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12話 亡者たちとエセ司祭

どうしてこうなった?


確かに俺は、あれ(メフォスト)を馬鹿だと思っていた。


しかし、どこかで期待、いやそこまで酷くはないだろーなーという、多少の信頼はあった。


あのクソ馬鹿(メフォスト)は、満面の笑みで団体さんを連れてきたのだ、亡者の。



ああ、言ったよ。


俺は、困った人たちを連れてきなさい、祈ってあげるからってね。


その代わりに、食事を頂いたり、一泊とめてもらったり、金よこせとはまあ、大きな声で言わないけど、それなりのね、あんだろ?


そうゆう事は、ちょっと考えればわかる事でしょ?




ナニコレ、オレの周りに、()()()()困った人たちの人だかりができてんじゃん。


カイロンの親父が運びきれないでいる、亡者の群れじゃないのよ。


俺以上の無一文で、完全なる素寒貧じゃないの、亡者って。


完全無欠のタダ働きじゃないのよー


もういや!こんな生活!!



「なあ、ヨシュア。いくらでもいるぜ、どんどん連れてくるな!」



今日の晩飯は、悪魔の丸焼きだな。味噌でも塗るか。




亡者たちは暗い表情で、街灯に集まる羽虫のごとく、俺を取り囲んでいる。



戦争か。可哀想に。


しかし、どう見ても一般人や、女性や幼い子どもまでいるじゃないか。



戦争って、一般人がこんなに被害受けるものなのか?


いや、俺は全然戦争とか知らない世代だからね。わからんけど。



その痛み、悔しさ、驚き、無念さがひしひしと伝わってくる。



悪いね。俺、祈ってあげることしかできないんだよ。


でもさ、一生懸命祈るから。


せめて、向こう(「前域」の先)側でいいことがあるようにさ。




俺は、静かに祈った。


彼らの心が入り込んでくる。


夢があった。

好きな人がいた。

守りたい人がいた。


いろんな思いが行き所なく、俺に訴えかけてくる。



俺は、それらそれぞれにひとつずつ耳を傾け、慰めた。


そして寒そうに凍える亡者たちを温めるべく、火を起こすことにした。



「案ずるな。希望(ひかり)あれ。」


静かで、温かい焔が起こり、亡者たちを優しく照らした。


尽きることのなかった亡者たちの嘆きは、鳴りを潜め、静かな静寂が辺りを包み始めた。


青い焔は、徐々に大きく、そして高くなっていった。


相変わらず青い焔は、熱くなく、ただ心をじんわりと温めてくれる。




「うおっ! ヨ、ヨシュア! 気をつけてくれよ。 かなり強いぞ、この炎」


またぞろぞろと亡者を連れてきた馬鹿タレ(メフォスト)が、喚いていた。


新しく加わった亡者たちも、その焔を囲み、落ち着いている。



「救い給え」


亡者たちは、焔に焼かれ、上昇気流にのって天に舞い上がっていった。


そして、彼らの無数の声が俺の心に響きわたった。


安堵、信頼、そして希望に満ちたものであった。




「ここら辺りの亡者は、大方片付いたぜ」


「しかし、まあ、ヨシュアは、まじすげーな。 清めの炎まで出せんのかよ。ここまでくるともう力天使(デュナメイス)レベルだな」



馬鹿(メフォスト)がひとりではしゃいでる。


力天使だか力士だか知らんが、お前を丸焦げにすることくらいはできそうだな。まあ覚悟はしておけ。



「これでまあ、カイロンの親父も河辺に戻れんじゃないか?」


そうじゃなきゃ困るな。



え?

また、戻んの?


疲れたよー。


ここで野宿するか、、、なぁ。



俺がぐずぐず考えていると、今度は生きた人間の声が聞こえた。



「も、もしや、聖者様でございますか?」


聖者?俺?? 

剥き出しの悪魔(バカ)連れてるけど、大丈夫かな?



「聖火が上がっていました。間違いありませんな、こんなところにも聖人がいらっしゃるとは。はっきりとみさせていただきましたよ。」


暗がりで、よく見えなかったけど、どうやら同業者みたいだな。


我々のトレードマーク、詰襟を着ている。



「さぞかしご高名な聖神父様とお見受けいたします。お名前を拝聴できますでしょうか?」


「ヨシュアと申します。」


俺は、職名を出すのを躊躇った。


使徒ってなんか、おかしくない?


野良教導者の方がいいや。



「さ、ささっ。教会にご案内致します。 もう夜ですから、ゆっくりお休みください」


食いもんも欲しいな。



俺は、町に案内された。



町は、戦火の跡が生々しく残っていた。


いたるところに、まだ新しい血痕あり、あちこちで死体を焼いている。



「お見苦しいところをお見せして、お恥ずかしい。実は、勇者様による異端者のご処罰がありましてな。」


勇者様? 異端者? ご処罰?


なんか、この戦争の跡と繋がらないキーワードだな。



「なあヨシュア。これはどうやら戦争じゃないぞ。」


忘れてた、こいつ(メフォスト)の存在。



お前、なんで堂々とそんな恥ずかしい格好で、いやいや、その前に、悪魔やん。まんま悪魔が町歩いとるやん。



「この司祭もなんか怪しいぜ。こんなエートスじゃ、俺のこと見えないし、声も聞けないな。」



あ。そうなの。


エートスとやらの状態で、見えたり見えなかったり、聞こえたり聞こえなかったりすんだ。



確かに、お前如きが見えないとすると、かなり最低のエートスなんだな、この司祭。ダメだわ、終わっとる。



「ヨシュア。勇者が出てきたとすると、『前域』は大混乱かもしれねー。人が死に過ぎるからな」



俺が勇者なら、真っ先にお前を地獄送りにするがな。



でも、なんかキナ臭い話だな。


勇者って呼ばれてる奴が、異端者を片っ端から虐殺してるってことか。ふーん。



女子供の区別もなく?



なんか、え? おかしくない??



異端者って、そんなに悪い人たちなの??


虐殺しちゃうの? なんで??



「この数年、世は乱れておりました。免罪符を疑う者や人頭税を納めぬままのものが増え、神のお怒りに触れたのでしょう」



免罪符? あれただの紙きれでしょ?? ご利益ないよ、そりゃいらんでしょ。



人頭税??なにそれ。


そんな理由で皆殺し??



「ヨシュア様。 ささっ、こちらでございます。 大変粗末な食事ですが、お召し上がりください。お部屋も用意しておきます」



俺は、気がついたら食堂で、結構な食事をゴチになっていた。


あれ?


違和感しかないぞ?


パンがそんなに固くない、いやいやいや、そうじゃなくて、俺、ここで飯食ったり、泊めてもらっていいのかな?


間違っていないか?


間違っているよな。





「おお!!勇者様。それにマステマ様。お疲れ様でございました。」




ん?



大げさな声が聞こえんぞ。うるさいな。




それが、勇者ダヴィドとその連れ従者マステマとの初対面だった。

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