26話 頭の悪い話し方
「旦那ぁ!」
あのアホは、相変わらずのあほヅラを下げながら、馴れ馴れしく声をかけてきやがった。
いやね、そんなに嫌な気分じゃないんだよ。でもさ、勝手に逃げ去って、こっちから会いにきたみたいな形なのが納得いかないね。
しかも、「だんなぁ」だとぉ?
なんか謝罪とか、バツの悪い感じを出せばまだ可愛いものを、あっけらかんとしてやがる。
「お前はメフォストか? ここで何をしている。」
ここはびしっとけじめをつけなきゃな。ちょっと説教だ。
「へ? ああ。 俺っちさ、家に帰ろうとしたんだけどさ、ペテロのじじぃに締め出されて困ってたんだよ」
は〜〜。全く情けない奴だな。
俺がどんな酷い目にあってここまできたと思ってんだ?
訳の分からん行軍に付き合わされ(ま、これは何もしてないけど)、訳の分からん恐ろしい魔神と対峙し(これもまた何をしたわけでもないが)、訳の分からん魔獣をどうにかし(これについてはまだ解決していない)、訳の分からん迷宮を攻略し(結局、偶然流砂に飲まれただけだが)、訳の分からん地下洞窟を彷徨い(ちょっと待てー!これに関しては魔物と亡者をどうにかしたぞ、これは譲れないぞ。すげー頑張ったぞ)、この一応ゴール的な場所までたどり着いたのだ。
は〜〜〜。思い出したら、どんどん腹が立ってくるな。
何お前。家に帰ろうとしているだけなの?
しかもまだ帰ってないの?
もっとさぁ〜、なんかあんだろうよ、こうアドベンチャー的な物語がさぁ。
犬だって、もっといろんなあれこれを経て家路についてるわ。
ままま、ここは心を寛大にして、少し話を聞き出すことにするか。
「メフォスト。詳しく話せ」
「へい。えとね。前域でさ、いやその前にペテロの奴がさラグナレクなんて言うもんだからさ、俺っち焦ってさ、だってさ、そうなったらセイの兄貴に俺っち伝える義理があんだよな、でもことによっちゃあ神も黙ってねーかなーなんてさ、いや俺っちペテロをそんな簡単には信じねーけどさ、それでバ・アルの叔父貴がピンチでさ、っていうのもアンデッドがさ、ペテロのじじぃにいわせるとbh?mthになるなんていってさ、いや俺っちはバカじゃねーから簡単には人間を信じねーけどさ、でもさ大変なのは間違えねーだろ?だからさ、さっき言ったかもわかんねーけど、セイの兄貴にさ伝えなきゃってさ、でもペテロがだめだって、じゃあどうすんのって俺っちもさ〜」
ああああああああ〜〜〜もう、いいっ!!
バカだ!!こいつは!!!
こんなに頭の悪い話し方、もう珍しいわっ!
あれだね。
時系列とか、論理性とか、語彙の説明・定義だとか基本的なことがな〜んにもなってないね。
見たまま、感じたまま、頭に浮かんだままを、ただただ口に出している。
いやいやまだまだ試合は終わっていない。慌てるような時間じゃねー
ここは前向きに、悪魔は嘘をつかない、と言う点だけを信じよう。
てか、これで嘘が混じっていたら何の価値もない情報ということになる。
俺には扱いきれん。
とにかく、
前域でバ・アルの叔父貴がピンチ、その原因はbh?mth(ペテロ談、但し嘘かもしんねー)。
セイの兄貴にことを伝えたい(義理的に)が、ペテロが駄目という、その理由はラグナレクだから(信じねーけど)。
そして、ことによっては神が黙っていない。
ということか。
てかお前さぁ〜。 は〜〜〜〜。
いやね、お前の話し、ほぼ全体が嘘かもしんねーか、信じねー内容じゃないのよ。
そして最後の神については、推測も推測。
これは、俺を堕落させる新しい形の攻撃だな。有効だ。
仕方がない、うんざりだけど追求するか。
「メフォスト、お前は何を見たのだ」
「ん?え、ああ。俺っちは悪魔軍が魔物の群れをアンデッドにしていくのを見たぜ。俺っちの見立て通り、あのマステマはとんでもねー悪だ。あのままだと前域は飲み込まれるぜ」
なるほどね、全然分からん。
え?マステマは悪魔なの?何なの?確かに淫乱な感じはぷんぷんしてたが。
これはもうペテロさんにお話を伺わなければ、埒があかんだろう。
「メフォスト、ペテロ様に会うぞ」
「え?ヨシュアの旦那からいってくれるんか!いや助かるぜ」
こいつのタメ語には毎度イラつかされるが、まあ仕方がない。そもそもちゃんと話すことすら不自由なのだ。
俺は、メフォストを再び従者にして、ここら辺のキーパーソンたるペテロに対峙することにした。




