても良いこと間とは思うのだが…

「え、本当にここに住んでるの?」

「聞いた通りの住所だと間違いなく…」

「周りに建物は無いし、門が開いたから入って来ちゃったけど本当に有ってるの?」

「なんか怖い人が出てきそうな感じがする…」

「でも電話で話したのは女性だって…」

 うん?少し遠いが門の方から歩いてくる人が5人…一昨日船年まで一緒になった人達だね、何かに怯えてびくびくしながら歩いて来てるけど…

 暫くするとこちらに気づいたのか、小走りで駆け寄ってくるので出迎え、少し待ってもらい葵さんを呼びに家の中へ。

「あ、来たのですね、それでは参りましょうか」

「あー、うん、それはいいんだけど、その服装は…?」

「どこかおかしい所が有りますか?」

「おかしくはないけどおかしいとも言えなくはない?」

 たまに外食するときに着ていくドレスで着飾っているのだが、なぜかそのドレスを身に纏い、少し前に贈った指輪を薬指にはめ、戦闘準備万端と言わんばかりにやる気に満ち溢れている。

「それで、もう皆さまは食堂に?」

「いや…庭だけど?」

 食事の内容は伝えていないので食堂で食べると思っていたらしい…これ大丈夫なんだろうか…

「庭…最近は暖かいので立食も有りですか…まあ良いでしょう。

さ、エスコートしてくださるかしら?」

「うーん、本当にその服装でいいの?」

「構いません、あなたに釣られてきた子羊たちに格の違いをいう物を見せ付け、今後一切邪魔な虫がたからない様にするのも私の務めですから」

「後で怒らないでね?」

 葵さんに言われるがままにお庭までエスコート、この後が怖いなぁ…


「な…なるほど…それで…そんな…ぶふっ!」

「恵里香、後で私の部屋に来なさい、一晩中鳴かせてあげます」

「だ…だって、この場にあの服装できて笑うなって言う方が…あ、駄目、思い出したらまた…」

 やはりというかなんというか、ローストビーフだけならまだしも、積み上げられたお肉が食べ放題のバーベキュー会場と化した庭に、何所の社交界に行くお積もりですか?と言ったドレスで出てくれば…ねぇ…?

 女の子たち5人はお出かけ用のカジュアルな服装、恵里香さん達も季節に合わせた少し洒落た服装、葵さん一人だけ社交界にでも行くのかというような場違いなドレス…

 恵里香さん達は指を刺し、お腹を抱え笑い出し、女の子達はどう反応していいか分からず視線を逸らし、葵さんはコンロから立ち上る煙で目を点にし、口は半開きで固まり…

 これは誰が悪いんだろうなぁ…気合を入れ過ぎた葵さんか、笑い転げた恵里香さん達か、携帯をうっかりテントの中に忘れた女の子達か、それとも何を作ったか伝え忘れた私か…


「はい、これがあなたの忘れて行った携帯ね」

「あ、はい、ありがとうございます」

「はぁー…とんだ赤っ恥を掻いたわ、できればさっき見たことは忘れてね、今すぐにとは言わないから」

「あ、はい、努力します、でもお綺麗でしたよ?」

「ありがと、これでも努力は…最近はしてないはね、しない方が良いってわかったし」

「え、普段からこんなに食べていてあのスタイルなんですか?」

「こんなにー、ではないはね、普段はそれこそ白米にお味噌汁に焼き魚、なんてありふれたものが多いし、あなた達と食べてる物はそう変わらないわよ」

「一体どう過ごしたらそんなにいいスタイルが保てるんですか?」

「そうねぇ…」

 何やら携帯を忘れた子と話し込んでいる葵さん、何やら直ぐ打ち解けたようで、機嫌も悪くなく、ほぼ普段通りに戻っている。

 一体なんだったんだろうなぁ…


「お・に・い・さ・ん!

