お正月といえば よくあるといえばよくある事
「よーっす、兄さんが作ったお節のお届けだぞー」
「いらっしゃーい…っつってもそもそもジュリア客じゃないな…それはそれとしてお節はありがたく頂戴する」
「おう、感謝して食えよ、それで、タカムラは年明け早々店を開いて営業中と、釣りをしてるやつなんかどこにもいないだろうに」
「釣りをする人は居なくてもお年玉を持った子供連れのお客さんが来るんだよ、それに福袋も販売してるしな、ジュリアとリオちゃんも買ってく?」
「お勧めはどれなんだ?種類がぼちぼちあるようだが」
「予算に合わせて好きなのを買え、今年はバストラウトシーバスショアジギの4種に松竹梅の3つのコースを用意してあるけど、高いからってくじの当選確率が上がるという事もないし、2500円5000円1万円と値段は上がるけど中身は全部お値段の倍くらいの物が入ってるよ。
それと、くじは1人1回までな、1000円の買い物をしようが10万の買い物をしようが1回、運試してやるような物を当たりが出るまで引き続けるってのは何か違うじゃん?だから1回、福袋も1人1つまで」
「なるほど…リオはどれを買う?」
「私はトラウト袋松にしようかな、しばらくは1号湖でトラウトを釣って過ごすだろうし」
「それで釣る度に私にキャッチと針外しとリリースをさせるってか」
「指にもし針が刺さろうものならその時点で今年1発目の仕事が吹っ飛ぶからね、いつもならマネージャーのアザミやらボタンに頼むところだけど正月休みでいないし」
「モデルなんかとっとと辞めちまえ、そうすりゃバスも下顎をがっちり掴めるようになるぞ」
「辞めたくなったらいつでも辞めていいとは言われてるんだけどねー、かといって辞めたら完全に無職になるじゃん?動画配信で稼いでるわけでもないし、ジュリアみたいにアンバサダーってわけでもないし」
「億単位で貯金もってりゃ無職で充分だろ、私はバス袋松でも買うか」
「はいよー、1人1万円ね、それとこっちの箱からくじを引いてけよー」
「当たりはまだ出てないのか」
「まだ午前10時だしね、わーっと来るのはお年玉を家族や親戚から貰い終ったお昼過ぎくらいからだよ」
「んー…1?これ1等って事でいいの?」
「えーと1は…はいこれからもう1回引いて」
「Aの7」
「Aの7は…こちら、おめでとーございます、ルアー用商品券1万円分でございます、5枚しか用意してないのを持って行ったねー」
「んー…喜んでいいのかどうなのか微妙」
「まあリオちゃんとかジュリアなら1万円分とかは微妙になるよね、ガレージに売るほどあるし、この店にある物は大体全部ガレージに在庫が山ほどあるし」
「そうなんだよねー、スポンサー契約しているところに偏っているってのはあるけど、まず買うって事が無くなるくらいには余ってるからねー、針は頻繁に品切れを起こすけど。
一応ぐるーっと回って良さそうなのを探してくるかな、これってハードとソフトどっちもあり?」
「どっちもあり、ソフトだけで1万円分とかもあり、500円の徳用アジング用ワーム20袋でもいいよ」
「さすがにそういう使い方をする人は…居ないとは限らないか、アジングしかやらないって人も居るだろうし」
「全季節可能で刺身でも唐揚げでも焼きでも美味しい、1人で食べる分にはサビキよりアジングの方がってのもあるね、家族連れなら大人しくサビキをやれとは思うけど」
「とりあえず店内をぐるーっと回ってくるねー」
「はいよー、それでジュリアは何を引いたよ?」
「7だな、7は何が貰えるんだ?」
「7か、7は市の公式マスコットキャラクターのステッカー正月バージョン、2種類あるから好きなのを1枚持ってけ」
「なんだ外れか」
「別名参加賞とも残念賞ともいう、でもこれ1枚1000円するんだぞ?それを考えると上等だろ、一応しっかりとした防水加工もされてるステッカーだから好きなところに張り付ければいいんじゃね?」
