85話 イラつくモアブと勘のいいロト、できる女
〜モアブ〜
癪ではあるが、エシェットの手の者がローランの尻尾を掴んだということなので、それを買うことにした。
我々四賢者は、賢王ティムルに忠誠を誓ってはいるが、お互いに牽制し合っている。
そもそも賢王ティムルの輔弼は、我がハイレッディン家が代々担ってきた。
四賢者というのは、賢王ティムルの代より作られた新しいシステムである。
しかし賢王の判断で、国内の経済システムの再構築の名目で、南賢のアモンが取り立てられた。あの男は、裕福な商家の成り上がりに過ぎない。貴族としてのプライドも武家としての武威もない。金だけのくだらん男だ。
問題は、西賢のエシェットと東賢のロトだ。
エシェットは、そもそも影の世界の人間である。
やつは影の男ではあるが、ザラム王国における古い伝統のある名家である。素性もしっかりしている。
やつが影で暗躍していることは、知る人ぞ知る公然の秘密である。
情報網の広さであれば、あの男に敵うものはいないだろう。
このローランの情報は、そのエシェットの手の者が持ち込んだものだ。おそらく間違いないだろう。
ただし、この情報にどんな罠が仕掛けられているか分からん。
やつは、私の失脚を狙っている節がある。
忌々しいが、これは東賢のロトに相談した方が良いかもしれん。
あの男は得体の知れない素性もわからんが、少なくともエシェットの様な悪意はなさそうだ。
ロトは、突然賢王ティムルが連れてきた男である。その血筋も、人種すらもよくわかっていない。
当然、私を筆頭に、この様な男を王国の最高意思決定機関のメンバーに迎えるなど大反対した。
しかし、賢王の決断により取り立てられた。
あの男には、あの賢王ですら遠慮をしている節がある。
実際に、人間離れした武力と動物的な勘があるのだ。
その能力によってその次々に挙げられる功績は認めざるを得ない。
寡黙に過ぎるが、判断と行動において失敗がない。
恐ろしいことだが、味方であることを喜ぶほかないだろう。
「ロトはどこだ? 今後のことで合議をするぞ」
〜ヨシュア〜
「ご主人様。」
お、サマ・エルが、今日も今日とて、ちょっぴりエロい格好で、ない胸元をペラペラさせながら声をかけてきた。
ふむ・・・サマ・エルは太ももがいい感じか・・・
「ご主人様?」
お?
やばい。
「サマ・エル、どうしたのだ?」
できるだけ威厳のありそうな声で、今気がついたふりをした。
「ご主人様。どうやら餌に食い付いた様ですわ。このまま相手の出方を探りますが、ザラムは排除しますか?」
?
はあ〜
話にまったくついていけない。
かといって、できる(エロ)女感を出して、報告している今のサマ・エルに、なんのこと? なんて言えない。
餌?
ザラム?
・・・排除? やめて?
こいつらゆーても悪魔的なもんだからね。
とにかく物騒な方に考えておいて間違いないだろう。
つまりだ、物騒な話をしてるな?
「・・・戦力は足りるのか?」
ノリよ、ノリ。
ただし、俺はダメよ? 要介助者だからね?
「・・・確かに・・・。勇者ロトの存在は計り知れないところがありますね・・・やはり、アス・デウスとアバ・トンですか?」
ふ
知らんけど?
「了解しました! た、直ちにあのふたりを捜索します。シモンを借ります」
え?
おいらの介護は?
まあいいか。パンだのチーズだの、まめなシモンは色々作って溜め込んでるからなー。
てかさ、俺の知らん間になんか色々始まっちゃってる?
いいだろう。
留守番は任せろ。
あともう少しで窒素は見えそうなところまできてるから。




