干物と乾物を作ろう 私はただ魚が食べたかっただけなんです
毎日触ってると食べれなくなる人もいる―大丈夫な人は大丈夫―
肉が続いた後は魚が食べたい、刺身で頂くのも良いが焼いたり揚げたりしたのもいい。
なので毎度のごとくルシフに連れて行ってもらい生け簀から鮭や舌平目など何種類か捕る。
いつもの様に捌き軽く下処理をしてから屋敷に戻る。
夕食時に下処理を終えた魚を出し小麦粉を塗す、フライパン熱してバターを溶かし切り身を投入。
焼けたら切ったレモンを添えてソースは各自好みの物を。
鮭に舌平目、鱈、鯛など数種類用意するが一つも残ることなく美味しく頂かれた。
翌日また海へ行き鱚と海老を捕り屋敷へ。
今度は鱚とエビの天ぷら、塩焼と作る、これも残すことなく全て頂かれた。
魚ばかりというわけにも行かないので、日を開けて魚という事になるのだが、また次に出す時の為に今度は加工することにする。
まずは海老を締め殻を剥き、身を適度なで切り分け海水に付け干す。
他にも鯵や鯛なども同じように干していく。
鯵ですら大きさがメーターはあるので干すときはもう身の部分だけ使う。
骨は使うので取っておく。
干物は天日干しと一夜干しの物をを作り分けて収納。
烏賊や蛸は徹底的に干すので海ではなく屋敷で干すことにする。
そんなこんなで屋敷で干物を干し初めて一日。
「減ってる…?」
干していた烏賊と蛸が少し減っているような気がする。
「ひのふの…」
数は減っていないので気のせいだったようだ。
今の状態でどんなものかを確かめるため烏賊と蛸を一枚づつ取り、調理場へ行く。
蛸は酒と調味料に付け漬け軽く飛んだ水分を戻す、烏賊は裂いておく。
蛸は衣をつけから揚げに、烏賊はそのまま素揚げにしお皿に盛る。
ヴェスティアを呼んで食べて貰い味の評価。
「蛸も烏賊も良いですね、とてもお酒に合いそうです」
そういって酒を取出し蛸と烏賊を摘みつつ酒を飲み始めるヴェスティア。
「ただ蛸のから揚げは干した物よりは新鮮な物の方がいいですね」
「あーやっぱり?」
どの程度干して同調理するかを話しつつ蛸を烏賊を摘まんだ。
蛸と烏賊の水分が完全に飛び干物から乾物になった頃次の物を捕りに行く。
今回も烏賊と蛸を捕り、貝や鮭も追加、処理して屋敷でカラカラになるまで干すことにする。
少しびっくりさせてやろうとルシフと一緒に烏賊を開き丸々干す、ついでに蛸も同じようにする。
こちらや屋敷に持ち込まず海で只管干す、完成が楽しみだ。
屋敷に戻り適度な大きさにした貝類に鮭を並べ干していく。
やはり干している間は少し魚臭いので屋敷から離れたところで作る。
並べ終わった後溜まってきた骨などを処理するために農場へ行き、ケレスとクロノアに肥料に変えて貰い処理完了。
ついでに野菜も幾つか貰いこれも干す。
干し野菜も干し野菜で魚とはまた違って美味しいので作っていく。
「干し網だらけだねぇ」
「そうか?」
ルシフに言われたので辺りを見渡してみる。
庭の半分くらいが干し網で埋まっていた。
「こっちが魚介、こっちが肉、こっちが野菜、どれだけつくる気なのご主人様」
「とりあえず今干してる分で一旦止めようか…」
「今干してる分だけでも当分は使い切れないね、以前の分もまだ使ってないし」
作るだけ作って調理に使うことが無いのだからたまっていく一方である、やりすぎたか。
「後海で作ってるあれもどうにかしないと」
「あー…後で取に行こうか…」
「ははは、了解」
メイド達を呼び今干してあるものを全て回収し収納していく。
その後海へ行き特大の乾物となった烏賊と蛸も回収し、干物作りは終わった。
「うーん…」
唸りながら頭を捻る。
「ご主人様、どうかいたしましたか?」
「作った干物、乾物をどう使った物かと…」
