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ちょっと追加 ある意味カジノの顔

「んー…アレだねぇ…」

「アレとは?」

「チーズの生産が順調すぎてちょっと余り気味になってきたから使い道を考えないとねーって、ホエーとかバターミルクは安いからいくらでも引き取ってくれるけど、チーズはちょーっとお高いから市場も全部が全部は引き取ってくれなくてねぇ」

「云十万するチーズを作ってるとかですか?パルメジャーノとかめっちゃ高いって言いますし」

「それは作ってないけど、乳牛の品種が品種だから結構高級な物になっちゃってねぇ、モッツァレラが大体1キロで中銀貨2枚になるのよね、だから1日に卸せる量も限られてて全部が全部は出荷出来ないっていう」

「キロ中銀貨2枚は結構高くないですか?」

「高いよー?円に換算したらまあまたちょっと変動はするけど、それでもパルメジャーノよりは高いかな?言ったように乳牛の品種が品種だから牛乳その物が高級品になるし、さらに酢じゃなくてレモンで香りを付けつつ固めてあるから、その部分でまたちょっと値段がね?」

「酢で固めたら安くは…」

「うちの場合だとならないんだなぁこれが、農場で大量にレモンを作ってるのもあるし、酢で固めようと思ったら買わないといけなくなるから逆に高くつく、カジノでお酒は造ってるけどお酢は作ってないし、作ろうとしたらそれはそれでお酢を醸造する施設が必要になるから土地代やらなんやら、なんだかんだでレモンで作るほうが安くつくし香りもよくなるってやつだね」

「なるほどー…それでチーズを減らすために今ここで試作品を作ってると」

「そういう事、マスカルポーネも作ってるし、カジノの軽食で出すのに丁度良い物って事でまずはこちら、シンプルイズベストのマスカルポーネケーキ」

「はい店長」

「なにかな?」

「マスカルポーネ自体が何か分かりません」

「ティラミスのクリームっぽいやつがマスカルポーネ、酸味も塩味もないホイップクリームに近いチーズだからケーキとかそういうのに向いてる。

で、このマスカルポーネはホイップクリームに近いチーズというのもありまして、ホイップクリームの代わりに使うと長時間型崩れしないディスプレイに向いたケーキが作れる、ゼラチンを使って崩れないようにするっていう手法もあるけど。

今回は蜂蜜と少しのブランデーを加えて混ぜただけの本当にドシンプルなカジノ向けのマスカルポーネケーキ、お酒はアルコール分を飛ばして香りだけだからどれだけ食べても酔う事はないね」

「んー…ふわっと香る程度でそれほどお酒の香りはないですねこれ、ブランデーケーキっぽいのを想像しましたけど」

「あっちはスポンジに染み込ませてるから結構香りは強いし口の中に入れると強烈に、こっちはアルコールを飛ばしてかつ少量だから口の中に入れると鼻から抜けてふわっと香る程度、混ぜるだけで作れてお洒落っぽい感じがするからあまり凝った物は作れないカジノ向けとも言えるね。

もっとお洒落にしたい場合は型の中に絞り出して円形か四角にして、その上にフルーツソース、またはお皿にソースを垂らして伸ばすだけで一気に高級感が出てくる、フルーツソースはカクテルにも使ってるからストックがあるし、カットフルーツも基本的に切るだけで手間はそれほどだから手の込んだ物は出せないってのと相性はいいね」

「これいいなぁ…いくらでも食べれそう…」

「マスカルポーネは作り方が作り方だから牛乳の消費量も多い、そしてその分高い」

「そういやどうやって作るんですこれ?混ぜるだけとは言ってますけど?」

「本当に混ぜるだけよ?ヨーグルトと生クリームを1対1とそこにレモン汁を少々入れて混ぜて濾し布の上に流したら後は1日放置、そうするとホエーとチーズに分離してるから後はその固まってるチーズを混ぜてあげればマスカルポーネの出来上がり。

これがその混ぜる前のマスカルポーネ、これを混ぜるだけでふんわりとした舌触りのチーズになります」

「見た目はなんか木綿豆腐っぽいですね?」

「布の目の形が付くからね、もうちょっと手間をかけるならこれを混ぜた後にレース生地で包んで器に入れて、軽い重石載せて2日くらい置いておけばレース生地の模様が入ったマスカルポーネになるよー?

