29話 暴食の地獄と聖定
と、ともかくだ。
左腕のことは後々考えるとして、色々わかった。
まず、神は絶対じゃない。
というか、神は絶対になろうとしてやがんだな。
そのために、メフォストをはじめ、色々使って、色々やっている、ということだ。
とんでもない俗物だったね、まったく。
当面のライバルがモレ・ク。俺の左腕を食べちゃった神様、とほほ。
でも、まだ疑問があんだよな〜。
などと、俺が聞いたことを反芻しながら考えを整理していると、ペテロが話を続けた。
「その左腕のことじゃが、お主、勇者と間違えられたのやもしれんな」
え?
おい。人違いなの?
最悪じゃないのよ。
「かなり推測になるが、モレ・クはセイ・ゼブルに加担するために、勇者にレヴィアタンをくれてやったのかもしれん。」
なるほどな〜。全くわからんぞ。
「しかし、どうゆう訳かそれが失敗し、神側は、ビヒーモスの誕生という暴挙にでたのではないか?神側の作戦は、とにかく大罪を熾し、新しい地獄を顕現させることと見ている。」
あ、俺、失敗した理由知ってます。
勇者の取り巻きが、あのレヴィアタンに皆殺しにあったからです。
なんか、ダヴィドは真名を唱えれば手懐けられるみたいなこといってたけど、一瞬で吹っ飛ばされてたなw
「人間ごときに大罪を、ましてや地獄をどうこうできるとも思えんが、煉獄とは違った亡者の受け入れ口があれば、少なくとも悪魔界は弱体化するからな。」
でも、じゃあなんでペテロは、俺と勇者を取り間違えたなんていったのかな?
地獄をどんどん作るのなら、誰でもいいのにね。
あ、でも、勇者は神の使徒ってことなら、味方が増えると言う感じかな?
俺も一応、職業使徒だけどなw もちろん恥ずかしいので名乗っておりません。
「ペテロ様ぁ。やっぱり早いとこセイの兄貴に知らせねーと。とんでもねー状況じゃないですかい。俺っちじっとしてられねーや」
「馬鹿者。セイ・ゼブルはすでに全てを把握しておる、もっと早くにな。この者に与えられた力が何よりの証」
同意。
メフォストが馬鹿者であることに全力で同意だわ。
馬鹿は黙っててくれる?
「今はな、バ・アルがビヒーモスと対峙している頃かの。腐れ縁じゃが、邪魔はできん」
「バ・アルの叔父貴はどうなるんで?」
黙ってろっつってんだろ〜が。
「このままいけば暴食の火に飲まれるだろうな」
「ひぇっ! ええ〜。そんな、どうなるんで??」
こいつさ、話聞いてないの?
なんかイラつくから、俺が話そう。
「暴食の化身として、新しい地獄となる、ということですか?」
「ふむ。門は締めているからな、セイ・ゼブルにも、神にすらも、それを喰わせるようなことはさせん。」
あれ?話、噛み合ってるかな?
「で、バ・アルの叔父貴はどうなるんで・・・」
ループしてんのかね、この世界は。
全然話が進まねー
「メフォストよ。お主も聖魔神の端くれ。エートスがより強大な力に喰われればどうなるか、そのくらい分かるであろう」
「消滅、ですかい?」
「いや昇華といえよう。ただし、悪魔王バ・アルは消えてなくなる。そして前域は暴食の地獄と化すだろう」
「そ、そんなぁ」
「ともに、煉獄と悪魔界の均衡を保ってきた旧友でもあるからな。わしも少し寂しいわ」
「なんとかならないんですかい?俺っちにできることがあればなんでも・・・」
「たわけ。どうにもならん。少なくともわしにできることは、地獄が顕現するまで神や悪魔の横槍を入れさせんことくらいだ」
そうゆうことか、多少見えたぞ。
7つの大罪ってやつか。
聞いたことあるぜ。それらと地獄がひとつひとつ関連してるわけだな。
じゃあ、メフォストは馬鹿という大罪だなw 馬鹿地獄。こえー
てか、神様も大罪背負ってるわけ?しかも傲慢って、・・・その通りだな。
とりあえず神の当面の相手はモレ・クかもしれないが、最終的な敵はセイ・ゼブル。
そのセイの力を削ぐために、暴食や嫉妬といった新しい地獄をあちこちに作りたい、ということのようだ。
え?ちょっとまった。
俺、神様の宿敵から加護を受けてんの?
それなのに職業使徒なの?
やっべ、俺めちゃくちゃじゃん。
「ペテロ様ぁ! 俺っち、やっぱ行って来ます。バ・アルの叔父貴に加勢して来ますぜ」
なんだよ急に、びっくりするじゃねーか。
そうか、よしよし、逝ってこい。
「メフォストよ。よく聞け。そのようなことをしても、何にもならん。いやむしろ、バ・アルの邪魔になる」
「な、なんでですかい。俺っちも悪魔軍の端くれに入れてもらいますぜ」
「いやな、もはや新しい地獄が生まれるであろうことは誰であっても止められん。しかし、バ・アルはそれを制御しようとしておるのだ。上手くいけば、ヤツの悲願が成就することになる。そのためには、悪魔軍も援軍も必要ない。ビヒーモスとバ・アルが一対一で対峙せねばこれは成し得ないのだ」
「へ? 叔父貴が《憤怒》??」
「・・・じゃがな、憤怒では暴食には勝てん。それはバ・アルが一番承知じゃろうがな」
「じゃ、じゃあ、なんで・・・」
「結果がどうとかではないのだ。それに挑む事そのものが意味を持つのだ。従って、お主などは邪魔でしかないわ」
そのとーり!
いいこと言うぜ。
下がってろ!この邪魔者!!
「・・・しかしな、今ここに《嫉妬》が来た。この宿命、どう見る?」
ペテロがジロリと俺を睨みつけた。
え?
なに?また、急に。
俺の左腕、ぶった切ったのあなたですよね?
来た、はないんじゃないの?
「・・・対峙、されるのですか?」
大罪の力関係は知らんけれども、そうゆうこと?
「聖定が乱れておるのか・・・いやこれもまたご意思なのか・・・」
ペテロはそう呟くと深く黙り込んでしまった。




