104話 戦力確認とエピソード爆ny
〜ヨシュア〜
話を整理しよう。
人は何度でもやり直せるんだ。
俺はシモンを呼び、ひとまず現状の整理、そして理解に努めた。
まず、この砂漠のど真ん中において、
俺(ヨシュア♂)
シモン(受肉体でおっさん♂)
カルミラ(受肉体でヴァンピールで♀)
マステマ (受肉体だがはぐれメタル的で♀で気絶中)
アバ・トン(霊体だが爆乳にしてがっくりと落ち込み中な♀)
アス・デウス(霊体で美乳にしてメンヘラで絶賛ぶっ壊れ中の♀)
がいる(あとヤギの群れ)。
そして、当然ながらサマ・エル(霊体でペラパイで行方不明な♀)とガルバ=エル(天使?)を捜索中である。
ところが、だ。
この世界に大いなる改変が起きているそうである。
その改変については、まだ不確定な部分が多いそうなのだが、少なくともゲエンナが乱立しつつあるという。
それは、セイ・トンのような強力な存在が、この前門に顕現できるということから推測できるのだそうだ。
ここで素朴な疑問が頭をもたげる。
「シモンよ。なぜ、セイ・トンはこれまで前門に出てこれなかったのだ?」
「は。端的に言えば、ウラノスに抵触するからです。」
ふ。またウラノスか・・・。
「ウラノスに抵触するとどうなるのだ?」
ま、これがポイントだよな?
前世の場合だと、お巡りさんが追っかけてくるよね。
「ガルートになる…とのことです。」
がる? がるーと??
なに?
「最も残酷なる罰という意味です。」
内容は具体的にはわかんねーが、とにかく恐ろしい、と。
ふーむ・・・。
こりゃ、インチキくせ〜な。
誰が言い出したか知らんが、ナマハゲくるぞ的な脅しと見たぜ?
「それは、今も有効なのか?」
「これだけのことが起きているのに、ウラノスの守護者たるデメテルに動きがありません。推測するに・・・ウラノスはデメテルを排したか・・・」
え?
あの外見と中身に壮絶なギャップのあるデメテルが、ハイされちゃったの? なんかもったいねーな。
「恐ろしいことなのですが、ウラノスはウロボロスを解放し、新世界を齎そうというのかもしれません。」
恐ろしいの?
そのウロボロスとか、新世界とかの話がよくわからんのだが・・・。
「して、ウロボロス、というのは・・・一体なんなのだ?」
シモンが、神妙な顔で回答に困っている。
「・・・ウラノスの矛盾・・・世界の本質・・・なのでしょうか?」
こらこら。
質問を質問で返すんじゃないよ。
ピンポーン!正解。って俺がいうか?
言わんよね。
なーんも知らんよね? 俺。
ふん、とにかく本体であるウラノスから、それよりも巨大ななんかが出てきた、ということらしい。
そして、それがひどく暴れまわるかもしれないし、それによって世界が全く新しくなってしまうかもしれない、ということか。
うん。どうでもいいだろう。
そうゆうのは、天災みたいなものだ。きっかけの一端に俺がいるかもしれんが、終わったことだ(ある意味では始まったばかりのことかもしれんが)。
いいじゃないか、前を向いて進もうよ?
「シモン。どうであれ、サマ・エルの救出が最優先だ。居場所はわかるか?」
「いいえ。正確な場所は、カルミラ様でさえつかめていません。ですので推測するしかないのですが、煉獄ではなさそうです。悪魔界に変化がありませんからな。」
この辺も不明確なのだが、煉獄と悪魔界とはシーソーの右側と左側のようなものであり、格だの存在力だのエートス的なものに色々あるようだが、トータルで両界のバランスがトントンなんだそうだ。
サマ・エルほどの格を持つ大悪魔が煉獄に属したとすれば、このバランスは大きく傾くはずだ、という論理のようである。
もっともどっかの誰かが悪魔界から件の大悪魔を引っこ抜いた所為で、既にそのバランスは崩れ始めていたらしい。それが問題化する前に、そもそも世界の根底が覆ろうとし始めてしまったのだ。
そして今回煉獄側の大物、マステマまで受肉させ、引き抜いてしまったとのことだ。
ふむ。
これでやっぱりトントン、ということで、メデタシメデタシなのかな?
