90話 挑戦的な二人、可愛いはぐりん、避けられない飽き
〜サマ・エル〜
得体の知れないザラム王国の「東の勇者」と称されるロト・・・
恐らくだが、アレもカルミラ同様、何かの受肉体だろう・・・
しかし、その霊体がどこにつながっているのかがわからない、この私がだ。
ただわからないという事は、私以上の能力がある霊体ということになる。
私より上位の悪魔といえば、ルシ=ファル様に加えて4大悪魔王が挙げられる。
同等であるなら、カルミラ、アス・デウス、アバ・トン辺りだが、当然受肉していないことはわかっている。そもそもカルミラは別だし。
そう考えると、行方不明の四大悪魔王の誰かということになるか・・・
セイ・ゼブル、マ=モン、セイ・トン、そしてバ・アル閣下・・・の内、マ=モンとセイ・トンが怪しいということになる。
もしそうならば・・・とても私の戦力では敵わない。
最低でも、バ・アル悪魔将軍団を揃える必要があるだろう。
そう、副将の私を筆頭に、カルミラ、アバ・トン、アス・デウスの4体だ。
しかも、カルミラは受肉しているから、受肉体であろうロトには有効な戦力となる。
これに戦闘狂の2体が加われば、かなりいけるはず・・・
その重大性を告げ、残る2体の捜索に協力するようアザ・ゼルに要請したのだが・・・
なんだあいつは?
忙しいから断る、だと!?
しかも、ご主人様のお世話に優先するものはないと言い切りやがった。
何言ってんの? そもそもこれはご主人様の御命令なのよ?
アザ・ゼルは、力こそ中位に過ぎないが、曲者の古の悪魔であり、有数の知恵者でもある。無理強いは危険だ。私もいろいろ頼っている部分もあるから・・・
しかも受肉している・・・
力づくで言うことを聞かせられないと言うは、なんとも歯痒い。
とにかく、シモンには同行を断られたが、カルミラの協力で2人を見つけることができた。
と言うか・・・恐ろしいのは、カルミラの能力の高さだ。
ベリ・エル時代は、その陰湿さとアンデッドの統率力で悪魔将軍の一角を任されていた。
しかしマステマに子飼のアンデッド軍を蹂躙され、骨肉の恨みを抱いたまま、執拗に追い回していたようだ。
そして、気が付けば、カルミラとしてヴァンピールに転生していた。あのご主人様の手によって。
アンデッドを統率する飛び抜けた能力とアンデッドを生み出すヴァンピールの能力のハイブリッド・・・それだけでも気が遠くなるような恐ろしい組み合わせだと言うのに、そのベリ・エルの能力そのもののが進化している。
そう、世界中に彷徨うアンデッドを半強制的に使役できるのだ。
悪魔ですら手を焼くアンデッドを、制限があるとは言え、どんなアンデッドであれ、任意に使役してしまうのだ。
てゆうか、軍事力だけなら、4大悪魔王に匹敵するじゃないかしら?
とにかく、その能力によって、アス・デウス、アバ・トンの2体がマイ・テンを彷徨っていることが分かった。
しかも、かなりピンポイントな詳細な情報として・・・
はあ・・・このサマ・エルが、子供の使い扱いだ・・・・。
そうして世界最大の深淵の中層あたりにまで、それなりに苦労をしてやってきた、と言うわけだ・・・・
「ねえ! アス!! あんた、ウロボロス見たことあるの?」
「ひえ! ななな、なんですかぁ〜 蛇ですかぁ? ないですぅ〜」
「ふん。蛇っていったわね? あんたそんなこと言っていいの? 聞かれたら呑み込まれるわよ?」
「えええ〜 丸呑みですかぁ〜〜 ああ〜ん 怖いですぅ」
「相変わらずキモいわね。全然怯えていないじゃない。何、ウットリしてんのよ。バカじゃない?」
「ど、どうしましょう? 出ますかねぇ?」
「いい? 出たら、やるわよ?」
はぁぁぁー
ウロボロス・・・・を、やる、だと?
ウロボロス・・・・それは、個体ではない。
聖魔神のいずれにも含まれない。
それは、ある種の完結したシステムなのだ。
確かに、蛇や龍などと称されることもあるが、それは本体からポップアップしたキノコのようなものだ。
そんなものをどうにかしたところで、どうにもならない。
つまり、創造主のアンチテーゼ、それがウロボロスなのだ。
このマイ・テンは、創造主の矛盾を受け止める受け皿であり、ウロボロスの巨大な腹の中なのだ。
ウロボロスの劣位互換とも揶揄される4大悪魔王の1柱であるセイ・トンですら、理解不能の不滅性を有していると言うのに・・・・・
こいつらはバカなのか?