「普通にお出しすればいいのでは?そのまま頂ける物もありますし」
「そうだねー、そのまま食べれる物は食堂に置いておこうか」
食堂の一角に烏賊、蛸、貝、鮭などの魚介類を始め、干し肉なども置かれるようになった。
乾物などの消費を始め数日、そろそろルシフと悪ふざけで作ったものを出すことにした。
「ルシフ、そっちの準備できた?」
「できてるよー」
「じゃあここに出してと」
高さ5メートル少々ある烏賊と蛸の乾物を庭の一角にドンと立て掛ける。
いつみても立派な乾物だ、どう食べたらいいものか、そしてどうしてこんなものを作ったのかと考えなければ…
「ご主人様、あれは?」
「ルシフと悪乗りして作った烏賊と蛸の姿そのままの乾物です…」
「狐ー許してー!あれはご主人様の提案で私は悪くないー!」
乾物の前で正座をさせられルシフと共に説教される。
その巨大な乾物から発せられる香りにより一部メイド達がその乾物から目が離せなくなっていた。
主に狼人、犬人、猫人、虎人などなど、抗えない物があるらしい。
「メイド達の目の毒なので収納しておいてくださいね」
言われたとおり収納すると巨大な乾物を見ていたメイド達が悲しそうな顔をしていた。
とりあえずこのままではいけないと、海へ行き巨大な乾物をバラバラにする。
屋敷でバラバラにしようとすると眺めてたメイド達が泣きそうになったのでルシフと海にきてこっそりと…
適度な大きさにカットし終わった後は食堂の乾物コーナーへ、仕事の合間のおやつや酒の摘みにと割と好評である。
そのまま食べるだけでなく夕食に戻して使ったりもするので何だかんだ消費は早い。
干し野菜も好評なようで農場組はよく食べる、干し野菜を使った稲荷も狐さんに好評。
この調子で消費していけば作った分は直ぐになくなるだろう。
消費を始め暫く立った頃
「これで干物、乾物は最後か」
最後の干物と乾物を食堂に並べていく。
「野菜もこれで終わりと」
残った野菜も全て調理場に並べる。
これで長く続いた乾物生活も終わりである。
まあ、乾物続きではなくちゃんとバランスよく消費はしてたし、飽きるという事はなかったが。
「今だした分で乾物は全部終りねー」
そう伝えるとメイド達がざわつき始め…
「烏賊と蛸の乾物貰いっ!」
「烏賊がなくなってるー!」
「私の干し肉ー!」
「貝柱の乾物は頂きました」
「よかったー、鮭はまだ残ってたー」
食堂が戦場へと変わった…
目当ての物を手に入れたメイドは部屋へ持ち帰り、敗れ去ったメイドは泣きながら縋り付いてくる。
君たちそんなに乾物が好きなの…でもない物は出せないのでどうしようもない。
敗れ去ったメイドを一人づつ慰めその場を治めた。
「というわけで、追加生産をお願いいたします」
乾物の追加生産を狐さんにお願いされたのでまたルシフを呼び出し海へ行き材料を捕る。
そしてまた屋敷の一角で干す日々、出来上がり次第食堂に並べていくがすぐ無くなる。
また材料を捕りに行くの繰り返し、6回位繰り返したところでようやく落ち着いたので今度はストックに回す分を作る。
時間を飛ばさないのはじっくり時間をかけてじっくり作ってるのが良いからだとかなんとか、味は変わらないんだけどなぁ…
「あーもやだー、これ以上干物作りたくなーい」
普段は寝てるだけのルシフが毎日干物作りに駆り出され音を上げる。
干すのに使ってるのが基本的に屋敷の庭なのだが、三姉妹が庭を駆け回るため半分以上場所を埋めるわけにはいかない。
なので毎日作れる数には上限がある。
「海を開拓して干せる場所増やして一度に作れる量増やそうか…」
狐さんを呼んで海の家周辺を整備してもらい、干し網も増やし生産量を上げることにした。
屋敷の網はすべて撤去され庭は元通り、撤去された網は全て海へ。