だから使う生地に拘れば花柄を入れたり鳥模様に木目にとちょっとお洒落な感じに出来る、ただ味は付けてないから切ってスモークサーモンなんかと一緒に食べる感じの物になる。

そして、型に入れて固める前に甘味や香りを付けて置けばいま出してるのとは違ったまた別のレアチーズケーキ、焼けばベイクドチーズケーキにと色々作る事が可能」

「1つのチーズでいろいろ出来るんですねぇ」

「マスカルポーネは使い勝手がいいのよね、作るのは簡単だけどいろいろ作れる、塩味でも甘味でもどっちでも合うというのもあるし、モッツァレラみたいにカプレーゼも作れなくはないのよ?食感は違うけど」

「簡単に作れて料理の幅も広いとかいいチーズですねーこれ、個人的にはこのチーズケーキがキロ単位でほしいですけど」

「そんな注文をするからタカミヤは常に体重を気にするようになるんだよ、こういうのはほどほど、食べても2皿程度にしておくのがいいんだよ」

「でも今食べないと次いつ食べられるかは分かんないし、作ってくれてる時に頼んで食べないと」

「だからってキロ単位ってのはどうなんだろうね?」

「まあ、市場に卸しきれないほどあるからキロ単位でもトン単位でも作れるけどね」

「キロ飛んでトンもう笑うしかないね、どれだけ余ってんですか」

「まず1頭から毎日200リットルからは牛乳が採れるでしょー?それが30頭いて毎日6から7トンは牛乳が採れる、で、今貯乳タンクの中には150トン近い牛乳が保管されてる状態、毎日市場にヨーグルトにチーズに牛乳に生クリーム、ホエーにバターミルクと卸してなおそれだけ余ってるのよ」

「150トン…って多いんですかね?」

「生産量がこっちの普通の牧場の3倍近いのと、高くて市場が1日に引き取れる量の限界もあるから貯乳量はかなり多い、普通の牧場の普通の乳牛だと100頭で1日2トン前後で安いからほぼ全て出荷されて貯乳してるのはチーズ用とかそんなのくらい。

うちの場合生産量自体は全体からみると実はそうでもないんだけど、高級品だからちょっとねー…って感じ、お値段は普通の牛乳の10倍以上すると考えていいよー?育てるのにかなりの危険が伴うのもあるけど、同じ飼料で育てたとしても牛乳の質が全然違うし、その資料にちょっと拘ってるからかなりお高い、地味に王室御用達になってるのよ?」

「それは凄いというのはわかりますけど、立場上へーとしかならないのがまた何とも」

「遠い存在ではなくお隣に行けば普通に会える存在だしね、王様とか王妃様も2号店だとちょっとのんびりできないからってこっちまでたまに焼肉を食べにくるし、今はさすがにお城から出してもらえ無いっぽいけど」

「安全面やらなんやらを考えるとそうでしょうね」

「世継ぎになるって事はないけど一応王族だから警備やらなんやらも考えるとね、はい、マスカルポーネケーキ10キロ、オレンジソースレモンソースブルーベリーソースにストロベリーソースの4種で計40キロ」

「わーい…ってさすがに多すぎるわ!」

「ここで全部食べなくても持って帰って使用人さんと分けるという選択肢もあるでしょうに」

「あ、確かに、いつもみたいに小分けしてあるのが出てくるのかと」

「ちゃんと4つに分けてるでしょ?それとも1つの容器で40キロがよかった?」

「はたして1つの容器に10キロは小分けと言っていいのかどうか…」


「これを軽食として出すんですか?」

「そそ、ケーキの方は混ぜるだけで作れるし、香り付けもお酒を使うから雰囲気的にはばっちり、基本は蜂蜜とアルコールを飛ばしたブランデー、一応見た目は気にした方がいいからこっちの丸型にケーキ用に混ぜたチーズを詰めて形を作って真ん中にミントの葉を載せるだけ。

もうちょっと高級感を出したいならカットフルーツを添えたりフルースソースをお皿の上に伸ばせばいいかな?」

「んー…大量に出すような場所ではないので手のひらより少し小さいくらいで、高さは指2本半くらいを基本として、フルーツソースはストロベリーブルーベリーの2種にして計3種類の販売ですかね?お値段が1皿小銀貨2枚ほどで」

「そしてこっちも同じチーズで作ったまた別の物の試作品、型に入れてちょっと固める時の生地に拘って花柄と木目、鳥や蝶の刺繍がある物を使って模様をつけてみました、カットして食べるから模様はどこへやらってなるけど、真ん中にチーズ、周りにラスクと生ハム」

「こっちはデザートではなく普通の軽食枠ですね、これも値段は同じくらいで行けそうですね、模様をどうするかという問題が出てきますが」

「模様をつけるのは面倒、もっと手軽にしたいって場合は四角いバットに何でもいいから適当な記事を敷いて流し込み、軽い重石を載せて固めたら型で抜いてお皿に乗せるだけ、余ったのは賄にしてもいいし味自体は付けてないからケーキにして再利用するなり」

「見た目も拘った方がいいと言えばいいんですが、布に拘ると手間も増えますし…型で抜く方向ですかねぇ?」

「手間は少し増えるにしても布で模様を付けた方がお洒落な感じがしていいんじゃないですか?一応カジノですし、見た目にうるさい人もいるでしょうし」

「どうするかはマスター代理次第だけどね、でも代理補佐の言う通り目の肥えた人もいるし、手間を減らしつつもそれなりに見た目が良くなるようにするのも大事よね、全体の見た目を取るなら1つずつ包んで重石を乗っけて、表だけの見た目なら下に模様の入った布を敷いておくだけでもいけるかな?

