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そんな趣味は無い 魚市場で魚を買うおじさん

「釣りに行く娘達この指とーまれ」

 屋敷に戻り、人差し指を立ててメイド達に呼びかけてみる。

 するとアウラを筆頭に釣りが好きなメイドが何人か集まり、我先にと指に掴みかかった。

 …結果…

「痛い…」

 指は曲がってはいけない方向に曲がっており、見事に折れていた…目的地に着くまでは治るし良いか…

 船を用意したり、現地まで連れて行ってもらうためにルシフの部屋まで行き、寝ている所を叩き起こし、ルシフの準備ができるまで集まったメイド達と一緒に船の上で食べるための昼食作り。

 狙うは深海魚、でも気分転換に他の物も間違いなく釣り始めるので、作るのはおにぎりのみ、他にはネギを刻んだ物と味噌、わさびに醤油が有れば現地で釣れた魚をその場で刺身にしたり、味噌汁にして食べればいい。

 …一応サラダ位は用意しておこうかな、スライス玉ねぎにトマト、チーズ…うん、これ位にしておこう、あれもこれもと用意するときりがない。

 調味料は一杯あるので玉ねぎとトマトだけでも色々と作れる、チーズも有ればさらに幅は広がる。

 お弁当箱におにぎりを詰め、玉ねぎとトマトも別々の容器に詰めて準備は完了、後はルシフを待つのみ。


「で、何所に釣りに行くの?それによってどんな船を調達するか変わってくるけど」

「バラムツを釣りたいから海だねー、他にも狙うかも知れないから出来るだけ種類が釣れる所が良いかな」

「バラムツを釣るなら夜だけど…朝から?」

「朝からだね、2泊3日位で、寝泊まりする場所はお任せ」

「はいはい、旅館の手配と船の用意と船の操船、それと現地まで行く足かな?」

「だね、よろしくー」

「うん、まあそれはいいんだけど大丈夫?」

「何が?」

「私達は兎も角、バラムツなんて食べさせたらお尻から脂が垂れ流しになっちゃうよ?

美味しいけど、人じゃ脂が消化吸収できないし、食べ過ぎると毒だよ?」

「葵さん達にバラムツは流石に…キンキとかノドグロは釣れたら持ち帰るけど」

 いくら美味しかろうが、お腹を壊す可能性のある物を出すことはしない、それにお尻から脂を垂れ流している様子を眺める趣味は無い。

 メイド達は食べた所で何の問題も無く、垂れ流しになる事はまずないが…

 釣れるかどうかはまだわからないし、釣れたら釣れたでメイド達と一緒に食べ尽してしまうので持ち帰る事は無い。

 ルシフが止まる場所は船の手配を終えたので各自車に乗り込み、2泊3日のちょっとした釣り旅行を開始、お土産は釣れた魚。

 美味しいのが釣れるといいなぁ…釣れなかったら何時もの海で…かな…


 車に乗り込み走り続けること1時間、港にはルシフが手配したと思われる、周りにある船より少し大きく新しい船が係留されている。

「乗ってきた車はこの辺りに停めてねー、ここなら駐禁取られないから」

 ルシフの指示に従い、指定した範囲内に車を停め、ルシフの乗り込んでいった船に乗り出港。

 波は穏やか、ただ出発時間が少し遅かったので釣れる場所に着く頃にはお日様の場所も少々高め、お昼が近いのでまずは昼食用の魚を釣らないとねぇ…

 何も釣れなければ…おにぎりに玉ねぎの味噌汁、それとトマトとチーズのサラダのみの昼食となる。

 1品増えるか、それとももっと増えて豪勢になるかは釣れる魚次第、時期的にはタイにサワラ、アジにスズキ…他にもいるが今回は船でそこそこ沖に出ているし、サワラやアジが狙い目か…まずはエサ用の小魚から釣らないとね。

