メイド達の職業…? 大掃除
「付き合い始めてもうそこそこ立ちますし、大体は誰が何をしているかは分かってきたのですが」
「うん?」
お仕事の合間の小休止中に葵さんから話題を持ちかけられる。
「ミアさんとミウさんは薬剤師兼医者、テレサさんにフローレンスさんは聖職者、ユースティアさんは多分外交官、マキアさんはその部下、イデアさんが掃除、タニアさんが庭師、エリスさんがイデアさんとタニアさん達のサポート、ティアさんとニールさんが事務」
「ふんふん」
お茶を淹れながら話を行く。
「ケレスさんとクロノアさんが農場主でしたがう方達が雇われ農家、ヴェスティアさんが料理長でハクさん達が料理人、ディアナさんとミネルヴァさんが警備責任者でカーラさん達が警備員、アウラさん達が漁師、ユノーさんが司書。
大体この辺りだと思うのですが」
「んー、近からず遠からず…かなぁ?」
大体みんな好き放題やっている様な感じではあるけど、こちらの職業に当てはめればそうなる…のかな?
「ナディさんとかフレールさんとか、いまいちよく分からないんですよね…
ナディさんは目に生気が無く焦点が有っていませんし、何を考えているかもわからない、ただぼーっと座っているだけ。
フレールさんは以前お邪魔した時に何か暴れている黒い物体を担いでいましたし…」
「あー、そうだねぇ…ナディはこっちで言うなら施設の管理人、フレールは…害虫駆除業者かな?」
侵略性の外来種などを駆除しているから間違いではないはず。
「なるほど、あの謎の黒い物体が害虫ですか…」
「だねぇ、放っておくと増えるし、色々荒し回るから、あと一ヵ所に固まっても碌な事しないから、森の広範囲に渡って1匹ずつ処理出来るようにしてある。
一ヵ所から纏めて出てくるようにすると雪崩込まれたときにちょっとねー、纏めて駆除もできなくはないけど」
ふとした弾みで逃げられるとめんどいのよねぇ、直ぐ捕まえられるけど。
「まあこちらでも海外から運ばれてくるコンテナなどに、卵やら害虫が付いてて度々問題になっていますしねぇ」
放っておくと何をするか分からないし、その気が有ろうと無かろうと駆除一択。
その気がないからって放っておくと駆除が遅れる分大参事になりやすいし…
フレールが来てからは1匹1匹確実に捕獲して駆除する方式に変更、おかげでここのところ害虫は1匹も地上まで辿り着いていない。
居なくなる事は無いだろうが、年々送り込まれてくる害虫が減っているのは良い事である。
「それで、何でまた皆の仕事内容を?」
「例年通りであれば所有している山に人を入れて不法投棄されたゴミの処理や、不法に滞在している人などがいれば捕獲する時期なのですが。
今年は余り人員が確保できなかったので何人かお借りできないかと」
「ふむ、ご要望は誰と誰で?」
「出来れば森の整備やごみの処理に優れた方を、報酬としては自生している山菜やキノコ等くらいしか出せませんが…」
「こっちのお金受け取っても使い道ないもんねぇ、有ったとしてもルシフから貰えばいいし」
今現在再び居候している状態ではあるが、ロザリアの養育費から食費から何まで全てルシフ持ち、メイド達が此方に来て遊ぶ時の費用も全てルシフが払うのでお金が必要ないのだ。
美味しい物や季節の物を出せば喜んでくれるので、対価として払うなら食べ物が一番良い。
まあそれはそれとして、森の整備にごみ処理ね…森の整備ならエリス達で、ごみ処理ならイデア達かな?
