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87話 さよならモアブ、忌まわしき龍、そして4大悪魔王

〜北賢モアブ・東賢ロト会談〜

「ロトよ! ローランの尻尾を掴んだぞ!」


「・・・・」


「お主たちもゴソゴソと嗅ぎ回っていたようだが、()()()()()がローランが籠っているという洞窟を発見したのだ。お主たちは、スゴスゴと国に戻るか、私の命令に従い勝手な真似をしないことだ。」


ロトの傍に控えていたアブラムが口を開く。

「モアブ様。恐れながら発言をお許しください。モアブ様の()()()の情報ですが・・・罠でございます。」


「っ!! な、何をいうのだ!! 無礼者!!!」


「失礼ながら、()()()()()()()()()()は確かに優秀ですが、どうもおかしいようですが・・・」


「な、ななな!! ええい! 下がれ下郎!!! おい、ロト! 貴様、部下の躾もできんのか!?」


「・・・・アブラム、よい・・・・」


「は。失礼致しました。」


「・・・・ガルバ=エルがついている・・・・()()()()()()・・・・」


「は? ガルバ=エルだと? 何を言っておるのだ? ローランは単身で洞窟に籠り、何やら手紙を書き続けているとのことだ。どうりで見つからんわけだ。だが見つけた。捕獲するなり、抹殺するなり意のままよ。怖気付いたのであれば、とっとと国へ帰れ!」


「・・・・・・・・」


「モアブ様。()()()()()、すべてお譲りいたします。我々は、ティムル様にご報告がてら先に帰国致します。」


アブラムは、ロト隊を代表して辞去を述べた。


「ふん。そうするがいいわ。我がモアブ隊はローランを捕獲し、ティムル様に手土産とすると伝えよ。わははは」




その後、モアブ隊は消息を絶ち、ザラム王国のローラン捜索は一時中断されることになった。




〜エシェット〜

「魔王モレ・クよ。 刻が近づいていますぞ。 皇帝(ツァーリ)がついに動き出しました。ガルバ=エルはモアブを喰ったようですな。そしてバ・アルを呑み込んだゲエンナ・ベルゼブブと、孤高の魔人ケルファ・・・」


漆黒のような火のが生き物のように(うごめ)く。


・・・魔王モレ・ク・・・永遠の呪いであり、漆黒の火に象徴される魔の化身・・・

しかし、それは氷山の一角に過ぎない。

そして、ゲエンナ・プレタ(強欲の大罪)が熾れば強欲の君主(マ・モン)が解き放たれる。



このザラム王国の最大の深淵は、そのルーツが()()であるということだ。

魔族と人族の違いは何か?

それは悪魔との契約である。


ザラムの古き王は、ゲエンナ・プレタ(強欲の大罪)の顕現を誓い、神の敵対者(セイ・トン)との契約を交わし、魔族として堕落(フォールン)した。

神の敵対者(セイ・トン)への誓いは、呪いであると同時に超越的な力そのものであり、この王国は大いに繁栄した。

しかし、監視者である呪い(モレ・ク)は常に我々を脅かし、数世代を超えて王国を蝕んでいる。



そしてついに・・・

ついに、このザラム王国を縛り続けてきた呪いから解放される日が近づいてきた・・・


それは、賢王ティムルを苗床とする強欲の君主(マ・モン)の受肉・・・いや()()、か・・・。


私の手足(ゴモラ・ソドム)を失ったのは痛いが、それでも収穫は大きい。


謎多き聖者ヨシュア・・・

リスクなしで成したという、その転生の秘儀。


これを手に入れることができれば、このザラム王国はさらに繁栄するだろう。


そして我々を苦しめ続けていた、()()()()()()()()に一泡吹かせることができるというものだ・・・・。



〜ヨシュア〜

「シモン・・・其方の故郷について聞きたいのだが・・・」


暇、そうギリシア語でいうスコレー()は、スクール(学校)の語源である。

俺は、ついに窒素も二酸化炭素も酸素も、おそらく水素も視認できるまでにスコレー()を極めてしまった。

いわゆるカンスト、というやつだ。


ここらでひと段落ということで、当初の、本当に当初の目的あった「情報収集」に精を出すことにした。

そりゃもちろん、カルミラやサマ・エルは忙しそうに()()をやっている(ように見えなくもない)。

だが、俺っちのところには一つまみの情報ももたらされないのだ。


主様(あるじさま)。冥府には、煉獄と悪魔界の2つの領域があります。」


ふむ。それは知っている。

その入り口で頑張ってたのが、ペテロの親父だな? あの、俺っちの腕をぶった切った。


「煉獄の主はジューダス、神を名乗っているようですが、ウラノス()に歯向かう反逆者ですな。」


ふむ。ウラノスか・・・ちょくちょく出るなぁ。

あのデメテルもおじいさまとかなんとかいってたし、誰?