 ルアーでもいいけど、餌の方が確実と言えば確実、釣れないときはどっちも駄目だけど、餌用で何匹か確保しておけば最悪それを昼食に出せばいいし、うん、やっぱり小魚を釣ってからの方が良いね。

 ただやはり小魚を狙っている間も少しは何か良い物が…と言う打算的な考えも有るので仕掛けはジギングサビキで、小魚から少々大きな魚まで幅広く狙えるように。

 仕掛けを決めたら後は感で魚の居そうなところまで落とし、魚を誘い何かが食いつくのを待つ。

 さて、餌用の小魚がたまるのが先か、昼食用に少し大きいのがかかるのが先か、どっちかなぁ?


 釣りを始めてから暫し、お日様が昇り切る前には少し大きめの魚が釣れたので、その場で捌いて昼食に出す。

 ただ…このタイあまり美味しくは無さそうなんだよねぇ…

 目算で95センチ、身が多く重いのだが、その身は締まっておらず、ブクブクに太っているだけのようだ。

 切ってみた限りでは身は少々水っぽい、切れ端を食べてみても大味、刺身で食べるのには向いてないかなぁこれ…

 メイド達の方はまだ何も釣れておらず、追加食材には期待できそうにないので、どうにか大味で水っぽい部分を誤魔化せないかと少し考え、身の一部は薄く切り、スライス玉ねぎと合わせてポン酢で、もう一部も水っぽいならと、鯛のアラで出汁を取ったみそ汁の具に。

 トマトとチーズはそのままオリーブオイルをかけただけのサラダにして昼食の準備は完了。

 大きい分出汁がしっかり取れたのが救いか、味噌汁の評判は上々、スライス玉ねぎと合わせたカルパッチョもどきは今一つ、とはいえましな部分を使っているので、出汁がしっかり出ている味噌汁に比べていくらか落ちるだけで不味くはない。

 タイも何だかんだで出涸らしとなった骨だけになり、用意していたおにぎりも無くなり昼食は終わり。

 ここからが本番、次に狙うは今日の夕食となる魚、釣れなければ…

 まあルシフが手配した旅館かホテルで食べるか近くの料理屋で食べるだけ、釣れても夕食の釣れた魚が追加される位でほぼ影響はない、んじゃないかなぁ?


餌となる小魚を狙い始めて約3時間、大きくはないが小さくもない、刺身で食べるには十分な大きさのアジが数匹。

 泳がせ釣りは無理なので釣れた味を捌き、内臓を細かく叩いて海水と混ぜ、血と内臓の混じった海水に切り身を漬けて臭い付け、身にも少し切れ目を入れて臭いが入りやすくしておく。

 狙いの魚は夜の方が釣れやすいので夜まで、少し温度を上げた状態を維持して置けば臭いも強烈な物になり、少しは魚が寄って来やすくなるはず。

 夜釣りの仕込みは終えたので夕食用の魚狙いに切り替え、仕掛けもサビキからルアーに変え、サワラが釣れるといいなー程度で少し浅い所を狙う。

 小魚を狙っている間にメイド達が少し大きめのアジ、スズキ、サワラを釣っているので何も釣れなくても夕食に何品か追加されるのは確定している。

 夕食の為に一度見等まで帰るまでの間、適当に投げては巻きを繰り返し、仕掛けを変えてからは何も釣れないまま夕食を食べに一度戻る事になった。


 夕食は泊まる旅館で釣れた魚を調理してもらい、皆で味わった後は少し休憩、お茶を飲みながら煎餅を齧り、時間が経過するのを待つ。

 8時が過ぎた頃、再び海に繰り出し、深海から上がってきているであろう深海魚を狙う。

 針は大きめ、血と内臓に漬けて置いた切り身を付けて一気に200メーターほどまで落とし込み、何かが食いつくのを待つ。

 血と内臓に漬けておいたので臭いはばっちり、すごく血生臭い、サメが居る所にこれを撒けばサメは確実に寄ってくるだろう。

 軽く上下に竿を動かし、少し待っては少し巻き取りまた待つ、ある程度巻き取ったら一度取り込み餌の確認、少しあたっている感覚は有ったし、齧られてはいるので寄ってきているのは間違いない、切れ端程度になった切り身は捨てて新しい切り身を付け、再び落とし込み食いつくのを待つ。

