おるすばん 買ってみなきゃわからない
新しい大きな話題が出れば古い話題は埋もれてしまう。
まだそれほどの時間は立っていないにもかかわらず、ロザリアと元猟師の話題は既になく、今はルシフの仮の姿であるルシエラ何某の話題が世間を賑わせている。
今ではすっかり日課になってしまった、朝食を取りながらの朝のニュースを観賞、今日もルシフの話題で溢れていた。
「正直めんどいだけですけどねー、車で移動するより自分の足の方が移動するのが速いのに、わざわざ車に乗って移動して適度に報道局に追っかけさせないと駄目ですし。
今此処にいるよーってアピールしないといけないんですよね」
「ほーん」
たまに出かけては各地で何かをしているルシフがテレビに映し出されている。
「目立たない車に乗ったら乗ったで報道局もその辺中を探し回るので、立ち入り禁止の所まで行く可能性もあるし、貸切にして有る所なんて真っ先に目をつけられますね。
そうなると遊びに行っているうちのメイドと鉢合わせる可能性が有るので、たまに出かけては報道局を引っ張って行って話題を掻っ攫い続けているわけですよ」
「それで皆さん隠しもせずに出かけているのに話題にすら上がらないのですね」
「貸しきってる場所とか全部私の所のだし、口の堅い人だけを選りすぐって、さらに念書で駄目押ししてるから、まあ早々話題に出る事は無いんじゃないかな?」
「ケモミミに尻尾のメイド服を着た集団が釣りをしていた、って言う情報は流れていますけどね、動画付で」
「その辺は仕方ないかなぁ、個人の目までは全部持って行けないし、集団とは言え皆が皆尻尾があるわけでもないし、風で揺れているようにも見えるからコスプレで誤魔化せるしね」
そう言えば私の時もコスプレという事にして処理したんだっけ?
それで騒ぎにも話題にもならなかったし、簡単に誤魔化せそうな気はするな。
「と言うわけで今日はちょっと首都の方にでも足を延ばしてくるよ、観光名所を中心に動くけど、まあ観光も何もないだろうねぇ」
「お土産は?」
「流石に人数分は無理、店側も対応できないだろうしねぇ。
まあいくつかは買ってくるよ」
「置物とかはいらないからね?」
「お煎餅とか饅頭とか、後は…その地域限定の食べ物とか?」
「期待してるね」
テレビを見てると此処にはあるけどそれ以外の所には無い、ってのが多いのよねぇ…
「さて、今日は何をしようかなぁー…」
ゲームの続きも良いが、最近お外に出てないのでそれもちょっとなぁ…
釣りに行くにしても、一緒に釣りに行きたい雰囲気は出してみたが駄目だった。
それでも陽の光は浴びたいので、手元に残してある2種類のリールを持ち、庭に出て魔改造。
改造済みは約束通りに恵里香さんに上げたので、手元に残っている物を弄って遊ぶ。
前回は純粋に性能を向上させただけで終わった、弄ってないほうはお土産にするつもりだったけど、皆此処に来たからなぁ…
さて、どういう方向性で弄ろうか…
悩むこと暫し、錆び防止に部品の取り換え位で終了。
次に音の出るルアーを真っ二つに、中にどの程度の空洞が有って、どういう大きさの物を入れているかを確認。
作り自体は単純、これなら再現は楽に出来そうか…な?
ウルカン製のルアーを取り出し、真っ二つにしたルアーを元に、中に空洞と小さな球体が有る状態にしてみる。
軽く振ってみると、一応金属なのでカラカラと言うより、金属を軽く叩いた音がする。
こればかりは素材の問題か…
タライに水を張り、ルアーに糸を通して引っ張ってみる。
水中で金属同士が軽くぶつかり合う音がしているが…まあこれはこれで、実際に使ってみないとわからんね。
部品を取り換えたリールや、ルアーを片付け、真っ二つにしたルアーも念のため保管。
お日様には当たるという目的は達したが、まだまだお昼時までは時間があるなぁ…
一旦家の中に戻り時計の確認、昼食を作るにしてもまだ3時間ほど早い。
うぅむ、どうした物か…
ルシフは出かけたし、狐さんはー…面白がってルシフに着いて行った。
車は…教えてくれなかったから運転できない。
葵さんも少し前に出かけて行った、家に残っているメイドは…居ない、ダイヤはルシフに引っ張って行かれた。
ロザリアはメイド達に拉致され遊園地に連れて行かれた。
つまり…家に残っているのは私だけ…
釣り組は多分夕食寸前まで帰ってこない、遊園地組とルシフも同じ、葵さんは…わからんね、遊園地組に合流するかもしれない、あっちにはロザリアがいるし。
レース場に行ってる組みも多分お昼はいない…
となるとお留守番しないといけないわけだが、冷蔵庫の中は空っぽ。
はて、どうしたらいい物か?
