19話 エウリ・デウスとスキル
エウリ・デウス様ぁ。
思い起こせば、このお方だけだよ、なんか単純に助けてくれた人って。
この不詳ヨシュア。このチャンスを必ず生かします。
「エウリ・デウス様。何とぞ、このヨシュアにお力をお貸し下さい。どうか取引を。」
「ほう。取引か。・・・ふむ、いや、しかし、お主は何を求めるのだ?」
「私は、今、風前の灯火でございます。魔神モレ・ク様のお怒りを買ってしまい、その劫火に焼き尽くされんとしておるのです。何とぞ!」
「ふーむ、モレ・クか・・・。では、お主は何を差し出そうというのだ?」
「正直に申し上げまして、差し出せるものは特にございません。ただ、エウリ・デウス様がお望みであれば、運命でもエートスでも如何様にしていただいて構いません。」
「エートスはいかんいかん。以前に預かったものも残っておるし、あまり手を出すのは好まん。まあ、いいだろう。預かっていたものを少し色付けして戻してやるかの。その代わり、お主の運命を少し貰うぞ?」
「ははっ!お力添えをいただけるのであれば、運命でも天命でもなんなりと。」
「ぬふふ。天命と来たか。それは面白いぞ。天命については、この際一切手を出さん、好きにするがいい。」
エウリ・デウス的光源は、俺に光の玉を投げかけた。
虹色に輝く光の玉は、俺の体に吸収された。
「エウリ・デウス様、こ、これは?」
「少しもったいないことをしたが、エートスをギフトに固めたのだ。お主、力がいるのだろう?」
「な、なんと。ギフトを!?」
と、(雰囲気的に)言ってみたが、なんのことだ?さっぱりわからん。
「では、な。」
「あ、ちょっ、まっ」
行ってしまわれた・・・。俺の一世一代の取引も呆気なかったな。
あ。やばい、このほんわかタイムが解ける。
光が収束し、先ほどの禍々しい地響きと漆黒の炎が俺を包み込んだ。
ちょっと待ってほしい。
虹色の光玉を貰ったが、俺はどうしたらいいの?説明が欲しいのだが。
ギフトとか言っていたが、なんのことだかさっぱりわからん。
黒い炎の化身モレ・ク。その金色の双眸が俺をみている。
そして、先ほど神軍の精鋭隊を一瞬で粉砕した、L-vthnが黒い炎を纏いながら、俺の上空をうろうろしている。
絶体絶命である。
「人間よ。」
その言葉は、乾いた熱波となって俺を襲った。
ただの声ではない、目を潰し、身を焼き、心を埋め尽くす実体のある“力”だ。
このままでは、言葉通りに燃えてしまう。
俺は、喉が焼けついてしまう前にと、声を上げた。
もう、体中が乾き、動くこともままならない。
「モ レ・ク 様 。 お 話 し を させて くだ さい。」
虹色の光が俺を包んだ。
熱は遮られ、乾き、焦げようとしていた俺の肌は潤いを取り戻した。
そして、見えなくなっていた視界も回復してきた。
その姿、魔神モレクは、禍々しい悪魔だった。
10〜15mもの巨大な双角を戴いた魔神の貌は、荒ぶる猛牛を想起させる。
そして漆黒の炎が、モレ・クの呼吸に合わせて撒き散らかされている。
今俺は100m程離れた距離にいるが、もう少し近づけばその黒炎に巻き込まれ一瞬にして灰になるだろう。
今でこそエウリ・デウスの光の玉によって守られているため、やっと視認できた。
その威容であるが、モレ・クは、未だ祭壇より頭部を覗かせているだけである。
その全容を見せたとすれば、100mにも及ぶだろう。
頭だけ出し、一言話すだけでこれだけの圧倒的な「力」を巻き散らかすのだ。
何もかも、敵うはずもない。
いつ、この俺を包む優しい光が吹き飛ばされるかもわからない。
「モレ・ク様。どうか、お怒りを鎮めください。」
「人間よ。リヴァイア=サンを封じるのだ。」
「ギャギャギャ!!ギャヴーン!!!」
L-vthnは、黒い炎にさらに強く取り巻かれ、奇声を上げ、身をよじりながら俺の方に飛んできた。
神軍の精鋭を薙ぎ払った体当たりだ。
もちろん、俺なんか一溜まりもない。
しかし、至極当然に俺は動くこともできない、恐怖で。
虹色の光が、L-vthnに取り付いた。
俺の中から、かなりの量?の七色に輝く光が絞り出され、原宿のわたあめみたいにL-vthnを包んでいく。
黒い炎は霧散し、L-vthnの金色の輝きも力を弱めている。
「ピューイ!」
わたあめが解けると、そこには15cmくらいの蛇?トカゲがいた。
えと。封じる・・・。
それは、ヒョロヒョロと俺の周りを漂っていたので、えい、っと。捕まえた。
ミニトカゲから強い虹色の光が一瞬生じ、捕まえた左手に、トカゲの形をした影として焼け付いてしまった。
トカゲの形をしたアザができた。よく見ると色がうっすらと変化しており、蠢いているようにも見える。
ちょっとキモい。
「人間よ。それは、盾だ。持っていくといい。」
なんか、魔神モレ・クはそれなりにご満足してくれたらしい。
祭壇の広場に溶けるように沈み、消えていった。
なんか俺、生きのびたみたい。




