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予定通りにはいかない そういう国民性

「はいもしもし、はいはい、あーはいはい、んー…なるほど?はいはい、それじゃあお店の方に行くねー、うん、はいはい、じゃあ自販機からいくつか買って持っていくね、はーい」

「店長さんですか?」

「そう、前に持って行った餌木の試作品と設計図の事でちょっとね、というわけでちょいと店長さんのお店まで行ってくるねー」

「はーい、お昼はどうするんです?」

「ジュリアさんもお店で暖を取ってるっぽいから自販機でお弁当やなんやらを買い込んで持ってくー」

「はいはいいってらっしゃーい」


「ちわー、ゴーストキッチン亭でーす、ご注文されてない品をお届けに参りましたー」

「はーい、注文してない物は持って帰ってねー…って冗談は置いといて、お弁当屋らおかずやらはいつものところに置いといてー」

「はいはい、でー、餌木はどこに問題が出たのん?」

「カンナの部分だね、錆びず丈夫で伸びにくい、鋭く刺さる太軸の半傘カンナ…って注文を受けてくれなくてねぇ、うちもルアーは作ってるけど針はトリトンとかデイライトの物を使ってるでしょー?だから針を作る設備が無いしでカンナもトリトンとデイライトに外注しようかと思ったんだけど…それ専用の型やらなんやら作らないと無理ーって言われてどうすっかなーって。

半傘じゃなければ家で作ってる普通のカンナの業務用パックは卸せますよーとは返事を貰ってるけど」

「あー…まあ、半笠って餌木用だとマイナーだし、自分でカスタムして作らないと新しい型と生産ラインが必要になるしねぇ…まあここは妥協して通常のカンナにしようか、各自加工して作って貰う感じで」

「それが無難だろうね、それに半傘だとカンナが上を向いてないとダメだし、通常のカンナだと360度全方位だからあまり気にしなくていいけど、作業と検品がちょっとが怠くなるのもあるし、カンナ2本だとちょっとずらさないとってのがあるけど向きはあまり気にしないでいいし。

まあ、設計図だと上3下4本でまっすぐ付ければ何の問題も無い様にはなってるけど、3本と4本の生産ラインと型が必要で、取り付けて接着するときにちゃんとピタッと上を向いてないと…ってのがあるからまあいろいろねー」

「じゃあカンナは通常の物に変えて、根掛かりでのロストの確率を少しでも下げるためにデイライト製の限界が来たら簡単にポキッと折れるやつにしようか、トリトンの折れず伸びて耐えるのでもいいけど、あっちだと伸びる前にラインブレイクとか結構あるし」

「じゃあデイライトに1号から5号用のカンナ卸してくれるようにメールを飛ばしておいて、次にダートさせるためのフィン、重量バランスをとるためにアルミってなってるけど、この辺りにアルミフィンよりちょっと軽いくらいの重りを仕込んで、フィン自体は餌木と同じ素材にするってのはどうじゃろな?

その方が製造工程がちょっと簡略化出来るし、アルミフィンだけ手作業で付けるってのをしなくて済むんだよね、ちょっと重心は変わるけどダートにあまり差は出ないはずなんだよね」

「まあ、しゃくった時にあまりこっち側に来ない、出来るだけその場に、なんだったらしゃくった時に力加減と角度によっては180度旋回して逆に少し奥へ行くような、そういう設計のフィンだからねぇ、最大270度の設計にはしてあるから…形状を今の状態から若干大きくしてここにちょっと膨らみをつければ…

うん、フィンの上に鉛なんかの重りをちょっと入れて重心が上がってもちょっと落ちるくらいで済むかな?大体240度くらいは旋回するようになるはず、まあそこまでしてその場に留まらせなくてもイカは寄ってくるし抱きついてくるけど」

「そこまでえぐい旋回をさせる意味ってあるのか?」

「お兄さんが言ったようにそこまでする必要はない、でも魚にせよエビにせよずーっと1方向に逃げるわけじゃないじゃない?」

「まあ、群れが割れた時とか180度旋回して逃げる時はあるわな」

「でも普通に釣りをやってる時は1方向、旋回して逃げってのを演出できるけどまあ大体90から100行くかどうか、でもなんだかんだで糸を引っ張ってる都合上最終的にはこっちに戻ってくるから、バックスライドでもさせない限りは逃げる方向で気には1方向ってなるけど、この餌木は最大…修正後だと240度くらいこうグワンっとスイングして旋回、普通の餌木だとまっすぐ下に落ちるけどこの餌木だとフィンのおかげで糸を緩めてもちょっと斜めに。

つまりはこうやって大きく一回だけジャッてしゃくってベールアームを開けて糸を出してやると、手前じゃなく奥へちょっとスライドしながらフォールしていく、とはいっても水の流れで頭の向きは変わったりするからまっすぐ行くとは変わらないけど、1メーター沈む頃には30から40センチは頭の向いている方向にスライドしつつ沈んでいく感じ。