そこらへんのルールはわからんが、受肉というのは、ひとつの世界が揺らぐほどの影響があるということなのだそうだ。シモン(アザ・ゼル)に関しては、悲しいかなそこまでの影響は出ていないとのことだ。まあ、当たり前だ。セイ兄さんからの紹介だもんな。俺はワルクナイ。
「今、一番怪しいのは強欲のマ=モンです。得意の精神汚染によって、賢王ティムルに受肉しつつあります。ただ、まだゲエンナを熾せていませんから、そうだとするとどう組み込んだのかは不明です。」
まあ、そうか。
そんなことをしそうなのが、賢王ティムルってわけね。
「あと力を顕現化しつつあるのが、嫉妬のヴァルマ導師、憤怒のローランですが、ヴァルマ導師は山奥に引きこもり、ローランは雲隠れしています。ですので、可能性は低いかと・・・」
「なるほど(まだ本当はよくわかっていないのだが、もういいだろう)。して、ゲエンナを熾すというのは、どういうことなのだ?」
「・・・はい。正直、この私もゲエンナが熾るのを経験したことはありませんが、論理的には界が区切られるということです。」
地獄にも論理があるのね。地獄の沙汰も論理的ってか。
「しかしウラノスが乱れ、界を区切るはずの門が開らかれ、異なる界が同居しはじめたというのが現状です。そしてもちろんこれらの界は、長くは同居できません。どれかひとつに飲み込まれる宿命にあります。この流れに身をまかせず、動き出すのは間違いなく煉獄でしょう。あれは、賢王ティムルを攻めるでしょうな。ザラムを滅ぼすのは、皇帝の悲願でもありますからな。」
きな臭い。
また戦争かよ。
嫌だなぁ〜。
・・・でも、仕方ない。
我が戦力を確認し、ザラムに向かうか。
責任も少なからず感じるし、カルミラほどの強いのが2人もいれば大丈夫だろという楽観的な認識もある。
「シモン。ザラムに向かうぞ。その前に、我が戦力を確認したい。」
「! はい!!」
シモンの顔つきが変わった。
当然ながら、嫌な予感しかしないが、言ってしまったのだ。引き返せない。
「ヨシュア軍団の団員筆頭は、当然ながらカルミラ様です。大悪魔ベリ・エルを紐帯に、呪われた宿命を持つヴァンピールの魂を受け継いだ受肉体ということで、控えめにいっても存在を保っていること自体が奇跡です。その戦力の高さは言うに及びません。そして、マステマの受肉体です。こいつは、紛れもないジューダスの手下ですが、主様の受肉の儀式によって、カルミラ様に匹敵する力を持ったようです。信じられませんが、まざまざと見せ付けられましたからな。主様を前にいうことではないのかもしれませんが、あんなものを手懐けるなど正気の沙汰ではありません。この2体は、完全なる受肉体であり、その紐帯も魂も肉体についても非の打ち所がありません。そして、この私シモン(アザ・ゼル)でございます。主様より受肉を賜り、そこそこの力はございますが、どちらかというと生産職でございます。是非とも後衛にて務めさせていただきたくお願い致します。その代わり、武器、防具、装飾品、料理からなんでもお申し付けください。得意にして、喜びです。そして、アバ・トンとアス・デウスですな。今のところ、良いところなしですが、この2体は悪魔界における武闘派のトップ2です。誇り高きバ・アル閣下の子飼いでしたが、ご存知の通りです・・・。もし、この2体までも受肉に成功するならば、その時点でヨシュア軍団の力は悪魔界に匹敵するでしょう。最後に、サマ・エルです。あれは、知謀に長けておりますので受肉の効果は不明ですが、これまで受肉したとするならば・・・・」
なんかスゲー・・な・・
「既にご存知かとも思いますが、カルミラ様はアンデッドの使役が可能なのですが、これはそもそもアス・デウスの得意技です。カルミラ様のそもそもの能力である亡霊を悪霊として使役するものに、ヴァンピールの能力であるアンデッドの量産力を加えて、さらに飛躍させ、おそらく主様のエートスのバックアップによって、知能を残したまま使役するという、ほとんど反則技のような術式を運用なされます。これに近い力をマステマも使います。マステマは生きたままの人間を誘惑し、思いのままに操る力です。またそれらを強化する蠱毒というような秘術も開発しているようですが。この2つの力は歴史上対立し続けてきましたが、今回どうやら同じ陣営にいるようですな、全く信じられないような状況です。そして、アバ・トンですが虫を使います。その名の通り、全てを灰燼に帰す恐ろしい力です。大地の怒りとも呼ばれ、敵のみならず味方にも恐れられています。まあ無茶苦茶な力と思っていただいて結構です。そして、サマ・エルは限定的にですが、アンデッドに知恵を与えることができます。カルミラ様がいる以上あまり必要のない力かもしれませんが、アス・デウスと組めばカルミラ様に近い力を発揮することが可能であり・・・・・・・」
話しナゲー・・・な。
「しかし、カルミラ様は、肉体の制約としてヤギ乳がありますが、マステマの場合、どのような制約があるのか現段階では不明であり、奴を本当に我が陣営の戦力として計算してもいいものなのか・・・・」
まだ続くの?