 メイド達も何かが当たっているようで、既に何かと格闘しているメイドも居る。

 あまり無理に巻き上げるとかかっている針の部分から裂けて針が外れる可能性が有るので慌てずゆっくりと、掛った獲物が弱るまでじっくりと。

 暴れている獲物が隣のメイド達や、反対側で釣りをしているメイド達の方まで走り、糸が絡む可能性もあるので仕掛けを引き上げ、メイドの竿に掛かっている獲物が上がってくるのを待つ。

 口が裂けて針が外れないようにしているためか、まだまだ上がってこず、掛っている獲物は中々に大きいようだ。

 2時間ほど格闘した所でようやく少しずつ上がり始めたが、暴れている間に潜られた分時間がかかり、掛ってから取り込むまで3時間半の長丁場となった。


「これどうしようね?」

「釣った以上は持ち帰るしかないんじゃない?

このまま離しても死ぬだけだろうしー、このまま曳航して帰ってみる?船じゃないから曳航とは言わないかもしれないけど」

 メイドが釣り上げた物を見てどうするかを相談、上がって来た魚も相当弱っており既に死ぬ寸前、このまま絞めて持ち帰るしかないのだが…

「時間が時間だからこのまま港に戻った所で誰にも目撃はされないだろうけど、ちょっとした話題にはなるねー」

「話題になるならないはどっちでもいいけど…まあ、絞めて血抜きも済ませてから帰ろうか」

 まだ生きている獲物に止めを刺し、血と内臓を抜いたら収納して旅館に帰り、皆と一緒に露天風呂に入り念入りに身体などを洗い臭いを落とす。

 バラムツは釣れなかったが、今日釣れた獲物がちょっとばかり大きすぎる、お土産に一部貰うとして…これが有るならもう無理に深海魚を狙う必要も無し。

 残りの2日は特に何にも拘らず、船だけでなく堤防や浜で釣りをするのも良いかもしれないなぁ…

 メイド達の髪に肌と念入りに洗い、臭いが落ちた所で一緒に入浴、便利だねこのステンレス石鹸、髪や背中を洗っている間にこれで手をこすって貰えば臭いはほぼ落ちるので、手は優しく洗い流せば臭いは消える。

 こんなのを知ってしまったらもう戻れない…にんにく、魚料理など匂いの強い物には欠かせない物になってしまった…

 入浴しつつメイド達の手の匂いをしっかりと確認、改めて臭いが落ちてるかを確かめ、ちゃんと匂いは落ちていたので問題なし。

 今日はもうお風呂から上がったらさっさと寝てしまおう、何所に釣りに行くかは朝食を食べながら考えればいいや。


 翌日、朝食をとりながら何所に釣りに行くかを考え、午前中は船であまり沖ではない近場で船釣り、お昼は堤防でメバルやカサゴ、スズキにクロダイなどを狙い、夜も堤防に行きハモとエイを狙う。

 最終日の3日目は朝に浜辺で投げ釣り、お昼には帰宅、釣れた魚を使いちょっとした宴会と言う流れで。

 魚の種類が多い宴会になるか、種類の少ない宴会になるかは今日と明日の釣れ行きに掛かっている、メイド達にも頑張って貰おう。

 朝食を食べ終えたら直ぐに出発、港まで行き船を出して船釣りへ、特定の物は狙わず、まずはイワシを釣り、餌にして泳がせでイワシを食べる魚がかかるのを待つ。

 同じようにイワシを餌にして釣るメイド、ソフトやハードルアーで釣るメイドに別れ、それぞれ思い思いに釣りをしてはいるが、釣りをしている所が同じなためか、釣れる魚は似たり寄ったり、小さいのは逃がし、大きなものは直ぐに絞めて収納。