型で抜くなら側面は関係ないし、裏側は見えないから気にしなくていいし、手間を減らしつつなら布生地に拘るのもありだね」

「チーズの模様のためだけに生地を作るというのも贅沢な話ですねぇ…そしてきっと私の給料より高いんでしょうねぇ…」

「物によりますね、ただの荒い濾し布であれば中銅貨5枚からで買えますし、目が細かいシルクの生地になると跳ね上がって、さらに刺繍で模様を付けるとなると小金貨になる可能性もありますね、これに関してはそのシルク生地の端材の繋ぎ合わせでいいですし、細かい模様ではなく大雑把な模様を全体にでいいのでそれなりに安く済みますね」

「ちなみにちょこっとやる気を出して作ったサンプルがこちら、シルク生地に蝶の刺繍をしてチーズに模様を付けた物、さらにスピネルローズをはじめとした貴重な植物の花、オパールとオニキスの横顔やら正面から見た顔のデフォルメ刺繍を入れて模様を付けた物をご用意させていただきました」

「見た目は間違いなくいいんですけど、これバット1枚分の広さの生地に一定間隔でー発注したら小金貨8枚から飛びますよ?まだデフォルメしたオパールとオニキスがシンプルな感じで手間もかからずといった感じで安く出来そうですかね?ほぼ輪郭だけで模様がないですし」

「オパールもオニキスも単色で模様がないからねぇ、だからデフォルメするとシンプルな感じになる、ちょっと本気を出して写実風にするとこうなる」

「うわぁ…逆になにがなんだかわからない…」

「チーズ自体が単色だから細かすぎると色付けをしない限りよくわからなくなるってやつだね、荒くならないようにするためにシルク生地を選んではあるけど」

「普通の刺繍は色の違う糸を使って陰影なんかをつけますが、単色のチーズにその型を押し付けても…ですね、デフォルメされたオパールちゃんとオニキスちゃんの方がわかりやすくていいですね、この輪郭とちょっと間の抜けた表情ではっきりとわかりますし」

「ある意味このカジノの顔ですよね、リサ様を背中に乗せて正面から堂々と外に出て散歩に行ってますし」

「正面からじゃないと出れないともいう、なんだかんだで体高は2メーター近いし、体長も3メーター超えてるからねぇ、体つきもがっしりしてるから幅もある、となるとほぼ全種族対応の正面ドアから出ていくしかない」

「裏口は普通の人が通る事しか想定してませんからねぇ、以前のオーナーも普通サイズ、ハーフリングやティタノなんかの混血でもありませんでしたし、馬車が通れる幅はありますけど」

「採用するならオパールちゃんとオニキスちゃんのデフォルメ刺繍ですかねー?型抜きに失敗したら悲惨な事になりそうですけど」

「よほど故意的にずらさない限りそうはならないと思うけどね、バットから出してシルク生地を剥がしてから型を抜くわけだし、さすがにバットから出さずに裏面から型を抜くってのはしないよ」

「あ、なるほど」

「もうちょっと料理の事も学んだ方がいいですね」

「一応今この器をバットに見立てるとしまして、この器をくるっと返すと間に生地が入ってるから簡単に取れまして、後はこの生地を剥がしたら模様を中心にとらえて途切れないように型で抜くだけ、だから故意にずらさない限りは問題ない」

「はー…このシルク生地は容器から取り出しやすくする意味もあるんですね」

「そそ、後はポンポンポンッと型で抜いたら注文が来るまで冷蔵庫に保管、チーズの切れ端は賄にするか練ってケーキにするか、無駄を出さないようにするならケーキとして再利用する方がお金にはなる、味を付けずにそのままポンッと出すチーズだから出来る事だね」

「んー…とりあえず正面を向いてるオパールちゃんとオニキスちゃんで2枚の予備含めて4枚ずつと使用人さんに発注を飛ばしておきましょうか、お小遣い稼ぎで引き受けてくれるでしょう」

「焼肉屋のナプキンとかエプロンとかもお小遣い稼ぎで作ってくれてるしね、一応見本はこれを渡せばいいかな?」

「後はいくらかかるかが問題ですね、綺麗に模様を付けるとなるとバットより少し大きいくらいの1枚のシルクが必要で…」

「私の給料何ヶ月分なんだろうか…」

「少なくともバット1枚分のシルク生地を買うだけでも1年分かな?」

「代理ー…もうちょっと給料上げてくれませんか?」

「上げてほしかったらもうちょっと出来る事を増やしましょうね」

「はーい…」

「ま、後はお任せー、私はもう帰るー」

「はい、それではまた今度」

マスカルポーネ

ヨーグルトと生クリームを1対1、レモン汁か酢かクエン酸を混ぜて濾し布に入れて吊るして一晩、あとは練るだけで作れる簡単フレッシュチーズ

模様をつける場合は布に包んで容器に入れて重石を載せて一晩、付けない場合は練った時点でもう食べれる

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