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人力でも出来るけど… ヘイタクシー

「久しぶりの我が家だー…居候だけど我が家ー…今日からがっつり1週間は休むぞー…」

「おかえりー、なんか大分お疲れだねぇ?」

「年始早々現場に出ての40連勤はさすがに肉体的疲労がですねー…というわけで帰ってきて早々ですがお風呂に入ったらすぐ寝るのでご飯ができたら起こしてください」

「はいはい、お昼は疲労回復効果高めの食事にしたほうがよさそうね、アリスの送ってくれた漢方配合調味料とか沢山あるし、もらった鳥肉がまだまだあるからお昼は漢方チキンカレーにしようか」

「そこはお任せしますー…」


「あー、まあ少し前というか先月に国外の方で大きな地震とそれによる津波がありましたし、そのニュースを見た人がうちの耐震はどうだったっけとか、津波を防ぐための防波堤やらなんやらはどうなってるんだとか、もしもの時のための避難所に避難経路に水に電気にと。

そういうのに敏感な人たちを納得させるため、または補助金出るけどまた建て替えをしてない人に説明をって感じで国の方から呼び出しがかかって国内各地を高速巡業ですからねぇ、そりゃ休みなんてほぼ取れないでしょうよ」

「避難所なんかの優先しないとダメなところはもう終わってるんでしょ?」

「終わっていても頭に入ってない人とか結構いますし、終わった後に越してきた若い人もいたりしますし、地震が多いこの国だと小さな地震ならいつもの事かとなりますけど、死者数百人とかそういう国外の数字を見ると不安になって仕方がないですからね、いつこの国にもそんな大地震がと。

震度7とかそれすらをも超えるような地震が来ても揺れることすらなくインフラも壊れない、そういう工事をしていても実際に地震が発生しないとわかりませんし、そういう不安をかき消すためにも今まで工事をして回ったところ、まだのところと回って説明やら新しい耐震工事を進める必要がありますし、休んでる暇なんかありませんよね。

後地震による家屋へダメージは防いでも津波に地滑りに土砂崩れに液状化に、地震が原因で発生する災害への対策はー…という説明も必要ですし、そこも懇切丁寧に説明しないと納得しない人が多いですからねぇ」

「地震は防げないにしても土砂崩れに液状化、津波に関しても防げるようにはもうなってるんでしょ?」

「まあ理論上は、ですけどね、計算上では10メートルの津波ですら陸地に届く前には時化程度に抑えれるようになってますし、強度も十分で200年は持つ計算ですし、大雨台風による洪水やらなんやらも大丈夫になってはいるんですけどね」

「その代わり結構歪な自然になってるのは何とも、原風景を取り戻しているところも上流に行くと割とびっくりな設備や装置があったりするし、万全を期しているところだと合間合間に洪水を抑制する装置とかあってびっくりするよね」

「抑制とはいっても自然を壊してるわけではないですし、余裕のある川やあらかじめ作っておいた支流に流して増水を抑えるってだけなんですけどね、ただ耐えれるようにしたり山から下りてくる水だけではないので要所要所に設置する必要があってその近辺の景観だけはちょっと…ってなるだけで」

「洪水をどうにかできたりするんですか?」

「あー、そうねぇ、ディジーの住んでた世界でも出来なくはないよ?自動でやるか人力でやるかの違いでしかないから」

「簡単に図に表わすとこうですね、まず山から一本川が通っていて、そこから自然に何本化に分岐する、このとき一番広い川がまあ大体本流といわれるやつですが、雨で増水した時にその支流では受けきれず氾濫して発生するのが基本的な洪水。

防ぐための方法としては土手を作って高さを稼いで溢れるのを防いだり、支流を増やして分散させたりってのがあって、今この国でやっているのは支流を増やして分散させて抑えてしまおう、ってやつですね。

でまあどちらもデメリットがありまして、土手を作って溢れるのを防ぐ堤防の場合はもう行ってしまえば土を盛り上げて固めてしまえばいいので作業工程もそれほどなら土地もほとんど使わない、人の住む場所なんかを増やせるってのがあるんですけど、どこかが決壊してぶっ壊れたらその近辺に住んでる人や家屋は全部流されます、そうならないように計算して作っていても限界というものはありますからね。