 午前中の釣果は上々、お昼を軽く済ませて堤防で根魚やスズキなどを狙いつつ、こちらでもイワシをいくらか確保、夜に使うために取って置く。

 確保しておくイワシは20匹程度、追加は無しでイワシを使った泳がせは無くなり次第終了、10匹とはいかずとも5匹くらいはエイやハモが掛かってくれるだろう。

 お昼の堤防ではスズキが2匹、メバルとカサゴが合わせて6匹、それほどいい釣果とは言えないが、スズキが釣れているので洗いやムニエル、カルパッチョが作れる、カサゴとメバルは…少ないしそれほど大きくはないので普段の夕食のお味噌汁にでも入れる事にしよう、もしくは煮付け…かな?

 夜まで休憩して夜釣りに出かけるも、夜も夜でお昼と同じく余り釣果はよろしくなく、ハモが3匹釣れた程度、宴会をするには少々所か今の所全く足りていない。

 明日の朝の浜辺に期待しよう、うん…


「釣れなかったから魚市場に行って魚を買ってくるおじさんか何かかな?」

「なにそれ?」

「朝早くから魚釣ってくるから今日の夕食は買いに行かなくていいって言って置いて、何も釣れずに自分が魚市場でおかずになる魚を買ってくるていう伝統行事?」

 浜辺での釣りも釣果は今一つ、ヒラメが1枚釣れただけだった、葵さんの家だけで消費するなら十分、メイド達も一緒にとなると初日の大物を合わせても全く足りない。

 なので何時もの海へ行きマグロを含めた数種類を捕り、加工場で全て下し、葵さんの家に運び込む。

「んー…買っているわけではないけど…状況的には同じ…?」

「だね」

 ルシフと一緒に宴会用の料理を作りつつ、伝統行事について聞いてみると大体同じらしい。

「それでもまあ、ないよりは…ね?」

 何もない、少なくて少ししか食べれないよりはマシと自分に言い聞かせて置く。

 メイドが釣りあげた大物だけでもいろいろ作れるが、それだけだと種類がちょっとね…

 出来上がった料理を外に運び、釣り上げた魚が少々、捕ってきた魚がほぼ全てを占めるちょっと情けない結果になってしまったが。

 まあ、美味しいからいいか。


「バラムツの刺身でも出てくるのかと思っていましたが有りませんね」

「流石にお腹を壊す可能性のある物を出したりはしないよ」

「バラムツを釣ってくると聞いたので、てっきりお尻から垂れ流しになる脂でも眺めたいのかと思ってました」

「そんなひどい事をするように見える…?」

「いえ、でもそういう趣味の人も居なくは有りませんので」

「酷い…」

 そんな趣味は断じてないのだが…お望みとあればそうしてみるのも…いや、ないな。

 狐さんにお薬を処方してもらう事になるのが目に見えている…

 普通が一番、だよね?

この指とまれ

メイド達の前でやるとやたらと伸びていくか根元から折れる

伸びるのはメイド達が繋がっていくだけ、ただ折れる時は本当に骨がポッキリ、解放されれば1分も立てば治る


バラムツの脂

ご主人様やメイド達は食べても垂れ流しにならない、全て吸収できる

流石に持ち帰って葵さん達に食べさせるようなことはしない


魚探は使わずメイド達も含め感でやってる

一応深さが測れるように糸は100メーターごとに色が変わっている


もう戻れない

擦るだけで臭いが落ちる便利なやつ

普通の石鹸や香油などで臭いを消していた頃には戻れない…


伝統行事

魚釣ってくる…からの魚市場

見えを張って大きく高い魚を買うのがポイント


普通が一番

ただ何を指して普通かはわからない、その時の基準次第

望まれたらやるので結局普通じゃなくなることも有る

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