多分製造業? どちらかと言えば暇の多い家事手伝い?
「少し気になったのですが」
「うん?」
葵さんの家でロザリアと全国1周旅行の計画を立てていると葵さんが疑問を投げかけてくる。
「あなたの職業って何なんでしょうね?
宝石を取り扱っているかと思えば干物を取り扱っていたり、お酒なんかも作っていたり。
で、使用人?のルシフさんはその気になれば世界を支配できるほどのお金持ちだったり。
本音を言えばあなたが使用人でルシフさんが雇い主ではないのかと?」
「あー…職業ねぇ…何だろうねぇ…?」
宝石店は営んで…いや、月に一度注文の品を作ったり、お土産用のトンボ玉とか細工を補充してるだけだし、経営管理は全部お任せしてるし…
食堂への卸しもメイド達がやってるし…お酒も造るだけで卸しているのはメイド達…
装飾品もお酒も基本的には作るだけ作って後は丸投げ、食堂などに卸した分の稼ぎもその時担当したメイド達の御小遣い、宝石やお酒の売り上げも全部販売してる仲居さん達の給料に回してるし…
「…多分製造業?」
「ふわっとしてますね」
「そう言われてもねぇ…何をしているかと問われれば、メイド達と遊んだり、土いじりをしたり、着せ替え人形にされたり、夕食を作ったり、たまにふらっと各地に行ってお茶を飲んだり、月に一度宝石店の注文の品を作ったり、卸すためのお酒を造ってたり。
となるとあてはまるのが製造業くらいかなーって?」
収入は全くないから違うかも知れないけど。
「しかしなんでまた急に?」
「何となくですかね?本当にただふと気になっただけですので」
「まあ、たまには有るよね」
ふとしたことが気になって仕方がない時もたまには有る。
それを解決してくれる人がその場にいるのであれば聞いてしまえばいいのだ、内容にもよるけど。
まあ私も昔は色々気になった仕方が無かった事もあるしね、聞ける相手がいなかったから解決はしなかったし、悩んだ結果、気にしても仕方がないという答えに辿り着いたけど。
聞ける人が居れば何か変ったんかねぇ…?変わらない気もするけど。
葵さんの疑問を解決した後は再びロザリアと一緒に計画を立てる。
まず出された条件が1ヶ月か2ヶ月に一度は帰ってくる事、お盆と年末年始の時期は絶対。
連絡は毎日欠かさず取る事、怪我をしたり病気をした際はすぐ迎えに行く。
お土産は無理をして買わなくても良し、との事だった。
それはそれ、これはこれで、メイド達用のお土産を買う必要はあるだろう。
その時の代金はルシフから貰ったお金で買えばいいし、念の為にカードも借りればいいか。
優先して巡る場所は有名所ではなく、そこから少し離れた所、観光地などは他の場所に移動するときに少し寄って行く程度。
観光地巡りではなく、その時に面白そうだと思った所へ寄り道しながら全国を1周するのが目的。
ただ、寝泊まりする所が無いと困るのでキャンプ場や民宿、旅館にホテルなど、できれば海沿い、もしくは山中に有る所に目星をつけ探していく。
ガイドブックなどに乗っていない所に印をつけ、乗っている所は微妙だった時の為に取って置く。
いざとなれば車の中で寝泊まりするので、温泉や銭湯が有るだけでも良い。
食べ物に関してもスーパーや商店街が有ればどうとでもなる、料理に関してもちょっと広い場所を借りられれば作れるのでこれも問題なし。
商店街やスーパー、銭湯に温泉、少し開けた場所などにも印をつけて行き…
「真っ赤っかですね」
「赤いね」
各所の地図が印だらけで赤く染まっていた。
最終的に地図は破棄、地図に頼らず適当に行く事になった。
全国を寄り道しながら一周するのに、そもそも計画なんて必要なかったよね。
泊まる場所も食事をする場所もその時に見つけた所で良いし、見つからなければそれこそスーパーや商店街で買って、寝る所も車の中でいい。
条件である1日1回の連絡さえできれば大丈夫、怪我や病気とは無縁なのでそこも大丈夫。
掛布団が必要で、飲み物はキャンプ用品から持ち出しで、食器もあるし…念の為に枕も要るかな?
