36話 ヴァルマ導師と戦争
〜ナザロの隣国クルファの指導者 ヴァルマ導師〜
私は、いつもの洞窟で瞑想に耽っていた。
反省が多すぎる。
先の戦では惜しくも攻略できなかった。
しかも、少なくない戦死者を出してしまった。
われわれクルファの民は、“教会”には蛮族として迫害され、ザラム教団には植民地として搾取されてきた。
神や魔神といった守護がいないためか、個々の戦士は十分に強いのだが、軍としてはどうしてもまとまらない。
私が指導者として民をまとめてきてはいるが、所詮は神のようにはいかないということだ。
ナザロのような小さな都市も攻めきれなかった。
民への求心力も落ちた。
そのナザロがだ、どうやら“教会”に反旗を翻したらしい。
もちろん“教会”もただではすまさせまい。
われわれはどうするべきか。
これまでのように、この山岳の地に引きこもり、迫害や徴税に耐えるべきか?
そうではなく、いま一度立ち上がり、“文明”を手にするべきだろうか?
その場合、どうする?
“旧教”か“新教”のどちらかに加担するか?
それとも、漁夫の利を狙うか。
新教の教えには同意する点がいくつかある。
人を中心に据え、人と人の繋がりに真理を求めるわれわれの聖典“ヴェーダ”に近いものがあるのだ。
だが、旧教は強い。
戦うことに慣れた集団だ。
これ以上の民を失うことはできない。
私は、そこで思考を止め、深く深く瞑想の沼に身を投げた。
そしてその思考の沼の底で、私の一生を決定付ける邂逅があった、魔人ケルファとの。
〜ヨシュア〜
俺たちは結局、丸1か月もジュナイブの街にいた。もっと居たい。
何故って、待遇がいいのよ。
ぼーっと、マーケットをぶらついたり、食堂で固くないパン齧ったり、冷めてないスープ飲んだり・・・
全部おごりだからね〜
いや〜、食べたいな〜っと常々思ってたリンゴを齧らせてもらった時は、今まで頑張って?きてよかったなぁ〜って思ったよ、本当。
なんでかは知らないけど、みんな俺にお金はくれないの。でも、モノはなんでも持っていっていいと。
たまにさ、なんか質問?みたいなのが来て、テキトーに答えたり、カイロンが結構どうでもいいことを確認しに来て、それを判断したり、メフォストをいじってみたり、なんか充実した日々を過ごしてたわけ。
ところが1か月が過ぎる頃、カイロンが準備が整ったので、ナザロに向かいましょうと言いだすんだわ。
空気読んでよ〜。できる男なんだからさぁ〜〜
正直さ、俺、もう行かなくてもいいかな〜なんて思いだしてんのよね。
てゆうのも、ナザロに出発した途端、あの「ヒロシです・・・ヒロシです・・・ヒロシです・・・」が止んだし、決定的なのが、ナザロに勇者率いる“教会”軍が攻め込もうとしているっていうじゃない。
無理。
俺さ、戦争とかダメなんだよ。
人が死んだりするし。
はっきり言って、このジュナイブは大丈夫だ。
だって、軍備が凄いもん。
ここんとこ、どんどん武器だの防具だの、兵隊さんだのが集結しているし、街を取り囲む防壁も建設され、さながら城廓都市だ。
こんなところ、誰も攻めないよね?
だから、できればずっとここにいたい。
でも、いられないことになってもうたわけ。
「ヨシュア様。カイロン殿から伺いましたぞ」
ジャンが、なんか怖い。
「ヨシュア様の故郷、ナザロが危機に瀕しているのですね。そして、それをお救いになりに行かれると!」
え?そうなの??
「われわれの調査では、旧教どもの兵は200。アンチ・メシアのダヴィドが率いているようですが、たかが知れております」
へ?アンチ・メシア??
「しかしナザロは、“新教”発祥の地とはいえ、先の蛮族との戦いで疲弊しておりますな」
あ!俺が(多分)兵士として戦ったやつだな?
蛮族って、クルファ軍のこと??
ってか、え?“新教”発祥の地??
「われわれウル・メシア軍は、1,000の軍勢を出しましょう!」
われわれ?
まさかだけど、俺、含まれてるの?
「その準備はできました!」
お、おう。
って、ちょ、ちょ待って。
カイロン君。なんか違くないかい?
「兄さん。護衛ってことだったんですが、ジャン殿は“新教”を守らねば未来はないというんでね」
俺の未来は?
「この軍勢なら、護衛って点に問題はねーですからなぁ」
大は小を兼ねるってか、うるさいわw
いや、これ大ごとじゃね?
バカの意見を聞いてみるかな?
俺は、バカをみた。
「へへ〜。旦那も出世したなぁ。旦那が大将なら、俺っちは参謀だな。戦略みたいのは俺っちに任せな」
俺は、バカをみた。
ここまでくると清々しいね。
こいつコゾーだから、戦争を知らん世代なんだよな、ま、俺もだけど。
ゲーム脳が浸透して、もはや不憫だわ。
あ。ちょっと待て。
こいつ、シレッと俺を大将呼ばわりしやがったな。
ここは、早めにジャンに訂正しておかないとな。
「ヨシュア様が大将としての、この初陣。必ずや勝利しましょうぞ!!」
・・・遅かった。
これで俺のバカに対する憤怒は高まったな。
地獄の業火でちょっとずつ焼いてやる
「兄さんは、安心してくれていいですぜ。このメフォストはともかく、オイは戦の経験がある。少しは助けになる」
カイロン君。
君ってば、本当に使えるやつだね〜
こうゆう人の「少しは」って、全然少しじゃないよね、知ってる。
ま、俺、一言も喋ってねーけど、いろんなことが決まってしまったようだ。
もはやこの流れを変えることなどできまい。
お金の流れは全然こないけど、こうゆう流れはざぶざぶ来るね。
前回の時は全滅だったけど、今回は大丈夫かな?
というわけで、俺たちは急ごしらえの新教軍として旗揚げをし、大将は俺、その初陣はナザロ防衛戦となったわけだ。とほほ




