89話 パラケ・ルシス爆誕
〜ヨシュア〜
「さあ! さあ、お願いします!」
シモンが目を爛々とさせて、タプタプした怪しく光る謎の液体(水銀)が詰まった瓶を突きつけてくる。
あれ? シモンってこうゆうキャラだったっけ?
そうではない、はず。
しかし、よだれを垂らさんばかりに興奮しているのがわかる。
俺が思うに、シモンの渇望ってこの実験(料理含)とかなんだろう。
カルミラは、血(ヤギ乳で誤魔化しているが)。
サマ・エルは、媚び(化粧とかのオシャレ)?
目の色が変わるんだよね、その時はさ。
でも気持ちはわかる。
犬とかでも、普段はすげー忠実でも、骨とか夢中でしゃぶっているときに手を出すと ヴー! ってなるもんな。
ええ、いいですよ。
みんな俺のために本当によく働いてくれている。
余暇というか、福利厚生というか、そうゆうのも労働者諸君にとっては重要だ。
俺っちのできることなら、なんでも手伝おうじゃないか。
ところがだ、やり方がわからんのよ。例によって。
まあ、わからんのだが俺のできることはアレしかねー
青い焔をゴウっを起こすことだろ?
ワンパターンでスマン。
「シモンよ。焔を起こせばよいのだな?」
一応、確認しておこう。
違ったら恥ずかしいしね。
「左様です。しかしながら、主様。今回の場合、魂を持たぬ苗床ですので、主様のイメージが肝要かと・・・」
ほうほう・・・困ったね。
コンを持たぬナエドコとな?
乳酸菌が十分じゃない糠床みたいなもんか?
確かにカビとかが生えたら食えない。
美味しくな〜れおいしくな〜れと、乳酸菌に話しかけるイメージが大切だそうだ・・・知らんけど。
それと同じだね?
ふむ、そうなるとこのヌラヌラと怪しく光る液体に、どのようなコンをぶち込むか、俺っちが明確なイメージを持つ必要があるわけね。
・・・しかしまあ、これ・・・ターミネーター3のアレっぽいな。
・・・でもなぁ〜 アレだと可愛くないな〜
俺は、シモンから渡されたヌラヌラと光を放つ水銀の入った瓶を揺らしながらぼんやりと考えた。
・・・・・・・
はっ!!
ちゃららちゃっちゃっちゃっちゃ〜・・・ヨシュアはレベルが1あがった
ヴァン!!! ゴゴゴゴゴゴ・・・ゴルルル・・・ドドドドドドヒューー ヴァルルルルーーーン!!!!
嵐だ。
青い嵐が巻き起こった。
俺様を中心とした焔の嵐・・・・
これはやべ〜〜〜
かなり下らんアイディアに、自分で勝手にガッテンしたら焔が起こってしまった。
こんなに凄いのならコントロールできないとまずい(とりあえず今後な)。
こりゃ傍迷惑極まる。
シモンも目を丸くしてる。
でも、ジュニクしててよかったね。
霊体ならチリも残らんだろう、俺がいうのもなんだが。でもそれくらいはわかる。
ギャギャギャギャ〜〜〜ン
っと、爆炎が瓶を蒸発させ、水銀に吸い込まれていった。
そこには、ペチャっとしたホムンクルスがペチャペチャしていた。
よし! イメージ通りだ。
「あ、主様! こ、これは!?」
ふふふ。
ま、反省は追ってするとしてだ。
なあ、シモン。
それがわかるか?
そう!
はぐれメタルだよ!!
くぅ〜〜こいつを従者にできるなんてなぁ〜〜
昔年の夢がひとつ叶ったぜ。
「おおお〜。か、形を持たぬ水銀の苗床に、あえて形を持たせぬとは・・・このシモン=アザ・ゼル、感服致しました。して、名は?」
名?
ふ。
んなもん決まってるよ。
そう、今日この日、俺たちはついにやり遂げた。
あのレアなアレを仲間にすることができたのだ。
使えるとか強いのかとかはどうでもいい。
あの激レア感と逃げ足がたまらんのだ。
達成感よ、わかる?
こうして俺たちのパーティに、はぐりんが加わった!
え?
名前のテイストが違うって?
こまけーことはいいんだよ。
名前どころか、世界観からしてめちゃくちゃだ。
でも、それがいいの。
〜シモン=アザ・ゼル〜
予想・・・そんなものが虚しくすら思えるほどの偉業、奇跡、深淵、呼び名などなんでもいいが、その御業が興された。
ジューダスはおろか、ルシ=ファル様すら霞むであろうほどの、このお力は、創造神かマイ・テンのウロボロスに匹敵するものだろう。
もちろんそのレベルの力が、実際どのくらいのものなのか測りようもないわけだが・・・
少なくとも、それらはこの世界の伶ではない・・・
もう、このお方のことについてあれこれと悩むはよそう。つまらん。
ともあれ、この水銀を苗床としたホムンクルスは、成功だ。いや、理論を超えた大成功といえるだろう。
我々は、形に拘り過ぎていた。
ゴーレムの延長、そして人間の代替として、どうしても肉体の代わりを求めてしまっていたのだ。
これは悪魔の悲しい性であったと、今ならいえる。
肉体は、本質を映し出すが、やはり本質ではないのだ。
ある意味、本質である我々悪魔が、むしろ肉体に囚われたが故の哀れな盲点だ。
この完全なるホムンクルス・・・いや、これは新種の生命体だろうな。
このアザ・ゼル、シモン=アザ・ゼルにははっきりとわかる。
種の系統樹に、今、新しいルートが刻まれた。
はっきり言おう。
創造神でもなされない、意図した進化が今なされたのだ!
ふふふ・・・
ふはははは・・・
あはははは・・・
この感動が、私の魂を包み込む。
これがエートスか。
この大いなる充足感こそがエートスなのだ。
捧げよう、私の全てをこの無限のエートスに。
そして今、私は永遠となったのだ。




