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さらに商品追加 簡単に再現できれば苦労はしない

 ふーんむ、焼肉屋の営業再開が中頃の、それまで置いとくとダメになる…わけではないけど味が落ちる並上特の熟成肉が1頭ずつの、農場の大型冷蔵倉庫に入れているとはいえダメになりそうな玉ねぎとニンニクがぼちぼちの…いろいろとギリギリになってる出荷前のタレが寸胴2つ分あって…お休みで収穫が止まって完熟してるバナナとマンゴーが大量の、それ以外は特に問題なしと。

 さっさと使わないとダメなのが農場の冷蔵庫で熟成してるタレと、各牧場で熟成中の並から特までのお肉、ついでにキングバナナに赤と黄のマンゴーかな?レモンと柚子は放っておいても大丈夫、多少育ちすぎても香りがついていれば問題なし、どうせ絞った後に濃縮するので腐りさえしなければどうとでもなる。

 でー…さらなる問題が第三牧場…牛乳が順調に取れすぎて消費が追い付かないっていうね…カッテージにモッツァレラにと作り始めたけどそれでもなお追いつかない…かといって値段を下げるわけにはいかないので市場もあまり大量には引き取ってくれない…

 長期保存が出来るようにタンクの容量を増やしはしたけど…これもう1つ2つ作らないとダメかなぁ…作るの事態は簡単なんだけど置き場所という問題があるしで…

 んー…ふむ…もういっそ地面をくり抜いて地下に巨大なタンクを設置すればいいか、それと配管を通して圧をかけて水道のように牛乳を出せるようにして…地上にあるタンクも撤去して作業出来る場所を広くしてハードチーズの生産に着手…さらにヨーグルトの生産も始めて更に作れるチーズの種類を増やして…

 コストを考えるとフレッシュとセミハード、ハードの3種が限界…かな?ウオッシュはワインも大量に必要だし、食べれるとはいえ白カビ青カビチーズは他の物にも影響が出るのでアウト。

 個人的にはモンドールも作りたいところだけど…んー…まあいいか、あれもこれもとやり始めると作業場や保管場所がいくらあっても足りなくなるし、フレッシュとセミハードとハードを作ればさすがに使いきれるだろうし、それで行きましょ。

 まずは第三牧場の作業場に地下を作って、そこに巨大タンクを設置してさらに配管を通してー…かな?よし、ぱぱっと済ませて危なくなりそうなお肉なんかの処理も始めましょ。


「これが牛乳を地下に送るための注ぎ口、その日搾った分を全部注ぎ終わったらここでロック、上の部分は外して洗浄、乾かしてまた次の日に取り付けてってするだけ、保管に関しては前よりさらに楽になったかな?

でー、次に作業場の中に入りまして、この蛇口、これを捻ると地下に貯乳してある牛乳が古い物…というよりまあ劣化しないようにしてるから何年でも持つけど、それでも一応古い物から出てくる様になってて、これ以外の部分はもういつもと同じ、タンクからバケツに移すか地下のタンクから蛇口を通してバケツに移すかの違いだけ。

地上のタンクを撤去した分作業場がまた広くなってるけど、消費が追い付かないのでちょっと品目を増やします、今はカッテージとモッツァレラ、その副産物であるホエー、バターにバターミルク、生クリームと牛乳とってやってるけど、セミハードとハードチーズ、ついでにヨーグルトも作ります」

「質問です、セミハードチーズってどうやって作るんですか?」

「簡単に言えば出来たカッテージとかモッツァレラ、アレを圧縮して水分をある程度抜いたのがセミハード、そこからさらに過熱したり圧搾してほとんどの水分を抜いたのがハードチーズ、だからあそこに追加されてるのがそれ用のプレス機、美味しくするにはそこから熟成という手間が必要ではあるけど、セミとハードにするだけなら1日で出来るね」

「なるほど…熟成もこの牧場でやるんですか?」

「してもいいけどメンドイよ?チーズの表面にプレスした日付を入れて毎日確認、数ヶ月からかけて育ててようやく出荷になるから、基本的には水分だけを抜いた熟成前のセミとハード自体を市場に卸して、熟成自体は個人とかそういう専門のお店にやらせるって感じかな?

