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初心者マーク付き 見知らぬ場所へ

「免許取れました」

「んお?」

 おつまみ用のイカ天を庭で作ってるとロザリアが屋敷から出てきた。

 イカを包んでいる衣が膨らみ、火が通ったら油から取り出し、ざるの中に入れていく

 全て油から引き上げたら裂いておいたイカを衣をつけ、油の中にどんどん放り込んでいく。

 穴あきお玉で均等に火が通るようにイカを油の中で泳がせ、衣が膨らんで来たら油の中で混ぜるように。

 火が通ればまたざるの中に取り上げていく。

「そう、よかったね、おめでとう?」

「有難う御座います」

「見ての通り今手が離せない状態だから、ちゃんと相手できなくてごめんね?」

 積み上げられた裂きイカを次から次へと油の中へと放り込んでいくが、終わりがまだ見えない。

「これは一体?」

「干したイカを砂糖と醤油、お酒を薄めた物で戻して、それを裂いた物。

甘じょっぱくて美味しいよ」

「貰っても良いですか?」

「いいよー、揚げたては揚げたてで美味しいし」

「では…んっ…

サクサクではなくふわふわなんですね」

「イモ天用の天粉に近いからね、分量間違えると粉っぽくなるけど。

これじゃないと冷えた時にベチャーってするからね」

 最初に取り上げたイカを入れておいたざるに入っているイカ天をバットの上に広げ、今揚げているイカを入れていく。

 入れ終わったらまた次のイカを投入、軽く泳がせたら2回目に入れておいた方のざるのイカをバットに。

「何時くらいに終わりそうですかね?」

「さぁ…?まだ一夜干しも残ってるからなぁ…」

 一夜干しは揚げたての方が良いので、油が切れたら収納の中で保存しないとだけど。

「んー…また日を改めてきますね」

「はいはい、お土産にいくらか持って帰りなー、一夜干しの方も今揚げちゃうから、一夜干しの方は帰ったらみんなですぐ食べてね

「はい、有難う御座います」

 今揚げているのを引き上げ、一夜干しのイカはから揚げ粉をつけて油の中へ。

 衣無しで揚げた物も作り、油を切ってお皿に盛る。

「はい、どうぞ、それとこれを葵さんに」

 温泉街に卸しているお酒ではなく、メイド達が普段飲んでいる物よりもちょっと良いお酒を2本渡しておく。

「これは…?」

「ちょっと良いお酒、絶対飲みたくなるだろうから先にね」

「なるほど?まあ、これで失礼させて頂きます」

「はいはい、またねー」

 ロザリアはお土産を手に持ち、屋敷の中へと戻って行った。

 はて、何のようだったのだろうか?

 まあ、今は目の前のイカだな…

 揚げても揚げても減っている気がしないんだけど、誰かこっそり追加してない?


「やっほー、ロザリアいるー?」

「ロザリアに何かご用ですか?

それとイカ天とお酒有難うございました、また今度別のお摘みとお酒の追加をお願いします」

「何か昨日用が有ったみたいだけど、ずーっとイカ天作ってて相手に出来なかったからねぇ。

お摘みなら乾物とかチーズとか燻製くらいかな、お酒はアレメイド達が普段飲んでるのよりいいやつだからちょっと無理」

 メイド達が飲んでるのも十分いい物ではあるのだが、それより長く熟成させたものなのでそんなに数が無い。

 まあ…収納の中では今も熟成を進めているお酒も有るのだが…

 メイド達以外が飲むと色々と危険な原料を使ってる物も有るので出せない。

 体質が変わるなんてものじゃないからなぁ…

「それで、ロザリアでしたね、今は部屋にいるはずですよ」

「はいはい、じゃあそっちに行ってみるかな」

 葵さんと別れてロザリアの部屋へ、さて、昨日の用事は何だったのかね。


「ローザーリアー、でーておーいでー」

「はい、ただ今」

 外から呼ぶとロザリアは慌ただしく部屋から飛び出してきた、声は落ち着いてるのにね。

「今日は空いてるけど、昨日は結局何だったの?」

「あ、はい、免許を取りましたので、一緒にドライブでもと」

「なるほど、いいよー、外行き様に着替えてくるねー」

「はい、こちらも準備してお待ちしております」

 一旦屋敷に引き返しお着替え、外行きに適した服は有ったかなぁ…


「これはーだめ、これもーだめ…」

 なんで今着ている服を含め、箪笥の中に入っていたのは外行きには向いていないのか…

 外に行くことを想定してないからだね…

 こういう時頼りのなるのはルシフだな、うん。

「ルシフー、おーきー…ろー!」

 ルシフの部屋に行きまだ寝ているルシフを叩き起こす。

 久々の顔面直撃紙ハリセン、良い音出てるわ。

「いったぁぁぁっ!なになに!?何事!?」

「おはようルシフ」

「あ、ああ、おはようご主人様、一体何の御用で?」

「ロザリアとドライブに行くから、外行き用の服用意して?

