18話 モレ・クとそのペット
ドドドドドっと、ものすごい衝撃音が鳴り響いた。
俺は呑気にもウトウトしていた。
まあ、諦めの境地とも言えるし、機動力の高いゾンビから逃げ回るのに疲れたともいえる。
漆黒の炎が上がり、その中心に強い光を放ち、金色に輝く蛇?竜?が現れた。
これはやばいヤツである。
まず何よりあの黒い炎がやばい。
あれに似ている。
身も心も全てを塗り潰さんとする、絶対的な存在感を持った強力な光である。
この蛇が纏う炎も同じように、重みすら感じる圧倒的な熱量だった。
脳筋のやつ、こんなの手懐けられんの?
俺は、とにかく蛇の死角に逃げた。蛇は俺の担当じゃないし。
蛇は、空中を悶えるように飛び回っている。
高く舞い上がったり、急降下したり、とても危なっかしい。
しかし、さすがはエリート部隊である。
うまく距離を取りつつ、陣形を組み、様子を伺っている。
そろそろ出るかな?
あの蛇を手懐ける呪文?的なやつ。
「リヴァイア=サンよ。我が僕となれ!」
お。出た。
効くのか?
「ギャヴーン!!」
耳をつんざくカナギリ音が鳴り響く。
ムッチャ怒っているみたいだが?蛇の輝きが一層強まった。
あれ?黒い炎が、弱まった?
蛇はその輝きをさらに増し、一直線に脳筋に向かった。
効いたのかな? ポケモンゲットだぜ! かな?
蛇は、鋭い牙で脳筋の顔面に大きな傷を付けた。
「ぐあー!」
脳筋は血飛沫を上げ、転がり回った。
ふむ、いきなり飼い犬に咬まれたのね。
毒とか大丈夫かな?蛇だし。
俺が冷静に戦況を分析していると、取り巻きどもが蛇に向かった。
ん?倒すの? 捕獲じゃないのw?
剣先を向けられた蛇は、その照度が強過ぎて、もはや形を認識できないまでに興奮しているようだ。
マステマも何か指示しているみたいだが、動揺が見て取れる。
俺はといえば、正直ホッとしている。
こんな感じなら、どさくさに紛れて、生き延びれるかもしれないからね!
蛇の先っぽ(眩しすぎて、頭か尻尾か分からん)が取り巻きどもをなぎ払った。
ヤバイなんてもんじゃない。
あんなに強かった神軍の選りすぐりが全滅だ。
「体を強く打って」いる。一溜まりもないない。
無残な姿である。
俺は全力逃走を決意した。
「ひどい荒れ方だが、何があったのだ?」
地面からそびえ立つ漆黒の炎が、全てを凍り付かせた。
あの蛇ですら、縮こまっている。
あの黒い炎は、蛇のもんじゃない。
このお方のものだ。
モレ・クにしてみれば、この蛇はマジでペット感覚なのだろう。
「ほう。変わった人間がいるようだな」
黒い炎は、牛と人間の合いの子みたいな形を作り、金色に輝く双眸が俺を見た。
俺は明確に死を意識した。
マステマが、一瞬の隙をつき、ダヴィドを抱えて飛んだ。
コウモリのような黒い翼がはためき、こちらには目もくれず、真っ直ぐに退場していった。
モレ・クは、ちらりとそちらを見遣った。
俺の硬直が、少しだけやわらいだ。
「助けて!!」
俺は、無我夢中で、あらん限りに何かを叫んだ。自分でも何を叫んだのかよく分からん。
光の奔流が俺を包んだ。
「お主か、頑張っているようだな」
へ?
「む。呼んだのではなかったか?」
は! このお声は。
懐かしや、エウリ・デウス様!
結構、会いたい人ナンバー1ですぅ。
「なんじゃ、取り込み中か。では、さらばだ」
「いやいやいやいやいやいや、お待ちを!」
「どうした?何かあるのか?」
あるよ、大アリだよ!
一生一代の大博打を打つぜ。