一応小さいけどチーズ用の保管庫はあるし、売る売らないは兎も角個人で熟成させたいならそこに放り込んでおくといいよ」

「わかりました、それで他にも追加されているあれは?」

「あれはヨーグルト用だね、ヨーグルトを作るための菌は土地によるけどその辺中にいまして、あのヨーグルト用タンクはそれを集めるというか、菌を育てて増やす役割もしてまして、均一化した後の牛乳をあのタンクの中に入れておけばヨーグルトが簡単に作れるというシンプルな仕組み。

一応ヨーグルトを作るのに必要な物だけを通して自動で混ぜたり温度調整をしてくれる、というのを除けば製法は原初のヨーグルトに近いかな?桶に入れといたらなんか出来ちゃったってやつ、こっちも桶か何かに入れておいて影を作って地面の上に放置、そして固まったのを舐めて腐ってなければ種菌として、腐っていれば廃棄してっていう方法で作ってるね。

この機械はその桶を大型化して絶対失敗しないようにした物…かな?簡単に言えばだけど、一応この後すぐ使うから牛乳を入れてヨーグルトを作ってるけど、どんなヨーグルトが出来るかはまだわかりません」

「え?わからないんですか?」

「わからないねぇ…ヨーグルトを作るための菌って1種類だけしかいないってわけじゃないし、どれが取りつくか、それとも複数取りつくかでも変わってくるし、土地によってまたその菌の種類が変わってくるしで出来上がるまで本当にわかんない。

北西地区の一番大きな市場に卸されるヨーグルトだけでも10種類はあるし、このヨーグルトの近くならまあこれに近いのが出来るんだろうなーっていう予想は出来ても何が出来るかは謎って感じ、ひょっとしたら全く違う物が出来る可能性もある」

「はー…となると出来てからのお楽しみというやつですかね?」

「そういう事だね、そしてさらに、牛乳を均一化したりしなかったり生クリームを加えていたりでさらに変わってくるからもう大変、今日は均一化してる物だけで作ってるけど、これも何度か試して調整していかないとダメだね。

と説明したところでヨーグルトの第一弾が出来たので早速取り出してみましょう、一応これも貯乳タンクと同じでちょーっと時間の流れをおかしくしたり出来るから、急ぎの場合は10分もあればヨーグルトが100リッターは出来る感じだね」

「今日はその急ぎでひたすら作る感じですか?」

「そうなるね、雑菌は入ってないので臭いは問題なし、後は味だけど…」

「んっ…結構酸味が強いですねこれ、ちょっと舌に刺さるというか、発酵させすぎたザワークラウトの様な…どこまで行っても酸味が襲ってくるというか…」

「確かに、かなり酸っぱいねこれ、菌の量が多すぎたとか腐ってるとかいうわけではないんだけど、発酵させる力がかなり強いっぽいねぇ…となると…菌の量を減らすか時間をもっと短くするか、使う牛乳にひと手間加えるか…まあいろいろお試しだね」

「少なくともこのまま食べるのはちょっと辛いですね、大分甘味を足さないと食べ難いのは確かです」

「だねぇ」


 合間合間に他の作業をしつつヨーグルトの試作を続けまして、試作を続ける事27回目、約5時間かけてようやく納得が出来るというか…マシになったというか…これ時短機能付けてなかったらここまで辿り着くのに1ヶ月以上かかってたと思うと…うぅむ…

「まだ少し酸味は強いですがこれなら普通に食べれそうですね」

「だねぇ、後2回か3回調整すればもっと食べやすいヨーグルトになると思うから、一応分量のメモだけ取っておいて試作を続けようか」

「わかりました、現在牛乳4生クリーム6の種菌が牛乳7生クリーム3で作った物ですね、それにしても…ヨーグルトに使う牛乳は生クリームが多め、種菌は逆に生クリーム控えめの方がいいというのがまたよくわかりませんね」

「菌がどう作用するかなんて完成してみるまではわからないからね、実際今もわけわかんない事になってるし」

「ですねぇ、最初はスプーンで掬えば崩れる…というか塊になってましたけど、今はヌルヌルのドロドロというかねっとりしてるというか…伸びて糸を引くようになっているというか…使ってる材料は何一つ変えてませんよね?配合が違うだけで」

「配合が違うだけで使ってる菌は同じだね」

「一体何がどうなったらここまで変わるんでしょうね…ぬるっとしてはいますけど口に入れるとねっとりと舌に纏わりつきますし、よーく混ぜるとスプーンで持ち上げれるほど粘土が高いというか、ぼてっと塊で落ちるというか…」

「納豆とか自然薯とかを混ぜたのと近い感じではあるね、持ち上げれるほど粘りが強く、口に含むとぬるっとしていてその後舌にねとーっと纏わりつく、これで酸味がもう少し控えめならってやつだね、ぬるっとしてるからのど越しもかなりいいし、上手く調整出来れば美味しいヨーグルトの完成だね」

「ですね、もう少し酸味が抑えられれば果物と混ぜれば程よい感じになりそうです」

「でー、問題になってくるのが食用とチーズ用でまたヨーグルトが変わってくるというね」

「並行して試作してはいますが、酸味がほぼ無い方がいいんですよね?」

「だね、クリームチーズよりさらに柔らかくふわっと、少し固い生クリームに似た感じになるマスカルポーネっていうチーズに近づけられればいいんだけど、ヨーグルトの菌のせいなのか、最初に作ったのはちょっとボソボソでカッテージとリコッタの間っぽくなってるというか…近づいたと思ったら酸味がちょっと強くて伸ばしたらそびえ立つというか…何がどう作用してこうなっているのか…」

