57話 捕虜とカルミラとヤギ乳
〜ヨシュア〜
どうやら戦争は終わったようだ。
ふーやれやれだぜ。
何と言っても功労者は、カイロン、ジャン、カルミラの3人だ。
ただし、残念なことに戦死者も少なくない。
50名以上のナザロの義兵団が犠牲になった。そして、ジャン君に付き従ってくれたジュナイブからの護衛隊100余名、そしてどこから現れたのか不明のままだがカルミラ軍100名はほぼ全滅、その他、一般人も犠牲になった。
あ、ベリ・エルもある意味では犠牲者だ。悪魔1名、と。
敵兵については、未だによく分からんが、旧教軍200はほぼ全滅したようだ。
クルファ軍もほぼ全滅と見ていい。
なぜほぼなのか、なぜなら、ここに捕虜がいるからである・・・。
筆頭のダヴィド。
本来、全然カンケーのないクルファ兵10名。
こいつら力が強過ぎて、鎖で雁字搦めにするまでにどれだけの兵隊(カルミラ軍)が犠牲になったことか。
結局ほとんど全滅してしまった。一体、とんでもなく強いのが生き残ったらしいが・・・・。
しかも、どう見ても正気じゃ無い。
敵味方含めてな。
この戦の目的も勝利条件もさっぱりわからん。
無理やり理解しようとすれば、殺戮だ。
見せしめの虐殺を企み、仕掛けた側がほぼ全滅・・・。
もちろん、我々側は、どちらかといえば勝者だが、“旧教”の狂気はまざまざと見せつけられた。
その狂気の象徴が、この勇者ダヴィドだ。
一般市民が怖がるから、教会の地下牢に閉じ込めているのだ。
この地下牢は、旧教のいうところである悪魔憑きになった教徒を治療するための場所らしい。
かなり頑丈な作りだが、この馬鹿力の捕虜にとっては十分に意味をなさない。
絞め殺す勢いで締め上げないと、縄でも鎖でもオリでもぶっ壊してしまうのだ。
いや〜クワバラクワバラ。
「なぁ、旦那ぁ。どうすんだ? こいつら爆弾みたいなもんだぜ? どうやらお前に敵意剥き出しみたいだからな、逃げ出したりしたら、お前、一番最初にやられちまうぜ?」
あ、そうだ。
流石に捕虜とは言え、何も食べ物を与えないのは非人道的だ。
このバカを食わせたらいいんじゃないかな?
でも、腹壊すかな?
「メフォストよ。そなたが見張りを買って出てるのか?」
「ちょ、ちょ、ば、バカ言うなよ。無理無理無理。」
知ってるよ。
お前にできるわけねー。
役立たずは喋んじゃねー。
不安を煽るしかできねーくせに。
「兄さん! カルミラが会いたがってるぜ? どうする?」
カイロンが声をかけてきた。
・・・・カルミラか。
正直、苦手だ。
いや、美人だよ?
ちっぱいである事も減点じゃねー。
でもな。なんかとても怖いんだよね。
ほら、ベリ・エルが文化系メンヘラだとすると、体育会系?進化系?メンヘラ?
気絶するほど、血、吸われたしさ。
バーン!!
