親睦会がメイン 地味に恵まれている
「へーいがーるず、調子はどうかなー?」
「あ、どうも、いやー…どうなんでしょうね?今日も一応大会とは聞いてますが、昨日よりさらに緩いですし、バーベキューコンロも設置されてたりしますし、やる気のある人は居ないというか」
「昨日散々な結果に終わったからちょっと気合を入れたのに拍子抜けだよね」
「まー、昨日のバス釣りもそうですけど、基本的には新年あけましておめでとう、今年もよろしくねーっていう親睦会を兼ねての非公式大会ですし、今日は特にその親睦会の部分が強いので昨日は気を張っていたプロも気を抜いてだらだらやってる感じですね」
「それだけじゃあねぇと思うけどな」
「と言いますと?」
「この国だとトラウトの大会はあまりメジャーではないからだよ、この場にいるプロは全員バスがメイン、他の物は国外の大会の参加資格を得て現地に行った時にしか釣らないってのが多い、さらにトラウト関連の大会はバスより格式が高いというか、参加するための資格を得るのが物凄く難しいんだよ」
「そうそう、賞金もびっくりするくらい高いけどそもそも参加できる人が少なすぎるっていうくらいには狭き門、国内でトラウトチャンプだとか言ってる大会もあるけど、あれに参加してるようなのは全員弾かれる」
「ドッカン放流してるところで釣ってるだけで上手くはないからですかね?」
「それもあるけど、単純に品性というか人間性に問題ありで弾かれる、あの大会に出てるようなやつってほとんどのところから出禁食らってんのよ、釣りが出来るのは無法者しか集まらないところだけって状態なくらいにはいろいろ終わってる、当然うちの管理釣り場も全て出禁にしてる。
まあ、ドが付くほどマイナー化したのは私が早々にスポンサーから降りたってのもあるけどね、記念すべき第一回から人の管理釣り場を荒らしまわってくれちゃってさぁ…ラバーネットを使えつってるのに使わないやつが多いし、無理やり寄せてぶち抜くし、賞金が100万ってのもあったんだけど勝つためには何でもやるって感じでうちのエリアで禁止してるルアーの持ち込みに使用に、後で数えるから弱らないよう傷つけないようにスカリに入れとけと言ったのに鷲掴みで針をはずして投げ込むし、それでブチ切れて速攻でスポンサーを降りたし、もう今後二度と場所を貸さないと抗議も入れた。
そういうのもあってトラウトは無法者の集まりっていうイメージが業界全体に回って、公式でトラウトの大会を開こうってところがほぼ皆無に等しい状態、個人店というか、管理釣り場のオーナーが客を呼び込むために小さい大会を開く事もあるけど、ほぼ全てのエリアで共有されてるブラックリストに入ってるやつを弾かないとダメだから開くのも大変っていうね。
ブラックリストに入ってるやつらが全員居なくなれば場所は限られるけどネイチャーとか、全国どこでも出来るエリアでの大会も気軽に出来る様になるんだけどねぇ…」
「勝つために何でもやるのは大会の基本ではあるんだが、禁止ルアーやら禁止行為は普通にアウトだからな、あくまでもルール内とその釣りをする場所で可能な事をやるってだけで、ルールにないからとその場所で禁止されてる物を使ったり禁止されてる行為をすると大会のルール関係なく一発退場だぞ」
「ま、基本的にはルールブックに書かれてるけど、人が作ってる以上どうしても漏れる事があるっちゃあるからね、その釣り場で禁止されている物、行為等は事前に調べておく事も大事よ」
「アングラーを試すためにあえてその釣り場での禁止ルアーとか禁止行為をルールブックに書かない事もあるけどな、ルールブックにないからとその場所のルールを無視するようなやつは要らんって感じでな」
「ほへー…」
「ほへー…じゃなくて、プロになったらちゃーんとその釣り場でのルールも把握しないとダメだぞー?国内の大会はいろいろと甘いけど国外はかなり厳しいぞー?国内だとドマイナーなトラウトだけでなくメジャーなバスも厳しいぞー?」
「バスだとどういうところが違うんですか?」
「国内の大会だと人が入ってるポイントに入るとか釣れてる人の近くで釣るとかあるじゃん?アレ全部ダメ、妨害行為としてペナルティーを受ける、同じ場所に目をつけていたとしても先に入ってる人が居たら別の誰も居ないところに行くのが基本ルールでありマナー、要は妨害なんてダッセェ事してんじゃねぇよ実力で勝てよってやつ。
