珍しくないけど珍しい 田舎ではよくある
「あー…たまには珍しい物が食べたーい…あっと驚くようなものでもなくていいから珍し物が欲しーい…というわけで店長何かありません?」
「んー…和食洋食中華に慣れ親しんだ身としてはどういう方面で珍しい物を?メインかデザートか」
「デザートもいいけどメインがいいなー、がっつり食べれるようなメインが」
「そうねぇ…虫はまあ好き嫌い以前に見た目でダメってなる人が多いから除外して、慣れ親しんだ魚とか肉にするとして…ニャマ・チョマでも作る?」
「なんですかそれ?」
「物凄いざっくり言えばカレーに付け込んで焼いただけの牛肉」
「そう聞くと珍しいってほどでもないですねぇ、名前を聞いたらなにそれってなるけど」
「味付けなんかが変わるだけで料理の基本はどこの地域も変わらないからね、一般的に広まってはいるけど珍しい物もすぐに作れるよ?」
「広まってるのに珍しいものですか」
「うん、ポークとかビーフのビリヤニ、本当はチキンかマトンだけど、宗教上の理由で現地の人は食べないから珍しい物といえるね、水牛を使ったカレーはあるけど」
「ビリヤニかー、食べた事はあれど作り方を知らないんですよねー」
「結構簡単に作れるよ?一種の混ぜご飯みたいなものだし、和食で再現するならもち米でおこわ風にしてみるといいんじゃないかな?今日はバスマティ米で普通っぽい感じにするけど、肉は食べ慣れた牛で作ろうか」
「イェー!で、どうやって作るんです?」
「それはまあ材料を揃えてからだね、とりあえず焼肉屋に行って一番いいお肉の盛り合わせ50人前分くらい貰ってきて、それと焼肉のタレも、本来ならカレーだけどここはドシンプルな焼き肉丼風のビリヤニにしよう」
「はーい、大至急もらってきまーす」
「まず茹でたバスマティライスを寸胴の底に敷きます、次にタレに付け込んだ牛肉、その上にライス、肉ライス肉ライスと重ねていきます、重ね終わったら蓋をして寸胴をしばらく蒸します、そして蒸し終わったらざっくり混ぜてビリヤニの完成」
「重ねて蒸すだけですか、結構簡単に作れそうですね?」
「簡単よー?特別な日に食べる物とか宮廷料理とかいう人もいるけど、屋台で1皿何十円とかそんな価格で売るようなお手軽料理だし、屋台で売ってるのはカレー風味のマトン団子だけど」
「でー、どれくらい蒸すんですこれ?」
「20分から30分かな?寸胴が大きくなって量が増えても蒸し時間は実はそれほど変わらない、今日から花街がお休みだからドカンと300人前分作ってるけど、5人前でも10人前でも300人前でもほぼ同じ、まあ蒸し方とか寸胴の形状にもよるんだけど」
「とーりあえず蒸し上がるまでは片付けに専念しますか」
「そだね、片付けが終わる頃には丁度蒸し上がるし、お休み中の花街にも届けないと」
「今日お休みでしたっけ?」
「今日というか来月末までお休みだね、どうもお仕事中に床が抜けたらしくてねぇ、老朽化というほどは古くないから安普請だろうねー、安普請だと他にも問題のあるところが沢山あるだろうねーって感じで、全店舗調査と補強または建て直しになるので北西地区の花街は今日から来月末まで連休です。
まあ、今すぐ崩れるというわけではないから別に閉める必要はないんだけど、何かあってからでは遅いから念の為にね」
「お店の家具とか調度品とか働いてる人の宿泊先とかどうなってるんです?」
「家具と調度品の運び出しはアウト判定が出てから、床が抜けた店は建て直しになるから、物置として使っている空き店舗に運び入れて、働いている娘達はまだ調査されてないお店の空き部屋を借りるか、カジノの空いてる部屋を借りるか、農場と第三牧場で働きながら部屋を借りるかの4択、閉まっている間は指名料とチップ無しの基本給しか出ないから、割と農場と牧場に働きに行ってる娘が多いよ?そしてその働きに行ってる娘の部屋を借りてる娘も居る」
「割りとどうにかなってるんですね」
「さすがにいきなり放り出すわけにはいかないからね、働き先としては慢性人不足の農場第三牧場の他にもカジノの給仕とか焼肉屋のフロアを紹介してるよー?花街でやってる事とほぼ変わらないし、慣れてる娘は結構多いからね」
「どうりで見た事ない人が焼肉屋で働いてると」
