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実際の総額は不明 実物とは見た目が異なります

「明日は大晦日、大掃除の日です、が…まあうちは関係ないですね、常日頃から掃除してますし、台所も常にピッカピカでやる事なし!今年の仕事はもう全部終わって後はもう正月まで食っちゃ寝するだけ!

なんですが、お正月といえばもう1つ大事な物がありますね、そう、お節です、その年の目出度い物だったり家庭によっては各自好きな惣菜を買ってきてお重に詰めるだけだったり、スーパーで注文したり仕出し屋に注文したり、家庭によって様々なお節なんですが…うちのお節は…こちら!

まだ仕込中ではありますが見てくださいこの材料の山!肉に魚介に乾物!特に乾物なんかこのザルの一山だけで150万っすよ!?やばいよね!しかも他にもまだまだあるから材料費はなんと総額約5500万!どんだけたけぇお節なんだよ!

と突っ込んだところでテンションを戻しまして、実際はこれうちのお節じゃないです、余った物は貰えるのでうちのお節にも入りますけど、まあお節を作るバイトですね、麓の商店街の皆さんって結構忙しくて作る暇がないんですよ、基本的には氷屋さん…まあ氷屋は副業で本職は国内の外食チェーンの元締めですけど、大抵はその人が特別ボーナスを上げるからお節を作ってくれるバイトか社員を募集ーってやるんですけど…

和洋中のファミレス各店舗で限定ではありますが10名様までお節の注文を受けるよーってのを今年から初めまして、その指示書やら材料が各店舗に行き届いているか、不備はないか等の確認でいろいろ忙しいらしく、そんな状態で個人的なお節を作らせるわけにはいかないので回り回ってうちにお節を作るバイトが回ってきたと、バイト代は現金では出ませんけど、今目の前にある材料、これの余った分を全て現物支給としていただけるという事で引き受けました。

ちなみになんですが、肉に魚介に乾物に野菜に料理に使うお酒やら調味料やらその他諸々、麓の商店街に住む皆さんが本気で集めた材料でして、そんじょそこいらの店ではお目にかかれないどころか、バカみたいに高い都心部にある高級と謳っているリストランテ、そこですら仕入れられないものが山のように積まれています、それも雑に、勿体無いですねー…この干しアワビなんか雑に積まれてますけど1つ170万ですよ?乾燥させてなお人頭大以上で1キロを超えてます、なんつう物を隠し持ってるんだと魚屋さんにいいたいね…

さらに特大干し貝柱こちらも手のひらサイズで1つ50万、お刺身用の生魚はまあちょっと高いっちゃ高いですけど、こっちはお節1つにつき1匹とかではなく、程よく振り分けて盛り合わせにするので乾物に比べたら大分安いですね、というより5500万のうち4分の1は乾物の値段ですよこれ…後これ販売価格じゃないです、最安値での卸価格です、販売価格で計算すると億超えですね…アワビとか多分料理されて店に出る頃には800から1200万くらいに値段が上がってますよ…マグロも1匹700万とか言ってましたが、これも競りに出たら1500万から2000万は付く代物です。

他にも1匹3万くらいつく極上の寒ブリ、さらにどいつもこいつも万を超えてくるヒラメにタイにイカにタコにイセエビにカニにウニにいくらに、とまあ結構やばいですね、野菜も数千円と化するものが中心なんですけどそれらが霞んで見えちゃいます…

次にこれまた雑に積み上げられてる肉肉肉、こちら全て0円でーす、というより値段がわかりません、肉屋さんに聞いたらまあ多分適正価格をつけてくれますけど、自分達で食うぶんだから値段なんか知らんね、って感じで投げて寄越してきたので本当に値段がわかりません、ミスフラワーに聞いたら多分分かると思いますが、昨日が仕事納めで疲労困憊で帰宅してきてまだ寝てます、値段を聞くためだけに起こすのはかわいそうなのでそっとしておきましょう。

それでもまあ…そうですねぇ…値段をつけるとすればこの牛の塊、大体5キロですけど、この1塊で1500万とか行くんじゃないですかね?卸価格で…雑に積み上げてますし塊自体雑に切ってる様に見えますけど、これ周りの部分も食べれますけどこの内側の部位を保護するためにこんな感じで大雑把に切ってあるんですよ、なので5キロの塊でも実際に使うのは中に入ってる1キロ程度の部分のみ、そしてその部分が1400万くらいの価値があります。

周りの部分も牛の価値を考えるとまあ雑に扱われているとはいえそれでも100万くらいつくのが妥当かなーってところですね、私達はこの使われる事の無い周りの部分と、余った価値の高い部位を頂く事になります、つまり…今日明日はもう二日連続焼き肉ですな!