次に人工支流の場合、これはあまり高さを稼がず本数を作るのでとにかく土地が空いてないと作るこ事が出来ない、さらに支流を作るという事はそれだけ他に水を流す事になるのでどこかしらの水量が減る、ですが決壊して家屋が流されるということがほぼないというメリットもあるんですよ。

そして、今は世界中で人口が減少していまして、それはこの国でも例外ではなくこの国は現在住んでいる人が1億もいないんですよ、一番多かった時期は2億行くんじゃないかという状態になっていましたが、今はもう900万くらいですかね?そのくらいしか住んでないので土地が余り放題なんですよ。

それでまた色々あったりしましたが、自然を再生する意味も込めて土手ではなく支流を作って自然が死んだところにも水を流して、洪水を防ぎつつ改善しているのが今現在の状況ですね。

で、話を戻してこの洪水を防ぐために作られた要所、規模は違えど全て水門がついています、降水量とそれによる増水量がどのくらいかをコンピューターで計算、どこの水門をどのくらい開けて逆にここは貯水するために少し閉める、というのを全部自動で制御してるんですよね。

ですので水門を作ったりそれを開いたり閉じたりする人がいれば人力でも洪水を制御する事が出来るんですよ」

「まあ、めんどいからって水門を開けっ放しにして川の水を全部流して死んだ川も結構あるんだけどね」

「田舎にありがちですよね、水門を開け閉め出来るのは役所の人とかなんですけど、まともに管理する気のない人が割り当てられたらもう水門全開にしてずっと放置するっていう、当然水門は調整しないと川の水は流れていく一方ですし、海に水を流す最後の方の狭い川だと必要以上に海水が入ってきて汽水どころか完全に海水で水が侵されていきますし、1週間経たずに生態系が壊滅するんですよね。

そしてそういう川はこの支流を増やして水門を取り付けたり自動制御にするための工事で何本も見つかってますし、各都道府県の市役所に環境破壊やらなんやらで罰金とかそういうのが結構ありましたね、水門の開け閉めとか管理費も税金から出てるんですけど、開けっ放しの放置にして管理してなかった年数分国や住民に返納しろ、ついでに海水で汚染され塩まみれになった川の除染作業費用も全部払えって感じで」

「はー…なるほど…ちゃんと管理すれば人力でも洪水や川の氾濫を制御してしまえると」

「そそ、でも人力やると自分がやらなくても誰かがとか、さっき言ったみたいに面倒だから開けっ放しにして放置とか出てくるから、どこかがサボると川が死んだり洪水が発生したりする」

「ちゃんと運用すれば問題ないし、それまではちゃんと出来ていたのにどこかの代で必ず誰かがやらかすんだよね、この近くというかすぐそこの山だけど、そこから流れていく川の下流、もう海に流れでる一歩手前の場所にある水門だね、そこの水門は隣町の役所が管理になるんだけど、案の定というか、担当になった人がものぐさな性格で開けっ放しにしちゃってたんだよね。

それで担当が役所のお偉いさんにぶん殴られて公務員を首になったというちょっと笑える話がある、自然環境でいえば笑い事じゃないけど、その川に住んでたコイにフナにナマズ、メダカに水草にタニシとか全滅したし。

その時の役所のお偉いさんが不当解雇と傷害罪で訴えるのは別に構わないけど、訴えてきたら海水で汚染された川の除染作業と再生費用全部お前に押し付けるための裁判起こすからな?って言ったのも一応は笑いところですかね?有言実行しましたし」

「したんですか」

「したんですのよ?殴ったのはともかく解雇内容としては職務放棄をしていたので不当ではない、役所は管理不行き届きかもしれないけど書類もごまかして働いたり管理してたことにしてた証拠も見つかったので再生費用も全額とはいかずとも何割かは出そうね?っていう判決が下ってますよ。

傷害罪の方に関しては言っても聞かないやつは叩いてでもわからせるしかない、痛くしないと覚えないやつはどこにでもいる、こいつは痛くしないと絶対に覚えないタイプであると裁判官を説き伏せて1週間分の治療費だけで決着させてましたね、その時のお偉いさんはまだ現役で役場に勤めてるはずですよ?