「じゃあこの休憩用の机にでも貼っておくか、こんな物持って帰っても使い道がねぇし」
「ひどいなぁ…まあいいけど、それで、ただお節を持ってきただけか?」
「そうだな、それだけで用は特にないな、のんびり特番を見ながら気が向いたら湖の方で釣りだな」
「暇でやることないなら店を手伝ってけ」
「やだ」
「これおねがーい」
「友達甲斐の無いやつめ…えー…ぴっぴっぴっぴっぴーっと…674円オーバーしてるね、まあ正月だからおまけしといてやらぁ」
「せんきゅー」
「それじゃあ当初の目的も果たしたし帰るか、それと、お節は生ものも入ってるから暖かい店内に置きっぱなしはやめとけよー」
「はいよー」
「で、なんで帰ると言ったのにまた戻ってきたんだ?」
「あそこって割りと直道が雪に閉ざされるじゃん?そして朝早く出た時は晴れてたけど今ちょっと天候崩れてるじゃん?そういう事だよ」
「帰れなくなったって事ね」
「いぇーす、除雪車を呼べば一応除雪はしてもらえるみたいだが、基本晴れの日限定らしいからなぁ…」
「あそこはちょっとねー、平坦な道じゃなくて山道ってのもあるからねー」
「自分1人なら雪道で滑って事故ったところで何てことはないが、同乗者を連れてるとな、特に現役モデルでかすり傷一つでもつけるとやべぇやつが同乗者となると…」
「ジュリアのお給金何ヶ月分飛ぶんだろうね?まあ怪我するような車には乗らない…というかそんな車はあそこにはないだろうけど」
「ないけど一応な、というわけで帰れなくなったから今日は泊まっていくんでよろしく」
「へいへい」
「ごめんねー、急に押しかける形になっちゃって、さっと来てさっと帰れば大丈夫だとは思ったんだけど」
「天候が相手じゃどうしようもなし、部屋でのんびりするなりお手伝いするなりはご自由に、お手伝いして貰ったところで何も出ないけど」
「怪我をさせたら一発アウトだから手伝いは無理だろうな、だからこっちで一緒に管を巻いてる置物になるくらいで丁度良いさ」
「お前は怪我しても大丈夫なんだから手伝えよ、ただで飯食って泊まる気か?」
「おうよ」
「だよなー…お前はそういうやつだもんなー…まあいいけど…とりあえずお昼になったらというか、お客さんが増えてきたら邪魔にならないようにしろよ?」
「へいへい、でもただ座ってるだけというのも暇だし…んー…店内の様子を映しながら適当に生配信でもやってみるか、というわけでリオちょっとこっちにこい」
「生配信とは言っても何を配信するの?」
「さぁ…?まだ決めてない、溜まってる質問だのなんだのはエリカがやるだろうし、適当に飛んでくるリアルタイムの質問を返せばいいんじゃねぇの?困ったらそこにいるタカムラとかハナイに丸投げすりゃいいし」
「こっちに投げるな、それに大体の質問なら返せるくらい引き出しは多いだろ」
「まあな、撮影機材なんかはないから携帯でいいか」
「映りたくない人もいるだろうから生配信中って書いた立札作って立てとけよ」
「へいへい」
「よーっす、特に何の予定もなかったけど暇だから生配信…という名前の暇潰しをやっていくぞー、なんで始めたかっつーとタカムラのところにお節を届けたのはいいんだがその短時間で帰れなくなったからだな。
積もってる量はそうでもなくても気温が低いし、除雪している間は暖かくて今は冷え込んでるから間違いなくアイスバーンになってるんだよな、そして山道だから確実に滑る、ってな感じで帰れなくなったってわけだな。
暖房は付けっぱなしだがそうしないと室内が凍結するので良し、火を点けっぱなしとか水を出しっぱなしとかは無いのでまあ1日くらい放っておいても大丈夫だろ、多分な。
で、暇潰しかつ突発だから溜まってる質問とかそういうのは返さない、というより纏めた物がないからリアルタイムで質問を返していくぞ、というわけでそこで買い物をしてるやつ、何か質問あるか?」
「え?えーと…なんですかね…?」
