74話 傅く、ギラギラ、ガタガタ。三者三様
〜ヨシュア〜
やっちまた か?
サマ・エルが怯えている。
ジェントルメンである俺っちに向けられるものとしては、あまりにも目つきがおかしい。
し、失礼な。
そんな変質者を見るような目で見るのはやめなさい。
・・・た、確かに馬車では、おっpを探したかもしれん。
で、でもさ、ちゃんと正当な理由があるよ?
通報するの? ヤメて?
「・・・ヨシュア様。 アザ・ゼル・・・シモン=アザ・ゼルにございます・・・」
あ。シモンが起きた。
少しぼんやりしているみたいだが、無事でよかった。
正直言って、あんまりにもいっぱい出ちゃったから、心配していたのだ。火がね。
「ヨシュア様。 完全にアザ・ゼルが残っております・・・」
お、? おう・・・?
「このような生者への完全なる受肉・・・このシモン=アザ・ゼル、第二の人生をいただきました」
ど、どゆこと??
「これほどまでの秘儀であったとは・・・ シモンの肉体とアザ・ゼルの力・・・全てを駆使できる状況にございます・・・」
涙を落とさんばかりに感激してくれているようだ・・・
え、えと・・・シモンが復活した、ということでいいの、かな?
俺っちは、何も間違えてないよ、ね?
・・・君・・・ともあれシモンなんだよ ね?
まあ、いいか。
ひょっとするとシモンは、もはや(前の)シモンではないのかもしれない。
多分というか、かなり、いや確信を持って言える。違うっぽい。何しろ自分で言っているからな。
で、でもさ、俺っちはできることは全力でやったよ?
悪いのは全部デメテルでしょ?
うん。そうだ。
俺は悪くない。
シモンは、デメテルに半殺しになったが、進化した形で復活したのだ! 俺が、復活させたのだぁ
本人がシモン(=アザ・ゼル)って言ってんだから、それでいいだろ!?
こ、ここは話を変えよう。
「サマ・エル。 ソナタ、大丈夫か?」
あの怯えきった目で見られるのは、心外だ。
誤解を解こう。
「あ!? ヒッ!! だ、だ、だい、だいいぃ ひーん」
・・・・・・泣かせてしまった。
「・・・シモンよ。 サマ・エルを診れるか?」
ここは、他人に任せよう。
俺には無理だ。
諦めも時には肝心だ。
「御意。」
ふ。
流石、シモンだぜ。
無駄がない。
相変わらずあのシモンだぜ。
何の変化も、ない!!
よし!
次は、カルミラを心配しよう。
俺は、うつ伏せにぐっすりと眠るカルミラをそっと仰向けに起こした。
ひ、ひー
やっぱり焦げてるぅ
あしゅら男爵ばりに半分焦げてるぅぅ
「カ、カルミラ?」
「! は! よ、ヨシュア様!!」
カルミラは、さっと体を直し、土下座的な形をとった。
ど、どうした? カルミラ?
「このカルミラ・・・ヨシュア様の再びの御技。いや、奇跡に触れまして、改めて命をいただきました。」
「改めて命を、とは?」
分からないことは、聞こう!
「カルミラの中におりましたベリ・エルが、完全に融合いたしました。 ああ! この快感!! この満たされた肉体の躍動・・・ やっと存分に力が出せますわ」
え?
・・・あれで、まだ不完全だったの?
てか、ベリ・エル 溶けちゃったの?
ということは・・・し、シモンもなのか・・・・?
あちゃー、やっちまったか・・・・
一切、知らんぷりを決め込もう。
「カルミラ、火傷があるようだが・・・」
「問題ございませんわ。 ベリ・エルの残滓が足掻いた証。お恥ずかしい限りです。 うふふ」
ふむ。何がうふふなのかさっぱりわからん。
しかし問題はないというのだ、それでいいだろう。
よし!!
まったく問題なし!!
成功成功。
サマ・エルについては、ちゃんと話せば大丈夫。だろう。
「シモン。 サマ・エルの様子はどうだ?」
「は ヨシュア様。 恐るべきご手腕でございます。 あのデメテルの契約が解消されております。 そればかりか、バ・アル閣下の呪いが消えております。」
ほう ・・・・ ん? どうゆうこと?
サマ・エルが、驚愕の表情を浮かべている。
「シモン。・・・ということは、サマ・エルは・・・」
「!よ、ヨシュア様!! ど、どうか!! このサマ・エルを使い魔として!! 使い魔としてご使役ください。」
うわっ!!
急に大きな声出して、どうした?
俺は、サマ・エルを見た。
「ひっ!! よ、ヨシュア様〜〜 ど、どうかどうかどうかどうか」
使い魔?
いや、別にいいけど?
「サマ・エル。 お前は私の使い魔になりたいのだな?」
俺は、決して強要したりはしないよ?
「は、は、は、はひ〜〜!! どうかどうかお願いしますお願いしますお願いします」
そんなに使い魔になりたいなら、別にいいけど?
「・・・無理強いはしないが・・・」
「とととととと、とんでもございません!!」
「ヨシュア様」
ずいっと、シモンが割って入った。
珍しいことである。
「サマ・エルは、今、すべての楔が切れた状態。 ヨシュア様のご慈悲がなければ、風前の灯でございます」
あ、そうゆうことか。
俺が、やっぱりなんかやらかしちゃって、ヤベー状態なのね。
わりわり。
「そうか、サマ・エルよ、すまなかった。 私にできることは少ないが、従者として供にいてくれるか?」
「あひ!? とも?? ももも、もちろんでございます。 ありがたき幸せです。 精一杯努めます!」
よし。
誤解が解けたようだ。
いや、違和感はあるよ?
それは分かっている。
でもだ。
ここは少し強引かもしれないが、万事OKということでまとめてしまおう!! 終わらん!!
俺は、周りを見回した。
神妙な顔つきで傅くシモン。
キラキラ、いやギラギラした目つきで、俺をガン見するカルミラ。
ちびらんばかりにガタガタ震えているサマ・エル。
三者三様。それでいい。
セイ兄さんとの約束は守られなければならない。
俺に残された唯一の手がかりだからだ。
みんなで、ガルバ=エルを探そう? そして、手篭めよう?
期待してるぜ!