言う事を聞かない自分の都合のいい様にしか解釈しない、そういう人が原因で起こった裁判も結構ありますし、それによる被害報告も結構ありますし、前例も山ほどありますからね」

「裁判は感情だけでやる物ではないけど、前例やら報告が多すぎてそれらに巻き込まれたら裁判官もさすがに同情してくれるからね、相手が言うことを聞かない奴ってわかった瞬間心象は一気に傾くよー?」

「他には他責思考とか被害妄想が酷い人とかを相手に裁判をする時もそういう人は心象が物凄く悪い、証拠も不十分でほぼほぼ勝つ事はないし、もし勝ったとしても最低額の支払い命令しか出なかったりもする。

対してそれらに絡まれた人は同情されるし、裁判で勝った時相手側に相場の平均から少し上乗せ、程度によっては今までの最高額を覆すほどの金額の支払い命令が相手に下ったりもする」

「これも一種の痛くしないと絶対におぼえない理解しないっていうやつですね、そしてそういう人は勝てば全部チャラとか、払わなければ無傷とかいう考えなので大体強制労働施設送りになります、払う気がないなら無理にでも働かせて被害者に賠償しろ、いい法律ができましたよねぇ…普通に生きてたら絶対に関わる事の無い所ですし、文句を言うのは支払いもせず逃げ続けて施設送りになる人だけですし。

まあ、今はそれはどうでもいいので置いときまして、今の時代ちゃんとやることをやれば洪水は事前に防げる、って事ですね、ついでにコンクリートやらビルで消え失せた自然環境もついでに再生できると割といい事尽くめです、人が多かった時代には出来ませんでしたけど」

「発展すれば自然災害も制御出来るんですねぇ」

「ある程度は…ですけどね、完全になくしてしまうとそれはそれで問題が出るので人が住む範囲だけに留めておくのが大事です、例えば台風なんかは風が強く木が倒れたりもしますけど、その倒れた木を栄養に菌糸類が育ったり、虫が栄養にしつつ腐らせて肥料にしたり、大雨は池や湖に水を貯めたりといった役割もありますし、氾濫した川も別の川と繋がってその間に生物が行き来したりしますし、それらを完全に止めてしまうと生態系も何もない自然じゃない何かになりますからね、制御するのはあくまでも人が住んでいる近辺のみ、住んでいない場所はよほどのことがない限りはそのままというのが大事です」

「よし、疲労回復に最適の漢方チキンカレーも出来た事だし、アヤカを起こしに行ってくるねー」

「はーい、いってらっしゃーい」


「んー…鳥っぽい感じはするけど初めて食べるような味ですねこれ、どこの鳥なんです?というより鳥であってます?」

「鳥である事は確かだね、というより一度食べた事があるはずではあるんだけど、品種改良して味が変わったからわからなくなってる感じかな?」

「一度食べた事がある…んー…なんでしょうね?」

「以前お兄さんが持って帰ってきた時は唐揚げで食べたシャンタク鳥ですね、ニャーさんが食用にと可食部を増やすための品種改良を行ってる途中の物を持ってきたので今はそれを消費しているところです」

「シャンタク…あー、あの神話生物の、聞いた時はびっくりしましたけど普通に食べれましたし美味しかったですよね、その時の物に比べたら柔らかくなって脂が増えて旨味が減った感じですかね?」

「そうだねぇ、以前獲ってきたやつは飼われてはいたけど命令を聞くだけでほぼ野生だったし、筋肉質で脂は少なかったけど旨味はあっちが上だね、ゴリゴリ言うほど硬くても噛み切れるように切れ込みを入れたりすればしっかり噛めて肉自体の旨味もしみだしてくるし、美味しさで言えばまだまだ」

「だそうだぞニャーちゃん、俺は食った事が無いからこれしか知らんけど、というより食える物と認識してなかったわ」

「基本的に食べなくても生きていけますからね、娯楽的な感じで何かを食べる事はありましたけど、そうですね…ただ肉の多い個体だけでなく程よく筋肉のついている個体も混ぜて行く方がよさそうですね」

「それでも普通の鶏と比べればキロ7000円くらいで売れそうなくらいには美味しいんだけどね、臭みもないし、鶏と違って虫がついてないから刺身でもたたきでも食べれるし、野生に近いのと比べたらってだけだし」

