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悪役令嬢の婚約者【完全版】  作者: 水琴窟
転 グレン
4/8

1.

 


 凍えるような、冷たい泥水のような雨だった。




 さて、これだけの才能を幼くして既に持ったからには、グレンは孤独だった。

 本人は孤独であることを特段気にしていなかった。いつも周りには自分を慕う誰かしらがいたが、彼らを決して自分の心のテリトリーには入れない。

 言うなら自分を孤独にしたのは自分自身。

 自ら望んで孤独になった。

 グレンの周りには媚びた笑みが多過ぎて、心を開くなどいちいち面倒臭いことはしていられないのだ。そんなことしなくとも、彼に好かれようと周りが勝手にやってくる。

 人間関係については便利な愛想笑いでやり過ごし、自分に利益がある場合のみ利用できる駒として扱うくらいだった。

 グレン・レグルスはそれが許される人間。

 これが他者全員と彼自身の認識だった。

 これだけ可愛げがないのだから、彼を年端もいかぬ子供と認識する人間などいなくて当然である。むしろ子供と侮れば足元を掬われかねない。ごく自然な摂理だ。


 そもそも『レグルス公爵家』と言えば、国境を越えて世界の政治経済界を引っ張る五大公爵家の筆頭である。

 初代は王家の祖に忠誠を誓った勇猛な騎士であり、爵位を賜ってからおよそ五百年、変わらず王家に仕え国土を守護してきた由緒正しき一族だ。そのため、社交界での冠名は『悪を打ち払い暗黒を照らす赤き守護神』と専ら有名である。

 グレンはその本家の嫡子であるのだから、詳細を語らずとも生活環境は察して余りある。

 当主の座を先代から引き継いだ父親は、一人息子を生まれたその瞬間からレグルス本家唯一の跡取りとして扱った。人の子の親として見るならば明らかに失格者であったが、子に対する感情の一切を排除して帝王学を叩き込んだのは、レグルスの名がどれだけ脅威であることを理解していたからだーーと、後にグレンは考察している。

 嫡子であると、ただそれだけの理由で家を背負うには、レグルスの名はあまりに危険過ぎるのだ。

 父親は家庭教師など他者に任せきることなく、自らグレンに鞭を振るった。常に勝利を義務づけ、他人の倍以上の成長と完璧無比な結果を求めた。敗北や僅かな失敗も許さなかった。

 上に立つ者が負けることによる周囲への影響は計り知れない。

 ある者はあっという間に掌を返し、実力に疑念を抱いて穴を探し出すだろう。ある者は自分は理解者だと擦り寄り、まるで対等であるように振る舞うだろう。つまりナメられる。

 同情し、慰め、情けをかけることで優越感に浸る者も出てくる。あたかも自分が優位にたったかのように。

 少なからずそういった変化が現れる。敗北とはそういうことだ。

 だからグレンは勝利を基本法則にしなければならなかった。敗北や失敗によって得られるものもあるなどという甘言は、レグルス家に限っては適用され得ない。


 父親に反発したことはない。疑問を抱いたこともない。最初から徹頭徹尾そのようだったから、そんな余地はどこにもなかったし、そんな気概もなかった。

 生まれつき器用で頭の回転も早く、父親の求めるものに応えられるだけの才能を持っていたのは僥倖だったのだろう。これがもし平凡な子供であったら、父親との軋轢に耐えられたはずがない。

 まるで洗脳のようだと非難する者もいるかもしれないが、そもそも教育とはえてして洗脳と紙一重、表裏一体の部分があるものだ。それにグレン自身、自ら父親の意思を理解して従ってきたと思っている。教えをただ鵜呑みにするだけでなく、たった五歳未満で討論を展開するくらいには意識は自立していたと自負している。

 それに、一方で母親がいたことであれで上手くバランスが取れていた。

 いかに脳が優秀非才であっても、あくまで身体は子供である。疲れた時、幼い彼を癒してくれたのは穏やかな気性の母親だった。多くを求める父親とは真逆に、グレンが健やかにあるだけで至上の幸福と褒め、全身で慈しんだ。鞭と飴はそうしてグレンの両隣に存在していた。