国内のプロが国外の大会にほぼ出ないのは大体それが原因、妨害で釣果を奪って勝つみたいなのが基本みたいになっちゃってるから、国外のルールだとまともな釣果を出せないのよね、頻繁に出てる人はちゃんと向こうのルールやマナーに則って正々堂々とやってるし、大会には出てない仲のいい現地の人から教えて貰ったとっておきの場所で勝った場合は私の実力ではなくこの人に勝たせてもらいましたとか言ったりもするね」
「大会2日目で前日に誰かが釣りまくっていた場所があってもそこには入らないのがマナーだな、そこは開拓してそこを見つけて釣っていたやつの場所であって後から来たやつの場所ではない、我先にとボートをかっ飛ばしてそこへ入っていくのはこの国のやつくらいだぞ」
「そうなんだよねぇ…中村さんとか私とか花井ちゃんの現役時代は参加するための壁が高くて私達以外の参加はないに等しかったし、参加条件が緩くなってこの国のプロの参加が増えてびっくりしただろうねぇ、その手前の場が荒れようがお構いなしに全力でぶっ飛ばし、ポイントの奪い合い、ルールブックにないからと近くで釣って釣果を奪う、そして負けるっていうくっそダセェことこの上ない事やってたんだよね…
それでルールブックも改訂されて横入すんなとか、人の居る近くで釣って妨害するなちゃんと正々堂々と戦えとか、具体的に半径何メーターは近づくなとか意味もなくボートの近くで飛ばすなとかとか書かれたんよ、酷いと投げている場所の真上をかっ飛ばしていくからね」
「狭い範囲でやるアマチュアの大会なら横一直線に並ぶとかはよくあるんですけどねぇ、ボートに乗って広い湖でやる大会でわざわざ近づいて釣りをする意味ってほぼないんですよね、それこそ妨害をするでもない限りは。
昨日言ってたグローリーリバーでもそうですけど、あれのルールブックには近くでどうのこうのと書いてないからってわざわざ妨害しに来るんですよね、ファイト中でもお構いなし、ガイドにあそこ言ってって指示を出して20メーターも離れてないところにボートを止めさせて釣り始めるんですよね」
「第三者である計測をするためのスタッフの船も同行してるのにようやるわ、後でガイドやアングラーの素行は中立の視点で見てどうだったかとか聞かれるというのに」
「大金が絡む大会だからこそいろいろあるんだよねぇ、まあ、大会終了後にしれーっとブラックリスト入りしてもう二度と呼ばれなくなるんだけどね」
「妹ちゃんが飛び入りというか同じルールでやらせて貰ってた時も上位陣の周りは凄かったらしいですよ?群れを釣りつくす勢いで3人くらい接近して妨害をするっていうのがあったそうです。
妹ちゃんの場合は特別枠なので順位には影響しませんし、数より大きいのを釣る事に重点を置いていたのでそういう妨害はほぼなかったみたいですけどね、国外の選手達が遠くに停戦してピラルクやピライーバなんかとのファイトを見ていたってくらいですかね?」
「私達もいつかグローリーリバーに出れるんですかねぇ?」
「出る事が出来たとしても下の方で終わりそー」
「ま、楽な大会じゃないのは確かだな、場所が熱帯雨林で早めに現地入りして体を慣らしておかないと大会中に倒れる、5日という長丁場だからペース配分も考えないとダメ、タックルに関してはいくら持ち込んでもいいし、ピライーバ用にトローリングと同じタックルを持ち込むのも持ち込まないのも自由、なんだがまあ大量に持ち込みすぎるとそれはそれで辛い事になるけどな。
まあ…でもそうだな、今ならトローリングタックルの代わりにクリムゾンとかアルマディンが使えるんじゃないか?トローリングみたいにどっしり腰を据えて持つって事は出来ねぇが、ピラルクにせよピライーバにせよピララーラにせよ走るような魚ではないからな、要は耐える事の出来るタックルなら何でもいいわけだし、キャストと大型の中間にあたる両軸とそれ用のロッドでやってるやつもいるぞ」
「うちだとまあそれを使うなら大型スピニングでやれって感じだから取り扱ってないけど、一応仕入れる事は可能だよ?