この肉を適当に切って適当に焼いて食べる、なんてところをこの肉を扱っているところに見せたら多分泡吹いて倒れます、それくらいの暴挙です」

「美味しく食べるなら私は調理方法も格式も何も関係ないと思うけどねー、というよりその雑に切って出た端材とか普通に肉屋さんで投げ売りされてるし、炒め物用とか牛丼用って感じでシャトーブリアンの端材を500円とかで売ってるし」

「あれは生産者だからこそ出来る事でしょうね、まあこの肉の山はお値段不明、生産者が値段なんかしらんと言ってる以上0円でいいでしょう!

次がこちらの料理用に用意されたお酒、これもやばいですよー?それほど使用はしないので1本ずつですけど、そのどれもが1本500万からするやべぇやつです、熟成がどれもこれも400年分とかいうショットグラス一杯飲むだけで数十万請求されるたっけぇウィスキーとかワインです。

しかもこれブランド名で高くなっているのではなく、純粋に味だけで値段がここまで上がってるやつです、なので冗談抜きで美味いです、そしてお兄さんはそのワインを一本丸々全部鍋に注ぎいれると…もったいねー…でも間違いなく美味しくなるやつですね、先ほど紹介した一部しか使われない肉を使ってのビーフシチューですし…いやほんとこれお店で頼んだらいくらするんだ…形を整えて1キロ残ってるとして4等分のまあ1皿250グラムくらいとして…卸値だけで引き算足し算ってやっても450万からは行くねこれ…」

「年明けのおめでたい日に食べるからこそ奮発したって感じだね、後今年はうちが代行して作るってなった分さらに奮発したみたい、持ち逃げとかそういう心配がないからって」

「まあ…実際料理するときに値段なんかは知らされないでしょうけど…それでも摘み食いをしたりいくらかこそっと持ち帰るバイトとかが居るでしょうしねぇ、それを考えるとあまり高い物はって感じですよね、特にこの肉の塊と干しアワビとか横流ししたらしばらく遊んで暮らせますよ。

続きましてパッと見普通の野菜、でもこれも地味にお高い物だったりします、刺身のつま用にと用意された大根も1本2000円からはしますし、酢の物用のきゅうりはまあ1本100円とこの季節ならまあ?という値段ですが、ユリ根やクワイはキロ2万円ほどしまして…そんな感じでほぼ高級食材しかないです、出汁巻き用の卵も1個2000円とかするやつですからねぇ…それが200個届いているので卵だけでも40万ですね…恐ろしい商店街だ…」

「高い物だけを取り扱ってるってわけではないんだけどね、普通に豆アジがキロ300円で売ってたりするし、活アサリもグラム150円だったりするし、野菜も普段は一山200円とか300円の物が多いね、年末年始だから放出してる感じ」

「どちらにせよぶっ飛んでる事には変わりないですね、それじゃあざっくりとカットしつつ料理をしていきたいと思いまーす、とりあえず乾物を戻すところからですかね?この干しアワビとか戻すのに何時間かかるのか…

まあ、最近の乾物は意外とすぐ戻るんですけどね、昔超音波洗浄機に乾物を入れて戻すっていうのが流行ったんですけど、洗浄機ではなく乾物用に調整した業務用の…何と言ったらいいんでしょうね?超音波戻し機?」

「特に正式名称はないよねこれ、乾物も短時間で戻せる業務用超音波洗浄機ってだけだし」

「ちゃんとしたお店だと2日とか3日とか水に漬けて戻すところですが…これに1時間放り込んでおくだけでもそれと同じ状態に出来ますので、こういう戻すのに時間がかかる巨大な乾物には必須アイテムですよねー。

というわけで表面の汚れを落としたらアワビを全部放り込みまして、水を注ぎ入れたらスイッチオン、後は1時間も待てば漬けている水がアワビから滲み出た出汁で茶色に染まっていると思います、干し貝柱も同じ様にして戻していきましょう」

「スルメなんかを戻す時に重曹を入れるっていうのがあるけどあれはやっちゃダメよ?確かに戻る時間は早くなるけど重曹のエグみが追加されるし、戻す時に染み出てくる出汁、あれが全部丸々使えなくなるからね。

干しシイタケもそうだけど、戻した時に漬けていた水は香りとか出汁とかが出てるから全部捨てるって事はしないのよ、でも重曹を入れると戻し汁が重曹でエグみが追加されて使い物にならなくなるし、あまりよくないんだよね」

「戻すのが早くなっても肝心の戻し汁が使えないのでは折角とった出汁を全部捨てて、何も残ってない無味の搾りかすだけで料理を作るような物ですからね、それどころかエグみを追加して高級品があっという間に訳ありの投げ売り品になる、なので重曹はお手軽かもしれませんけど、使うなら超音波洗浄機にしましょうねって」

「こっちの場合お酒の熟成と原理は似たような物だし、戻し汁の香りも出汁も普通に長時間漬けたのと同じなのよね、だから後でアワビとか貝柱の戻し汁に干しシイタケの戻し汁なんかも合わせて香り漬け、戻したアワビは一部炊き込み残りは全部煮込み、そんな感じですね」

「かなり出汁が濃い炊き込みご飯になりそうですよね、超特大の干しアワビに貝柱、これらの戻し汁を使って炊き込みご飯の出汁を作るわけですが…その上にさらに戻したアワビを載せて炊くという暴挙、その他具材は一切なし!