基本的餌木は糸を緩めると重りに引っ張られてただまっすぐ、テンションを掛ければスライドするけどそれは手前だけ、まあ早い話ちょっと見切られやすくなるってやつだね」

「あー、なるほど、同じ様な動きしかしない物がありふれているからこそ旋回角度をえぐいくらい上げて、若干のスライドを挟みつつ動きも変えていくと」

「動きの基礎は変わらないんだけどね、それと旋回角度をあげて奥側にスライドさせる利点として、しゃくるたびに手前手前に寄って来てイカのいる場所から外れる、魚でも寄ってくるには寄ってくるけどある程度追いかけたらダメだこれってなって帰っていくってのがあるじゃない?」

「まあよくある事だな、群れから離れるとか、縄張りから離れすぎるとか、理由はいろいろあるが一定の範囲から外れたら即座に追いかけるのを止めて帰っていくってのが」

「それの対策として強めにしゃくると出来るだけその場にとどまる、つまり90度から270度旋回させて頭の向いている方向に軽くスライドしつつのフォールってわけだね、修正後は旋回角度が30度前後は落ちるから、相応に強くしゃくらないと180度旋回はしなくなるけど、それはそれで上に強く跳ね上がるのでイカの興味を引けていいね」

「なるほどなー」

「ラトル入りだから岩場があれば根魚も結構アタックしてくると思うよー?口に引っ掛かりはすれど力が分散しまくって刺さらないんだけど」

「刺さっても返しがないのと形状的な問題で頭を振ったら簡単にするっと抜けるのよね、それでロックフィッシュ用にカンナを外してアイとスプリットリングを付けてトレブルにする人も居るといえば居るね」

「んー…ラハブとJ&Mの支社もこっちに出来てぼちぼち経つし、餌木の研究と開発でもさせてみるかねぇ?」

「四島まで含む南の方だと年中通してアオリが釣れるから餌木は年中需要があるし、ラハブとかJ&Mが国内限定で餌木を出したぞーってなったらエギングをやらないルアーマンが買ってやるようになるんじゃない?」

「でも後発になるからなー、独自性を持たせつつ誰でも簡単に釣れるってなると難しいだろうな」

「難しいだろうね、イカ釣りおねえちゃんねるオリジナル餌木も見た目自体なら他のメーカー品と大差ないし、フィンを付いてる物もすでにあるし、独自性を持たせるってなるとちょっと大変ね」

「うちのはちょっとヘッドの形が丸く膨らんでそこに重りが入っているのと、水の抵抗をそこで受けてダートするようになってるのとスライドするようになってるのと、アイの位置をティップランに近い感じでちょっと上に持ってきて、岩やサンゴに刺さっててもよほど思いっきり突き刺さってない限りは抜けるように、っていう形状」

「半傘ならさらにカンナが引っ掛かる事も無いからお財布にやさしい餌木になるっちゃなるけど、トリトンもデイライトも半傘のカンナは作ってないからまあ仕方ないね、そこはもう各自で弄って貰うしかない、うちの工場は小さいからあれもこれもってやると限界がねー」

「餌木の型を作って製造する余裕はあるのになぁ」

「あまり余裕はないよ?今は戻ってきたGBシリーズの権利と製造をネレイドにぶん投げてるから余裕がちょっと出来てるだけで、他の物を考えると月500から600作れるかなって程度かな?

一部工程を省く、カンナとか芯を取り付ける作業を無くしたり、型から抜いて組み立てるだけ組み立ててブランクとして売るなら塗装とか布を巻く作業を全部すっ飛ばせるから倍くらいは作って売る事が出来るけどね。

生産数が半分から落ちるのは塗装に巻いた布の接着に芯とカンナの接着と乾燥、乾燥させるにも場所をとるから乾くまでは新しく塗装が出来なくて…てのもあるからねぇ」

「ハイフラッシュ加工もしないとだからさらに時間がかかるよね、値段も相応に上がるけど釣果でいえばお値段以上になるから欠かせないし」

「クリアカラーのルアーに金属プレートを入れて薄く着色、そして金属プレートで光を反射させてアピールするフラッシングルアーってのが昔流行ってたけど、今のハイフラッシュ系と呼ばれるやつって結構不思議な感じだよな、金属プレートが中に入っているわけではなし、単色のホワイトでもブラックでも水中でキラキラ輝くし」

「結果を求めるがあまり小細工を多用しまくるのが我が国というか国民性ゆえ、ルアービルドにもそういうのがいかんなく発揮された結果、金属プレートを使う旧フラッシュ系をさらに発展させたプレート不要のハイフラッシュ系をアナライズが開発、旧に比べて特許料も格段に安いので今はハイフラッシュ系が国内には大量に…という事もないんだけどね、流行ってはいるんだけど」

