49話 使者アブラム・オルテガとうまく混ぜる
ナザロ攻防戦、初日の夜、カイロンは、懇々と眠る?ヨシュアの無事を確認し、大聖堂近くの一室で、ナザロ教団の使者アブラム・オルテガと対面していた。
「カイロン様。この度は、面談を快諾していただき、ありがとうございます」
アブラムと名乗る初老の男は慇懃に礼を述べた。
「おうよ。ザラム教団がオイらに何の用だい?」
「我らザラムが、“教会”に攻撃されて来たということはよくご存知だろうと思います。その教会が、この度はあなたたち“新教”を攻撃し始めた・・・」
「・・・ふん。敵の敵は味方ってやつか?」
「月並みですが・・・」
「・・・・味方をしてくれるっつーなら、大歓迎だが、なぜオイに話を持って来た?」
「味方となるか、そうとはならないのか。その見極めが必要なのです。」
「ほー、その見極めとやらはこれかい?」
「いえ。明日、我らの上司、ロト様がなされます。カイロン様は、ともに戦っていただけますか?」
「ロト?・・・・・あの東の勇者ロトか」
「ふ、左様でございます」
「ちっ。いつ間にか大役を押し付けられちまったな。まあいいだろう。で? そっちの使者からは、なんかないのかい?」
カイロンは、無言のままのもう一人の使者を見遣った。
「・・・・・」
「カイロン様、このオルテガは聞くことが専門です。」
喋らぬオルテガをアブラムがフォローした。
「・・・・・」
「けっ、変わった奴らだよまったく。ともかく、じゃあ明日の守城戦でおめーらの上司ロトと共同戦線を張りゃあいいんだな、おうよ」
「ありがとうございます。では」
「・・・・・」
使者二人は、足早に去っていった。
「やれやれ、また一人とんでもねーのが出て来やがった・・・」
残されたカイロンは、ぼんやりと呟いた。
「おもしれーぜ、まったく」
〜クフファ軍駐屯地にて〜
「ヴァルマ様・・・・ヴァルマ導師様」
瞑想の中にいたヴァルマは、自分を呼ぶ声に覚醒した。
「む。誰だ?」
そこには、妖艶なまでの美女が跪いており、右手の欠損が、彼女が戦士であることを示していた。
「ヴァルマ様、私はマステマと申します。“教会”勇者軍の参謀でございます。本日のご加勢、ありがとうございました。」
女性ではあるが、その隙のない立ち振る舞いと言の裏にある迫力に、ヴァルマは彼女が本物であることを確信した。
「押しかけの援軍であるが、役に立てたのならば僥倖・・・」
労いの挨拶に過ぎぬかと、世辞の口上を並べようとするヴァルマを、マステマ は遮った。
「ヴァルマ様。 このままでは勝てませぬ」
「なっ?」
驚くヴァルマを置いて、マステマは続けた。
「新教軍は、邪なものを下ろし、軍を強化しています。生身の人間ではあれらとの継戦は困難でしょう」
「あなたは一体何をいっているのだ? 私には・・・・」
「ふふふ。ヴァルマ様。クルファ軍のみなさまは大変良い器をお持ちです。うちのとうまく混ぜれば、強力な兵ができますわ」
「うまく混ぜる?」
「ヴァルマ様。蠱毒というものをご存知かしら?」