「質問は何でもいいぞ、ロッドは何がいいのかでもリールはどれがいいのかでも」
「あー…じゃあこっちとこっちのリールどれがいいんですかね?値段の差はあれど触った感じ違いが全く分からないんですけど…」
「トラウトだけでなくバスでもクロダイでも何でもやるってのなら今左手に持ってるワイバーンのエントリーのC3000にしとけ、トラウトしかやらんってのなら右手に持ってるカルディナ1000番でいいぞ。
まあ、カルディナを買うくらいならその下の段に置いてるトラウトRでいいと思うがな、そっちの方が安いし無茶な扱い方をしても壊れにくいし、金属パーツをほとんど使ってないから海で使った後に手入れをしなくても錆びるという事が無い、が、見た目の好みもあるからどれを買うかは自分で決める事だな」
「なるほど…じゃあこっちのC3000にしときます」
「ちゃんと利き手に合わせて買えよ?片手で振れる程度の物なら左利きなら右ハンドル、右利きなら左ハンドルの方が取り回しがいいぞ、10000番からの大型はその逆、どっちも使えるやつはどっちも使えるが、大型の場合は相手にもよるが巻く時に腕全体を使うから利き手でハンドル、そうじゃない方でロッドを持つのが基本だな。
よし、次の質問…そこの福袋を選んでるやつ」
「え?あ、はい、えー…シーバスを釣るにはどうすればいいんですかね?」
「居るところに行って釣れるルアーを投げろ、以上」
「えぇ…」
「基本中の基本だぞ?居るところに行かなきゃいくら粘ろうが釣れん、居るところに行けば釣れる、ただそれだけの事だ、その居る場所で釣れるルアーを投げれば初心者でも簡単に釣れる、釣れないルアーだと一工夫したりと実力が必要になってくる、それだけだな」
「間違っちゃいないけど皆が皆ジュリアみたいに知識があるわけじゃないんだよ、どういう場所にいてどういう物を使えば釣れるかを答えなきゃダメだろ」
「んー…この店においてる10インチからのミノーとトップなら何でもいいんじゃないか?ショアでもオフショアでもこの2つがあれば釣れるだろ、色は好きなのでいいぞ、この色が釣れたーっつってもその色で釣れるのはその日だけとかはよくある事だから、適当に3色4色持っていけば大体釣れる。
一番いいのは…そうだな、この何の色も付けてないクリアフラッシュ、ホロシルバー、ホワイトの3種、これとそこに置いてる油性ペンを何色か買って行く事だな、その場で自分好みだったり釣れるカラーにカスタマイズ出来るぞ、色を消す時は剥離剤をちょっと吹きかけて布で拭けばいい。
こんなところか?わかんねぇよって時は何も考えずにラハブとJ&Mのルアーを買っとけ、居るならカラー問わず間違いなく釣れる」
「なるほど…問題はこの福袋に入ってるかですね」
「入ってるのもあるし入ってないのもある、でも釣れない物は入ってないというかそもそもうちじゃ取り扱ってないから安心して買ってけー」
「じゃあこれください」
「まいど、1万円になりまーす」
「次の質問はー…そこでロッドを手に取って悩んでるやつ、何かないか?」
「あー…過去に妹ちゃんがピラルクとかピライーバを釣ってたロッドってどれですかね?今年そっちの方に行く予定があるので1本持って行っておきたいんですが」
「ピラルクとピライーバ…グローリーリバーのアレか、アレならそっちのロッドスタンドじゃない、バラ売りみたいになってるクリムゾンウルフのショーケースから組み合わせないと作れん。
リールシートの形状らグリップエンドの形状と素材、ロッドの長さは好みでいいと思うが、ロッドパワーはティップからバットまでXHだな、完全に同じにするより自分に合った長さや扱いやすく握りやすいリールシート、リールシートからグリップエンドまでの長さも自分に合わせてカスタマイズが基本、それと、妹ちゃんはベイトで釣ってたが本気で釣る気ならスピニングにしとけ、握力が100キロも200キロもあるなら別だがな」