「飼育環境の改善から始めないとダメですねこれは、たまには野放しにする事も視野に入れた方がいいかもしれません」

「そのうちぼってぼてに太って羽が退化して鶏に近くなったシャンタクが誕生するんだろうなぁ…それはそれで見てみたい気もするが、ビヤーキーがここぞとばかりに喧嘩を売りに行きそうだな」

「住んでる場所が違うのでまずないと思いますけどね、私が住んでいる国にもあなたの教団はありますけど呼び出せる人はいないようですし」

「そりゃそうだ、俺が直接乗せてやれって言ったやつしか乗れないし、今の時代呼び出す呪文だとかなんだとか言ってるの事態が間違いだし、乗りたかったら今はこれだよこれ」

「携帯で呼び出せる神話生物ってなんなんでしょうね?」

「んー?こっちというか普通の人間でいうとタクシーみたいな物だし、昔流行ってたビヤーキーを呼び出す呪文って簡単に言えば道路の脇でヘイタクシーって言って呼び止めてるのと変わんねぇぞ?ただ人語じゃないから一つ間違えるだけでこのクソ蠅とか、短足鈍足トカゲとかそういう罵倒になって来ない、来たとしても八つ当たりでその辺りをぶっ壊して帰る」

「神話上だと黄金の蜂蜜を舐めてとかありますけど、あれってどうなんです?」

「あれは呼び出す間ののどの保護、人語じゃないから発声方法もあれだし、のどにかなり負担がかかるじゃない?さっきも言ったように一つでも間違えると罵倒が混じったりするから、それを防ぐためにうちの言葉でヘイタクシーっていうならこれを舐めてからねって感じで」

「なんだかですねぇ…それでいいのか神話生物ってなりそう…」

「それでいいんだよ、いちいち長ったらしくビヤーキーの個体名を入れてヘイタクシーっていう呪文を唱えるより、こういう携帯でビヤーキーを管理してるところに電話して1体ちょっと回してくれない?って伝える方が罵倒も混じらないし確実に伝わるからトラブルもないんだよ、後精神力も削らないし」

「そういえば呪文はなんか精神力を消費するとかがありましたね」

「発するのが人語じゃない呼ばれたビヤーキーは遠くから直接脳に普通の人には通じない理解できない言葉ぶっこんでくるから、それで精神がガリガリ削られて最悪廃人になるんだよな、ついでに鼓膜をぶち破りそうな甲高い音とか嫌な音で発音してくるからダメージが凄い」

「精神力を使うってそういう…マジックパワーとかそういうのではないんですね…」

「門の創造とか転向を操るとかそういうのもあるけどさー、アレも脳でどこに繋げたいかどこの天候をどう弄るかを正確に処理しないとダメなだけで、それが出来るやつなら精神をすり減らす事無く脳への負荷もなくやりたい放題だぞ?

まあ、さすがに違う世界というか、住んでる銀河系というか、そういうところが変わるくらい距離が離れると1人より2人で分担してやるほうが早いし確実で開けるよなって感じで俺はニャーに拉致されたんだけどな」

「1人だと地味に面倒なんですよね、3日から1週間はかけないと地面の中とか空に繋がりますし、そんな時にただ飯を食らいに来たのがいれば使うのは普通ですよね?」

「普通か?」

「一宿一飯の恩とかそういう言葉はありますし、そのお礼とか御代とかそういうのであれば普通…なんじゃないですかね?規模が違いすぎるだけで」

「一応俺は教団のトップだし、ずーっと空けっ放しにするわけにはいかねぇんだけどなぁ…ちょっと遊びに行ってくるとは伝えてるからしばらく不在でも大丈夫だろうけど」

「その遊びに行った場所が知られたらどうなるんでしょうね?」

「別に敵対しているわけではないから何ともないだろ、勝手に敵視してる派閥が騒ぐだけで」

「そういう物なんですかね?」

「そういう物だよ、たとえば俺とニャーをそれぞれを1柱の神として崇めて見るんじゃなくて、1つの会社の中の上の方の人物とかそういう視点で見ればいいんだよ、そうすればなんとなくわかりやすいだろ?