時刻は9時半、歩いて買い物に行けばちょうどいい位。
ふむ…最近はちゃんと道は覚えたし、歩いて行くか。
部屋に戻り、外出用の服に着替え、バッグにお財布を入れて準備完了。
一応玄関に書置きを残しておいて、門の施錠は…そもそも開け閉めは何時も自動だったから開け方が分からんね。
こういう時は適当に塀を飛び越えて行けばいいか。
塀を軽く飛び越え、見慣れた道を進み、目指すはスーパー。
家を出て陽の光を浴びつつゆっくり歩く事30分、多くの車が行き交う通りまで出てきた。
ここから20分ほど歩いた先にお目当てのスーパーが有る。
道中に本屋や割とお世話になっている服屋、もう少し進むと靴屋なども有る。
時間は10時を少し過ぎたくらい、本屋にでも寄って行くか。
少し寄り道をして本屋へ、特に目当ての物はないが、気になった物を手に取って買うのも良いかもしれない。
本屋に入り、何が有るかと適当に見て回る。
漫画に小説に週刊誌と言った娯楽の物から、経済やら資格やら色々難しそうな物まで。
何か良い物は無いかなーと、適当に封がされていない雑誌を手に取りパラパラと捲って読んでみる。
ふむ…どこそこで何が釣れたとか、何が狙い目とか、道具や仕掛け、餌はこれと書かれているな。
これは買いだな、行けるのであれば近いうちに行ってみたい。
他にはー…うーん…今年の流行と書かれた服飾の雑誌は今一だなぁ、これは無しで。
良い物が無いかなと探してはみるが、ほとんど封がされていて中が確認できないのがつらい所。
表紙と題名だけで判断しないといけないのがなぁ…
買いと決めた雑誌は月間釣り旅行と表紙も題名も分かりやすかったが…
服飾の雑誌なんて題名が大地の輝きとか…中を確認するまで分からなかったし…
封のされている雑誌もねぇ、可愛い女の子の絵柄に対して、題名がテクノマスターとか、よく分からない題名が付いている。
表紙が裸体の物は表紙で大体どういう物であるかは判断はついたが、どうして題名が生命の公理なんだ…逆に興味が出てきたわ…
と言うわけで釣り雑誌の他にテクノマスターと生命の公理を追加、他には特にめぼしい物は無し、漫画などは恵里香さんが大量に所持しているので手を出さなくてもいいだろう。
レジへ持って行き、お会計を済ませる。
支払いの時にレジの近くに居た人は、え?本当ですか?これ買うんですか?と二度見、こんなに綺麗な人でも買うんだ…と呟いていた。
まあ、興味が湧いてしまった以上、読んで確かめてみるしかないしなぁ。
買った物をバッグに入れ、本屋を出る頃には10時半過ぎ、スーパーに行って帰ればちょうどいい時間かな?
スーパーに到着後、買い物籠を手に取り、まずは野菜売り場へ。
もはやお馴染みとなりつつあるもやしを2袋、キャベツ1玉、玉ねぎ1袋、じゃが芋1袋。
次に果物売り場でリンゴ1袋確保、鮮魚でエビ、貝を1パックづつ。
最後に一番安かったお米を2袋確保して支払いへ。
わけありとは言え30キロで5500円はいいね、2袋持って行ったらレジの人とかびっくりしてたけど。
支払いを済ませたらバッグの中から袋を取り出し、その袋の中に買った物を入れる。
カートと籠を戻し、米袋を担いだら後は帰宅するのみ。
誰も帰ってこないなら帰ってこないでちょっと贅沢しようかな?
