77話 悪い上司の悪い命令と暴挙
〜ヨシュア〜
俺たちは、力を合わせて、カルアーンの情報を集めた。
無論、俺っちには余力があったので、色々と思索に耽った。
そういえば、ナザロに残してきた捕虜とかはどうなったのかな?
俺は、カルミラにどさっと転がされた間者を思い出して、思い出した。
暇だなって? ああ、暇だよ。
それはそれで辛いのよ。
ナザロの暗部については、丸ごとカルミラに丸投げしてたので、まったく気にしていなかった。
けど、今その責任者が横でヤギ乳をゴクゴク飲んでる。
カルミラの主たる任務は、俺の警護らしいが・・・ナザロの方は、大丈夫なのかな?
「カルミラよ。先の戦で保護した捕虜たちのことだが・・・」
「ヨシュア様。流石、ご慧眼です。確かにご心配でしょうが、私の僕スピエルドが上手く管理してますわ」
・・・俺のどこらへんが流石で、ご慧眼なのか(節穴ではないと思いたいところだが)は、さておき。
「スピエルド? ・・・そうか(てか誰?)。 ・・・確か、勇者ダヴィドがいたな・・・」
俺が聞きたいのは、あのイケメンでバカのその後だ。
「うふふ。 ヨシュア様。 あのデカブツは、一応、アンデッドにして忠実な僕にするつもりですわ。 あら? でも、もしかしたら剥製にした方が良かったですか・・・・?」
デカブツ? アンデッド? 剥製?
え? 何が? 何を?
死んだの? いや・・殺すの??
・・・・・(こ、怖い)
「よ、ヨシュア様??」
「あ、う、え、えと・・な 勇者ダヴィドは死んでしまったのか?」
大事なことはきちんと聞こう。
「いえ。まだ、生きていると思いますわ。なかなかしぶとい生命力でしたもの。」
「そ、そうか・・・。」
そうだよなー。
そういえば、とんでもない奴だもんなー。
生かしてたら、また虐殺とか平気でやるだろうしなー・・・。
・・・でもなー・・・・・アンデッドにするってのはなー・・・どうなの? 人として・・・
「よ、ヨシュア様。 も、もしかしてアンデッドはダメでした?」
真剣な眼差しで、縋るように俺を見つめるカルミラ・・・
い、いやぁ〜ダメとかじゃないけどさぁ〜
「・・・・」
俺は、情けねー上司だぜ。
はっきりと、「命令」は下さなきゃダメだね。
部下のした仕事に対して、それじゃないんだよなぁ〜ってのが一番いけないね。
そうそう、よくさ 「こうする必要があった?」とか「これじゃなくてもよかった」とかいうやついるけど、ハッキリ言って上司にしたくないNo.1だね。
ダメならダメではっきり言う!
そして、ダメな理由をきっちり言う!!
できれば、こうしろときっぱり言う!!!
望むべくは、ビジョンを共有するんだ!!!!
てか、正解がわかんないのはみんな同じなわけ。
せめて、上司なら上司らしく責任(正解)を示せよ、と。
とは、思ったものの・・・
正直ダヴィドについては、どうしたらいいのか・・・
「カルミラよ。ご苦労だった。だが、ダヴィドについては、泳がせてみよう」
俺っち、よくわからんことばかりだが、あいつにくっついてたマステマはキーパーソンな気がすんだな。
だから、ここは一旦、勇者をリリースして、マステマがかかるのを待つ方がいいと思うの。
「・・・ヨシュア様、流石です。では、スピエルドをつけましょう。ナザロの警備はやや薄くなりますが、あれが適任ですわ」
前向きな勘違い、サンキュー。
もちろん、お前の思うようにしてくれぃ。
俺っちにはそこらへんは全然わかんねーぜ?
「カルミラ。頼りにしているぞ」
〜サマ・エル〜
ご主人様。
あのカルミラを見事に使いこなしている・・・。
本当に恐ろしい人間だ。
私は、ザラム教団の間者の夢に入り込み、情報を洗いざらい聞き出した。
その報告に向かう途中、2人のやり取りを聞いた。
カルミラの力は、本当に底が見えない。
悪魔には肉体を管理する力がないため、彼女のやり方は見るにつけ本当に恐ろしいと思わされる。
人間を易々とアンデッドにし、使役するなど、反則技の最たるものだ。
悪魔には言葉しかないというのに。
ヴァンピールの宿命である肉体から発せられる呪いのような乾きは、その反則技の代償である。
この代償の大きさ故に、自滅する一族と揶揄され、歴史上に現れてはすぐに消えてきたのだ。
ところがどうだ? 今代のヴァンピールは、その乾きは聖乳により潤され、忌まわしき存在の穢れは、ご主人様の無限のようなエートスにより完全に担保されている。
カルミラがその気になれば、この世界は簡単に支配されてしまうだろう。
しかし、彼女をその気にさせさない程の何かが、ご主人様にはあると言うことだ・・・
そんな私だって、ご主人様のお力でデメテルとバ・アル閣下の呪いが解かれた。
あのデメテルの呪い・・・
デメテルは、ユピテル・クロノス・ウラノスに次ぐ、最古の女神である。
その慈悲深さ故に勘違いをされがちだが、そのお力自体は強大だ。
おいそれと、たかが人間がその呪いを解くことなど、本来は不可能である。
そもそも呪いとは、その存在意義を強制的に規定する力である。
肉体を持たぬ者にとって、存在意義とは、全てである。
この呪いを解呪するということは、それまでの存在を完全に消し、新たな存在意義を与えるということに他ならない。
これは、悪魔と呼ばれるほどの霊体を、次々に産み出せるということと同義だ。
ご主人様は、ご自分にとって必要だと言う理由だけで、悪魔やヴァンピールの存在意義を創造し、管理してしまう。
はあ・・・
この一見凡庸にすら見える男・・・
やっていることは、いちいち奇跡のようなウラノスに対する反逆と言えるだろう。
これほどまでの力を駆使しつつ、なんでこんな瑣末な情報を一生懸命集めているのだろうか?
ただただ、理解に苦しむ・・・・