「休養日に日雇いで働きに来てる娘は居るんだけど、大体皆夜型でお店に来るのがお昼過ぎから閉店までの短時間だし、まず顔を合わせる事は無いからねぇ」
「まあ、だからと言って話すことなんて何もないんですけどね、むしろ何を話題に離せというのか、しかも肉を貰いに行ってるだけの短時間で」
「するにしてもおはようございますとかそれくらいよね、さて、後は乾かしたら片づけて、玉ねぎの皮やらなんやらはいつも通りコンポストに入れておしまいだね」
「ふぃー、今日も充実した労働だったぜ!というわけで早くビリヤニください」
「後5分くらいだね」
「うんま…焼肉丼風ビリヤニとかこれ売りに出したら完売確実でしょ、焼いてはないから焼肉丼風止まりですけど、ホロホロになって崩れた肉がタレと一緒にご飯に絡んで、さらにホルモンの独特な食感も相まって…」
「これはこれで結構美味しいしちょっと珍しいでしょー?ビリヤニイコールカレー味、風味って感じで固定されちゃってるとどうやっても美味しいのにそれしか作らなくなっちゃうんだよね、豚の生姜焼きとか鳥の照り焼きで作っても美味しいよー?」
「ただ問題はこれをビリヤニと認める人がいるかと言う事ですね」
「バスマティ米とスパイスを使ってたらビリヤニになるし、焼き肉のタレは生姜にニンニクといったスパイスが入ってるし、生姜焼きも言わずもがな、照り焼きは入れたり入れなかったりだけど山椒を入れるといい香りになるし、これもビリヤニと呼べる物になるね、固定概念に囚われてたり他の物は一切認めないって人からすれば邪道どころかふざけんなってなるかもだけど」
「こんなに美味しいのに、いろいろ勿体ないですねー、おかわり下さい」
「はいはい」
「しかし、鳥の照り焼きも美味しいって聞くとそれも食べたくなってきてしまうのがまた何とも」
「作り方は教えたわけだし、そこは自分で作ってみるといいんじゃないかな?茹でたバスマティ米で挟んで蒸して混ぜるだけ、エビチリなんかの海鮮を挟んで蒸してもいいのよ?」
「また今度いろいろ作って見るかー、で、次は何を作ってるんですか?」
「ビリヤニだけじゃ足りないからサラダとスープをね?和食で言うなら炊き込みご飯だけを食べてる状態になるわけだし、野菜とか汁物も取らなきゃね」
「確かに、美味しいですけど肉と米だけですしね、これだけで済ませるとバランスもなにもないですね」
「というわけで焼き肉の付け合わせ用野菜で作ったサラダとコーンスープをどうぞ」
「わーい」
「あー…満足した…ところで今日はゲームセンターにお邪魔しまーす」
「どうぞどうぞ、私の家ではないけど」
「あそこまで私物だらけになってるとほぼ店長の家みたいな物だと思いますけどね、自動販売機に筐体にクレーンゲームの本体にと山ほどありますし」
「一応共有ではあるんだけどねぇ」
「とりあえず新しいフィギュアの入荷通知が来たので、今日はコンプリートするまで張り付きますよー?」
「そういえば新しいプライズフィギュアと通常フィギュアが朝早くに届いてたなぁ」
「プライズにせよ通常のフィギュアにせよ、大体は人気のあるキャラのみで他のキャラが出ないまま終わる事があるのが一番の悩みですけどね、特にキャラ数の多い作品となるともう…数十人居るのにフィギュアは10人でたらいい方とか…」
「全キャラとなると笑えないくらいコストがかかるだろうし、全部作れってのはまあ無理だよね」
「店長の力で何とかなりません?」
「なりません、フィギュア工場を作るところから始めないとどうにもならない、だからメーカーというか権利者が売りに出してくれるのをお祈りしようね?」
「むーん…出るんですかねぇ…?」
「そもそも何の作品のどのキャラのフィギュアが欲しいかすら分かんないし、出るかどうか聞かれてもどうにもなんない」
「ここはエルフの森ですっていうやったら近代化してる都会のジャングルに住んでるエルフが出てくる作品なんですけど、それに出てくるなんかもういろいろと終ってるハイエルフの長老がなかなかいいんですよ、いわゆるロリババァで見た目は幼いけど年齢が年齢なので、たばこを吸いながらスロット台に台パンをかましては森の警備隊に連れて行かれて反省文を書かされるっていう、後長老なのに無職でヒモです、1人暮らしの女性エルフの家に転がり込んでがっつり寄生してます」