スーパーを出た後は家まで一直線、寄り道はしない。
米袋を2袋ほど担いでいるので視線が集まる、視線が集まるので収納に放り込めず、車通りも多いので歩いている人が居なくても収納が使えない。
両手が塞がる程度だからいいんだけどね。
行きと同じく帰りもゆっくりと、スーパーを出た時はまだまだ時間に余裕が有ったし、少し遅れそうならちょっと走ればいいや。
家に帰る途中、何人かの男達に声をかけられたがお引き取りを願った。
下心が丸見えだったのもあるが、荷物を持とうかと言ったので試に米袋を2袋ほど渡したら見事に潰れた。
持てないなら持とうとか言うんじゃない…
後はこの坂道を登って行けば家に着くなと言う所で、後ろにはずっとついて来ている車が一台。
はて、何か用でもあるのだろうか?
窓ガラスから中の様子は窺えないが、運転席の他に3人ほど乗っているようだ。
ま、着いてきたところで門の中には入れないだろうし、放っておけばいいか。
坂道を上り始め、木々で囲まれた中腹に差し掛かった頃、突然車が道を塞ぎ、ドアが開いて3人の男が飛び出してきた。
「今だ!捕まえろ!」
「さっさと乗せてズラかるぞ!」
「この女なかなか稼げそうだな」
ふぅむ…大人しくしてても良いが、そろそろお昼が近い。
家まではあと少し…
「何をしてる!早く車に乗せろ!」
よし、脇に蹴飛ばして置けばいいや、道塞いで邪魔だし、葵さんが帰ってきたら撤去して貰えばいいし。
男達に両脇から掴まれた状態で車に近づき、帰ってくるメイド達の邪魔にならない様に、道の脇に蹴飛ばしておく。
乗っていた男が何やら叫んでいるが、道を塞ぐのが悪い、後捕まえている男達も車の方に蹴飛ばしておく。
服が伸びたら大変だしなぁ…せっかく仕立てて貰った服だし。
車はひっくり返って運転席の男は出てこれない模様、パッと見軽い出血のみ、蹴飛ばした男3人は…両足が折れたくらいか、なら大丈夫だね。
にしても、思いっきり空回りさせているせいかちょっとうるさいね…
止めるにはどうすればいいんだっけ…勉強中のロザリアでもいいからこの場にいれば分かったんだがなぁ…
しばし考え込み、放っておくことにした、それより昼食の方が大事だ。
幸い音は小さくなってきているし、そのうち止むだろう。
何かを叫び続けている男達をその場に放置したまま帰宅、時間は11時50分ちょっとすぎ、誰も帰ってきてい無いようだ。
となると…昼食は1人だけと。
なんにせよまずはお着替え、外出用から普段着に、買った本も後で読むために机の上に。
調理場に行き、買ってきたばかりのお米を全て一番いいお肉に変換、豚、鶏、牛の3種を揃える。
うーん…60キロで2キロずつか…まあいいや。
じゃが芋を洗い、キャベツはざく切りに、玉ねぎは皮を向いて十字に切り込みを、林檎は皮つきのまま芯を抜き、玉ねぎとリンゴ、じゃが芋をアルミホイルで包む。
もやしは袋から出してキャベツの横に並べて置く。
最後に肉を適度な大きさに切り分け、お皿の上に並べたら昼食の準備完了。
庭に出て1人バーベキューと洒落込もう。
ちょっと寂しいけど…誰か帰ってくるかもしれないしね…
コンロに炭を置き、火を点けたら網と鉄板を並べる。
網と鉄板に熱が行き渡ったら鉄板で豚バラを焼き、焼いて出た油でざく切りにしたキャベツともやしを炒める。
ホイルで包んでおいたじゃが芋と玉ねぎは炭の中へ、林檎は最後まで取って置く。
網の方でまずは鶏からじっくりと焼はじめ、その間に炒めたキャベツともやしをつつく。
豚バラから出た脂で炒めていることも有り、塩だけでも十分美味しいが、香りづけに醤油を少し垂らして炒めても中々…