地図は破棄しても最低限の物は持って行く。
必要な物を纏め、最後にお財布の中を確認。
ルシフから貰ったお金を少しだけ入れてあり、借りているカードもちゃんと入ってる。
これで何時でも出発は出来る、後はロザリアの用意ができ次第ではあるのだが、まだ半年もたってないし、ちょっと急ぎすぎたかな…?
予定では後1年と半年、ロザリアが頑張って働いている間に私は…
「ここがこうでー…ここがこうの…塗装はいらない…」
中々難しいな…これを考えた人は何を思ってこういう物を作ったのだろうか…?
予め用意されている部品を切り取り、順番通りに組み立てていくだけなのだが、やたらと部品が多いし、色も1色の同じ物が多数。
1番と187番の部品なんて入れ替えても誰も気づかないんじゃないか…?
1番目の部品が1段目の1個目の石垣の中の一つの石で、187番目の部品が2段目の一つの石、形も大きさも全く同じ、色も同じ…
他にも各所入れ替えても見た目も変わらない、振っている番号は無意味ではないのかと、そんな部品が大量に用意されている。
同じ形同じ大きさなら同じ番号でいいのではないだろうか…いや、駄目だから変えてるんだろうな…
「で…これがここで…これが…ここ…いや違うな、これは417番でここは271番だ」
設計図と山盛りの部品を交互に睨みながら石垣の石を一つずつ積み上げていく。
500分の1スケールのお城、城下町付き…中々の強敵だな…
屋根もただ被せるだけではなく、瓦の1枚1枚自分で重ねていかなければならない。
ピンセットで摘み、接着には米糊を使い、はみ出た糊は乾燥してから削り取る。
今は積み上げた石垣の糊が乾くまでは他の部品作り。
米屋、酒蔵、食事処、反物屋に始まり、長屋など人が住む所まで。
部品一つ一つ丁寧に、設計図と説明書通りに組み立て、釘を一切使わない建築を完全再現…でも材質の都合上滑るので糊は必要と…
建物骨組みが出来たら糊の乾燥待ち、縄張りもしてどの建物が何所に来るかを分かるようにしておく。
骨組みの乾燥を待っている間に石垣の続き、石垣が乾燥待ちになれば建物の中に家具を接着、壁を張り、戸を付け、中央通りに面している建物は瓦屋根、長屋は板張りに石を乗せた石置き屋根を乗せて接着。
出来上がった建物を縄張りしてある所に設置、その後木を植えていく。
「ふぅー…今日はここまでだね…」
ある程度は手際よく進めたつもりだが、お城は未完成、石垣もまだ半分、城下町は平らなのでほぼ完成。
積み上げて土台を作らなくていい分、建物を一気に作ってしまえば後は接着するだけだったからなぁ…
なんにせよ続きはまた明日、城下町を終わらせてお城の方に集中しよう。
「空き部屋の一つが立ち入り禁止になっていましたが、何か作業中ですか?」
「あー、うん、そうだね。
ちょっと面白そうなのを見つけたからつい買ってきちゃった」
「買ってきたという事はご主人様が何かを創っているわけではないと」
「組み立ててるだけだからねぇ、部品が多いからなかなか終わりそうになくて」
何か一つ欠けるだけでも先程までの苦労やこれからの苦労が全て無に帰す…かもしれないね。
「終わったらちゃんと片づけてくださいね?」
「片づける前にどこかに飾る所を作らないとねぇ…遊戯室の中央にショーケースでも設置しようかな?」
遊戯室ならそこそこ広いし、置物の一つとして良いかもしれない。
「何を作っているのかはわかりませんが、楽しみにしておきますね」
「早ければ明後日くらいかなぁ…?