信者イコール派閥に属する人間、その派閥の中にも派閥があって過激だの穏健だのと出来て、その過激派がただ騒いでるだけ、派閥の頭にされてる当人は別に仲が悪いわけでもなく争ってすらいないみたいな。

で、大体直属というか幹部陣は上の意向に従うし内情とか大体知ってるから、騒ぐのは末端だけなんだよね、だから騒がれたところでうちの教団は別に何ともないしどうとでもなる。

崇めてる神が同じなだけで俺とは無関係、勝手に宗派を作って好き放題やってるのもいるから面倒ではあるんだけどな、俺の場合は崇められている神兼教皇とかもやってるけど、無関係のところも俺を崇めつつ俺の名を借りた宗教を開いて教皇をやってるやつがいたりとか、末端も独自宗派みたいな感じで小さな20人いるかどうかの教団を作って教皇だの司祭だの言いだしたりとか…もう自分のところを残して全部消し飛ばしたくなるくらいには面倒、事ある毎にうちに苦情が来るんだぞ?こっちは勝手に崇められて名前を使われてるだけだというのに」

「暴れてる近く分家を放置して遠く離れたところに住んでる無関係の本家にどうにかしてくれっていうような物ですかね?」

「むしろ非公認の組織とか教団で分家ですらないんだけどな、崇めてる神が同じだからって一番大きいうちにくるんだよ…末端が暴れてるからどうにかしろって…」

「そしてそのストレスを発散に遊びに行ったところを拉致されたと」

「ま、今回はそんな感じだな、帰ったら帰ったで無関係のところがどうのこうのっていう報告が入るだろうし、適当に処理しつつまたのんびり過ごす感じだな。

あ、でも帰ったらゲーム部屋を新設しないといかんな、変装なんかでばれる事はないし遊ぶための資金もいくらでも貰えるけど、自宅にゲームセンターを作って24時間遊び放題ってのはかなりいいし、そっち方面に勤めてるやつを呼んで作らせないとな」

「教団のトップである教皇というか崇められてる神が自宅にゲームセンターを作れという命令を下したら呆れられません?」

「そこは神託だなんだといえば喜んでやるさ、実際に崇められてる神である俺が言うんだから神託には違いないな、それにうちはカルトじゃねぇし、地域住民と仲良くやってるし、荒れたスラムの清掃とか炊き出しとかやってコツコツ信者を増やして行ってるし、教義も皆仲良くとは言わんけど近所の人同士くらいとは助け合いをしろとかそんな緩い感じだぞ?勝手に作られた教団の方は知らんけどな。

だから正規の教団員にはその才能に見合った職場や場所を提供したりするし、事故で足や腕を失ったら完全に戻らずとも義足や義手で生活が送れるようにサポート、その後義手義足でも問題なく働ける新しい職場を紹介したり、カルトとか争いとかそういうのは基本的に無縁な教団なんだぞ?」

「その部分だけを聞くとまともで社会福祉もばっちりな教団に思えますけど…んー…」

「ま、人があーだこーだ付け足して知らんうちについた悪名とかやばい生物っていうイメージがあるし、実際喧嘩を売られたら消し飛ばしたりビヤーキーとか司祭を送り込んだりするから完全に真っ白な教団とは言わんけどね、そうしなきゃ解決しない事もあるし。

とりあえずうちの教団は喧嘩を売られなきゃ温厚で近所の人にやさしくサポートもばっちり、そうして拡大していったから教皇の言うことは素直に聞くのさー、去年だけでも寄付金が大体15億ドル入ってきてるし、その使途用途全部記載してるから信用もばっちりだぜ?災害救助費用とか支援物資に掛かった費用とか復興にいくら使ったとか、何なら水道代電気代俺のおやつ代と全て公開されてるぞ?」

「ある意味正しく本来の姿である人が救いを求める宗教ではあるんですかねぇ?」

「俺は直接は手を出さない、けどほんの少し力は貸してやる、やってるのはその程度だけどな、あ、おかわりくれ、大盛りで」

「はいはい」

「割と神話生物というか神のイメージが崩れるようなお話ですね、ニャルラトホテプだと自分の楽しみのためだけに人を持ち上げて落とすみたいな話もありますし」

「それは正しいですよ?私は自分の暇潰しのためだけに何十何百何千人もの人を貶めてきていますからね、基本的にはほんの少し後押しをした後に見守るだけで手を下したりはほぼないですが、たまに私を黒幕だと勘違いして襲い掛かってくる人がいるのも面白いところですね」