スピニングに番手があるようにベイトにも一応60とか80とか100ってあるじゃん?150と200が普通でそれ以下がフィネス、大きいのでも300とか400だけど、それのもちょっと大きいので500とか600番ってのがあるんよ」
「大型両軸に1000番や2000番という番手がありませんでしたっけ?PEの3号が200だったり300メーター巻けるようなやつが」
「あるね、でもちょっと面倒な事情がありまして、大型に分類される両軸とキャストに分類されるいわゆる小型が容量が同じだったとしても番手が変わるのよね。
たとえばクエイカー1500番だとPEの4号が260メーター巻けるじゃない?で、ベイトキャストでもちょっと大きい、でも中型にはまだギリギリ入らないアルバスタ400番もPEの4号が260メーター巻けるのよ」
「えぇ…じゃあ何が違うんです?ドラグだったりパワーだったりですか?」
「ドラグもパワーも何も変わらないね、キャスト用として作られたか海用として作られたかってだけ、中間にあたるやつはキャストの区分に入るから500番で大型3000番並みの容量とパワーがあるし、ハンドルも大型のをそのまま持ってきてたりもする」
「私は一回使っただけでもういいやって投げた、大きいからアンダーキャストになるんだが、それなら大型スピニングでいいし、餌を軽く投げてどっしりやるなら大型両軸でいいし、まあ中途半端といえば中途半端なリールだな。
利点があるとすればキャストでもライトトローリングでも使えるってところか?後レベルワインダーがついてる、技術的にも強度的にもつける事は出来るんだが大型にはついてないからな」
「ちょっと使ってみたいような気がする」
「それって高かったりするんですか?」
「いや、意外とお安いよ?国内じゃ取り扱ってないから送料込みで値段が倍から上がるけど、別に国内工場でも生産出来るし、メーカーに直接頼んで作って貰えば5万くらいで買える、通販サイトで買うと10万から15万と滅茶苦茶ぼったくられる」
「なんで輸入品ってそこまで値段が上がるんでしょうね…」
「関税とかいろいろあるけど、輸入を代行してるところが纏めてじゃなく、単品を輸入して購入するから儲けを出そうとすると2から3倍になるってやつだね、だからメーカーとの繋がりがあるなら国内で作って貰う方が物凄い安く上がる」
「私は生産してる国にいたから300ドル程度で買えたが、逆にマーメイディアなんかを買おうとすると1500ドルを超えてきてたな」
「それを考えると私達はかなり恵まれている…のか?」
「ハイエンドに関してはそうだね、マーメイディアとワイバーン、クリムゾンウルフにアルマディンフェンリルは国内のみでの生産だし、この4つが比較的安く買えるのは恵まれてるね、逆に国内に流通してない中型ベイトキャストは買えない」
「一昔前は国外から輸入して買うってのが流行ってましたよねー、国内のベイトリールはキャパが少なくて一番多いのでも20lb60メーターとかまで行ってましたし、海水でも大丈夫と言いつつ海で使い物にならないという体を張ったギャグをメーカーがやってましたし、それで国外で売ってる大容量のベイトを買って使うっていう」
「そんな事があったんですか?」
「あったんですよ?今ではキャパシティが増えてきてますし、100番を基準としているのでそれでもまだちょっと少ないですが、同じボディで150と200番のスプールが使えるので別売りのスプールを購入して使ったり、最初から150や200のスプールが付いてるのを買うのも有りですし、Dスプールはシャローで作ってあるのでフィネスでも使えればPEの10号を300メーターでも500メーターでも巻く事が出来ますし、キャパに困るって事は無いんですが…」
「私と花井ちゃんが設計して作ってた頃はそんな事は無かったんよ?なんせ国外を見据えて作ったロッドとリールだし、最低でも25lb、出来れば30lbが80は巻けないと勝負にすらならなかったんだよね」
「外道でガーが来ればパイクも来る、さらにバスの歯の鋭さがこの国のバス以上、昨日釣ってたスポテッドほどではないが、30lbくらいならかかりどころが悪いとちょっとした事で切れるな」
「当然パイクとかガーが掛かろうものなら糸が思いっきり持って行かれるし、PEは禁止だからキャパは結構重要なんだけど…国外の大会に出るプロが減って国内の大会にしか出ないプロの注文通りに作った結果…まあGBシリーズも最終的に使い物にならない状態にされたし、いろいろ酷い時代だったねぇ…」
「今はそういう時代を抜けた後の道具を買えるわけですし、さらにレッドウルフが台頭してきて安くて高性能なRシリーズで数も揃えやすくなりましたし、かなり恵まれていると思いますよ?」
「そういえば以前数を揃えるならRシリーズを買えって言ってましたね、言われたとおりにRシリーズで数を揃えて一部はバイト代で買ったワイバーンのハイエンドにしてますけど」
「昔は安い物で数を揃えたらポキポキ折れるわリールは簡単に壊れるわで大変だったからねぇ、今の子達はかなり恵まれてるよ、1万も出せば昔のハイエンド並みかつ強度はそれ以上の物が買えちゃうからね。
ま、話が大分ずれたからここいらでもう切り上げるとして、ぼちぼちジュリアのテンポンドステーキが焼ける時間だから欲しいなら一旦中断してバーベキューエリア来いよー?」
「はーい」
「今投げたのを回収したらいきまーす」
中型ベイトキャスト
普通に投げれる小型でもなく大型でもなくその中間、キャストとライトトローリング両方できるので大型魚には悪くない
国内では生産しておらず基本的に輸入になるが…輸入するという過程を踏む都合上現地の販売価格の2倍から3倍持って行かれる、ハイエンドを2台買う方がマシな上に安くつく




