28話 セイの兄貴とゲエンナ
「ペテロ様。エートスとはなんなのですか?」
俺は、まず基本的な質問をぶつけてみた。
「・・・そうだな。・・・わからん」
ズコー。
ま、お約束といえばお約束だが。。先が思いやられるぜ。
問題はさ、このペテロのおっさんは人間だという事なんだよな。
なんでもかんでも鵜呑みにしていいわけじゃない。
「だがな、わしは主の意思と考えておる」
シュ?のイシ??
「力であり、流れであり、方法であり、根源であるが、人間が増える事でどんどん細分化され、流動化しておる」
ちょちょちょ、話が進んでいくぞ。ちょっと待って。
「善悪はともあれ、人間の多様化は、世界を混沌へと導くのだな。」
シュというのは、神様のことかな?
「主とは、神様のことでしょうか?」
ジロリと、また睨みつけられた。
「たわけ者。全然違う。主とはな、《全て》じゃ。万物の構造、法則、時間そのものである。神などという跳ねっ返りと一緒にするではないわ」
で、出た!ウラノス。
へー、神様がただの跳ねっ返りとはねー。
このペテロ、やはり只者じゃねー。
「人間の血と肉は、その器なのだ。しかし、器が器のままでいられないというのも、また皮肉じゃな。時には、器が主の意思を変えてしまう事もある。それもまた主の意思のうちよ。」
はーーっと、ペテロは若干長い溜息をついた。
「そこに目をつけたのが、神だな。」
へ?
「神は、人間を導く事で主の意思を思うままにせんとしておるのだ。」
た、確かに。
話を聞くタイプではなさそうだ。
「しかし神もまたエートスであり、部分的にではあるがそれなりの真理を有しておる。」
神の神たる所以ですな。
ペテロのおっさんも辛口だぜ、あれをして、部分的でそれなりだもんな。
「ただし、そう簡単にはいかん。悪魔がいるからの。そして人間はその双方に真実を見る。」
な、なるほど。ややこしいな。
「全く正反対の真理が対立している。そして、そのどちらにも傾きえる人間という存在は、嘘がなければいられん」
それで、ペテロさんは嘘つきなんすか?
そこんとこはっきりしてほすぃ。
「ヨシュアよ。」
独り言みたいに喋っていたのに、急に名を呼ばれた。
「え?あ、はい。」
「お主。セイ・ゼブルに魅せられておるのか」
誰?知らんけれども。
俺さ、こーゆー事多いよな。
メフォストの時も、おんなじ感じでデメテルに睨まれた。
やめて欲しいわ。知りませんよ、そんな人。
あ、そういえばメフォストで思い出したが、セイの兄貴がうんたらと喚いていたな。
俺は、ペテロを真似て、ジロリとメフォストを睨んだ。
「え?だ、旦那は、セイの兄貴と知り合いで? 俺っち何も聞いてませんぜ!」
言ってねーからな。
てか、知らんしな。
「メフォスト。このヨシュアの力は、紛れもなくセイの加護じゃ」
え?そーなの??
紛れもなく?
あったことありませんが。
えーっと、力ねぇ。スキルスキル・・・。
えっとどっかでなぁ。
あ、エウリ・デウスだ。
「あ、あの。エウリ・デウス様の間違えでは・・・」
俺は、怒られるのが怖くて、控えめに訂正してみた。
「わっはっはっはー!」
びくっ!!
怖い、またなんかされるのかと思ったら、ウケけてたのか。紛らわしいな、全く。
「エウリ・デウスとは、またふざけた名前じゃの。ヤツらしいわ」
へ?偽名なんですか?
さっき悪魔は嘘をつかないって言ってませんでした?
いや、ま、メフォストもエクス・マキナがあるみたいだし、なんかルールがあんだろうな。
この話をもう少し突っ込みたいけども、なんだか爆笑して終わったよって感じになってしまった。
まあ、タイミングを見計らってもう少し探ってみよう、後で。
「ところで、ペテロ様。この切り落とされました左腕は元には戻らないのでしょうか?」
俺は、随分前から気になっていたことをぶつけた。
なんとなく、ささっと治してくれてから話に入るものと思っていたのだ。
七色の光のお陰か、出血は治まり、痛みも小さい、が、腕がないのだ。それでいいわけがない。
「おや?わしが切り落としたのは、嫉妬だけだぞ。お主の腕ははじめから喰われておったわ。恐らくだが、モレ・クの贄として差し出されたのじゃろうな。はっはっはー」
はっはっはーじゃねー。随分と陽気になったな。
てか、え?
よくわからんが、なおんないの?
・・・・えー!
「しかし、お主にこれを返すわけにはいかんぞ。この光は、人間を飲み込むからな。地獄に焼かれたくはあるまい。」
もちろん、そんなのもやだけれどもさ。
・・・・えー!
俺、左腕ないの?
・・・・えー!!