「ヨーグルトの状態だと酸味が強く、チーズにすると酸味が消えてつるつるもちもちのお餅やお団子みたいなモッツァレラになったり、酸味が少し弱くなったと思えば今度はお豆腐のようなチーズになったり、確かによくわかりませんね」

「今のところ一番マスカルポーネに近いのが4回目の試作で作ったヨーグルトだね、酸味がちょっと強いけどふんわりしててこれぞクリームチーズって感じだったし、酸味を抜ければもっとよくなるんだけど…うーん…」

「菌のせいなのかそれとも使っている牛乳のせいなのか、両方なのか、カッテージやモッツァレラ、クリームチーズは綺麗に出来るんですけどね」

「それ自体は菌は特に影響してないからね、酸性の液体で脂肪球を破壊して結着させて云々で菌が関係するのはそこからプレスして熟成ってなった時、対して今作ろうとしているのはヨーグルトと生クリームを混ぜて、ヨーグルトの菌が少々影響してくるチーズ。

ただその菌が強すぎるのか上手くいかないっていうね、何がどうしてそうなったのか寒天みたいになったのまであるし、こればかりはもう現地で実際に試作を重ねて知識と経験を得ないとどうにもならない部分だね」

「発酵ってそんなに難しいんです?」

「似たようなところであれば基本は変わらないのよ、でも菌の強さとか使う物の性質とか、天候やら気温やらいろいろあって、同じ作り方をした場合同じ物が出来る事もあるけど、大体は全く別の物が出来る。

例えば農場で作ってるザワークラウト、あれをうちの海や屋敷で同じ作り方をすると漬かり方が浅くて発酵も弱い、葵さんの世界で同じ作り方をするとただ腐らせるだけ、逆に葵さんの世界と同じ作り方をしたら舌を刺す程の強烈な乳酸発酵をしたザワークラウトが出来る。

同じ働きをする菌を使ってても菌自体の力とか発酵に影響するその他もろもろが違うから、別の世界で同じ作り方をすると腐ったり酸味が強くなりすぎたりするってやつだね。

別物が出来るパターンとしては今作ってるヨーグルトと生クリームを混ぜたチーズ、葵さんの世界だと普通にその辺のヨーグルトと生クリームを混ぜたら大体同じ物が出来て、そう遠く離れたようなものはまず出来ないんだけど…」

「全然違う物が出来てますね、お餅のようなチーズだったり団子のようなチーズだったり、固めた寒天風だったりお豆腐だったり」

「そう…世界が変われば全く違う結果になるものもあるから大変なのよ…長く生きてきていろんな世界を見てきたとはいっても、経験則で大体こんな感じかなーってのはわかっても実際に作ってみるまでは分からない物の方が多いのよ、だからこそいろんな世界を旅したりそこで生活をするのが楽しかったりもするんだけど。

ふーんむ…今度のチーズは…うん、酸味は少々あれど許容範囲内、マスカルポーネより柔らかいけどふんわりしてて口の中で溶ける感じで、濃厚な生クリームも感じる事が出来るから…うん、マスカルポーネ風フレッシュはこれで行こう。

まあ…若干…いやちょっと強めの粘度がついてくるけど…これはこれで舌に纏わりついて溶けていく感じと濃厚な味が楽しめるからよし、という分けてメモよろしく」

「わかりました」


「そして12時間の試作をして出来たのがこちら、マスカルポーネ風フレッシュチーズを使ったねっとりとした完熟キングバナナティラミス、それと完熟マンゴーとマスカルポーネ風チーズの生ハム包み、そしてメインの焼き肉食べ放題。

営業外というのもあるし、もう商品としてはぎりぎりもいいところなので今日の焼肉屋の商品は全品無料です、サービスでソフトクリームも無料です」

「それで花街の嬢が全員広場に集結してるのか」

「量が量だけにねー、というわけで今日は花街も入口を閉鎖してお休み、食い倒れ上等の大放出、リサも王女様もほしいもの早めにに注文しないと出てくるのがちょっと遅れるよー?」

「すんごい行列が出来てるもんね、とりあえずティラミスは食後に食べるとして、生ハム包みと特盛り合わせをオパールとオニキスの分も含めて頂戴ー」

「はいはい」

ヨーグルト

木の桶に入れたら出来ちゃったりしてたかなり古くからある物、菌によっていろいろ変わってくる

牧場にいる菌は発酵する力が強すぎたり酸味が強すぎたり、かといって量を変えたりするとさらに別物にとやりたい放題、生クリームと混ぜるとなぜか寒天のように固まったり豆腐状になったりお餅みたいになったりとわけのわからない働きもしてくれる

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