「そっちのショーケースでしたか、それとスピニングがいいと」
「がっしり握りこめるスピニングの方が耐えやすいからな、国内で使うならヒラマサとかGTとかマグロだな」
「XHの…結構するなー…」
「ハイエンドだからな、ティップからグリップまで合わせて全部で4ピース、パックロッドみたいなもんだから持っていく時に金はかからんぞ」
「国外に持っていくならパックロッドよね、昔は1ピースじゃないと強度的にも難ありだったけど、今のパックロッドはそういう事もなし、妹ちゃんが使ってた程度の長さなら着替えと一緒に纏めて入れられる程度だから追加料金は取られなくて済むね。
それを考えるとよくある海外で使うならこれ!って売ってるモンスターフィッシング用の1ピースで3万前後のやつ、あれを買うより結果的に安くつく、あれは1本持ち込むだけで2万とかの追加料金が発生するからね。
だったらこっちで6万とか7万かけてカスタマイズする方が最終的にお得、国内を飛行機で移動するときも1ピースだと追加料金が発生、パックロッドならスーツケースにでも詰め込んでおけば衣装ケース分だけで済む、大体飛行機で2回移動するだけでもう大分プラスになるね」
「だな、1ピースロッドを持って国外へ移動とか回数が増えれば増えるほどバカにならない出費になるからな、1回2万ならまあ…と思っていてもそれが10回とか20回とかになってみ?その1本のためだけに20万とか40万の出費を強いられるんだぜ?
まあ実際に持っていくのは1本だけということはなく数本持ち込む事になるけど、回数が増えれば増えるほど先に高い金を出してハイエンドのパックロッドを買うほうがお得ってやつだな、持ち運びもロッド用のスーツケース1個増やすだけでいいからだいぶ安くつくぞ」
「私と花井ちゃんもそうだけど、ジュリアもロッドケースだけで数百万から1000万ちょいは出費してるよね、当時は2ピースはあれど継ぎ目の強度に難あり、パックロッドという構想はあれど作るならいわゆるコンパクトロッドでやっぱり強度に難あり、グラスなら早々折れないけど感度が悪い。
それで1ピースを持ち込む事になるんだけど…平均して大体1回辺り2万は持って行かれるから大会で世界中飛び回ると出費がねー、そしてその持って行かれる料金は今も昔も変わらず、だから国外に持っていくならパックロッドだね」
「なるほど…安いロッドを持っていくならどれがお勧めになるんですかね?」
「そりゃ迷うことなく5ピースのRシリーズだろ、大きいものばかりが釣れるわけじゃないからLとML、60からのピーコックを狙うならMHかHがあるといいな」
「勉強になります」
「国外に行くときによくあるのが大きいものばかり釣ってる映像を見てそれが簡単に釣れると思い込むってやつだな」
「じゃあパックロッドを中心に集めてみますね」
「おう、リールもちゃんと魚に合わせた物を使えよー、クリムゾンウルフとかワイバーン、マーメイディアなら獲物を選ばないけどな。
といったところでちょっと休憩、なれない事すると疲れるわ」
「リオちゃんみたいに家の方に引っこんで特番でも見てりゃいいのに」
「人種が変われば感性も変わるから今一面白いとは思えないんだよな…釣り番組も今の時間はやってねぇし…」
「今日明日明後日の釣り番組は見る価値はほぼないんじゃないかなぁ?毎年お決まりのマグロは釣れませんでした来年こそはって終わるのが恒例だし、ゲストで出てるアイドルに興味がない限りは時間の無駄じゃない?」
「そうかぁ…ま、とりあえず休憩だ休憩、再開するかどうかは気分次第、それじゃなー」
帰れない
現在住んでる場所が場所なので少しでも天候が崩れるとその時点で…
1人くらいなら無理をして帰れなくもない、が…山道はアイスバーンは確実、滑ってどこかにぶつけようものなら同乗者が怪我をする可能性があるので帰宅不可になった




