86話 情欲と破壊と完全なへび、親父様へのお願い
〜アス・デウス、アバ・トン〜
「アス! 何よ!? 全然道違うじゃないのよ!」
「えーん。ごめんなさい。でもでもアバ・トンだって、こっちでいいって言ったぁ〜」
「はあ? そっちでいいの? って聞いたのよ! 勝手に、都合のいい解釈しないでくれる!!」
「ひーん。ごめんなさイィ。」
アスと呼ばれている絶世の美女は、アス・デウスである。
モデルの様な体型にロングストレートの金髪を腰あたりまで伸ばし、白いワンピースから覗く、悩ましいまでにすらりとした足が印象的である。
そして、アバ・トン。
暴力的なまでの巨乳を振り回し、火の様な赤毛はショートカットでさっぱりと整えられている。
ホットパンツとタンクトップで、健康的肉体をさらけ出している。
この二人は、かつて前域の王バ・アルの直属の部下であり、悪魔軍の将軍である。
アス・デウスは魔神王の異名をもち、誰よりも人間に近い姿を持ち、配下の多さが特徴である。そして何よりも、その肉体の耐久力の高さが彼女?を悪魔将軍にまで引き上げたといえる。
そしてアバ・トンはその名のとおり、全てを破壊し尽くす暴力の化身と呼べる悪魔である。
アス・デウスと同じ悪魔将軍であり、単騎殲滅戦を得意とする核兵器の様な存在である。
彼女?は自身の破壊力もさることながら、蟲を使役することで蝗害を引き起こし、国を滅ぼすと恐れられている。
「ひゃんひゃん、うるさい! アンタのバカみたいな部下どもはいないの? いい加減、ここにも飽きたわ」
「ふひーん。。。近くにいたのは、あの青い炎の渦にのまれちゃいましたぁ〜」
「じゃあ、遠くにいるの呼びなさいよ!!」
「えーん。声が届きませーん」
「役立たず!!」
「うう〜 アバ・トンだってぇ〜」
「ああ!? 蟲に道案内できんの? 役割ってのがあんでしょうが!?」
「ご、ごめんなさ〜いぃ」
ふたりは掛け合いをしながら、前域と門(人間界)を繋ぐ地下道を彷徨っていた。
この地下道は、ヨシュアも迷い込んだもので、世界最大・最深のダンジョンである。
マイ・テンと呼ばれ、その主はウロボロスである。
ウロボロスは不死、完全、永遠を象徴するシステムであり、この世界に迷いこめば未来永劫抜け出られないとされている。ウロボロスは龍だったりウミガメと象だったり、様々な形についての伝承がある。しかしその実態は知られておらず、煉獄の神や冥府の悪魔王も、その冥界の一部を間借りする関係に過ぎない。
「ねえ! アス!! あんた、ウロボロス見たことあるの?」
「ひえ! ななな、なんですかぁ〜 蛇ですかぁ? ないですぅ〜」
「ふん。蛇っていったわね? あんたそんなこと言っていいの? 聞かれたら呑み込まれるわよ?」
「えええ〜 丸呑みですかぁ〜〜 ああ〜ん 怖いですぅ」
「相変わらずキモいわね。全然怯えていないじゃない。何、ウットリしてんのよ。バカじゃない?」
「ど、どうしましょう? 出ますかねぇ?」
「いい? 出たら、やるわよ?」
血気盛んな二人の悪魔将軍は、この世界のもう一つのシステムそのものであるウロボロスをどう狩るかについてワイワイキャッキャッと話し合っていた。
「貴方達、バカですか?」
ガールズトークに花を咲かせ、キャピキャピとさまよう二人の前に現れたのが、黒髪ロングストレートをオシャレに束ね、ペチャパイながら、目下化粧特訓中の元悪魔軍副将にして参謀のサマ・エルである。
〜ザラム西賢エシェット〜
おかしい。
ソドムとゴモラからの定期連絡がない。
もちろん、どちらか一方がヤられると言うのはあり得るだろう。
だが、同じタイミングであの二人が違う場所でヤられる? ありえん。
ソドムとゴモラ・・・
ザラム諜報部において、私の目であり手足であるといえる存在。
隠密の技術を芸術的にまで高めた二人なのだ。
どちらかと言えば、判断力に優れたソドム、戦闘力に長けたゴモラ・・・
彼らが別々のミッションにおいて、ほぼ同時に音信不通になるだと・・・?
私の想定も及びつかない存在がいるのか?
あのヴァンピール・カルミラが?
砂漠の救世主ローランが?
それとも隻腕の聖者ヨシュアか?
これはもう、楽しめる域を超えたようだ。
親父様にご助力を頂かねばなるまいな。