いやー…楽しみでもありちょっと食べるのが怖くなる炊き込みご飯ですねぇ…」

「しばらく他の炊き込みご飯が味気なく感じるだろうね」

「それじゃカット入りまーす、魚を捌いたり刺身にしたり焼きの仕込みをしたりとか地味ですし、アワビも貝柱も大きさが大きさなので超音波で短縮しても2時間から3時間はかかりますからね」

「乾燥させてなお1キロはすごいよね、ここにあるほとんどの魚と同じで養殖ではあるんだろうけど、ここまで育てるのに時間もかかれば乾燥させるのも難しいし」

「おくされにならないよう気を付けて中までしっかり乾燥、ただ水分を抜けばいいというわけではなくしっかり天日で干してるでしょうし、卸の最安値で170万とか言ってましたけど、完全に甘々な身内価格で思いっきり割り引いて…でしょうね…」


「はい、ところどころカットしましたが完成でーす、まず一番下の段が飯物、予告していた通りに干しアワビと貝柱、それと干しシイタケの戻し汁で作った出汁と薄く切った戻しアワビと一緒に炊いた炊き込みご飯ですね。

出汁の味付けは少しの塩と醤油、そして料理酒だけのとてもシンプルな物ですので、これはアサリでもハマグリでも牡蠣でも作れます、味がちょっと閉まらないなーって時は味醂を少々追加するといいです。

そして、ドシンプルな炊き込みご飯という都合上どうしても見た目が地味になってしまう…ということで今映してるこれは物撮り用で刻み大葉やいくらを散らしてあります」

「物撮りはうちの取り分で作ってあるので実物とは見た目が多少異なります、でも入ってる物は全部同じです、お刺身の盛り合わせに使ういくらや大葉の一部を炊き込みご飯に回しただけです。

お刺身の盛り合わせもいくらを散らして見た目をよくしてありますが、実物はこの散らしてある分もこちらの器に全部入れて纏めてある状態になります、なので物撮り用のこちらは器に入ってるいくらがちょっと少ないです」

「器を小さくして多く入ってるように見せたり、その隙間を埋めるように盛り合わせも広げて多く見せたりと地味な努力をしてるんですよー?」

「お肉の段がビーフシチューにローストビーフにミートローフ、水晶鶏の生春巻きにスパイスチキン、トンポウロウに豚バラの梅紫蘇巻きとその他色々、まあ料理名が特にないのが多いかな?いうなればローストチキンとかポークとかそういうよくある名前になるような物としか言いようがない」

「いうなれば豚のソミュール液漬け焼きですかね?一度茹でてから焼いているのでソテーという事もなし…まあ名前は特にないといえばないですね、ただ美味しいのは確かです、ソミュール液で味と香り付け、さらに茹でてから焼くので食べる時にホロホロっと崩れるくらいに柔らかいんですね」

「豚バラだと脂が冷えて固まっちゃうので、こういう冷めても美味しく食べれる様にって物を作るときは油の少ない部位を使うといいです」

「そして最後が野菜や酢の物煮物等の段、見た目は地味ですが煮物に和え物酢の物、味は薄すぎず濃すぎず素材を活かした優しい物からしっかりと濃い佃煮まで色々、見た目は地味ながらもお節には欠かせないものばかりですね」

「これも家庭によってはまちまちであったりなかったりだけど、野菜の煮物は突いてるとどことなく落ち着いてくるから結構大事よね」

「とまあ、こんな感じでいろいろ詰まったお節を作ったところで今回はここまでです、今から出来たお節を届けたりまだ残ってるあまり物をお重に詰めたり、まだまだやる事は沢山ありますからね、それではー」

「ちなみに私はまだこれからざっと150人分くらいのお節を作る必要があるので休めません、ある程度は丸投げしてるからやる事自体は少ないけどね」

「今年もお兄さんのところのお節を楽しみにしてまーす」

物撮り用

見た目をよくするために器を小さくして大きく、多く入っているように見せたりするために用意するもの

たまにどう考えても使われてない物や別の物を物撮りに使って実物を見た瞬間がっかりするどころじゃないものもあったりする、そして返金騒動へ…

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