48話 普通の戦争と血しぶき
〜ナザロ裏手、クルファ軍の攻勢、カイロン〜
「投石だぁ〜〜!! 注意しろぉ〜〜」
「城門が叩かれるぞー! こっちも抑えろー!!」
ふ〜
やっと普通の戦争だぜ。
なんだあれ?
オイも随分と色々見てきたが、統率された魔物軍に悪魔の参謀、そして神の勇者だあ??
めちゃくちゃだぜ。
この千年、オイらの世界は結構牧歌的な時代を過ごしてきたということかね?
ま、とりあえず、このクルファとかいうまともな戦士たちとの戦闘なら、力も発揮できるっつーもんだ。
「弓隊は、城壁へ上がれ! 迎撃するぞ!! 槍隊は城門前に待機! 城門守備隊に加勢しろ!!」
普通は素手で城壁を登るバカはいない。
弓矢が刺されば死ぬし、少なくとも怯むんだ。
15mもある城壁から飛び降りる奴なんかただの馬鹿野郎か自殺志願者だな、冥府を永遠にさまようことになるぜ。
しかしまったく、なんだあれ?
「カイロン様。 使者がきてございます。 カイロン様へ直々にお伝えしたいと・・・・ザラムを名乗っておりますが・・・いかがいたしますか?」
ん?
ザラム教団が?なんだ??
てゆーか、この戦乱の中、街に潜り込んだのか?
ったくしょうがねーな。守備隊は大丈夫かぁ??
まあ、あのザラムだ。これくらいはヨユーってことか。
いいだろう、こっちの戦闘はまともだ。
そうそう戦局も動かんだろう。
話を聞いてやろう。
「おう。会おうじゃねーか。どこにいるんだ?」
「ありがとうございます。 私がその使者の一人、ソドムでございます」
けっ!
気障ったらしーことしやがるぜ
変装までしてやがんのか?
「ふん。そのソドムさんが、オイにどんな用事だ?」
「お気に障りましたのなら、お詫び申し上げます」
「てめーらの力を見せつけようってんなら、効果はあったんだろうな。用件をいいな」
「単刀直入に申し上げます。 今夜、我がザラム教団の使者がカイロン様を正式に訪問致します。 これをお受け入れください。 そのお礼に、クルファ軍を今日のところは撤退させます」
「なんだか、単純なのかややこしいのか分からんな。オメーさんは、正式な使者じゃねーんだな?」
「その通りです。 この面談も全てなかったことに・・・」
「ふん。まわりくどい仕事をするんだな、ザラムはよ。 まあいいぜ、どのみち使者のもてなしは常識だ。オメーさんの仕事は骨折り損だぜ?」
「ふふふ ありがとうございます。」
ソドムと名乗る男は、そういうと木の筒に火を付けた。
ぽ〜ん
上空にまで白い煙が立ち上がり、小さな雲のようになった。
「なんだぁありゃ?」
ん?あれ。 いねぇ。
けっ。ザラムの隠密か。厄介だぜ。
相当訓練されてやがる。
「カイロン様ぁ!! クルファ軍が撤退していきます! 追撃しますか!?」
まじかよ。
仕事が早すぎねーか?
「損傷した城門の修復を優先しろ! 兵士たちの状況も確認! 警戒を怠らず、順次休憩しろ」
「「「「はっ!!」」」」
で、表門の方はどうなのかね?
ありゃ、バケモン同士の戦いだ。
人間を巻き込んで欲しくねーな。
〜カルミラ〜
ああ〜〜ヨシュア様ヨシュア様ヨシュア様ヨシュア様ヨシュア様ヨシュア様ヨシュア様ヨシュア様ぁ〜
なんて愛おしい、なんて可愛らしい、なんて素敵、なんて男らしい、なんて美味しそうなの・・・
ああ、いけない。
集中しなければ。
この汚れたゴミたちを綺麗にするのが私のお仕事。
こんなもの全部ミンチにしてしまえば良いのに、愛おしいヨシュア様の血がそれはいけないというの(泣)。
本当に優しいヨシュア様。
私は、ヨシュア様の醜い下僕。
汚らわしい仕事は全て私がやらなければいけないの。
決して逆らえないの。
断ったり、反抗したりすれば、あのヨシュア様に叱られ、見捨てられるわ
あああ〜〜〜ゾクゾクする。
ダメダメダメダメェ〜〜
まだだめよ
ちゃんとしないといけないの。
「ダヴィド様!!! 一時撤退します。 ご決断を!!!」
マステマ が怒号を放つ。
あの正気を失ったダヴィドが不思議とそれに従う。
「全軍撤退!! もたもたするな〜〜!!」
あらいけない
甘美な妄想に耽っていたら、敵が逃げちゃったわ。
ん〜〜っと、私の可愛いペットはいくつに増えたかしら??
カルミラの周りには、枯れ木のような骨と皮だけになったアンデッド(?)が5体取り囲むようにして膝まづいていた。
あら、5体だけ?
ちょっと壊しすぎちゃったかしら?
そして、ダヴィド軍が去った後には、敵味方の亡骸がおよそ100体以上。
四肢を欠損したものの少なからずおり、これは主にダヴィドによるものと、カルミラによるものである。
カルミラは、それらに近づき確認をする。
そうね。
死んでるわ。
ヨシュア様、屍鬼はお好みではないかしら?
臭いものね。
でもこれだけ新鮮なら、上手に管理すればそんなに匂わないかもしれないわ。
「貴方たち。肉を集めて来なさい。丁寧に扱うのですよ」
5体のアンデッドは黙々と兵士の亡骸を集め、カルミラの周りに並べた。
小一時間もするとカルミラを中心に円を描くように、兵士の亡骸が安置された。
「ご苦労様。ご褒美に貴方たちも聖水を受けていいわよ。うふふ」
そういうとカルミラは、一糸まとわぬ姿になった。
「ヨシュア様。少し血を使ってしまいます。あとでまたいただいていいですわよね?」
カルミラの体、毛穴からか、霧状の血しぶきが放たれ、まるで赤い雲の様に辺りを包んだ。
「あ、あああ〜〜 いいいいいいぃぃぃ〜〜」
人っ子一人、人間のいない城門前に、妖艶な悩ましいカルミラの喘ぎ声が響きわたるのであった。