説明書には完成予想時間5年とか書いてあったけど」
個人の差もあるってあったからまあ長くて5年と言った所だろう。
なんにせよ明日に備えてゆっくり休まないとね、その前に夕食作らないとだけど。
翌朝、隣で寝ているメイドを起こさないようにベッドから抜け出し、一足先に朝風呂と朝食を済ませ、お城作りを再開。
残っている石垣を一気に積み上げ、乾燥させている間にお城を組み立て、組み立てている間に石垣が乾燥したので後は出来上がったお城を乗せればほぼ完成。
お城はまだ乾燥が終わっておらず、不安定なので石垣からはみ出ている糊を削り、植え終わって無い木を植えていく。
城下町や城下町を流れる川、長屋付近は少なく、お城には庭などもある為種類も本数も多め。
石垣を積んだり、家屋を組み立てている内になれたので、手際よく、効率も良くなりお城が乾燥して固まる頃には植え終わり、石垣の上にお城などを乗せ完成。
完成予定は明後日と思っていたが、結構あっさり終わってしまった、とはいえ組み立ての順番なども考えたり、部品の多さも相まって中々に強敵であった…
さ、次は遊戯室にショーケースを設置してこないとなぁ。
完成させた感動をメイド達皆と味わうのだ。
暫く飾った後は葵さんの家にでも飾らせて貰おうかな、置くための場所は有ったと思うし、食堂も人数の割に広いからちょうどいいかもしれない。
作ったお城を今後度するかを考えつつ遊戯室へ行き、作ったお城が余裕を持ってはいる大きさのショーケースを作り、収納して置いたお城と城下町を設置。
んー…あまり場にあって無い気もするけど…まあいいか?
夕食後、お風呂に入る前に少し遊戯室へ寄ってみたが。
メイド達は特に見向きもせず遊びに夢中、狐さんやカレンにリッカ、他にはフローレンスにティアと、極々一部が見ているだけだった。
苦労したんだけどなぁ…
様子を少し見た後はお風呂に入り、次は何をしようかなと考える。
持ち帰ってきたゲームで遊ぶのもいいけど、忙しないのはメイド達と違って余り上手くはないし、対戦しても一方的になる。
かといってロールプレイングやシミュレーションは気が付いたら時間がお茶の時間直前になりかねないので注意が必要。
…今日はもうメイド達の遊んでる様子を見てから寝るだけだし、考えるのやーめた。
明日の私はきっと何かを思いついてくれることでしょう。
考える事を放棄し、お風呂から上がり遊戯室へ行き、お茶を飲みながらメイド達が遊んでいる姿を見守る。
ゲーム部屋が出来てからはそちらにも流れているが、こっちと違ってとくに景品は無いので夜はこちらの方が多め。
あちらもあちらで景品が有れば行くメイドが増えるかもなぁ…でも勝負するにしても何で勝負になるんだろうね?
メイドそれぞれ得意分野が違うし、各分野に別れて勝負するとして、景品は共通した物…になるんかね?
それを考えるのは狐さんだけども…まだ遊戯室にある物と違って遊んでいる時間も短いし、勝負ごとに使うとしてもまだまだ先の事かな。
お茶を飲んだ後は寝室に戻り寝るだけ。
布団の中に潜り込んだところでメイドも布団の中に入ってくる。
今日はアリシアとアリサの2人、布団の中は少しひんやりしてるし、2人の暖かい体温で挟まれていると気持ちよく寝れそうだ…
2人を抱きしめ、2人の体温を感じながら眠りについた。
明日は何をしようかな…
製造業?
趣味だったり在庫処分が目的だったり、メイド達のためだったり
これだと当て嵌まるものが無い、時には漁師だったり、浮浪者だったりするので
全国1周計画
元々無計画に各地をぶらぶらと寄り道して巡るのが目的なので計画なんて要らなかった
キャンピングカーと言う選択肢はない
ほぼ完全再現500分の1スケールお城プラモデル城下町付き
石垣どころか木の1本に至るまで再現、もちろん1本1本番号が振られている
製造販売元は一体何を思ってこんな物を作ったのか…お値段198000円
あまり簡略化されていないので部品が気が狂うほど多い、でも建築方法などはほぼ忠実に再現、木を削って説明書通りに作れば糊も釘も要らない
普通は人海戦術で作る、個人で作ったのはご主人様だけ