2人でも1日は掛からないだろうけど、山菜やキノコを採るならイデアとエリスの侍従達全員呼ぶ方が良いか。
「整備する範囲がここを中心として、ここからここまで。
ゴミの不法投棄が多いのが大体道沿いから少し入って行った所、ゴミは道沿いに回収車を置いておきますのでそれに乗せてください。
不審者を見つけた場合は直ちに拘束、逃げようとしたり抵抗した場合は骨の一本や二本折っても構いません、取りあえず生きていれば良いです」
「質問、捨てている人を発見した場合は?」
「不審者と同じ扱いで構いません」
「森はどの程度手入れをすれば?」
「えーと…ここからここまでの範囲が毎年松茸が採れる範囲なので、出来るだけ今の環境を維持しつつ、幹が折れている木が有れば伐採、できれば根元から掘り返して除去、それと其処まで続く山道の整備ですね。
それ以外の範囲は適度に間引き、間引いた木は出来れば種類別で纏めて枝葉を落として丸太に、面倒であればゴミを回収している車に積んでいただければそちらで処理します」
「採ったら不味い物は何が有りますか?」
「常識的な範囲であれば特には、毒草毒茸等は触れないかその場で処分して頂ければ。
…後はもう無いようですね、ではよろしくお願いします」
メイド達による質問が終わり、山の大掃除が開始された。
テレビにパソコン、炊飯器に自転車に箪笥、冷蔵庫…袋に入った家庭ごみが多数。
他にも扇風機やクーラーと言ったごみが車に乗せられていく。
それにしても大量だなぁ、既に5台ほど積載量の限界で何処かに走って行った。
「今年も大量ですねぇ、人の山をごみ捨て場か何かと思ってるんでしょうか」
「山に潜伏していた人5名捕獲してきました」
「ありがとう、捕獲した人はそちらの車に乗せておいてください」
「間引いた木の積み込み終わりました」
「木の積み込みが終わった車は事前に説明しておいた製材所まで持って行って下さい。
後は製材所にいる人が処理してくれます」
メイド達がごみを運び出し、積み込み、木を間引き、潜んでいる不審者を1人も残さず捕まえていく。
葵さんは次々と運ばれてくるごみや木をどの車に積み込むか指示、不審者は分ける必要が無いのか1台の車に押し込んで詰み込まれていく。
「ちょいちょい」
「どうしましたご主人様?」
「こう骨を外して、こうやって隙間に入れれば無理なくもっと積み込める」
「これ以上やると死にません?」
「大丈夫でしょ、どれだけ一度に運べるかで往復回数も変わるし、取りあえず生きていれば良いっぽいし」
「なるほど、では一度積み直しますか」
詰み込まれた不審者は一度車から放り出され、肩、肘、手首、股関節、膝、足首等、外せる関節は全て外し、パズルのように組み立てて積み込まれていく。
うん、さっきより多く詰み込めたね。
「…なんですかこれ?」
「一度に多く運べるように工夫した結果?」
「何も知らずに見ればただのごみの塊、解いてみたら関節がバラバラにされた人間。
正気度がごっそり削られそうですね…まあかける情けなんてありはしませんが。
積み込んだ物も事前に説明して置いた場所まで持って行って引き渡しておいてください」
パズルのように組み立てられた物がごみと一緒に運ばれていった。
滅多に人が入らない所だからって勝手に住んだり、ごみを捨てたりしちゃダメだよね。
「次にごみの処理などにかかる費用ですが、今年も例年通りにこれ位ですね」
「多いのか少ないのかわからんね」
例年通りと言われても初めての事だから高いのか安いのかわからない。
「これだけ処理するとなると、一般家庭では1年の稼ぎが全部飛んでもまだ足りませんね。
量的に個人だけでなくごみ処理を請け負っている業者も此処に廃棄しているようですし、何か証拠でも見つかればいいのですが」
「証拠ねぇ」
メイド達が運んでくるごみを葵さんと恵里香さん達は細かく確認して証拠となる様な物を探している、が、特に証拠となる様な物は無くお手上げ。
「毎年場所が変わっていますし、これだけの範囲に監視カメラを仕掛けるのは無理、何時何所に捨てに来るかもわからないので24時間監視させるのも無理。
どうした物ですかねぇ…」
道路沿いに捨てられていることも有れば、山道を暫く走って行った先に捨てられていることも有る。
車で移動可能な範囲周辺を徹底して調べ、ごみを拾ってはトラックに積んでいく。
見つからないようにするためか、埋めてあったり少し離れている所に捨てている物も大量に出てきた。
「いっその事山の周囲をフェンスか何かで覆って全面的に立ち入り禁止にした方が良いのでしょうか…
でも覆った所で破壊されたりその周囲に捨てられるのは分かり切った事ですし…」
葵さんはごみの山を眺めつつ悩み続けているが答えは出ないようだ。
「葵さんはどういう風にしたいの?