「悪魔界の君主がルシ=ファル様です。」


ルシ=ファル・・・? 初耳の名前だなぁ


「・・・少し変わったお方ですが・・・そのお力は絶大・・・だとか・・・」


こんな歯切れの悪いことある?

お前さんの上司だろうに?


「あまり知らないのか?」


「いえいえいえ! とんでもございません。このシモン=アザ・ゼル。最古の悪魔公の1柱でしたから、我が君主ルシ=ファル様のことはよーっく存じ上げております・・・ぞ!」


これは知らんな。

俺っちのコミュ障スキルをナメンナヨ。


じーっっと見てると、素直にゲロを吐いた。


「そ、そ、そのルシ=ファル様は、()()()()()と呼ばれるだけありまして・・・そ、そのご尊顔を・・拝見したことが、まだ・・・ないの・・・デス」


は?

地に伏しているから、顔を見たことない・・・?

こう、ばたっと、顔面から地に伏してるの? だから顔を見たことない・・・

ナニソレ


「し、しかし、そのお知恵、お人柄、寛容さはまさに悪魔界の君主たる器でございまして、 た、た、多分、最強でございます」


終わってんな、悪魔界。


「そのような状況では、配下の管理もままなるまい?」


一応聞いておこう。どうせろくな状況ではなさそうだが・・・。


「それは大丈夫でございます。4大悪魔王と呼ばれるものたちが、その辺をバッチリ管理しておりますからな。」


お、元気になったな。

4大悪魔王か・・・それらしくなってきたじゃねーの。


「筆頭がセイ・ゼブルですな。知恵の悪魔王とも称されます。そして誇り高き古の悪魔、私の同期ですがバ・アル閣下がおります。人呼んで前域の悪魔王です。そして、長いこと行方不明ですがマ・モンですな。こいつは強欲の悪魔王なんて言われております。そして、謎多き色欲の悪魔王セイ・トンでございます。蛇だ龍だの化身とか噂されておりますが・・・どうもハッキリせんのです。」


どうも、シモン的に好き嫌いがあるようだ。

セイ・ゼブル。よく知っている。というか、俺っちの後見人とも言える存在だ。

この人が、4大悪魔王()()なのね。心強いじゃん。


そして、バ・アル閣下か。

なんか、火に飲み込まれちゃったとか? 言ってたね。可哀想に。


シモン的に見下しているのが、マ・モンね。こいつ呼ばわりだし。

行方不明なんだね・・・・。


最後が、セイ・トン・・・。謎多き・・・・蛇か龍か・・・。

最古のシモン(=アザ・ゼル)もよく知らん、と。


ん?

現状、悪魔界を回しているのって、セイの兄さんだけってこと?

おいおいおいおい〜

俺、すげー人とマブダチ関係ってこと?


「セイ・ゼブル・・・。どのような悪魔なのだ?」


聞いておこ。


「セイ・ゼブルは、狡猾にして残忍・冷酷です。暴力のような直接的な力を好まんようですが、()()()()()()()()最後、死ぬより辛い、消滅より残酷な末路になると言われています。我々は、形としてはルシ=ファル様の配下ですが、あのセイ・ゼブルの恐怖政治によって実際は雁字搦めに支配されていると言ってよいでしょう。惜しいことに、現実的に唯一、対等に()()()()()()バ・アル閣下がジューダスの攻撃によって生死不明の状況になっています。今は、その主たる配下たちは、ヨシュア様の庇護の下にありますが、いつ、あのセイ・ゼブルの魔の手が忍び寄るか・・・・」


聞いて損した。

・・・いや・・・俺は睨まれて()いない・・・絡まれているだけだ・・・・


・・・言えない。

シモンには、今の俺の状況を言えないわー。


()()()、ね。


シモン・・・知らぬが仏というのだよ・・・



はあ〜〜

悪魔も悪魔で世知辛いんだなぁ〜〜




俺っちが暗いため息をついていると、シモンが気分を変えるためか、面白い提案をしてきた。


「主様。どうでしょう? ホムンクルスでも作りませんか?」

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