41話 ナザロです。ナザロです。ナザロです。
〜ヨシュア〜
はぁ〜るばるきぃたぜぇナァザロォ〜
結構、遠かった。
あの「ナザロです。ナザロです。ナザロです。」の悪夢から、すっかり2か月も過ぎた。
俺が、ぐずぐずしてたのも原因だが、1000騎に上る軍勢の行軍とはかくも大変なのだ。
みなさんご承知の通り(俺はまったく知らんが)、兵站とは非常に重要な手続きなのである。
兵士という生身の人間の手当、騎馬、各種装備、その他生活ゴミやトイレ事情・・・。
(俺はまったく何もしてないが)大変なのである。
目の前が、ナザロであるが、例によってそう易々とは入れてくれない。
色々手続きが必要なのだ。
もちろん俺は何もしない、いや、できない。
今回は、ジャン君が頑張ってる。
さすがは、元商人だ。
したがって、俺たちは暇である。
「旦那。着いたぜ。長かったなぁ。俺たちの出会いもここだもんなぁ」
出会いね。
ふ、確かにな。お前が、キモいショタに扮装して、俺をだまくらかそうとしたな。
なんだ?あの、エクス・マキナって。
黒歴史か?
ふふふ、やべ、思い出し笑いしちまった。
つまらんパンを並べたり、お前を王にしてやるみたいなガキンチョみたいなこと喚いてたな。
「お。思い出したか。俺っち、最初は面倒くさいと思ったけど、今思えば旦那に会えてよかったぜ」
は?
なに、いい思い出的な感じにしてんの?死ぬの?消滅するの?
てか、面倒くさい?
まーだ、立場というものを理解していないようだな。
確かに火の調節はできないが、お前ごときの小悪魔、一瞬で芥にすることができるのだぞ?
口を慎みなさい。
「メフォスト。気を引き締めよ」
「お、おう。へいへい。そうだなぁ。戦争になるかもなんだよなぁ」
あ、そうだった。
こんなにいっぱいの兵隊がいるんだ。敵も諦めないのかな?
抑止力という言葉がある。
勝てない争いを避けるのが知性だ。
でもなぁ〜、あの勇者に知性があるとは思えん。
マステマも悪魔だしなぁ〜〜
やだな〜〜
「メフォスト! テメェ、気を引き締めろぃ!!兄さんのいう通りだぞ。あのマステマがいるっていうじゃねぇか。おめぇの出番かもしれねぇぞ!」
「ひっ。お、俺っちが?なんでですかい?? 旦那の火があるじゃねーですか?」
「ヤツは受肉してやがる。多分、神の加護だろう。浄火は効かんだろう」
ふふふ、そうかそうか、メフォスト君も殉死確定か。
骨は拾ってやろう、あればだけど
「しかし、親父ぃ。俺っちが敵うはずねーですぜ。あれは、かなりの上位の悪魔ですぜ」
「ふん。俺の見立てじゃ、マステマは第5圏ってとこだ。受肉してっから、一時的にはかなりの力を出せるが、ボロも出る。そうそう力は見せんだろう」
「ちょ、ちょっと待ってくだせぇよ。俺っち、第1圏止まりですぜ。土台無理ですぜ、無理無理」
「馬鹿野郎! テメェ、ヨシュアの兄さんに寄生して、どんだけ嵩増されてっと思ってんだ!!」
「へ? い、いやぁ、俺っちもちったぁ格上げしたかなと思ったんですがね。先日の、ご覧の通り、丸焦げってザマで」
「アホ。言ったろーが。あれは、兄さんの火が尋常じゃねーんだ。あんな一瞬の火で、数千の亡者を浄化しちまったんだぞ」
「・・・てことは、俺っちも・・・」
「そうだな、第4圏ってところだろ」
「俺っちが、エクスシアぁ〜。またぁ〜〜、うそうそ、嘘ですぜ、そんな〜パパの恩赦もねーのにぃ?」
うるせーなぁ、能天気だかなんだか知らんが、てめーの仕事はマステマに特攻して塵になることだろ?
しのごの言わずに英霊となれや
「じゃ、じゃあ、旦那はいってーどうなるんで? カイロンの親父の見立てではさ?」
んだよ。俺を巻き込むなよ。
俺、そうゆう格付けみたいの超嫌いなんだよ。
傷つくからさ。
・・・ゴクリ・・・
「・・・わからん」
ズコー
ちょっと期待してたのに・・・
「親父でもわからねーんですかい?」
「兄さんの力にはムラがあるからな。 どうあれ、加護の序列など意味をなさんだろう。多分これはなぁ・・・」
「・・・ふーん。・・・だってよ、旦那」
・・・全力で殴りたいぜ。
マステマにやられてしまえばよいのだ。応援するぜ、マステマ姐さん
「ともかくだ。おめぇの役割は、マステマを抑えろ。勝てとかいわねぇ。抑え込んでればいい」
「い、いやいや、親父。親父の見立てが正しくても、それでも階級が下だ。とても歯向かえませんぜ」
「馬鹿野郎。下位・中位・上位の格差は絶対かもしれんが、てめーらは同じ中位と見てる。そん中じゃ、絶対差はねぇ、と思う。気合いで抑えろ。しかも、相手は受肉してる。霊体相手じゃ全力をだせん。うまくいけば五分だ」
「・・・思う、ですかい? ・・・うまくいかねー場合は?」
「知るか!!」
「ひっ!すいません」
ふふふ。
気合入れろぉ〜
なんか思い出すなぁ。
俺もこんな感じで、モレ・クにぶつけられたっけ。
それで左腕、喰われちゃったっけ。あはは
お前の場合、その空っぽの頭を喰われれば、多少はマシになるんじゃない?
なんかのスキルゲットできるかもよ
「メフォストよ。ここは正念場なのだ」
「・・・・わかったよ。でも、保証はできねーぜ?」
期待してねーよ。
「さあ、兄さん。入城の手続きが済んだようですぜ。ナザロは兄さんを大歓迎しているみたいだ。行きましょう」
大歓迎?
どうしてだろ?
やっぱ、戦力として期待されている??
やだなぁ
〜ダヴィド〜
200騎に過ぎぬ手勢だが、みるみる熟練度が上がっている。
ナザロに向かう途中、いくつかの町を粛清したが、それが功を奏した。
あの500騎の神軍にはまだ及ばないが、マステマの助力もあり、鬼気迫る働きを見せている。
それでいい。
いよいよだ。
いよいよ明日、ナザロに到着する。
この俺の醜い面傷も、神軍を失ったことも、教皇ゲラシウスの失望も、全ての原因はナザロにある。
俺の勇者としての権威は、泥に塗れた。
許されない。許されない。許されない。許されない。
慈悲深き神よ。
多くの罪人が、その許に送られましょう。
どうかよきにお計らいください。
このいきり勃つ感情を抑えることができない。
この身が砕け散ろうとも、背信者への断罪に手を緩めぬ。
明日だ。いよいよ明日だ。