「こいつ性格最悪だからなぁ、あくまでも提供するだけで黒幕にもならなければ自分で実行することは絶対にない、ただその結果どうなるかを見て遊ぶだけ、途中で詰まらなくなったら盤面ひっくり返したりゲームを崩壊させたりとかも普通にやる。

生きて帰るよりもうその場でさっくり死んだりさっさと精神崩壊させて自我を失うほうが幸運まであるぞ?TRPGみたいに会話とかその場でとる行動とかでどうにか出来るようなやつじゃないんだよこいつは」

「そっちに付いた方がおもしろいと感じれば人に付く事も有りますが、その人について行動している途中の大事なところでひっくり返したらさらに面白くなるのは当然の事ですし、最高に盛り上がってきた生還の直前に地獄へ叩き落とした時の表情と言ったらもう…」

「生きて帰ってもその後碌な事にならねぇようにしてるからもう本当に最悪だぜこいつ?まず事件の現場には絶対に辿り着けない、正気を保ったまま日常生活に戻れたとしても何かしら種を植え付けているし、休眠状態の種があれば発芽するように仕向けて野に放ったりするし」

「例えば…どういう物を?」

「そうだなー、こっちには居ないみたいだけど俺らの所にはグールっていう人に近い姿の生物がいるし、人に紛れて生活したりもするんだが、紛れて生活して混ざるとどんどん血が薄れていくだろ?でも本能のどこかでそれを求めるというか、希薄になっていてそういう意識は全くなくても間違いなく人の血と仮想いうのが旨いと感じるんだよ、そういうやつにそれらを使った料理をこっそり振る舞ったりして本能が目覚める目覚めないぎりぎりのところにして帰らせるんだよ、つまりいつ爆発するかわからん時限爆弾状態。

そういう町が崩壊しかけない物から個人の幸せ、例えば動物だと子作りするじゃん?その時に遺伝子を弄って片側の遺伝子とは不一致で肌の色も目の色も違う子供に作り替えて遊ぶとかも平気でやる、これに関しては成功を収めて金持ちになっている相手にやる事が多いな、転落していく姿を見るのが楽しいって」

「なんだか殺伐とした世界ですねぇ…こっちに生まれてよかったとしみじみ思いますよ…」

「あー、基本的にはこれと関わらなければ普通に生活はできるぞ?グール達も他の神格も地下に潜って人前には早々出てこないし、俺のところみたいに普通に共存してるところもあるし、しっかりしてるところは逆にどっぷり漬かってしまえば意外と平穏に暮らせる、末端なんかの浅いところにはまるとダメ、そういうところは鉄砲玉として扱われるし協議に反した事しかしねぇからな」

「地下に潜ってるのって何か問題があったりするんです?日の光に弱いとか」

「単純に見た目と数の問題、グールって人から見たら醜いらしく、それでいて力は強くて食欲旺盛、肉は牛でも豚でも普通に食べるけど人が好みって感じであまり相容れるような関係でもないんだよね、好みというだけで人を食べなくても生きていけるから人と混ざってどんどん血が薄くなっていってるグールも居るし。

で、一番問題なのが数、上位種族とか所謂神格と違って普通に刃物も通るし銃火器でも死ぬ、だから地下に潜って隠れて生き延びてるって感じなんよ、見つかったら種族が絶滅しかねないから、実際にグールの集落とか戦争のどさくさで焼打ちにあったり爆弾を落とされたりで全滅したところもあるからなぁ。

グールを呼び出すのが得意のやつもいるけど、近くに住んでるグールをちょっと来てくんね?って感じで呼び出すだけだし、自分を信仰してるやつしか呼べないっていうのもあるし、戦争以降激減したからいろいろ大変だって言ってたわ」

