51話 鬼と宴
〜ヴァルマ導師〜
一体なんなのだ。
悪夢が覚めない。
私の引き連れて来た戦士たちが、鬼となって連れて行かれた。
正直言って、彼らを率いる自信はない。
とにかくそれを主導した女が、マステマ だ。
そしてそのあとだ。
今、山となった屍に餓狼のように食らいつく者たちがいる。
明らかに普通の人間ではない。
鬼となった戦士たちと同じ類だろう。
私の中の常識が音を立てて崩れていく気がする。
このような者たちが当たり前にいる世界なのか?ここは??
そしてその者たちの中に、明らかに他のものとは違う威圧感を持った女が一人。また女だ。
嬉々として金色の髪を振り乱し、死者から血を吸いださんとしている。
その全身を死者の血で赤く、黒く染め上げながら。
〜〜〜〜〜〜
200を超えるこれだけの屍を、私一人で葬ることはとても無理だった。
しかし、鎮魂の祈りくらいはできると、静かに瞑想をしていた。
そこに現れたのが、この軍団だ。
尋常ではないものであることを誇示するかのような、圧倒的な威圧感を気配を撒き散らし、その双眸を爛々と輝かせ、餓狼のような飢餓感を隠しもしない。
私は、その気配に恐れをなし、身を隠した。
そして私は、信じられない光景を目にしてしまった。
なんと死体に食らいついたのだ。
マステマ たちが鬼なら、こいつらは屍鬼だ。
なんとも忌まわしい光景が、目の前に繰り広げられている。
死者の血肉を喰らう人型のなにか。
私は、恐怖のあまり動くこともできない。
〜〜〜〜〜〜〜
・・・・私たちには所詮無理だったのかもしれない。
確かに山の暮らしは、厳しい。
我々は、その環境に適応しながら、身と心を鍛えてきた。
そこには、同時に生の尊厳というものがある。
生きることへの知恵や助け合い、そして他者への思いやりがなければ生業が成立しないのだ。
しかし、ここにはどうやら、それがない。
無駄に殺し、必要以上に貪る。
他者に対する敬意も敬愛もない。
とくに、死への畏怖というものが皆無だ。
それが強さというのであれば、我々の目指すものと違いすぎる。
私は、あの洞窟が恋しかった。
あの魔人ともう一度話したいという気持ちでいっぱいだった。
今日以降、我々は文明を拒否する。
この戦闘で得た最大の結論だ。
より深い山中に移住し、人や文明を寄せ付けない暮らしをするのだ。
今一度ヴェーダに立ち返ろう。
この世界は、地獄なのだ。
私は、この地を立ち去った。
あの者たちへの後悔と恐怖の心を抱きながら。
〜カルミラ〜
まずい、まずいわ。
このままでは、正気を保つことができない。
ちょっとはしゃぎ過ぎたみたいね。
私は、ヨシュア様へのご迷惑をかけないためにも、山に栄養を求めた。
熊でも鹿でも、なんでもいい
生きものが欲しい。
私たちは彷徨った。
多少の獲物は捕まえることはできたが、圧倒的に数が足りない。
このままでは、この子たちも暴走しちゃうわ。
もちろん私も。
そんな私たちに、怒号とも悲鳴とも言えない戦闘の音が聞こえた。
そして肉の焼ける匂いが、猛烈に私たちを誘う。
脳を突き抜けるこの刺激。
そこに、天のお導きのような光景があった。
血の塚だ。しかも新鮮な。
まだ、死んで間もない。
いや、ほとんど生きているようなものだ。
ハアハア、こ、これほどの量と新鮮さなら、臭くもならずに済むわね。ダイジョブダイジョブ
ことの真相を確かめるほどの余裕がないけれど、意味も分からないけれど・・・・!とにかくいただくわ!!!
私が飛びつくのをきっかけに、可愛い子たちもみんな欲望をむき出しに死体にかぶりついた。
そうよね、そうよ。
それでいいの。
あああああ〜〜〜〜、この味、この温度、この匂い、た、たまらないわたまらないわたまらないわぁぁあああ〜〜
早くしないと冷めちゃう
生きてる。
生きてるわ。
私は今、生きているのよ〜〜〜〜
私たちの宴は夜通し続いた。