捨てている人を全員捕まえるか、山に誰も入れないようにするか」
「出来れば両方ですね、前者は証拠があればすぐにでも、後者は立ち入り禁止にした所で入ってくる人は絶対いますので…」
「ふーむ、どっちも出来なくはないけどどうする?」
「出来るのであればぜひ」
「捕まえる人はどれくらい前まで?寿命やら何やらで死んでる可能性もあるけど」
「親類縁者がいるならその人達を、容赦する必要は有りません。
やったのは自分じゃないからと言っても出す物は出して頂きます」
今までに掛かった処理費用等を纏めた書類などを取り出し、電卓を叩いている。
「纏めて処理しているので誰のごみの処理にいくらかかった、なんてのは分かりませんので、業者が8、その他が2で頭割り、そこから罰金などの支払い請求ですね」
葵さんが計算している間にアウラとルシフを呼んでこっちはこっちで作業を開始。
「どれ位までさかのぼれば良いですか?」
「50年くらいでいいんじゃない?」
「ちっちっちっ、甘いねご主人様、この山が西野家の所有する土地になってからまでさかのぼらないと」
「そうは言われても何時からか分からないしねぇ」
葵さんが買ったのか、それとも昔から受け継いで来たのか、なんて聞いてないのでわからない。
「この辺り一帯の山が西野家の物になったのが大体200年位前、正確には203年と10ヶ月11日前。
色々ごたごたは有ったけど土地を一切売る事無く今の今まで維持、今は葵ちゃんが正式に家や山などを受け継いで管理中。
地質調査などで金などの鉱物資源がある事も分かっておりその価値は膨大。
金が眠っていると分かってから今もあの手この手で山を買収しようとする人が多数。
ごみを捨てている業者は、買い取ろうとしている者達の指示で山の価値を下げて手放させるために不法投棄を繰り返している。
侵入して不法滞在している者達は金が眠っている鉱山などを探すために派遣された者達。
複数の人間が競うように山の価値を下げようとしており、半数は国外の人間、もう半数は国内。
ごみは国外からも持ちこんでおり、有毒な物質や廃棄物も含まれている」
「これ私必要でした?」
「まあ…念の為?」
ルシフが何所からか取り出した書類に書かれている内容を読み上げていく。
アウラには念の為に関わっていた人物などの映像を出して貰い、ルシフに答え合わせをして貰う。
既に死んでこの世にいない者もいるが、子孫は平然として生きているみたいなのでそちらに請求。
関わっていた者全員の洗い出しや繋がりを全て確認した後、まだ電卓を叩いている葵さんと合流し、出てきた情報を全て渡す。
「これはまた何とも…結構多いですね…」
「国外の人もいるけどどうするー?」
「流石に国外には手を出せませんねぇ…不審者も強制送還位しかできませんし…」
「じゃあ国外はこっちで処理しておこうか?」
「お願いします、こちらからは苦情を入れるくらいしかできないので」
「はいはいー、早ければ明日明後日、遅くても1週間以内には謝罪と賠償金などが支払われるはずだよー。
此処に立ち入る人もごみを捨てに来る人も居なくなるかなー?」
ルシフは何所かに電話をかけてあれこれと指示を飛ばしている、ルシフの言う通り明日にはもう今まで不法投棄などをしてた人が文字通り居なくなるだろう、まあその方が早いと言えば早いし、ごみも減って両得…?
こういうのは根元から断たないとといくらでも湧いてくるしね。
山の掃除と整備が終わり、今日のお仕事はお終い。
お掃除と整備などに参加したメイド達に夕食を出し、お風呂で汚れなどを落とす。
しかしまあ、何所にでも人の土地にごみを捨てる奴はいるんだねぇ…
ルシフが色々やってたからもうごみなどが捨てられたり、誰かが山に入ってくるという事もないだろう。
葵さんはまだ何処かに連絡をしているようだが、こっちはもうやる事が無いのでロザリアとお休み。
明日はちょっと遠くに行きたいなぁ…
メイド達の役割
大雑把に当てはめると農家だったり漁師だったり
一応皆何でもできる
害虫
侵略的外来生物、根元から断ってもまた別の所から送られてくる
人型だったり4足動物だったり本当に虫だったり色々、転移とか転生ともいう
侵略行為なので手当たり次第に送り込むと手痛いしっぺ返しを受ける、場合によっては星ごと存在を消される
不法投棄
嫌がらせや僅かなお金が惜しくて他人の土地などに捨てていく、結果更に手痛い出費をする事になる
ルシフに頼めば全て解決、でもできるだけ迷惑をかけたくないので葵さんは頼らなかった