箪笥の中に入ってるのベビードールとかネグリジェだけだもん、今着てるのもそうだけど」

「あー、はいはい、ちょっと部屋で待っててね、直ぐ用意するから」

「お願いねー」

 部屋に戻りルシフが服を用意してくるのを暫し待つ。

 ルシフに任せておけばひどい事にはならないだろう、今着ている物を脱ぎ、畳んで脱衣籠に入れておく。

 脱いだついでに尻尾とかの手入れもしておこう。


 髪も尻尾もサラサラツヤツヤ、まだ服は来てないのでまた後で軽く整えないと駄目だけど。

「ご主人様お待たせー、何所まで行くかはわからないけど、これなら大抵の所は大丈夫でしょ」

「んー?」

 黒を基準としたゴシックドレスに銀縁のケープコートフード付きか。

「後ろは長めにしてあるからいざと言う時は尻尾をすぐ隠せるし、フードを被れば耳もすぐ隠せるね。

ベルトも通してちょっとパンクっぽくしてアクセントも入れたし、ベルトをちょっと搾れば腰回りが更に細く見えるね。

色は髪に合わせるとどうしても光を通さない黒に偏っちゃうけど」

「ふんふん、まあいいんじゃない?白でも黒でも桃色でも」

「白い肌、輝く銀色の髪に桃色はどうかと…似合わなくはないけど。

まあこれなら何所行っても大丈夫だね、少しコスっぽく見えるかもしれないけど、ご主人様なら何所からどう見ても良い所のお嬢様だね、これは保証するよー」

「お嬢様でいいのだろうか…」

「いいんじゃない?

半分男でもあるし半分女でもあるし、それに男の時も見た目はほぼ女の時と変わらないしー。

腰回りがちょっと太くなって胸がなくなる程度だしね、女装しても男とバレないからお嬢様で行けるって」

「流石に男の時は男物を着たいんだけど…無い時は諦めてるけど」

「諦めてる時点でもう手遅れだと思うけどね!

所で時間は大丈夫?」

「あー、そろそろ行かないとね、んじゃ行ってくるねー」

「はいはい行ってらっしゃい、無いとは思うけど、もし事故をやった場合は相手に謝っちゃダメだよ、取りあえず軽く無視して置いて葵さんに連絡を入れる事、もしくはこの紙に書いて有る所に連絡を入れるように伝えておいてねー。

当てられた場合は逃げられないように捕まえてから連絡ね。

まあ、乗っていく車によっては車間距離がある程度近くなると、勝手に速度を下げて程よい距離を保ってくれるからまず此方からやる事は無いと思うけどねー、相手が止まってるとアクセル踏んでも止まる設計だし」

「車の作りはよく分からんね」

「乗っていくなら一番高い奴だね、乗りやすいし、当てられはしても、此方から当てたりとか事故を起こすことはまずない車だからね」

「なるほど?」

 何を言っているかよく分からないけど、取りあえず高いのに乗って行けばいいのね。

「それと最後に、ご主人様にはこれ、限度額上限なしのカードと、カードが使えない所用の現金。

それじゃ気を付けてねー」

「うん、行ってきます」

 連絡先をメモしてある紙と、お金の代わりになるものと、現金がいくらか。

 大事に仕舞いこみ、ロザリアの待つ場所へ。


「お待たせー、さ、いこいこ」

「はい、では行きましょう」

 一応葵さんに出かけてくると伝えて置いてから玄関を出て車庫へ。

「あーそうだ、ロザリアにこれ、事故に有った場合は此処に連絡だって、当てた場合は相手を無視して、当てられた場合は捕まえてからだってさ、後謝っちゃダメとも」

「そうですか、ではそのように」

 紙を受け取った後車庫へと向かっていき、譲渡した車が有る所へ。

「乗っていくなら一番高い奴が良いらしいよ、何か当てそうになっても勝手に止まる?らしい」

「一番高いのですか…習っていない車ですが頑張ってみます…」

「まあ気楽に行こー、壊しても直せばいいだけだしね」

 一番奥に停めてある車に乗り込み、ロザリアが乗るのを待つ。

 が、ロザリアは前後に何かを張り付けているようだ。

 貼り付け終ると車に乗り込んでくる。

「何を張ってたん?」

「初心者マークです、まだ取り立てですしね」

「ほーん」

「では行きましょう、特に当てもなく少し遠出して帰ってくるだけですが」

「んー?いいんじゃない?日帰り旅行みたいな感じで」

「そうですね…当ての無いドライブって日帰り旅行みたいなものですよね」

 ロザリアはゆっくりと車を発進させ、敷地内で軽く試運転をした後、門を出てドライブへ。

 当てもなく少し遠くへ行ってくるだけ、どんな所に行くのかなぁ…


「んー…教習車と違って快適ですねぇ…」

「そうなの?」

「はい、それほど快適ではないという事は有りませんでしたが、シートのすわり心地は良いですし、ハンドル操作もブレーキもアクセルワークも、全部思い通りになるのが良いですね」