・・・・・
「貴方達、バカですか?」
「あ? ん? あれ? エルじゃん。」
「ああ〜〜ホントですぅ〜〜 サマサマだぁ〜〜」
はああ〜〜
・・・・・まあ、いい。
「貴方達。迷っているのでしょう? 任務がありますから、ついてきなさい」
「え! バ・アル様は無事なのか?」
「アバ・トン・・・ 残念ながら、閣下の消息は、未だ不明です・・・」
「は? じゃあなんだよ、 任務って?」
「私は、今、新しいご主人様に順っているのです。」
「なんだと!? てめー、裏切ったんか? 大方、セイ・ゼブルだろ? なんであんな奴に!」
「違います。詳しく話すと長くなりますから、簡潔に言いますよ? 私はデメテルに囚われ、あの災禍を切り抜けることができました。大いなる呪いです。そしてある人間に取り憑くよう命じられたのです。それが今のご主人様です。」
「サマサマ〜〜。あなた何をおっしゃるの? 人間?」
「アス・デウス。そうです。人間です。一応ね・・・」
「ふふふ。あなたが? なぜ?」
「アス・デウス。そうよね? 興味があるわよね? 会わせてあげる。もしあなたが、彼をどうにかできたら、私はあなたのものよ?」
私ですら目を細めたくなくほどのアス・デウスの美貌が、ぐにゃりと歪む。
「へぇぇ〜〜・・・サマサマがそこまで言うのですかぁ〜〜・・・・逢いたいですぅ」
「おい! アス!! 何勝手に決めてんだ? 人間だと? バ・アル様の仇が先だろうが」
「ええ〜そうですわ。 でも、アバ・トン。あれはどこにいらして?」
「ふん。探せばその内見つかるだろうが」
「アバ・トン、アス・デウス。私のご主人様もマステマを探っています。そして、近いうちに見つけるでしょう。私が、あなた達を見つけたように・・・・」
アス・デウスは、にっこりと微笑み、アバ・トンをみた。
「けっ。サマ・エル。てめーが上役だったってのは、バ・アル様の前だけで有効だ。もし、てめーのご主人様とやらが出来損ないだったら、容赦無く壊すぜ?」
あははは
やっぱりアバ・トンね。
そうよ、それでいいのよ。
「おほほほ。 アバ・トン。そうしてくれたらなら、私は嬉しいくらいよ。 あはははは」
でも、本当におバカさん。
あのご主人様の恐ろしさを全く分かっていないのね。
精々、全力で喰ってかかったらいいわ。
その足掻いている姿を見れれば、私も少しは救われるというものよね。
ご主人様。
本来であれば、即座にロト征伐に向かうところでしたが、予想通り、この2体は言うことを聞きませんでした。
いつものように、きっちり型にはめてやって下さいまし・・・・。ふふふ
〜ヨシュア〜
へきちん!
あ、くしゃみ出た。
クッソー、誰か噂してやがんなぁ。
大方、アホのメフォストだろうが・・・あいつどこで何やってんだろうな。まあいいが。
「おい。おーい、はぐりんや〜」
俺は、今、絶賛はぐりんと遊んでいる。
はぐりんは、俺が作り出したホムンクルスにして、どうみてもはぐれメタルだ。
ぺちゃぺちゃと蠢く姿は、若干グロテスクだが、よく言うことを聞くのが可愛らしい。
「おいはぐりん。この小鳥の死骸をお食べ」
俺は、小鳥の死骸をはぐりんに差し出すと、ぺちゃぺちゃと死骸に取り憑き、みるみる死骸を溶かしてしまう。
うむ、グロい。
でも、とりあえず面白いからよしとしよう。
まあ、わかるかと思うが、はぐりんと話したりする事はできない。
ぬらぬらとあまり健康的ではないテカリ方をしているので、触りたくはない。
つまり、呼びかけていろいろやらせると言うのが関の山だが、それで十分面白い。
「おい、はぐりん。まん丸になってみろ」
タプタプしながら、まん丸の球体になってみせた。
怪しい美しさを放ちながら、よし、と言われるのを待ってる。
可愛いな・・・
「よし。戻っていいぞ」
ぺちゃ、っといつものはぐれメタルスタイルに戻る。
どうやら、いろんなものを溶かすのが得意のようだ。
と言うか、それ以外には形を変えるとかぐらいしかやらせることが思いつかん。
とにかく、土だの、石だの、植物だの、動物の死骸だのを溶かせてるが、特に大きくなるわけでも、レベルがアップするわけでもないらしい。
・・・ふむ。やや便利なゴミ処理器だな・・・
俺は、結論に達した。
そう、今日をもって、人類のゴミ問題は解決したのだ。
これを偉業と呼ばずして何を偉業というのか?
水銀みたいな超有毒物質なのだ、何を打ち込んでも構うまい・・・・
は〜あ。
飽きてきたなぁ〜〜〜