「それはまた何とも…」
「見た目だけは凄くいいんですよね、長老をやっているだけはあって年齢は1500とか超えてるんですけども」
「んー…また今度時間が取れたらちょっと見てみようかな、今はお仕事が立て込んでてみる暇がちょっとないけど」
「結構面白いですよ?いろいろやばいエルフが出てきますけどギャグ寄りの日常作品ですし、こういうエルフもありだなって思えてきます」
「エルフイコール自然と共に生きるってイメージ自体が間違いなような気がするけどね」
「普通に肉とか食べてますもんね」
「植物の分身だから肉は食べないという考えもあるみたいだけど、植物だって動物の死骸とか虫の死骸っていうタンパク質の塊を栄養として摂取してるし、虫や小動物を捕獲して栄養にする植物もいるし、植物の分身だというなら普通に肉を食べてもおかしくはないよね」
「そう考えるならそうなんですかねー…でもこの手の議論は永遠に決着がつかない気もしますね、存在する世界なら普通に食べるわ解散!で終わりそうですけど」
「私達からすればちゃんとそこに実在するしお隣に住んでいるような存在ではあるけど、そうじゃない世界の人からすれば想像上の人種でしかないわけだからねぇ、議論も派閥ができたり決着が付かなかったりという事は普通にあるだろうね」
「ま、私は実物を知っているのでアニメでエルフが肉を食ってても特に何の反応もしないのであった、台パンして連行されて反省文は笑いましたけど」
「破壊行為はダメだよね」
「さて、今日の本題、新しいプライズとフィギュアは何かなー…?」
「私も中身は見てないんだよね、受け取りと搬入だけやってすぐにこっちに来たから、プライズフィギュアとフィギュアっていう品名しか見てないし」
「んー…あー…この作品かー…」
「何か問題でも?」
「いや、作品自体は別に悪くないんですよ、原作に関しては、ただアニメになる際に大幅に改編が入ってもう話がしっちゃかめっちゃか、原作要素はもう原作に登場するキャラくらい、その原作キャラも脚本家が登場させたオリジナルキャラを巡って争うみたいなそれはそれはもう酷い改変でしたよ。
一言いうならアレですね、メアリー・スーです、他人の作品に自分の分身を登場させて他人のキャラでお人形劇をやる、原作がある作品なら一番やっちゃいけないやつです、なので1話で早々に切ったんですよねこれ…」
「なるほど、でも原作もアニメもどっちも知らないから何とも言えない」
「2話からどうなったかは知りませんけど、1話はそれはそれはもう酷い有様でしたよ、何もかもが超スピード展開、原作に出てくる女キャラが特に理由もなくオリジナルキャラにべた惚れ、男キャラは全員オリキャラのかませにされて早々に全員退場、その後は女キャラがお風呂で寝室でと裸でアプローチをかけて奪い合い、同性愛者だったキャラですら原作でのパートナーを放置してオリジナルキャラにご執心、もう原作はどこへ行ったんだっていう状態でしたね…」
「ふむ、でもまあ、プライズフィギュアが出てるということはそれなりに人気が出たとか売れたとかなのかなぁ?」
「さぁ…?もしかしたらファンからのクレームが酷くてなかった事にして無理やり作り直したか、キャラだけは人気があるのでフィギュアを作ったかのどちらかですかねー?でも脚本家とオリジナルキャラ以外には罪はないのでちゃんとゲットしーましょ」
「それじゃあ私もボチボチ取っていきましょうかね、今日のアーム設定を確かめるところからだけど」
「田舎のゲームセンターかってくらい渋い設定の時がありますよね、どうあがいても取れないほどゆるゆる、テレビなんかでよくあるこうやって取るってやつが全部出来ない配置、取る方法はただ1つ、日を改めて設定が改善されているのを祈るだけ」
「滅多な事ではそういう設定にはならないけどね、ちゃんと頑張れば取れる設定と配置になるようにしてるし、そもそも無限にプレイ出来るし、続けていればそのうちね」
「そこがいいところですよねー、よっし、それじゃ始めるかー」
「明日明後日は休みだから深夜までやるのはいいけど、ちゃんと睡眠はとるようにね?」
「わかってまーす」