網の方で焼いていた鶏を鉄板に乗せ、大雑把に切り分ける。
切り分けたら醤油を垂らし、焦げ付く前にお皿に乗せて出来上がり。
次の為にコテで焦げ付いた部分を削り、剥がしておく。
焼いた鶏を食べつつ、厚めに切って置いたステーキ肉を網の所で表面を軽く焼く。
軽く焼いたら一番火力の弱い、炭火の当たらない所に避け、蓋をしてじっくりと。
その間にホイルに包んでおいたじゃが芋と玉ねぎを取り出し、牛を焼いている間につつく。
牛に火が通ったら火から下し、最後まで取って置いたリンゴを炭の中へ。
リンゴが焼けるのを待つ間に牛を切り分けて食べてしまう。
しかし…脂身の多い肉でする物ではないなぁこれ…美味しいのは確かなんだけど…
肉を食べ終え、少し立った頃に、最後に入れたリンゴを取り出し、お皿の上で切り分けてデザートの焼きりんごの出来上がり。
炭の中に直接入れるから焦げないようにするのがめんどいんだよねぇ。
リンゴも食べ終わり、片づけを済ませた後に時計を見ると1時20分過ぎ。
結局お昼は誰も帰ってこなかったなぁ…
余った材料は冷蔵庫に入れて置こう。
部屋に戻り、買ってきた雑誌をさっそく読んでみる。
本命の釣り雑誌は後に回すとして、まずはテクノマスターなる物から…
封を開け、ページをぺらぺらと捲りじっくりと読んでいく。
…なるほど、此方の恋愛や人付き合いは略奪するのが普通…なのかな?
掛かれている内容の7割がすでに相手の居る人から奪い取ってるし、結末も碌な物ではないけど。
この辺りは葵さんか恵里香さんに聞いてみればいいか。
さて次はー、生命の公理、表紙からして確実にそうであろうとは思ってはいるが、気になった物は仕方がない。
封を開けいざ拝見!
…これはまた何とも。
表紙は女性の裸体、なのに中身は題名の通り、内容は生命にについて書かれており、かなり真面目な書物であることが分かった。
テクノマスターとは違い、ついつい熟読してしまった…
今の時間はー…5時半前か、そろそろ誰か帰ってきそうだな。
時間的にもそろそろ夕食を作らないとなぁ、でも材料が昼の残りしかないや。
とりあえず調理場へ行き、葵さん達用の夕食作り。
残ってる材料的にメイド達の分は無理だな、ルシフや農場組に頼んで屋敷から持ってきてもらわないと…
夕食の支度中に出かけていたメイド達が帰ってきて、ルシフと狐さんは最後に帰宅。
ルシフに大急ぎで食材を持ってきてもらい、今日の夕食は何とかなった。
うぅむ…一度屋敷に戻って食材をがっつり収穫しておくべきだろうか…
なんにせよ、ルシフ達の手が空いてる時でないとどうにもならないね。
「所でお土産は?」
「買えたのは漬物位だね」
テクノマスター
愛され続けて30年、結構長生きなアレな雑誌、純愛から特殊な流行り物まで収録、流行り物が多め
メイド達に見せたら描いた人を間違いなくゴミを見るような目で見る
メイド達に対して実行しようとしたら間違いなく世界から男が消える
今はゴミ箱に入ってる
生命の公理
表紙からしてやばいブツ
でも中身は普通にあらゆる生命について書かれている、内容はカルトでもなく大真面目
でも表紙がやばいのでアレな棚に置かれてた
本棚に並んでる
炭火でじっくり焼いたステーキ
いわゆるアメリカンステーキ
本来なら刻んで炒めたニンニクや、輪切りにして焼いた玉ねぎを上に載せて焼く
やるならサシのほぼ無い肉
蹴飛ばした車に乗ってた人達
ガソリンは漏れたけど奇跡的に燃えなかった
通報からの病院送り、病院送りからの警察送りで取り調べ
手を出した相手と場所が悪かった、最低限の治療しかされず即警察送り、取調べと言う名の尋問中
葵さん達の帰宅が遅れた原因




