15話 迷宮への進入
「ダヴィド様。迷宮に入るまでは、異国においてのご処罰、ご徴用はお控えください。」
淫乱が勇者に釘を刺している。
まあ、そりゃそうだろう。
自国なら何やっても英雄扱いかも知れんが、他所の国で好き放題やったら袋叩きにあうだろうさ。
そもそもたっぷり金もってるみたいだし、そんなことしなくても困らんだろうにな。血の気が多いね、全く。
俺たちは5日もかけて遠い異国の地、フェス=エル=バリ迷宮都市までやってきた。
その道中で、幾度となく繰り返される脳筋バカの暴走を、淫乱が必死で止めていたが、多少の混乱は回避することが出来なかった。
バカのお陰様で、東の国のザラム教軍に追い回される羽目にあった。
しかし、流石は泣く子も黙る脳筋バカ率いる西の神軍である。
数では500(神軍):2,000強(教軍)と劣るものの、その強さたるはまさに蹴散らすかの如く教軍を退け、ここフェス=エル=バリ迷宮都市まで進軍したのである。
俺?
何もしてませんが?戦わんよ、弱いし。
神軍の中心にある荷馬車に揺られ、一日2回の結構な食事にありつき、それなりのベッドで惰眠を貪る毎日ですとも。
如此く、騎馬戦においては、機動力と個別戦闘能力に勝る神軍の優位は揺るがない。
しかし攻城戦においては、新兵器を多数有する教軍が有利であり、単なるゴリ押しの騎馬隊である神軍では攻略できないだろう。
迷宮都市への正面突破は困難、と淫乱は判断した。
我々は精鋭部隊を結成し、その数10名にて、フェス=エル=バリ迷宮を攻略することとなった。
残りの490騎の神軍は、囮の遊軍として迷宮都市の外周を巡回し、教軍を引きつけておく。
隊長は、もちろん脳筋バカ。
参謀は、もちろん淫乱。
そして何故か副長として俺が抜擢され、以下精鋭中の精鋭7名がフェス=エル=バリ迷宮攻略隊として任務に当たることとなった。
攻略隊は、完全武装(俺を除いて)を異国の衣装でカモフラージュし、冒険者然とした格好で迷宮都市に入城したのである。
迷宮への進入は、さほど困難ではない。
いや、余裕である。
何故なら、基本的には東の国にとって、よそ者の迷宮への侵入は大歓迎だからである。
迷宮の管理において、不審者の不法侵入は欠かせない「餌」なのである。
我々は、3日分に相当する水と食料を携行し、一応、夜中の時間を見計らい、闇に紛れて迷宮に潜入した。