これお兄さんが作ったんですか?」

「んー?そうだよー、肉を使った豪華な物が良いって言うから、ローストビーフの仕込みをして、いろいろ考えた結果こうなった」

「私達からしたら手作りのローストビーフでもかなりの贅沢ですが、行き着く先がバーベキューと言うあたり、住んでいる世界が違うという気もしますね。

それこそフルコースや、普段口にできないような高級なお肉を使った分厚いステーキとか、都心部にある高級料理店の料理、って言う考えが出てきますもん」

「ふむぅ…」

「今ならんでいるお肉もスーパーじゃ変えないような別格な物ばかりのようにも見えますし、ある意味ではこれが本当の贅沢か…とも思えなくもないですねー」

「一番いいのをって事だったから結構奮発したからねぇ、まあ遠慮なく食べて行ってね。

一応全部の部位が生食可能だから、焼いて食べるのに飽きたらお刺身で醤油やポン酢にわさびや生姜、大根おろしなんかでどうぞ」

「これだけでもう何もかもが違いますよね」

「そんなものかねー?」

 そう言うのならそうかも知れないなぁ…


「それで、恵里香さん達は普段何所で釣りを?」

「そうだねー、私達は車があるから近くの波止場で釣る事も有れば、ちょっと離れた湖でルアーフィッシングとかもする事があるね」

「車かぁ…ここに住み込みと言う事は乗っている車はやはり高級車?」

「いんや、軽トラック」

「え?」

「私の愛車は軽トラックだよ、荷物の積み下ろしとか考えると軽トラックになるし、軽トラックが好きだし」

「なるほど、軽トラックなら荷台に釣り竿、クーラーボックス、キャンプ用品、他にも色々詰み込んでもまだ余裕が有りますもんね」

「そそ、継竿ならセダンや軽なんかでもいいんだけど、1本物だと車内が余程広くないと無理だからねぇ、それで前の車の時に昔3本くらい折ったし…」

「あー…分かります…普段は良くしなるのに、積み込もうとして天井にちょっと当たったりした時にバキって行くんですよね…」

「そうそう…3本折ってからはもう継竿だけにしたけど、今は車を変えたから1本物も使ってるね」

「私も免許を取ったら車は軽トラックか…」

「まあ余裕があればジープなんかも良いと思うよ、ボートを牽引できるしね」

「そうですねぇ…」


「え、ってことは先輩?」

「になるんじゃないかな?」

「じゃあサークル棟にあるあの道具一式は?」

「あれは恵里香の置き土産、新しいのが出て我慢できなくなると直ぐ買い替えてたから」

「それで少し古い割には傷などがほとんどなかったんですね」

「手入れを怠っていなければ今も現役で使えるはずだね、その頃に使ってた私の道具もまだ現役だし」

「私は古いのを使った時にしっくりきましたので、新しい物ではなく同じ古い物を探し歩きましたね。

新しいのは軽量化もされていいのですけど、少し重い位の方が扱いやすいと言うか」

「新素材だ何だーって軽いのはいいけど、軽すぎると合わない事も有るからねぇ。

軽いと疲れにくいのは確かだけど、合わない重さだと逆に疲れやすくなるし、自分に合った道具を選ぶのって大事だよね」