教会の大戸が勢いよく開いた。
ふ、手遅れだったな。
「あああああああ〜〜〜〜〜 ヨシュア様ヨシュア様ヨシュア様ヨシュア様ヨシュア様ヨシュア様ヨシュア様ぁ〜〜〜ハアハアハアハアハアハア」
こ、こわい。
しゃなりしゃなり歩いているようには見えるが、速い。
それがまた、こわい。
息遣いもこわい。
「あああああああ〜〜〜〜このカルミラ、一生の不覚ですぅ。 あああ、あのクソ悪魔マステマを逃しちゃいましたあああああああ〜〜〜〜ハアハアハアハアハアハアハアハア」
ひー
うん、知ってる。
カイロンから聞いた。
てか、ヨダレが垂れてますよ。
顔近いし・・・
ごほん。
落ち着け。
ここは毅然とした態度を崩してはならん。
野生動物に対しては、弱みを見せてはいかんのだ、パクッといかれるからね。
まず、状況を整理すると、カルミラがマステマを撃破(熾火による逃亡)した後、残されたダヴィドを担いでナザロに帰還した。
ナザロ城門における攻防戦は、かなりカルミラ軍側が削られており、危機的状況であった。
もちろん、カイロン達に成す術は無い。
しかし、カルミラの参戦により、クルファ兵10体は全て捕らえられた。
この時、カルミラ曰く、「随分硬いわ」とのことだった。
戦況報告のため、総司令官である俺に部下達が集結したのだが、カルミラは「この格好では無理」と言うことで、洗身を優先させた。おそらくだが、理性を取り戻す過程でもあったのだろう。噂では、ヤベー状態だったようだ。
この時、城内の囚人小屋に閉じ込めていた捕虜が暴れ出したため、残り少ないカルミラ軍とカルミラ自身が半裸状態で狩り出され、また少なく無い犠牲者が出た。この騒動で、カルミラ軍は、最古参の従者(?)一騎のみが生き残ったようだ。どんだけ強いのだ?クルファ兵は。
そう考えると、初日のカイロン・ジャンによる裏手城門防衛戦は、ものすごい快挙であったとも言える。
ともかく、しょうがないから、街で一番堅牢な檻はと言うことで、教会の地下にこの11名はカルミラの力技で連行されることとなった。
そして、今だ。
カイロン曰く、カルミラは腹が減っているとどうなっちゃうか分からん、とのことだった。
そして、今、とても減っているとのことだ。
よくわかる。
まさに実感している。
難しい顔をして、誤魔化しているだけだ。
確かにさ、俺はなーんの役にも立ってないよ?
でもさ、戦後に喰われて死ぬっつーのはやだ。
もちろん、捕まえた捕虜が暴れて亡くなった同胞もいるわけだから、そうゆう事もあるだろう。
むしろ、こんな美人にチューチューされてってんならご褒美かもしれん。
でも死にたくない。
「ヨシュア様ヨシュア様ヨシュア様ヨシュア様ヨシュア様。ご、ご、ご褒美をいただきたいのです。」
きたな。
流石にもう限界か。
腹を括るしかない。
我に秘策あり。
「カルミラよ。そなたの献身がなければ、このナザロは敵に蹂躙されていたであろう。」
「はい! ヨシュア様。」
「ジャン様。例のものをここへ」
「はっ。ヨシュア様、たっぷりとあります!」
ふふふ。
例のものってわかる?
そう、あれ。
ヤギ乳だ。
だってさ、こいつら血が欲しいんだろ?
だったら乳でいいじゃん。
成分はほぼ一緒だよ?
しかも、どうやらヤギ乳は栄養が豊富だ。
まあ、どうしてもヘモグロビンを採らせろーってことになったら、可哀想だけど成敗するしかないよね(まあ、人間にはできそうもないが。そうなりゃ共倒れだね)。
つまりさ、最終手段。
納得してくれー
「え?ヨシュア様、これは?」
「カルミラ。飲んでみなさい。それこそが、そなたと我々の共存の道だ。」
Noはない。
これで我慢してもらうぞ。
「ゴクリゴクリゴクリゴクリゴクリゴクリゴクリゴクリゴクリゴクリ」
ひー、すげー飲みっぷり。
あんなに飲まれたら、俺即死だわ(ゴクリ)。
「っぷっはー!!」
「・・・・・・・」
「ヨシュア様!! これ、スゴイ美味しい!!」
ほっ。
人類は生きながらえたか。
ジャン君、これからはヤギ乳の増産に勤しむのだ。死にたくなければな。
「ヨシュア様。これを、私の可愛い子にも分けてあげてよろしいですか?」
「・・・・もちろんだ。そなた達の力が我々を守ったのだ。我々は同胞である。」
ジャン君。どうやら残業がスゴイことになりそうだね。
てか?子?
誰?
あと、捕虜、どうしよう・・・。




