91話 贄と無間のうなぎ、エロ・巨乳・メンヘラ落ちる
〜ザラム王国西賢エシェット〜
「贄は・・・・?」
モレ・クが、その形を猛牛に変えながら、問いかけてくる。
その声は、いつもながらおぞましいまでの威圧力と生命に関わる熱波を帯びている。
慣れぬものであれば、この距離であっても気が狂うか焼け死ぬだろう・・・
「強欲の大罪よ。我がザラム四賢のひとり、東賢のモアブをガルバ=エルに捧げましたぞ。ご指示の通り・・・」
そう。
東か南を、四賢の誰かを、大天使ガルバ=エルの贄とする・・・
これはモレ・クの指示であった。
その勅を引出したのは、賢王ティムルその人である。
だが、わからん・・・
四賢の一角を失ってまで得ようとしているのはなんだ?
私は、傀儡と化した二人の有能だった部下を見やる・・・
縄で縛られ、猿轡をされている。
すでに諦めの境地にあるようだが、油断はならない。
このもの達を捕らえるのに、一個部隊が壊滅した・・・
傀儡にした上で、能力を底上げる?
聞いたこともない術である。
諜報・隠密に特化したもの達だが、戦闘能力が常人離れしていたという・・・
本当は、ティムル様の真の狙いを知りたかったが、それは後回しだ。
それに、義団スピエルド・・・マリーとかいう、町娘が関わっている事は分かったが、それ以上の情報がつかめん。
だがしかし、今はあのヨシュアという男・・・
この男の正体がわからなければ、この後の情勢を見極めることもままならん。
この2人が使い物にならなくなったのも、あの男の仕業とみえる。
漆黒のローブを纏い、2人を引きずりながら祭壇へと捧げる。
目も口も開けられないほどの熱風。
生贄を捧げるのも命がけだ。
素早く祭壇から離れ、モレ・クに問いかける。
「ヨシュアとは・・・魔王と称されるあなた様ほどの方が、なにゆえ蛇を預けたのですか? あの者はそれほどの者なのですか?」
「・・・・・・あれは我を解放するものよ・・・・・マ=モンの思い通りにはさせんぞ・・・・・」
マ=モン・・・
ザラムの呪いの源泉・・・なぜだ?
モレ・クは、マ=モンに叛意を持っているのか? てっきり使い魔であると思っていたが・・・
そして、あのヨシュアがこの強欲の大罪を解放する?
永きに亘り、この火とともにこの世界を見てきたが、この火そのものを見るのは初めてか・・・
歪ながら安定していた世界の構造が、動き出しているのかもしれん・・・
ヨシュアは、ザラムの味方なのか・・・
〜サマ・エル、アバ・トン、アス・デウス〜
「まあ、じゃあ、行こうぜ」
タンクトップ、ショートパンツの爆乳美女、アバ・トンが声をかける。
「サマサマ〜 ここからパッと出る方法はないんですかぁ〜」
ロングヘアーの超絶美女、アス・デウスがサマ・エルにしなだれかかる。
「アス・デウス。ここをどこだと思っているのですか? 無間空間とも称されるウロボロスの腹の中ですよ?」
「へん! なんだよエル。てめー、そんな御伽噺にビビってんのか? ウロボロスだか、蛇だかうなぎだか知らねーけど、頭かっらぶっ潰してやんよ!」
「まあ! 私たちもう食べられちゃっているのですかぁ〜〜 ええ〜〜?? どうしよぉ〜〜 ああ〜〜ん すごいいいぃぃ~」
はああああ〜〜〜
この2人には、つける薬はない。てか、うなぎってなによ? いいぃ〜ってなにがいいのよ!?
馬鹿すぎるし、気持ち悪すぎる!
馬鹿げた形に歪みまくった魂ごと創り変えるしか、直す方法はないのだろうか? うん、ないわね。
そうよ、ご主人様しかいないわ。こんな変態、調教できるのは。
「言いたいことはたくさんあるのですが・・・もういいです。 いいですか? ここはまだ中層。まだ気付かれてはいないでしょう。静かに、上層を目指します。いいですか? 静かに上を目指すのですよ」
「んだよ。偉そうに。大体大袈裟だぜ? ショボイアンデッドくらいしかいねーぜ? ここ。」
ご主人様、どうかこの馬鹿者達に、じゃっかんきつめの洗礼をお与え下さい。
バカは死ななきゃ治らないと言いますが、魂ごと塗り替えてくださって結構です。
バカ過ぎて使えないようなら、いっそ浄化してもいいかもしれません。
「・・・ま、 そのアンデッドのおかげで、あなた達はここから救出されるということもお忘れなく・・・」
「は? なんでだよ。訳わかんねー」
もういいわ。
アス・デウスに至っては、よだれをたらしながら恍惚の表情で呆けている。
「行きますよ」
こいつらに分かってもらう必要などない。というか、無理だ。
いつものように、こっちがどんどん進めるしかない。
「あ〜〜ん。美味しそうぅ〜〜」
は?
アス・デウスが、野良アンデッドを見つけ駆け寄って抱擁した。
「ギャギャギャギャー〜ー!!! ヴヴガガガァアアアア!!!!」
喉元を噛みつかれたアンデッドが悲鳴を上げた。
ゴゴゴゴ!
地響きが鳴り渡る。
!!! ヤバイ!
ゴガン!!
地面が裂け、巨大な黒い物体が顔を覗かせた。
「・・・う、うなぎ??」
アバ・トンが呟く。
・・・た、確かに・・・・うなぎ、だ。
〜シモン=アザ・ゼル〜
水銀のホムンクルスと戯れる主様。
錬金術の究極の一つであるホムンクルスの秘儀を難なく成功させ、完全に支配されている・・・・
もし、このお方がルシ=ファル様のようなお立場だったら・・・
肉体に拘ることなくあらゆる悪魔を前門に顕現させることができる。
ジューダスなど全く問題にならんな。
それは、ウラノスを自在に書き換えることと同義。
やがては、ユピテルやクロノスですら干渉することになるだろう・・・
主との衝突は避けられないか?
いや、その前に万物の矛盾の受け皿たるウロボロスに抵触するか・・・
ふはは、主様といるとかつての主、ルシ=ファル様でさえ稚児に思えてしまうわ。
「おーい、はぐりん。石ころ持ってこーい」
主様が、水銀のホムンクルスに声をかけると、健気に言うことを聞く。
・・・健気、か。
完全に意思を持ち、知能を有している証左だな。
そして、水銀なのだ。
これを滅することはできるのか?
しかも、なんでも溶かすというぞ?
まあ、もうあまり深く考えるのはよそう。
今は、主様とともに面白がれば良いのだろうしな。
「ヨシュア様・・・・」
カルミラ様が深刻そうな声で、主様に声をかける。
これはただ事ではない。
この数日、最も仕事をしているのはカルミラ様だ。
この方は、受肉体の先輩である以上に、その能力には圧倒的な敬意が払われねばならない。
はっきり言って、四大悪魔王に並ぶか、それ以上である。
ルシ=ファル様には・・・・わからない、が。
ともかくカルミラ様一体は、あの悪魔軍団一団に相当するのは間違いない。
この方が暴走すれば・・・・前門は崩壊するだろうな・・・・
いかん、また考え過ぎた。
悪い癖だな。
とにかくこれほどの方が深刻そうな声を出すということは、余程のことなのだ。
「・・・ヨシュア様・・・エロと巨乳とメンヘラが落ちました」
・・・・・・え?