 ところが、グレンが五歳を過ぎた頃、その母親が病に倒れたことがひとつ目の転機となった。

 母親が病弱となり会えない日々が続き、鞭と飴の比重は鞭の方に天秤が大きく傾いた。その結果、補うようにグレンの中でもうひとつの人格が徐々に形成され始めたのである。

 合わせ鏡のようなもう一人の自分。

 しかし、案外そこまで驚きはしなかった。現実味がなかったというのもあるが、やはり一人だろうが二人だろうが根本は自分自身であるからか、すんなりと存在を受け入れられた。

 世間から見れば異常だと判断する冷静さを持ちつつ、これは自分にとっては当然の流れだったと呼吸するように理解した。なるべくしてなった。むしろ、これでこそ黄金よりも重いレグルスの名を真っ当に継いで背負えるだろうと納得したものだ。

 この時点では、もう一人の自分というのはまだ朧げだった。あくまで主人格の方が疲れた時の話し相手といった具合で、俗に言うイマジナリーフレンドと大差なかったように思う。副人格の方が表に出てきたり、明確な意識の入れ替わりというものはなかった。ーー両親が帰らぬ人となり、取り巻く状況が一気に変貌するまでは。


 二つの棺桶の前にしたグレンの中に、悲しみや悼みといった感情は一切なかった。


 ただただ、自分の周りにハイエナの如く群がるその他大勢からいかにしてレグルスの名を守るか、その一点のみを、思考回路が電気信号の摩擦を起こし火花を散らすも気に留めず、持てる全てを総動員して考えていた。

 留守番をしていた。

 少し体調が回復した母親の精密検査を兼ね、父親と二人、登城した帰り道。川を渡っている最中、橋が崩落し馬車ごと急流に呑み込まれたという。

 不慮の事故だとは言うが、はたして本当に事故なのか。レグルスの名はあらゆる意味で脅威だ。抱える財産や資産、『レグルス公爵家』を形成するもの全ては有象無象にとって、喉から手が出るほど欲しいものだろう。


 守らなくては

 勝たなくては


 墓場の神妙な静寂の水面下で、昨日までは良い顔をしていた大人達の顔など、確かめるまでもなかった。虫ケラのように下卑た眼差しが頭上に降り注ぐのを感じながら、朧だったもう一人の自分が急速にその存在を顕現させるのがわかった。

 大丈夫だ、と頭の中で囁いたのは、はたしてどちらか。どちらもか。

 蹂躙。殺戮。侵害。破壊。支配。厄災。脅嚇。凶悪。いつもは奥に封じ込めコントロールしている凶暴な本質を抱えて、今こそここで曝け出してしまおうと誘うように。


 大丈夫だ

 俺は

 僕は


 グレン・レグルスは絶対に負けてはならない


 この時をもって完全に、明確に確立された二つの意識が、

 並び立ち、

 入れ替わる、


「私がこの子の後見人となろう」


 その一瞬の刹那に、父親よりもドスの利いた声と共に、ふわりと何かが両肩を包んだ。

 病に倒れるより以前によく似た、のどかな陽気に咲く花や暖かな土草の匂いがして思わず錯覚したグレンが見たのは、当然のことながら母親などではなく、むしろ似ても似つかない外見の少女とその父親で。


 不覚としか言いようがないが、気づけば鬱屈とした泥水のような墓場ではなく、我が家ではない屋敷にいた。





『ジュパン公爵家』と言えば、父親が珍しく何の打算もなく一目置いている家ということで、その名はしかとグレンの脳裏の片隅に刻まれていた。

 ならば何故それまで彼自身が当人達に会ったことすらなかったのか、その理由は後に嫌というほど理解することになる。貴族界によくある無駄としか思えないお家自慢大会、もとい定期的なお茶会や夜会のパーティーには必要最低限しか顔を出さない。

