24話 亡者との邂逅と誇り高きバ・アル
〜ヨシュア〜
「お、お父さん、ですか?」
俺は、亡者の群れにヤゼフのじいさんを見つけた。
亡者たちは誰も振り返らず、ゆっくりとしかし確実に歩を進める。
「ちょ、ちょっと待ってください。ヤゼフお父さん!」
あの日の理不尽さを思い出した。
なにもできず、ロウソクの火を吹き消すが如く命を刈り取られたヤゼフのお父さん。
そもそもちゃんとお礼も、別れも言っていない。
俺は、通せんぼする形で、ヤゼフのじいさんの前に立ちふさがった。
心臓が止まるほどの冷気を感じた。
ヤゼフの亡者は俺に気づくことなく、俺を通り過ぎた。文字通り。
多分だが、力を使えば引き寄せることも、なんかイイことをすることもできるだろう。
でも、ヤゼフとのあの関係はもう戻らない。
よく考えてみれば、ヤゼフは病気だったんだし、息子を亡くして(確信に近い推測)、かなり体調は良くなかったんだろう。その上、引越しまでして、慣れない仕事をした。
あのクソババアはムカつくが、殺されたと言っていいのかは分からない。
でも、ありがとうも言えずに、伝えられずにお別れなんてやだ。
俺は、焔を起こした。
簡単だ。声を出せばいい。
「お父さん。安らかにいってください。ありがとう」
白き焔が優しくあたりを包み込む。
亡者たちが気が付き、わらわらと寄ってくる。
ヤゼフも表情なく、こちらに向かってくる。かなり気温が低下している。あまり時間がない。
「いいことがありますように。ヤゼフお父さん」
俺は、火力を上げた。
ここら辺の調節も随分と上手くなったもんだ。
戦闘(笑)を乗り越えたもんな。
どうよ、少しは逞しくなっただろう。
亡者たちがひとりまたひとりと光の粒子になっていく。
「ヨシュア様もどうかお元気で」
え?
ヤゼフが光に分解される瞬間、声をかけてきた、気がした。
喋れんの?
多分、喋れない。
じゃあ、なんで???
俺は、かなりの混乱と結構な嬉しさでいっぱいになった。
〜メフォスト〜
俺っちもいろいろ見て来たが、一体じゃなく、500のアンデッドなんてもん想像もつかねーや。
人間どもは呪いや祟りなんて言い方で奴らのことを表現するが、俺っちに言わせればあれは厄災だね、災害といってもいい。
止めることができねーもんな。止まるまで待つしかない。
そうゆうのはまともに相手にしようだなんて、全く無意味だね。
さらに言えばさ、強い受け皿には、多くのエートスが入り込める。
そうすっとさ、あのつえー魔物たちはとんでもない数の亡者を引き受けることになんだな。
これが混沌としたエネルギーを振りまくことになんだよ。
はっきりいって、一体でも厄介だ。それが500。
前域はもうダメかもしれんね。
俺っちの見立て通り、あのマステマっていう上位悪魔はまじでヤベーやつだったな。
バ・アルの叔父貴にここまで喧嘩売るんだもんな。
禁忌の悪魔同士のガチ喧嘩がはじまっかもしれねーな。
ひひひ。
これはセイ・ゼブルの兄貴に報告だな。
〜バ・アル〜
神か。
あの傲慢な自惚れ屋がついにここまでやり始めたようだ。
確かに人は、増え過ぎたかもしれん。
エートスは多様な方向に散らばり、主導者たちも方向を見失い始めている。
悪魔と呼ばれる主導者が増えたのが、その確かな証拠である。
傲慢なる神が、自らの意思にそぐわないものを片っ端から「山頂」から追い出しているようだ。
悪魔軍(サマ・エル、アス・デウス、アバ・トン)による魔物の虐殺が進む中、確実にアンデッドが育ちつつある。
このままでは、前域にいる亡者の全てがアンデッドとなり、500体に及ぶ未曾有の厄災が顕現することとなる。
恐らくこの流れを止めることはできない。
最凶の悪魔であるbh?mthの生誕がなされるだろう。
そして、暴食の厄災はこの前域を全て飲み込み、今後亡者たちは「門」にたどり着くことなく、新しい地獄にとらわれることになる。
セイ・ゼブルの力は削がれることになるだろう。これは、神の思い通りだ。
わしにはどうすることもできない、すでに起きてしまった流れである。
しかし、その首謀者マステマを野放しにすることはできない。
親愛なるyhv/vhよ。この身は御名に捧げましょう。
ペテロには漁夫の利を取られ、些か癪ではあるが。。
誇り高き前域の王バ・アルは、ついに出陣の覚悟を決めた。