「ですねぇ、始めたばかりの頃に新しいのが良いだろうと買い揃えて見た物の、変に疲れてしまいましたし」

「店によってはケースの中に入れっぱなしで実際に手に取って確かめる事ができないし、あれはちょっとした罠だね」

「はい、ですのでサークル棟に有った物を一通り試した後で同じ物を探し歩いたわけで」

「恵里香の無駄遣いも変な所で役に立ったもんだね」


「ふむふむ…それで、月お幾ら位で?」

「今は大きな後ろ盾ができたから月これ位…で、ボーナスが…」

「本当ですか?」

「経営している所は兎も角として、此処は常に人手不足、何せお嬢様が気に入った子しか雇わないから…」

「私達はどうでしょうか?」

「可能性はある、求人は出していないけど直接頼み込んで気にいられれば…」

「少しでも望みがあるならかけてみるべきでしょうか…」

「ただ…」

「ただ?」

「色々ときついですよ、住み込みですし、ある意味では24時間勤務ですし」

「住み込みならまだ何とか…」

「気分次第ではお嬢様のお相手をする事も有りますよ…そりゃもう夜に…」

「…貞操の危機?」

「まあ断ればいいだけですけどね、特に給料には関係ありませんし、色々とたまっていると発散させるために誘ってくるだけですので」

「なるほど…」

「ここは基本的に女性だけですからね、男も余程の事が無ければ立ち入り禁止です、連れ込むのも禁止です、結婚などもほぼ諦めた方が良いでしょう…

その代り給料が良いのは保証しますよ」

「結婚が駄目となると…親に持ちかけられる縁談は全てどうにか断る必要がありますね…」

「そう言えばあなた方は何所の御令嬢で?それによってはお嬢様の力だけでどうとでもなりますので…」

「海山海運と二条建設、華園製薬、レガリア、コデックですね」

「なるほど…それなら全てお嬢様の傘下ですね…ちょっと圧力をかければすぐに折れるでしょう…

それにしてもレガリアとコデックって上の方が毎回争っていませんでしたっけ…」

「親同士が幼馴染でちょっとしたことで張り合いますからね…最近の争いは俺の作ったルアーの方が釣れる、でしたね」

「結果は?」

「二人とも一投目で地球を釣ってロストしました」


 気が付けばみんなバラバラにはなっているが打ち解けているようで何より、葵さんも何時もの普段着になっているし、用意したお肉も順調に減って行っているし、お酒はそれ以上の速さで減っている。

 とはいえお肉は全部で40キロほど用意したし、結構残りそうだねぇ…傘などを立てて日に直接当たらない様にしてあるとはいえ、このままだとちょっと駄目になりそうなところも出てきそうだし、いくらかはお土産用に包んでおくか。

 皆が話に夢中になっている間に各部位合わせて5キロづつ包み、保冷材などを入れたクーラーボックスに入れてお土産用に、お酒も…こっそり2本づつ入れておくか、余り飲み過ぎても帰る時に辛いだろうし、完全に酔ったら寄ったで恵里香さんが送っていくだろうけど、こっそり減らして奥に越した事は無いね。