 また、ある程度懇意であったはずのグレンの父親自身、妻の看病と息子の教育に明け暮れ食事に招待する余裕もなかったことも、その一因であったのだろう。そんなわけで、両親の葬式の場で初めて、グレンはそのご尊顔を間近で見ることになった。


 正直なところ、そこから丸々三日ほど、グレンの記憶はどうにも曖昧だった。


 ただ、曖昧だが、優秀な脳が覚えていないわけではない。

 鶴の一声で目下の処遇が決まり、ジュパン家の屋敷に馬車に乗って連れて来られるなり、まず湯気の上がるバスルームに放り込まれた。一人でではない。三人でだ。正直意味がわからなかった。強風で傘がコウモリになり、共々濡れ鼠になった自分達を見た家令やメイド達が文字通り飛び上がった結果である。追い剥ぎに身包み剥がされるというのはこういう感覚かと、どこか奇妙な思考回路で考察した。

 次に気づけば煌々と薪が燃え盛る暖炉の前にいた。もこもこした厚手のバスタオルにグルグル巻きにされていた。正直意味がわからなかった。服がないからというのはわかるが、そういうことではなく。誰かが自分の髪を一生懸命拭いていた。

 その後も、ところどころ記憶が飛ぶ。持たされたマグカップの中は、マシュマロをひとつ浮かべたココアだった。陽だまりの匂いのベッドシーツ。手を引かれて歩いた。時々歌が聞こえた。猫と犬がいた。おそらくちゃんと時系列ではないが、バラバラでも特に問題のない、これまでとんと縁のなかった穏やかな日常風景だけが一枚一枚の写真のようにあった。


 不本意ながらこれほど無防備な姿を晒すことになった原因は、やはりあの瞬間の出来事に違いないだろう。

 あの瞬間、本来ならばグレンは完全に人格を交代し、予定より大幅に早く就任したレグルス公爵家当主として振る舞うはずであった。守るために、勝つために、何より負けるわけにはいかなかった。

 そのためには多少非人道的であっても、自らの凶暴性をその勢いのままに操ることに何ら躊躇いはなかった。周囲を完膚なきまでに制圧して、自分を、レグルス家をここぞとばかりに犯そうとする者達を蹴散らす。それがグレン・レグルスの辿るべき道筋の筈であった。

 ところが、あの一瞬。

 人格が入れ替わる、その無防備になった刹那の僅かな隙間にするりと入り込まれ、真綿でくるまれてしまったから。言い訳をするなら、そのせいだった。

 凶暴的な衝動は中途半端に萎れて、確立された二つの人格も中途半端に表裏どっちつかずにフワフワと並び立った状態のままで、だから墓場でさえ冷静だったグレンの脳は、奇しくもここに来て子供らしく拙かった。爆発寸前にまで膨れ上がったエネルギーが、どこに行けば良いのか見失ってオロオロしている。そんな無防備な子供を傷付ける存在が、たったひとつもなかったこともそれを助長させた。


 どういうことだこれは、と漸く我に返った数日後。グレンの脳裏、五感すら席巻したのは、不審感や猜疑心といった至極当然の理性だった。


 ジュパン公爵家十三代目当主クロード・ジュパンと、その一人娘シルビア・ジュパン。

 揃いも揃って極悪顔だからとか、断じてそんな理由ではない。むしろそんなことはどうでも良い。いくら父親が一目置いていたとはいえ、直接関わったことのない赤の他人に気を許すほど、グレンはおめでたくはなかった。

 どういうつもりかと真っ先に詰問しようとしたが、ふと方針を変えたのは戦略だった。

 どうせ何を言われようとはたから信じる気などない。それより、無防備を演じ続けて相手の油断を誘い、出方や目論見を探りつつ弱みを握った方が後々有利になるだろうと判断したのだ。一年目のことである。