「なるほど、一種の人種差別みたいな物ですか」

「そうそう、グールは見た目とちょっと人肉思考なだけで生物学的にはほぼ人なんだよ、混ざって子供を作る事も出来るしな、なのにちょっと醜い、人並み外れた力に運動神経を持つ、人をたまに食べるってだけで迫害されてほぼ皆殺しよ、人を食べる習慣を持つ民族とか部族とか普通にいるにもかかわらずグールだけをね。

おかげで大戦以降うちに駆け込んでくるグールもそれなりに増えたんだよなぁ、うちの教団で大人しくしてる限りは攻撃される事はほぼないし、普段は肉体労働、主に力が必要な土木とかトンネル工事とかに従事してるし、迫害される事もないし、住んでる地域ではグールに対する理解も深まってはいるかな?」

「その駆け込みで鞍替えをするグール達のおかげで地下墓地で小さな宗教団体を運営してるモルが泣いてるんですけどね、ただでさえ減った信者の数がさらに減るわけですし」

「そんなもんちゃんと保護して生活環境を整えてやらんモルが悪いとしか言えんわ」

「おかわり大盛りお待たせー、それと追加のお茶やらコーヒーやらなんやらの原液、これはサーバーに補充しておくから各自でねー?」

「なんというか、金持ちの家の食卓ってこんなものなのか?ポットとかそういうので入れるんじゃなくサーバーで各自自由にっての」

「うちの場合は結構な人数がいますし、1つに絞ったほうが楽といえば楽ですけど、皆食べる速さが違えば食後もしばらくここに居座ってお茶やジュースを飲みますし、だったらもう台所からこっちに持ってくる手間を省いてサーバーを設置してそこに入れてしまえっていう考えですね。

よく使用人がポットに入れてトレイに乗せて持ってくるってのを想像する人がいますけど、お茶を飲むためだけにほかの仕事の手を止めさせてまでってのは大分効率が悪いんですよ、なのでそれ用のサーバーを設置して原液だけを補充しておけばすぐ飲めるようにって感じでこの食堂や仕事部屋には設置してあります。

実際この家はお金持ちが住むにしては狭いように感じますけどそれなりには広いですし、台所で沸かして入れて…ってやってると届くまでに普通に5分とかかかるんですよね、そのくらい待てないのかって思うかもしれませんけど、その5分は片道、片付けも考えるとさらに時間を使うので…ってやつですね」

「そういう考えもあるか」

「ハーちゃんのところは教祖様のために尽くすのが生きがいみたいな人もいるから使えないでしょうけどね」

「というよりうちはそれも職務に入れてるからなぁ、設置したら設置下で仕事を奪うことになるからダメだな」

「それはもう人それぞれとかそういうやつですね、そしてドリンクサーバーを設置しているからこそ出来る事…いつでも自由に作れるオリジナルミックスジュース!学生がドリンクバーでワーワーやってたりしてみっともないように見えますが、ちゃんと組み合わせれば普通に美味しいのが出来るんですよねこれ」

「あー…それはちょっといいな…」

「そして今回作ったのはしょうが抜きシナモンたっぷりチャイの濃厚バニラミルク割り、これがまた香りがよくて甘くて美味しいんですよ…」

「しょうが抜きのチャイはチャイじゃねぇといいたいが…まあ好みもあるからなぁ、入れない人も実際にいるし、でもそうやって何でも気軽に混ぜれるのはいいな」

「これが好きな物を好きなだけ注ぐ事が出来るドリンクサーバーの強み、あらかじめ原液を大量に用意してセットしておく必要があるのが難点ですけどね」

「んーむ…まあいいや、仕事を奪うわけにはいかないし、これは保留だな、さて、おかわりを食べたらまたゲームをしに行くか」

「地味にはまってますねぇ」

「筐体を破壊してからは壊れない向こうでやれって言われてるからな、大人しく従うさ」

「修理は出来るけど熱くなりすぎるとついやっちゃうのがねー、とりあえず寝ちゃったアヤカを部屋に連れて行ってくるから、お代わりだなんだはディジーの方によろしく」

「はいはーい、食べてる途中で寝落ちとか相当疲れてたんでしょうね」

「食堂に来た時もふらふらだったしなぁ、普通に話してたと思ったらいつのまにか寝ててびっくりだわ」

「40連勤もすれば人間は誰だってああなりますよ」

「俺の教団なら間違いなくそこまで働く前にストップをかけるな」

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