てゆうか、マステマは大丈夫なのだ。
問題は、それを論理的に説明できないのだ。
結局、体感的に、実感的に、直感的に、わかるだけなのだ。
世の中、そういうことは多い。
電子レンジがなんで、ものを温めることができるのか?
冷蔵庫がなんで、ものを冷やすのか?
飛行機がなんで、空を飛ぶのか?
おっpがなぜ、垂れるのか? (あ、これは解決済み)
なーんとなくわかるが、詳しく、正確に説明することができないことって、多くある。
しかし、それでも構わんのだ。
分子だのマイクロウェーブだのがわからんでも電子レンジは使うし、エコキュートがどうゆう位置付けでキュートなのか知る由もないが温めたり冷やしたりするのを止める気もない。飛行機などろくに乗った記憶もないが、別に恐れたりしない。おっpに関しては、もうあれには触れるつもりはないが、いつかまた触れることも否定したりしないのだ。
生きるということはそういうことなのだ。
「シモン・・・。マステマについては、問題ない。このヨシュアが保証しよう。」
「!!! は!! ははぁ〜〜!!!」
シモンが平伏する。まあ、水戸黄門みたいなもんだな。
どんなややこしい問題も、印籠一つで全部解決!
うん?
離れたところで、カルミラも土下座している。
全部聞いていたのね。印籠のご威光の強さを思い知ったぜ。
「カルミラも聞いてくれ。そなたとマステマとは色々あったのであろう。しかし、此度は状況が変わった。マステマが私たちに害を与えることはない。これについては、この私を信じて欲しい。」
カルミラが額を地面に埋め込めんばかりに土下座を続けている・・・。気まずい。
同じようにアバ・トンも三つ指ついて土下座している・・・。健気なところもあんだね。少し見直したぞ。
その横で、アス・デウスがへらへらとヨダレを垂らし、どう見ても自失している。怖い。より見損なったぞ。
こんなのが、世界を揺がすほどの戦力であると言われてもピンとこないな。
「みな、もうよい。サマ・エルをできるだけ早く救出したい。皆の者、出立の準備を!」
このしんみりとした気まずい雰囲気を打破すべく、俺っちは発破をかけた。なんか、時代劇っぽくなっちまったい。
そして気が付いた。
これ、いつものパターンやん。自滅のパターンや〜ん。
〜エピソード:アバ・トン〜
アバ・トンは、破壊を冠するエートスである。
そもそもは飢餓と蝗害を契機にした、自然に対する畏怖と憎悪の結晶であった。
たびたび人々を襲う蝗害は、人間を、いや人間性までを破壊し尽くしたのだ。
草木一本残らない蝗害の後に生き残った人間たちは、互いを喰いはじめた。
これはマステマが開発中の蠱毒そのものである。
幾たびも繰り返された蝗害による蠱毒。
この生き残りがやがてコアとなり、ひとつのエートスが自律し始めたのである。
このエートスは、魂の悲しみや喜び、希望といった曖昧なものを取り込み、塗りつぶしていく。
この肥大化し自律化したエートスは、やがてアバ・トンとアリエルに別れたのだ。
人間は、アリエルを天使と呼び、アバ・トンを悪魔と呼ぶようになった。
ただしこの2体は、本質的に同じものの2側面にすぎない。




