58話 消えたメフォストと風邪
〜ヨシュア〜
「ヨシュア様。この聖乳。少し多めに頂きたいです。」
そうだろうね。
死に物狂いで用意させますとも。
足りねーなんてことになったら、人類の危機だ。
「カルミラ。そなただけが飲むのではないのか?誰に与えるのだ?」
「はい。あの悪しきマステマに誑かされし不憫な子らの目を覚させたいのです。」
誑かされし不憫な子?
えと、てことは、あの捕虜さん達?
子なの!!??
捕縛騒動の間に、一体何があったのだ?
親子の契り…?
ともかく、確かにあれの取り扱いは大変重要だし、命取りだ。
といっても、もちろん俺にはどうにもできん。
いや、そもそも人間にどうこうできる代物じゃねー。
任せるか? いや、任せたい! 任せよう!!
「ジャン様。カルミラに考えがあるようです。どうか、ご助力を願いたい。」
「ヨシュア様。もちろんでございます!!! 我々、ジュナイブの義兵、一丸となって尽力致します!!」
テンションが高い。
カルミラの呑みっぷりに飲まれたか。
確かにあんなの見せられたら、嫌も応もないわなw
「カルミラ。頼むぞ」
俺っちの声掛けに反応し、カルミラが跪いて礼をとった。
遠目には、主人に対する絶対的な服従を示す家臣に見えるだろう。
その構図は、美しくもさえあるだろう・・・しかし、
こ、こわい。
カルミラの目が怖い。ギラギラしてる。
まだ腹が減っているのか、舌がチョロチョロしている。ひー
跪いて、上目遣いで、美しい姿勢をとるのに、ここまで怖い女性がいるだろうか?
しかも超絶美人なのに。
ふ、俺も随分ドーテーを拗らせたもんだぜ。 女が怖い。
できれば、早く(どっか)いって欲しいもんだ。
「そしたら兄さん。オイらは、亡骸を葬りますぜ。ナザロの人員を借りますが? あと、街の補修も指示しなくちゃな。」
俺は、カイロンさまさまに全てをお願いした。
ヨハン社長とマルコ兄やんも、ここぞとばかりに張り切ってくれた。
カイロンくーん。
君は、本当に偉い。てか、安心するわ。
頼もしくて、芯がぶれない男。
いてくれて本当良かったよ。
ん?
あれ?
いつもなら、このタイミングで、つまらんことをツイートする腐れ悪魔が静かだな?
どうした?
〜メフォスト〜
や、やべーぜ、旦那ぁ。
ヴァンピールの姐さん、キマってるぜ、ガチで。
俺っち達の天敵が、あそこまで飢えに飢えてるなんてさ、無理だわ。
あのマステマが自爆を選んでも逃げ出した相手。。。
俺っちの存在がバレたら・・・
旦那。俺っち、申し訳ないが暫しドロンさせてもらいやすぜ。
生きてたら、また会おうぜ。
貧血には鉄分が効くらしいぜw
じゃ
カルミラの登場とほぼ同時に、その野生的嗅覚により姿を眩ましたメフォスト。
強いものにはどこまでも弱く、弱っているものにはそこそこ強いメフォストの姿勢が貫かれていた。
しかし、我々は忘れてはならない。こんな弱虫も、ヨシュアを守るため、(ある程度)マステマに立ち向かったメフォストの勇姿を。
〜カルミラ〜
あああああああ〜〜〜ヨシュア様。
神々しい、神々しいまでに神々しいわ。
いや、神だなんて下劣な表現は、ヨシュア様にはそぐわないわ。
闇に飲まれた穢れた存在である私にとっての唯一の光。
そう光々しいの。
できれば、その存在ごとパクリと体の中に取り込みたいくらいに・・・はあハアハア、だめ、だめよ。まだだめ
私の中にあるベリ・エルとしての憎悪、カルミラとしての飢え、そして人間であった頃の不安が坩堝となって、マグマのように溢れ出してくる。
ヨシュア様はその全てを余すことなく受け止めてくれる・・・・。
魂が、エートスが、肉体が一体となって馴染むのがわかる。
永遠ような時間をかけて煮詰めてきたベリ・エルのエートスが力へと昇華していく。
幾たび転生したかわからないカルミラの魂が叫ぶ、初めての満足、快感だと。
その力と快感が、人間の肉体に快楽として定着していく。
そしてこの聖乳。
ヘモグロビンこそ足りないけど、味は最高。
いやむしろ、変な癖がない分、いくらでも飲めるわ。罪悪感なく。
行商人のジャンのいうところでは、これは山羊の乳だという。
そんなありふれたものが、こんなにも効くとは・・
エサを工夫したとか言ってはいたが、ここまで素晴らしいのね。ヨシュア様のご加護に違いないわ。
あのクソ悪魔どもに魂もエートスも弄ばれた可哀想な子達。
これがあれば、救ってあげられるわ。
精神に肉体が乗っ取られるなんて悲劇はもう繰り返さない。
ヨシュア様と新しい時代を切り拓くの。あの子達を引き連れて。
素敵、素敵だわ!
あああああああ〜〜〜食べちゃいたい。
ヨシュア様ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ。
〜ヨシュア〜
ぞくり。
お、風邪ひいたかな?