「「 グレン、ハッピーバースデー! 」」


 一年と数日が過ぎた時、グレンの苛々とした感情は最高潮に達していた。

 その数日前は両親の命日で、墓参りの後、ささやかな晩餐があった。あからさまな言葉こそなかったが、二人の眼差しはグレンをどうしようもなく苛立たせた。

 気持ち悪かったのだ。どうしてもわからなくて。その眼差しが慈愛だと、母親のものと同じだとわかるからこそ苛々した。

 だってずっとそうなのだ。最初から何も変わらないのだ。

 百通り以上も可能性をシュミレートした。それに対する自分の取るべき行動は二百通り以上弾き出した。いつでもどうとでも動けるようにしていた。

 どうして自分の後見となったのか。見返りに何を求めているのか。どういうつもりなのか。どうしたいのか。

 何のアクションも起こしてこないことに、いいかげん我慢ならなかった。だから、差し出された手作りのケーキを床に叩きつけて、どういうつもりでこの家に連れてきたのかと、とうとう直球で詰め寄ったのだ。


「なんでって…寒かったから?」


 は?

 かなぐり捨てた無防備な良い子の仮面の下から、あの時に萎えさせられた凶暴性を遠慮容赦なく曝け出すグレンに、父娘はケーキのことを怒るでもなく素直に顔を見合わせてコトリと首を傾げた。


 正直意味がわからなかった。完全にグレンの常識の範疇外だった。

 ひとがひとに優しくするのは、見返りを求めているからだと思っていた。それしかないと思っていた。礼。恩義。対価。あるいは優越感。偽善。自己満足。

 常に他人の思考の先を読み勝利が当たり前であったグレンにとって、この結果は敗北にも等しく許し難いことであった。自分の戦略は完全に間違っていたのだ。

 だが、落ち込んでいる暇などない。間違っていたのなら戦略を変えるか軌道修正しなければならない。色眼鏡は物事を客観視する上でマイナスだと父親に教わったにも関わらず、なんたる失態か。

 完璧な仮面を被って完全に二人を穿って見ていたその一年を猛省し、それならば次はもう少し素直に観察することで真意を探り当てようとした。敵を知ってから対処を考え直す方針に切り替えた。二年目のことである。


「「 グレン、ハッピーバースd 」」

「その前に何か言うことは…?」

「「 アッハイ 」」


 結果、今度は般若の形相で仁王立ちになり、懇々と説教する羽目になった。優秀な脳をもってしても本当に意味がわからなかった。


 戦略を変えたグレンは、ひとまず改めてじっくりと、二人の容姿を観察することから始めた。わかってはいたが、見事なまでの極悪顔っぷりはいっそ感服してしまう。

 グレンも両親もなかなかに容姿端麗であったが、レベルは同等でも全く異なるベクトルの美男美女である。そしてそれは、他人からの評価もグレンとは全く異なるベクトルのものが圧倒的多数であった。

 例えばグレンが(内心はどうあれ)優しく微笑めば、百人中百人が好印象を抱くだろう。ところが、シルビアとクロードがどんなに誠心誠意、心を込めて微笑んでも千人中千人が悪印象を抱く。要するに、何か絶対に悪巧みしている、と思わせる笑みに見えてしまう。

 そんな外見なので副音声も凄い。例えば「ごきげんよう」と挨拶しただけで「ごきげんよう(その不細工な顔を私に見せるな)」と受け取られる。そんなバカなと思うが本当のことだ。いっそギャグであったらどんなに良かっただろう。まるで出来の悪いコメディでも見ている気分である。


 そんなことからはじまり、気づけば優秀な能力を持て余す精神的拷問の苦痛を経て敗北を認めるに至った幼い少年は、自分の心の変化にまだ先があることまでは予知していなかった。



 § § §



 白が顔を覆っていた両手からそっと目を上げると、グレンが手の中の何かを眺めていた。

 それは、ふとした時に、今と同じようにグレンがよく手にしている懐中時計で。時間を確かめるのとは違う、その、眺めているというより一心に見つめていると言うに相応しい横顔が、とても穏やかであることを白は知っていた。