 それとなくわからない様にお酒を抜き取り、クーラーボックスに仕込んでいた所、じーっとこちらを見ている子がいるのでこれお土産ねと適当に目で伝えて置いた。

 頷いていたのでちゃんと伝わったらしい、タレは入っていないけどそこは各自で何とかして貰おう、一応家族皆で味わって食べてねとメモも入れておいたので多分大丈夫。


「はい、酔い覚まし」

「もうちょっと酔って居たかったんですけどねぇ…」

「帰ってきたらまた飲んでいいから、はいこれ飲んで」

「んー…ぷはぁ!相変わらず一発で酔いが醒めますねぇこれ」

 お土産用のクーラーボックスを積み込み、酔っぱらった子達を車に乗せ、恵里香さん達に送って貰えばちょっとした交流会もお終い。

 クーラーボックスも返却不要とメモ書きしてあるし、多分もう会う事は無い…いや、何か怪しい会話をしている所が有ったし、何かを企んでいる可能性も無くはないな…

 まあその時はその時か。

「それじゃ行ってきますねー」

「気を付けてねー」

 強制的に酔いを醒まされた恵里香さんと、酔ったままの5人を乗せた車は走って行き、走って行く様子を暫く見送った後引き返し、バーベキューのお片付けをする事に。

「なんか一人相撲してたようなそんな気分です…」

「何を急に?」

「いえ、最初は泥棒猫か何かが現れたのかと思えば…

裏も何もないただの女の子でしたし、ただ寝ぼけて自分のテントと勘違いしたまま携帯を置いたままにしていただけのようですし…」

「まあ最初から何か裏が有る様な、下心ありありだったらそもそも近づかないって…」

「そうですよねぇ、あなたはそう言う所敏感ですもんねぇ…」

 若干落ち込んでいる葵さんを慰めつつも片づけの手は止めない、早めに洗ってしまわないとこびりついて落としづらくなるものもあるからなぁ…

「片づけばかりしてないで構ってくださいよー、そして叱って下さいよー…

あんないい子達に対して威圧的に出て追い払おうとしていた私を叱って下さいよー…」

「はいはい、葵さんは良い子だから椅子に座って大人しく待っててね」

「良い子じゃないもん…悪い子だもん…それも良い年をした悪い大人だもん…」

「はいはい、後で相手してあげるから、べそかいてないでお部屋で休んでてねー」

「悪い子だからずっとくっ付いているもん…」

「屋敷に勉強に行ってるロザリアが見たら呆れちゃうよ」

「構わないもん…私悪い子だし…」

 んーむ、これはどうにもならんね…完全に酔ってるし、何を言っても聞きそうにないし…

「後任せていい?面倒だったら網を水に漬けておくだけでもいいから」

「ええ、構いませんよ、終わったら後で私達もお邪魔しますね」

「それまではごゆっくりー、恵里香にも後で伝えておかなきゃ」

「私悪い子だもん…」

 ぐずり始めた葵さんを連れて家の中に戻り、一応お風呂に入ってから部屋に戻って葵さんをどうにかこうにか慰めることにした…

 ま、空回りしちゃったものは仕方ないね…


 その後、片づけを終えて追加で入ってきた2人にまずは臭いをお風呂で落としてきてからと伝え、結局連絡はいかなかったのか家中を探し回りようやく見つけたと思えば何とも言えない空間が出来上がっていた所に入り、1人だけ仲間外れだったと泣きそうになる恵里香さんをあやし、恵里香さんをあやしていると2人から途中でまた空いた日に5人が訪れるという話を聞き、5人がまた来るという話を聞いた葵さんがまた落ち込み…

 なんだかもう更にわけのわからない空間が形成されていった…マイペースなのはお酒を飲みつつ絡んでくる葵さんと恵里香さん以外の2人組のみ…一体何が悪かったんだろうねぇ…

 このままではもうどうやっても収まりがつきそうにないので、早々に葵さんと恵里香さんの意識を飛ばし、途中で落ち着きかけていた葵さんと恵里香さんに追い打ちをかけた2人組はたっぷり時間をかけてお仕置きをする事にした。

 時間はまだ15時を回った所、早々に根を上げて意識を飛ばしても強制的に引き戻すからね?

 そこ、喜ばないの…

野菜たっぷりのお味噌汁

そもそもお味噌自体が大体何とでも合う

大根白菜人参キャベツ玉ねぎじゃが芋里芋さつま芋と何でもあり


3種のエビから揚げ

酒で絞めたエビに下しにんにく、醤油で軽く香りなどをつけた物

炒りゴマを荒く擦り、塩を混ぜた片栗粉と小麦粉に混ぜた物、軽く水で溶いてさらに炒りゴマを纏わせて揚げても香ばしくて美味しい

片栗粉のみでエビ本来の香りと味を楽しむ物の計3種


怪しい記憶

正解率が3割も誇る素晴らしい記憶

大体当たっているようで外れている


戦闘準備万端

これ見よがしにベッタリとくっ付き、見せびらかすように薬指に指輪をはめ、意気揚々と扉を潜るとそこは!

炭火と肉で匂いと煙が舞い上がるバーベキュー会場だった…中心にはローストビーフが置いて有る…


置き土産

釣り竿とリール、その他小物一式がどっさり、新しいモデルが出て我慢できなくなるとつい乗り換えちゃう

おさがりは新人の為に共有財産として置いて行った、盗むような不届き物は多分いない、盗んでも常時監視カメラが稼働しているのですぐばれる、そもそも結構なお嬢様が通う大学なので…


悪い子

泥棒猫が引っかかったと思い、格の違いを見せ付け、肩身の狭い思いをさせた後に携帯を渡し、とっとと追い払うつもりだった

が、とても良い子だったので毒気を抜かれただけでなく、帰った後に罪悪感に苛まれてちょと退行した

とある一部が何かコソコソと話し合っていたが、ちょっとした罪悪感も有り多分即決になる

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