「作ってるメーカーは多いよな?J&Mもラハブもハイフラッシュ加工のルアーを売ってるし」

「ただハイフラッシュ加工にすれば釣れるってわけじゃないからね、旧にも言える事だけどそれでちゃんとアピール出来るか、魚が思わず口を使いたくなるかが大事なわけで、旧フラッシュに比べて光度5倍!とか10倍!ってやっても逆に魚が逃げるのよ、わかってない作るだけのルアービルダーはそうやっていくらでもピカピカ光らせる事が出来るからって5倍の輝きとかやって売りに出して大爆死、そして他のメーカーのビルダーも同じ轍を踏んでハイフラッシュの特許料支払いの更新を止めて、ハイフラッシュ系からは撤退したところが多いのよね。

旧に比べて特許料も材料費も安いとはいえ釣れない物も釣れる物同様一気に話が広まる、そして売れなくなって在庫が大量、最終的にはワゴンで投げ売りして各店舗が仕入れなくなって第2第3出荷用と作っていたメーカーはどこの店舗も要らないってなって在庫を抱えて大赤字、そして今日に至る」

「マキシマは旧の特許を持ってるけどハイフラッシュの特許料を払って2つを組み合わせた独自のスーパーブライトっていう新しいのを作ってるね」

「マキシマはハイエンドやらなんやらいろいろぶっこ抜かれたけどノウハウは残ってるし、エントリーからミドル、残った各種ルアーはさらに洗練されていい感じだね、高いけど」

「安かろう悪かろうよりはいいんじゃね?」

「スーパーブライトの問題はミノーしか出てないって事だよねぇ、特性上仕方が無いってのはあるけど、後バカ高い、120から240ミリまで幅広く出てるけど120のフローティングでも3700円もしやがる…買って使ってみれば納得の値段ではあるんだが高すぎる…」

「ハイフラッシュの特許料の問題もあるから仕方がないんじゃないかなぁ?うちのオリジナル餌木もそれがあって1個1800円からになりそうだし」

「コネを使って特許料を0円にして貰えれば当初の予定通り1000円以下に抑えれるんだけど…まあこれも仕方がない部分だね、他にもうちの店で何かを作るかもしれない以上は払っておいて損はないものだし、払ってれば割と好き放題使えるってのもあるし、予定の倍くらいの値上がりは仕方ないっちゃ仕方ない」

「家で作った時は700円くらいで行けそうだったんだけどねぇ…」

「あそこはもう特別も特別、特許を持ってるというか開発者がいるもん、忖度してどうぞどうぞって自由に使わせて貰えるし、個人で量産して勝手に売らないってのが条件にあるだろうけど」

「まあ、作ったのをそのまま売るって事はまずないね、売ったのは釣れるんジャーくらい?使い古してキーホルダーにしたやつだけど」

「あれはオリジナルで権利はあれどカラーリングも形状も特許はないやつだから大丈夫でしょ、商標で揉めたけど」

「とりあえずJ&Mとラハブに餌木の設計と制作を打診してみるか、支部は1階を専門店にしてぼちぼち繁盛はしてるけど国から送って貰ったのを売ってるだけだし、この国オリジナルというか限定を作って売り上げを伸ばさんとな、古き良き物を紹介して売り上げを伸ばすアンバサダーの仕事からはちょいと外れるが…売り上げを伸ばすという点ではまあギリギリ仕事内だろ」

「その前にJ&Mとラハブの支部に勤めてるスタッフはエギングを知っているのかね?」

「さぁ?釣りに行かないって事はないだろうし、釣り場で見てるから名前とやり方くらいは知ってると思うが、どういう物かは知らないんじゃね?」

「本国から不勉強と怒られるかそもそも気にしないのか…どっちなんだろね?」

「気にしないだろ、基本的にルアーは本国優先、他国の釣り事情はあまり気にしない、わざわざそこに合わせて作る必要なし、合わせなくてもどこでも釣れる物に仕上げてしまえばいいって感じだしなぁ」

「J&Mとラハブ製品が大量に買えるってだけでも結構売り上げてるだろうけど、J&Mかラハブ印の餌木を作っておいてみ?間違いなく飛ぶように売れるよ、釣れなきゃボロクソに叩かれるけど」

「そこは大丈夫だろ、釣れない物は早々売りに出ないし」

「そう言って売れない釣れないルアーの在庫を押し付けたの忘れてないからな?」

「いいじゃねぇか、地味に儲けたんだろ?コレクター相手に珍品としてそれなりの値段で売りつけて」

「一応生産終了どころか完全な廃盤で数えるほどしか残ってなかったルアーだしね、それなりにいい値段でうれたよ」

「ならいいじゃねぇか」

「まあね、とりあえずぼちぼちいい時間だし花井ちゃんも帰ってくる頃合いだし、ちょっくらお弁当と追加のおかずをレンジで温めてくるから店番よろしく」

「はいはーい」

「飲み物も忘れんなよー?」

「それくらいは表の自販機で買え」

ゴーストキッチン亭

存在しないお店、注文していない物も配達してくる、お値段は一律100円で安く年中無休

昔は裏の調理場で朝昼夕食とは別に仕込みをしたりセットしたりで24時間休みなし営業の超ブラックだったという噂も…?

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