「もしかして、その方からの贈り物なのですか?」


 そして、気づけば無意識にそう口にしていた。これまでも、おそらく大事なものなのだろうと密かに思っていたが、今日の流れでなんとなく確信を得たのだ。ただ、強いて訊くつもりはなかったので自分の発言に少し慌ててしまう。


「よくわかったな」

「なんとなく…すみません、野次馬のつもりではないんですが」

「良いさ、お前の性格はよくわかってる。青色と黄色のすっとこどっこいならともかく」

「この横暴野郎。で?それなんだ?」

「差別反対っす。それでそれで?俺も気になってたっす、それいつも眺めてるけど何かあるんすか?」

「貴様らは…そういうところだと気づけ」

「バカに効く薬は、ない」


 薬はないが口封じの札なら効くと、問答無用で口にチャックを引かれた約二名を手慣れたように放置しておく。


「良い年代物じゃない。シルビア嬢もなかなかの目利きだよね」

「これは三年目の誕生日プレゼントでね。もうひとつは詩集だった。別にどっちがどっちのってわけじゃないんだけど、俺と僕、当たり前のように二人分って考えて、いつも二つ用意してくれるんだ。単純に二倍分って考えるところが愚直で可愛い」


 アンティークの懐中時計。繊細な透かし彫りの細工が美しく、手にしっくりと馴染む。鳳凰という、火の鳥とも不死鳥とも呼ばれる伝説の鳥獣の彫り物だ。遥か東洋の品らしく、それなりに値が張っただろうとわかる。

『絶対にコレが良かったの。吉祥の鳥だから、グレンを守ってくれますようにって』

 あとで家令がこっそり教えてくれたところ、コレを買うために骨董屋の主人と交渉して取り置きしてもらい、コツコツとクロードの手伝いで小遣いを貯めていたらしい。

 ごく自然と愛しさが募った。あの家で、一体何度そんな心地を味わっただろう。


『グレン、グレン』

 北の領地の空は、青を染め重ね薄墨を少し溶かし込んだような、そんな深い色をしている。

『どうしたの、シルビア(ねぇさん)

 そんな広い空の下で、グレンは恋をした。


「貴様がなぜ真っ当な人間でいられているか、よくわかった」

「随分だがありがとう」

「別に貴様を褒めたのではない」

「でも、ちょっと安心しました」


 緑の毒舌に続き、白の素直な感想が漏らされる。


「何の話だ?」

「気を悪くしないで下さいね?僕の勝手な想像ですが、とても安らいだお顔だったので。グレンさんも、シオン先輩も、皆さん、優秀な方はいつもどこか気が抜けないような印象なので…かと言って、例えば僕が、ひと息ついて下さいなんて言ってもあまり意味ないでしょうし。だから、グレンさんが安らげる何かを持っているとわかって、ちょっと安心したんです」


 特にグレンのパーソナルスペースは限りなく広い。己と他者の境界線は渓谷より深く山岳より高い上に、厳重な術式で罠を仕掛けているようなものだ。


「最近なんかいつも忙しくて、お疲れみたいですし。大丈夫ですか?僕が言うのも生意気な話ですが、グレンさんはいつもリーダーであろうとするでしょう?」

「問題ない。確かに今回のことは少々厄介だから、疲れはするけどね。首を突っ込んだ以上はどうにでもするよ」


 今回のこと、とは件の七不思議のことである。


「お一人ではダメですよ…?『奴がキレたのは見たことがあるが、ブチギレたのはまだ見たことがないんだ。ブチギレたらおそらく、一人で突っ走って世界が崩壊するまで暴走するタイプだな、アレは』とシオン先輩が苦笑してましたし……あの、その『あながち間違ってない』みたいな沈黙、怖いのでやめて下さいね?」

「善処しようか。…ところで、安らいでいるように見えたのか」

「はい。…あれ?もしかして隠してるつもりだったんですか?」

「うるさい」

「失礼しました」


 これが照れ隠しだと、遅れて気づいたメンバーは明日は槍でも降るのではないかと大真面目に心配した。ーーそう、彼らは奇襲をかけられたせいでうっかり油断していたのだ。


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