「んー、ルシフの時もそうだったけど、言ってる事があまりわからないや」

「そう言えば他の方達と違って、運転の勉強や練習はしていませんでしたね」

「ご主人様は運転させる側で有って運転する側では無い、だって。

だから運転する必要も勉強する必要も無いらしい」

 馬車も何時もエリスが御者をしてるしなぁ…

「なるほど…

この辺りから高速に乗って見知らぬ土地へ行ってみましょうか」

「言った事のない所かぁ、良いねぇ」

「迷子になって日帰りできないかもしれませんけどね、ナビは付いているので大丈夫だと思いますが」

 高速道路なる所に入り、速度を上げて走り始める。

「高速とは言え、制限が有るので意外と高速とは言えないんですよね、一応国道などに比べれば制限速度は20キロは上ですし、信号機も無く止まる事が無いので十分速いですけど」

「ほーん、確かに信号も無ければ一本道だね」

 信号のない道をただただ真っ直ぐ走って行くだけ、遠くに別れ道も見えるが…

「あれはパーキングエリアの入り口ですね、少し寄って行きますか?

お土産だったり軽食だったり、色々ありますよ」

「んー、飲み物が欲しい所だね、流石に車の中でお茶を淹れるわけにはいかないし」

「ですね、では寄って行きましょうか、何か珍しい物が有る可能性も有りますし」

 別れ道を進み、パーキングエリアなる所へ、何か面白いものあるかなぁ…?


「えーと何々…うどん…うどん…」

「餃子ですね」

「そう、それ、うどん餃子1本150円か」

 餃子の種に刻んだうどんを混ぜて焼いた物が売られている。

 焼いて崩れ難くしてから串に刺しているのか…

「高くも無く安くも無く、ですね」

「値段の事はよく分かんないや、2本ください」

 ロザリアの分を含めて2本注文、既にできている物が並んでいるので出てくるのも早い。

 その分生ぬるいけど…温めたりはしてくれないのね…

「支払いは…これで」

 ルシフから貰ったカードを出してみる。

「ここはカードは使えないよ」

「はいはい、じゃあこっちで」

 カードを仕舞ってお札を1枚、なぜか嫌な顔をされたけど…

「はいロザリア、買ってきたから食べよう」

「有難う御座います」

 買ったばかりのうどん餃子を食べてみたが、うん…

 もう2度とここでこれを買う事は無いだろう、表面は焦げてるのに中はぎりぎり火が通っている状態、混ぜてあるうどんも何か味気ないし、生ぬるいから脂が変に固まってるし…

 ロザリアも微妙な顔してるなぁ…

 とりあえず机と椅子が置いてあるからそこでお茶でも淹れて口直しをしよう。


「いやー…普通に不味かったね…」

「ですね…」

 淹れたばかりの温かいお茶で口直し、ちゃんと作れば美味しいんだろうけども…

「はぁー…口の中がさっぱりした、他にあるのも似たり寄ったりだねぇ」

 パッと見では全て作り置き、注文を受けてから作るわけではないので火が通っていれば良いらしく、火加減はかなり適当、適当に焼いたらそのままパックの中へ。

 もしくは隅の方に避けて置くだけ。

 何時かの料理店も酷かったが…此処は此処で中々酷いな…

「さて、一息つきましたし、次の所へ行きましょうか」

「だね、次はまともな物があるといいな」

 車に乗り込み、次の場所へ。

 さ、次はどんな所かな?

柔らかイカ天

甘じょっぱくてそのまま食べても美味しい

マヨまたは七味マヨでさらに暴力的になる


一夜干しのから揚げと素揚げ

一夜干しで美味しさアップ

唐揚げで味を追加、素揚げでうま味を凝縮


こっそり追加

し て ま し た

10メーターあるスルメイカ2匹分くらい、おかしいと分かっていても断れない


危険なお酒

味はとても良い、ただ普通の人が飲むと劇毒、苦しみはしないがもう2度と目覚めない

葵さん達は体質が既に変わってるのでぎりぎり大丈夫、ただ更に死に辛くなって寿命がまた延びる


一番高い車

機能が一杯、自動運転、音声認識、自動ブレーキ、高解像度車載カメラ…に擬態させたメイド達御用達の映像記録媒体、他多数

注文するときに滞在している所に合わせたので右ハンドル

初心者マークがついてる


高速道路

乗るだけ乗って適当なところで降りて見知らぬ土地をのんびりドライブするのも良い

もしくはパーキングエリアを巡るのも良い


うどん餃子

餃子の種に適度な長さに切ったゆでタイプのうどんを混ぜて焼く

ちゃんと作れば美味しい

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