増えれば当然手が回らなくなるのでメイド達も何人か海でお仕事。
そして生産に生産を重ね、これでもう当分作らなくても大丈夫な位にはストックができた。
「狐さーん、これだけあれば大丈夫だよね?」
「お疲れさまでしたご主人様、これだけあれば当分は大丈夫でしょう」
狐さんから大丈夫との答えが返ってくる、これでもう作らなくて良さそうだ。
ルシフは途中から―
「もうやだー、つくりたくないー、テレサと三姉妹と遊ぶだけの毎日を送りたいー」
―といい完全にダウン、メイド達が何人か海でお仕事したのはこれが原因である。
もう作らなくていい旨を伝えるとテレサをユノーの元から誘拐、三姉妹をまとめて抱きかかえお風呂へ走っていった。
お風呂から出てきた後テレサと三姉妹はふわふわだった髪も耳も尻尾もサラツヤに、暫く干物作りで魚の匂いが染み付いており、匂いを移すわけにも行かずで全部ユノーにお任せだったらしい。
お風呂から出た後はボードゲームをやっていたので混ぜて貰った、匂いが染み付いてて遊べなかったのは同じだったから…
干物と乾物作りを終えてから暫くは魚を見るのも嫌になった、ルシフも嫌になったようで海に寄り付かなくなっていた。
だが乾物を美味しそうに齧るメイド達を見るのは楽しい、大変ではあったが作った物を美味しそうに食べてくれるのは嬉しい物である。
美味しそうに食べているメイド達を見て癒されながらこっそり作っていた干した果物を齧ることにした。
齧っているとケレスに見つかったので献上、もっと無いかと言われたので無いと答えると崩れ落ちた。
なので農場の空いている区画に干し果物と干し野菜を場所を確保し、後は全て任せた。
暫く経過した後、夕食に魚を調理する。
肉が続いたのでたまには魚が食べたくなる物だ。
そして久しぶりに食べる魚は美味しかった。
ルシフは何皿も食べていた。
そういえばなんで干物や乾物を作っていたんだったか…
ルシフに聞いてみる。
「干物とか作ってたのは魚が食べたいって言ってたからじゃなかったっけ?
その後乾物が流行って食べる暇もなく生産に生産を続けてみるのも嫌になってたけど、ははは」
「あー、そういえばそんなだった気がする」
魚を食べるために干物を作り、何となく手を出した乾物の流行によりみるのも嫌になる。
何とも本末転倒な…
そのことを狐さんに話したらくすくすと笑われた。
「いいのではないですか?それより次のをお願いします」
狐さんが尻尾をペチペチ叩きつけて次の稲荷を要求する。
「まあ魚を食べるという目的は果たせたからいいんだけどねぇ、辿り着くまで時間がかかったけど…
なんにせよ当分干物を作るのは遠慮したいなぁ…」
口を開けて待機している狐さんに稲荷を食べさせながら話す。
「御馳走様でした、それでご主人様、この後は如何なさいます?」
「暫くは休養していたいなぁ…ルシフも暫くはテレサと三姉妹から離れないだろうし」
「ではそのように、御付のメイドは誰がよろしいですか?」
「狐さんで」
「わかりました」
精神的に疲労をしている時の頼み事は狐さんも断らない。
「では今よりたっぷり可愛がってくださいね、ご主人様?」
狐さんの耳や尻尾を手入れしつつ、少し長めの休日を楽しむのだった。
「あー幸せー、もうずっとこのままで暮らしていたい」
「しあわせー?」「このままー?」「くらすー!」
「ルシフ様、私はそろそろ仕事に行かなければならないのですが…」
「狐に許可取ってるからテレサは私の休養が終わるまで私のお世話が仕事だよー。
はいこれ許可証」
「…わかりました、では暫しの間ルシフ様の御付としてお世話をさせていただきます」
「お願いねー」
ルシフはルシフで四人を囲って癒されていた。




