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52話 貧血にヤギ乳、そしてできること

〜ヨシュア〜

頭が重い・・・


体の末端が冷たい。


喉が乾く。


最悪の体調だ。



「おっ。旦那ぁ、目が覚めたかい?」



・・・・俺は、どうやらクソみたいな地獄に落ちたらしい。

クソ悪魔の声が聞こえる。



「ヨシュア様。貧血の症状が出ているようです。滋養を取っていただきたい」


ジャン君の声も聞こえる。

ふっ、地獄ではなかったか、やれやれだぜ



確かに腹が空いている。



ジャン君が、白い液体を杯に注いで渡してくれた。


え?なにこれ?

牛乳、なのかな?


ゴクゴクと飲んだ。

嫌いじゃない。


ん? でも・・・・あれなーんか違うなぁ、香り?コク?



「それは山羊の乳でございます。滋養豊富です」



へー、山羊乳かぁ。

まあ まずくはない。


草?の香りがふんわりとするが、さっぱりしていて、それでいて舌に残る香り・・・



!?



おおおお!!


久しぶりにキター!!


身体中を駆け巡る、細胞の歓喜。

冷えていた末端が、火のように熱くなる。

力が漲る。顔に温かい血液が循環するのがわかる。


なんだ、ジャンくーん

素晴らしい飲み物じゃないか!



これ、ヤギ乳?

日本にいた時は飲んだことないなぁ。


あ、チーズとか?

ブルーチーズ? あれまずいよなぁ。ん?でも、ちゃんと食べた記憶もないか・・・



「お。うまいのか?旦那、よかったな」


うるせーなー。

不味くなったわ。



「おう兄さん。目が覚めたかい?まだ、ちっと早ぇーが、まだ今日も敵襲はあるだろうから、オイは準備に出かける。兄さんは、ゆっくり休んでくだせい」



カイロンは相変わらず働き者で、優しいね。

メフォスト(全くの役立たず)とは雲泥の差があるね。



ジャン君といい、カイロンといい、俺っちはいい仲間を持ったなぁ。



「ジャン様、カイロン殿。この度は、ありがとうございます。また、助けていただきました。どうか、ご武運を」



ま、メフォストについては・・・ね。


場合によっては、これ(メフォスト)を焚付けにしてでも、君たちは助けたいと思う。

ほんとありがとね。



ジャン君とカイロンは、ぐっと頷き、教会を後にした。


教会には、ヨハン司教やマルコ兄やんを始め、“新教”に目覚めた教導者のみなさんとそのお付きの方々、そして、城壁に近いところに住む人々(女子供)が身を寄せている。


俺はどうやら大聖堂のど真ん中で失神していたらしい。

恥ずかしい。。

しっことか漏らしてなかったのが幸いだった・・


ジャン君とカイロンを見送った後、大聖堂に身を寄せていた全ての人が、俺を注目している。


ん?

何だろ?

やっぱりちょっとは出てたか


俺は、仕方なくメフォスト(ばか)を見た。

溺れる者はばかにも縋る、というやつだ(笑)。



「旦那。みんな不安なんだぜ。昨日の勇者軍、みたろ? ありゃ、マステマの仕業だ。あんなのが街中で暴れてみろ?大変なことになるぜ」



なるほどね。

クソみたいなバカ悪魔が街の中ででかい顔してても、見えないから問題ないが、あれは不安だと。

俺からしたら、お前の方がかなーり不安だがな。



「みなさん。どうか信じてください。カイロン殿の武威を、ジャン様の情熱を・・・そして、女傑カルミラの献身を!!」


皆がざわめいている。


あれ?

俺、なんか場違いなこと言ったかな?



「だ、旦那。 か、カルミラってのは本当に大丈夫なんだよな? 昨日、教会軍を追っ払ってから姿が見えねーんだが・・・・ あんだけの戦場なのに、()()()()()()()()()だとよ。」



被害者(ゼロ)

いいことじゃねーか。


・・・いや、もちろん、そんなはずはない(ゴクリ)。

俺の目の前でも、数十人が倒れた。そのうちの半分以上は、多分即死だ。


・・・食べちゃったの・・・?

いや、・・・食べちゃダメでしょ?


みんなは、ひょっとすると(教会軍)よりも、カルミラ(味方?)を恐れているとか?


おいぃ、メフォストぉ〜、そこんとこちゃんと言ってくれよー。



「あ、あの、ヨシュア様・・・」


お、ヨハン司教様が重い口を開かれたな。


「私どもは、間違いなくウル・メシア、ヨシュア様を心より信じております。 しかし、旧教軍の禍々しさ、そしてヨシュア様が()()()()ヴァンピール・カルミラの人間離れした力に人々は恐れ慄いております。」



ふむ。そりゃそうだろう。

俺もだぜ。



「我々にできることは一体・・・」


できることねぇ。

強大な暴力を前に、力無い人々はただ立ち尽くすのみ、か。


・・・そうだな・・・


「ヨハン様、そして皆様。人の戦い方は、ひとつでは決してありません。私もそうですが、多くの民草は剣を取って戦う力はありません。だからと言って、無力なのか? いいえ、そうではありませんね。()()()()()()()を考えないでください。今あなた方にできることを考えましょう、そしてそれを確実に実行することが人間として生きること、運命を切り拓くこと(闘い)なのです。」



「お、おお・・・」



「ヨ、ヨシュア様。よろしいでしょうか?」


お、マルコの兄やん。



「我々にできることは、祈りなのではないでしょうか?」


ふーむ。難しいことはわかんねーが、()()()、バカみたいに祈られたって、腹の足しにもならねー。

水汲みでも、粉挽きでも、掃除でも何でも、とりあえず手を動かそーぜ。



「祈りとはなんでしょうか? 決して否定はしません。 しかし、その両手を合わせることで、為せることができなくなるというのなら、それは主を言い訳にした逃避。 そして今は、逃避するときではない、そうですね?」



「うっ」



ま、ともかく、なんか仕事見つけて、自分から動こう。


「カイロン殿やジャン様は、すでに為すことを見つけておられます。 そしてそのお姿は尊い・・・」


祈りとかゆう、自己陶酔よりはよっぽどな。



「わ、私は傷ついた人々の手当てをします。」


マルコ兄やん、それよそれ。

俺っちを介抱してくれたの、兄やんかい?

頼もしいぜ



「で、では、私は復興計画とその予算繰りをしましょう・・ちと気が早いですかな?」


ヨハンの社長は、さすがだね。

そっちの方が向いてんじゃない?



今まで、どんよりと身を寄せ合っていた人々が自分にできることを考え始めた。



ふむ、みんなすげーな。

ところで俺、なんかできることあったっけ?

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